総合建設業を営む三和建設株式会社は、今年で創業77年目の老舗企業です。近年は働き方改革などを推進したことで働き手の多様化が図られ、女性社員の割合も3割にまで増えています。また、8年前に広報PRを立ち上げ、現在はさまざまな角度からプレスリリースを配信することで、メディアからの注目も集めている企業です。
本記事では、広報PRを立ち上げた北纓真弓さんに登壇いただき、どのような点を意識して広報PR施策を行っているのか、プレスリリースの事例を踏まえてお話いただきました。
三和建設株式会社(大阪府大阪市):最新のプレスリリースはこちら
オープンな建設会社をめざしスタートした広報PR活動
当社は1947年に創業し、今年で77年目を迎えた総合建設会社です。売上高は132億円、社員198名のいわゆる中小ゼネコンで、建設業界では珍しく女性社員が3割を占めています。長らく広報PRの専門部署はなかったのですが、2016年に社外への情報発信を強化することになり、広報PRの専任担当として私が入社しました。
入社直後に社内に伝えた3つのメッセージ
月に1本のプレスリリース配信と、月に15回のSNSやホームページでの情報発信がミッションとして与えられていました。しかし、これまでにない広報PR担当ということもあってか、最初は何を聞いてもなかなか心を開いてもらえないという状況。まずは社員のみなさんとのコミュニケーションを増やすことから始めました。例えば、社内のいろいろなイベントに参加して写真を撮ったり、プロジェクトの開始からチームに加えてもらったり。そのなかで「この3つだけ協力してください」と、メッセージを伝えつづけたんです。
- 社内の情報を教えて!
- みなさんの写真を撮らせて!
- 私も仲間に入れて!
初めてプレスリリースを書いてほしいと依頼をもらったときは、飛び上がるほどうれしかったですね。今では「広報PR担当者に相談すればなんとかしてくれる」と頼っていただける関係になってきました。それから、メディア掲載の成果も出てきて、入社当初が年間15件だったところ、今年は85件(2024年11月時点)と、少しずつ増えてきています。
毎日200名分の日報からネタを探す
プレスリリースのネタを集めることに苦労されている方も多いと思いますが、私の場合は約200名の日報に欠かさず目を通すことで情報を得ています。弊社は独自の日報システムで、全社員が書き込め、読むことができるという仕組み。建設会社ですので現場の職員が多く、基本的に直行直帰となるため、日誌が貴重な情報源なんです。
また社長との会話も大事にしていて、少なくとも月に一度は会議を設定し、役員会などで出た議題を確認。会議がない日も一度は社長との会話を意識していますね。私が発言することはイコール会社の発言となるので、常に社長と認識を擦り合わせておくことが、広報PRとして重要なことだと思っています。
広報PR活動で「3K」イメージの払拭を目指す
私が考える当社での広報PRの役割は、建設業のイメージを変えるための情報を発信することです。建設業はいまだに「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが根強く、さらに最近では人手不足の問題で注目されることも多いため、就職先としては人気とはいえません。大学で建築を学んだ学生も、なかなかこの業界に入ってくれないんです。でも、子どもの頃の夢として「大工さん」は今も人気。当社にはプロパーで入社して40年以上やりがいを持って働いている社員もいます。彼らにフォーカスして建設業のことを伝えることで、業界や仕事の魅力を知ってもらい、この仕事をやってみたいと思ってくれる人が増えることにつながると思うんです。それを信じて広報PR活動をしています。
事業とコーポレートの両面からプレスリリースを配信
プレスリリースは、年度の頭に広報PRの年間計画を立て、それに従って配信しますが、入社当初の「月に1本のプレスリリース配信」という目標は、実は最近ようやく達成できるようになってきました。年間計画はカレンダー式にしており、社内イベントや社会的ニュース、メディアで組まれる特集、そして『PR TIMES MAGAZINE』の「今日は何の日?」の中から当社に関係がありそうな日をピックアップして、毎年変わる注力テーマに合わせた構成にしています。当社のプレスリリースは主に事業関連とコーポレート関連の2種類。ここからは、メディアに多く取り上げていただいた事例をいくつか紹介していきます。
参考:今日は何の日
三和建設の事業に関するプレスリリース事例
事例1.危険物倉庫着工のプレスリリース
事業系のプレスリリースとして、代表的なのは着工時や完工時などお客さまの建物に関するニュースです。お客さまからの引き合いが増えているという事実はあったものの、それだけではニュース性に乏しいなと思い、プレスリリースでは建築費の高騰や企業のコンプライアンス意識の高まりなど、危険物倉庫が増えているさまざまな背景をデータを用いながら解説した社会性がフックとなり、業界紙への掲載7件、当社ホームページへのアクセス1.2倍、お問合せも4倍に増加したという成果につながっています。
事例2.社員寮建設の新ブランド発表のプレスリリース
