近年、広報PR活動をしていると耳にする「パーセプション」という言葉。聞いたことがある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。広報PRで求められている「認知拡大」ですが、パーセプションはもう少し踏み込んだ「どのような認知を拡大するのか」を考えるときに必要な概念です。
今回は、広報PR活動におけるパーセプションの重要性はもちろん、マーケティング活動においてパーセプションを活用する、「パーセプションフロー・モデル」についても解説していきます。
パーセプションとは
パーセプションについて、その意味やブランドイメージとの違いについて解説していきます。
パーセプションの意味
パーセプション(perception)とは、「認識」という意味で使われる言葉です。存在や名前を知っている=認知を超えて、そのものがどのような価値があるか、どんな存在であるかを知覚している状態のことを指します。
パーセプションは、生活の中の商品やサービスとのタッチポイントの積み重ねによって作られます。その経験やイメージからパーセプションが形成されるため、企業は適切なコミュニケーションを図ることが必要なのです。
パーセプションギャップの意味
パーセプションギャップとは、その名の通りパーセプションのギャップ(ずれ)のことです。企業が思っている自分自身のパーセプションと、生活者やメディアなど社外の人たちが抱いている企業に対するパーセプションに差異がある状態のことを指しています。
パーセプションギャップがあると、企業と生活者間のコミュニケーションが円滑にできず、さまざまな問題が発生する可能性があります。どのようなパーセプションギャップがあるのかを常々意識しながら、そのギャップを埋めるコミュニケーションをとることが重要です。
パーセプションとブランドイメージとの違い
パーセプションとブランドイメージは、企業や商品・サービスを生活者がどのように捉えているのか、という意味では類似した概念です。パーセプションは、そのものの価値や存在意義に対する認識のことを指します。一方でブランドイメージは、そのものに対して生活者が抱いているイメージです。
パーセプションは、提供する価値や日々のコミュニケーションの積み重ねによって形成されるものです。パーセプションは事実に基づいたものであり、一部を変更したからといってパーセプションが簡単に変容することはありません。
ブランドイメージは、ブランドのタッチポイントに触れるときにどのようなイメージを生活者が抱くかを指します。タッチポイントに、写真や文言など何を選ぶかによってブランドに抱くイメージが決定します。そのため、より良い印象を生活者に抱いてもらえるように一部を変えて改善していくことが可能です。
パーセプションの事例
パーセプションは、商品やサービスに対する認識だと言いました。認識と言われても、なかなかイメージできないという方もいるかもしれません。いくつか有名なメーカーやブランドのパーセプションの事例を挙げてみます。事例を参考にしながら、自社のパーセプションがどのようなものか、ぜひ考えてみてください。
トヨタ:常に新しい技術に取り組む日本を代表する自動車メーカー
リンガーハット:国産素材を使用した商品を提供する長崎ちゃんぽん店
LINE:リアルタイムコミュニケーションができるメッセンジャーアプリ
よなよなエール:コンビニで手軽に買える高品質なクラフトビール
ヴィレッジヴァンガード:サブカルグッズを豊富に取り揃えている遊べる本屋
広報PR活動におけるパーセプションの重要性
広報PR活動において、パーセプションは活動の方針を決めるための重要な要素になり得ます。
広報PR活動でこれまで求められてきたものは、認知を獲得・拡大することでした。しかし、情報の複雑化や選択肢の広がりによって、単に「存在を知ってもらう」というだけの認知拡大では、自社の商品やサービスを選んでもらうことが難しくなってきています。認知を拡大するだけではなく、その商品やサービスがどのような価値を持っているのか、どんな存在なのかを認識してもらうことで自社を選んでもらえる状況を作ること、すなわちパーセプションの形成が広報PR活動にも求められているのです。
パーセプションを把握・測定する方法
パーセプションを把握したり測定したりするのにどのような方法があるのか、その一例をご紹介します。測定する内容に最もあった方法を選択して実施してみてください。