こちらも事業系のプレスリリースで、社員の離職防止を目的とした社員寮建設「HuePLUS」という新ブランドをお知らせするために配信したものです。実際にある当社の社員寮と新ブランドをつなげてPRしたかったのですが、伝えたいことがありすぎて情報量が膨大になってしまったんです。そこで、新ブランド、社員寮の事例、ここ4年間新入社員の離職ゼロという実績の3つの切り口に変えて配信することにしました。こちらも社員寮を取り止めている企業が多い中での発表という意外性、離職防止という社会性がフックとなり、建設系をはじめ、一般のメディアにもたくさん取り上げていただいた事例になります。情報量が多くて分割して配信することは結構あるので、ニュース性を見いだしたうえで全配信の3割ほどを分割してリリースしています。
参考:三和建設、企業の「ひと」に関する課題を解決する完全オーダーメイドの社員寮建設ブランド「HuePLUS」10月1日 リリース
参考:三和建設、離職率50%からの逆転~同期のつながり育む社員寮「ひとづくり寮」で入社3年後の離職がゼロに~
参考:三和建設、経営理念「つくるひとをつくる」策定から10年 ~「しぼれば拡がる」ブランディングで創業以来最高売上~
三和建設のコーポレートに関するプレスリリース事例
事例3.高校生新卒採用の初任給引き上げのプレスリリース
社内のデータを見つめ直すきっかけになったコーポレート系のプレスリリースです。当社の高校生の採用について調べてみると前回はなんと14年前、さらに初任給の引き上げは21年ぶりでした。しかし、高校生採用の初任給を上げただけでは、ニュース性は乏しいので、高校生採用の独特の慣習や離職率の高さなど当社が引き上げを行った意図と合わせて伝えた事例です。データを用いてプレスリリースで配信したことで、大手新聞とテレビに取り上げていただいた事例です。
参考:三和建設、高校生新卒採用の強化にともない初任給15%(※1)引き上げを実施
事例4.熱中症対策に関するプレスリリース
夏場の熱中症対策の一環として、「かき氷ステーション」を設置したり、「しおゼリー」を開発して販売したりしてきました。これらの取り組みを知っていただけるよう、またなぜそこまで熱中症対策をするのかを説明するために、調査リリースや販売数についてのプレスリリースを定期的に配信。ネーミングのユニークさ、年々暑さが厳しくなっているという社会的な背景から多くのメディアに取り上げていただきましたし、熱中症対策ゼリーは一般の方から静かに拡がっていきました。
参考:三和建設、今年も建設現場にかき氷ステーションを設置し、熱中症対策を強化~身体を内部から効率よく冷却するアイススラリーの効果も~
参考:白浜のアドベンチャーワールドにて「ゼネコンがつくったしおゼリー」試験導入スタート
事例5.女性活躍に関するプレスリリース
最後に紹介するのは女性活躍に関するプレスリリースです。私が入社した8年前は、結婚を機に退職する女性がほとんどで、会社全体としても女性社員比率14%未満という状態でした。稀に産休から復帰される方はいたものの、当然お子さんの体調によって休む日も当然あり、周囲に申し訳ないなどの理由で辞めてしまうケースがほとんどでした。しかし、女性社員の定着につながる制度を少しずつ整えていき、現在はようやく30%にまで引き上がっています。
今回のプレスリリースでは、彼女の活躍を伝えることで「女性に現場は難しい」というアンコンシャス・バイアスに対し気付きを与えたい、年齢や性別に関わらず挑戦できる業界であることを知ってもらいたい、と思い配信しました。こちらは一般紙から専門誌、テレビのドキュメンタリーでも取り上げられ、大きな注目を集めたこともあり、シリーズ化して継続的に配信するようにしています。
参考:三和建設、創業76年目で初の女性所長による建物が竣工〜社員の成長と可能性を信じ、誰でも、何歳からでも挑戦できるステージを〜
参考:三和建設、若年層の「タイパ」志向に着目~女性若手現場監督の1日に密着したYouTube動画が4ヶ月で20万再生~
参考:三和建設 40 歳代女性社員が15 時間の作業をゼロに!同業他社巻き込みDX 化勉強会立ち上げから1年、リスキリング実践する7人育成も
まとめ:業界の課題に焦点を当てメディアの注目度を高める
ひとりで広報PRを立ち上げ、建設業界のイメージを変えるべく奮闘されている北纓さんのお話は、広報PR担当者にとって大変勇気づけられる内容でした。最後に「一番大事にしているのは、社員がどんな思いで働いているのかを注意深く観察すること。観察して、質問して、追いかけていくことで、社外に発信すべきネタを発掘することができる」と、広報PRにかける熱い思いを語ってくれました。
三和建設株式会社・北纓さんからの広報PRにおける学びは、以下の5つのポイントです。
- 社内でのコミュニケーションを密に図り、関係を構築することが大切
- 発信ネタは能動的に取りに行く(日報などの社内資料からも収集できる)
- 業界の課題に目を向けたプレスリリースはメディアの目を引きやすい
- 背景情報はデータを使って説明することで、客観性や信ぴょう性が高まる
- プレスリリースは複数回に分けたりシリーズ化するのも効果的
BtoB企業や、業界自体の課題を解消したい、業界のイメージを変えたいと考える企業の広報PR担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
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