1.生活者へのアンケート調査
生活者へのアンケート調査によって、現在の自社のパーセプションを把握することができます。現状、自社がどのように見られているのかをアンケートを通じて直接生活者に聞いてみる方法です。定性アンケートと定量アンケートのどちらも行うのが良いでしょう。
2.メディアや顧客へのヒアリング
メディアや顧客など、自社のことをよく知っている人たちへのヒアリングの場を設けます。対面で会話することで、より深掘りできることがポイントです。
3.UGC(ユーザー生成コンテンツ)調査
SNS上の自社に関する投稿をピックアップし、その内容を分析する方法です。UGC(ユーザー生成コンテンツ)は、数よりも内容が重要です。日々投稿されるUGCの中で自社がどのように取り扱われているのかを分析することで、リアルなパーセプションを知ることができます。
パーセプションフロー・モデルとは
パーセプションフロー・モデルは、株式会社クー・マーケティング・カンパニーの音部大輔氏が提唱したマーケティングのマネジメント手法です。生活者の消費行動における「認識・知覚の変化」を可視化し、マーケティング施策を管理します。
パーセプションフロー・モデルとカスタマージャーニーマップとの違い
パーセプションフロー・モデルとカスタマージャーニーマップとの違いは、表現する内容です。カスタマージャーニーマップは、生活者が商品・サービスを認知してから購買にいたるまでの一連の流れを視覚化したもの。生活者の行動に注目して整理を行います。パーセプションフロー・モデルは、カスタマージャーニーマップの生活者の行動に加えて、商品やサービスに対する認識や知覚の変化を整理するものです。
パーセプションフロー・モデルの作り方と5つの構成要素
パーセプションフロー・モデルは、決められたフレームワークに沿って記入しマーケティング活動全体を可視化していきます。このフレームワークは、横軸がパーセプションフロー・モデルの5つの構成要素、縦軸が生活者の状態となっています。生活者の状態は、現状、認知、興味、購入、使用、満足、再購入、口コミの8つの段階から成っています。
5つの構成要素は、以下の通り。
1.行動・態度
企業、ブランド、商品・サービスなどに対する、行動と態度。
例:
・競合製品を利用している
・ 自社製品を購入する
・ 自社製品をおすすめする
2.パーセプション
認識・知覚の状態です。外部からの影響によってどのように認識の変化が起こったのか、外部情報をどのように解釈するのかについて考えます。
例:
・競合製品は自分に合っていないかもしれない
・期待以上の製品で満足だ
・この製品を誰かに教えたい
3.知覚刺激
パーセプションを形成するために、自社としてどのような提案や情報提供をするのかを示します。
例:
・ベネフィットの提案
・今購入するための機会
・ベネフィットを体験しやすい使い方
4.KPI
知覚刺激を生活者に与えたことで、パーセプションがどのように変化したのかを測る指標です。
例:
・ブランド認知率
・購入率
・推奨度
5.メディア・媒体
知覚刺激を与えるために活用する発信手段です。効果的に刺激を与えられるメディアや媒体を検討するようにしましょう。
現状から認知、認知から興味へと生活者の状態が移り変わります。この状態が移り変わるときに生活者に起こる変化が構成要素の中の「行動・態度」と「パーセプション」です。企業がコミュニケーションで伝える内容が「知覚刺激」となります。この「知覚刺激」の内容が決定すると、施策として活用する「メディア・媒体」や効果測定のための「KPI」が決定します。
企業と生活者が同じパーセプションを持てるコミュニケーションをしよう
パーセプションは、生活者が企業や商品・サービスに対して、どのような価値があるのか、どんな存在なのかを知覚している状態のこと。企業がコミュニケーション設計をしなければ、生活者の認識にはそれぞれ差異が生まれてしまいます。
認知を拡大することはもちろん重要ですが、「どのような認識を持ってもらうのか」というパーセプションを意識したコミュニケーションが重要になってきているのです。ぜひ今後の広報PR活動で意識してみてください。
パーセプションに関するQ&A
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