アンコンシャスバイアスとは?具体的な事例・5つの対策方法を紹介

広報業務では、幅広い相手に文字通り「広く報じる」にあたり、発信するメッセージの内容や表現に注意が必要です。

企業や組織の代表として発信するメッセージも、人間が発するものである以上、知らずしらずのうちに書き手の考えや固定概念が反映されてしまうことがあります。せっかく素敵な情報を発信しても、想定している意図と異なる内容で伝わると、理想とする結果が得られないばかりか、信頼を失い、今後の活動の機会を大きく損なうリスクにもつながりかねません。

本記事では広報業務を行う上で特に気をつけておきたい「アンコンシャスバイアス」について、具体的な事例とともに解説していきます。

アンコンシャスバイアスとは?

アンコンシャスバイアス」とは、さまざまな価値観の存在を尊重するなかで非常に大切な概念です。とはいえ、初めてこの言葉を目にする方もいるでしょう。いったいどのような意味で、具体的にはどういったことを指すのでしょうか。

アンコンシャスバイアスの意味

「アンコンシャスバイアス」とは、直訳すると「無意識の偏見」。さまざまな環境や集団に囲まれて生活するうち、知らずしらずのあいだに個人の意識に刷り込まれる「価値観の偏り」を指します。

人の価値観は大なり小なり、他者や環境からの影響を受けて培われるものです。それは、かけがえのない個性を生み出す一方で、摩擦を生み出すきかっけとなります。

昨今、企業や組織などの広報を発端とする炎上騒ぎの多くは、この「アンコンシャスバイアス」を起因とするものが少なくありません。 たとえ、考えそのものを直接的に表明するものではなくても、偏った考えのもとに発せられたメッセージは、それを受け取る人々を傷つけてしまう可能性があります。公的なメッセージである広報においては、アンコンシャスバイアスについて十分に理解しておかなければなりません。

アンコンシャスバイアスの具体的な事例

アンコンシャスバイアスの身近な例には以下のような考え方があります。

  • 赤いランドセルは女の子用、黒いランドセルは男の子用
  • 血液型がAB型の人は、変わった性格の持ち主
  • 雑用は新入社員の仕事
  • 育児中の女性社員に営業の仕事は任せられない
  • 一定の学歴を経ていない人は知的な能力に乏しい

また「性別や年齢、職種、職域によって接し方を変える」ということも、アンコンシャスバイアスにあたります。

生まれつき持った身体的な特徴は、その人本来の性別や性格を決めることには必ずしもつながりませんし、出自がその人の優劣を直接的に決定づけることはありません。ましてや、それに基づく振る舞いを一方的な価値観のもとに決めつけることは正しくありません。ある人にとっての「常識」は、そうでない人にとって「非常識」であると認識することが大切です。

アンコンシャスバイアスが組織にもたらす悪影響とは?

アンコンシャスバイアスはコミュニケーションの価値を大きく損なうだけでなく、関わる人々同士の信頼関係をお互いに大きく低下させ、正しい関係の構築を妨げるもととなります。

アンコンシャスバイアスが組織にもたらす悪影響を確認しておきましょう。

アンコンシャスバイアスが組織にもたらす悪影響

個人に対する影響

偏った価値観をもって相手に接することは、お互いのコミュニケーションや、言葉の認識に埋められない溝を生むことにつながります。結果、仕事に対するモチベーションが低下したり、その原因となるストレスや不信感を生み出しやすくなり、さらに信頼関係が失われるといった悪循環が生まれてしまいます。

組織に対する影響

アンコンシャスバイアスを持つ人の振る舞いは、対個人だけでなく組織全体の体外的な信用を大きく低下させることにつながり、ブランドイメージを毀損するリスクをはらんでいます。

たとえ発端が、ひとりの行動であったとしても、認識の偏りが組織全体に及んでいる場合、組織全体の対外的な信用は大きく失われてしまいます。組織においては、自分以外の人々もアンコンシャスバイアスのかかった状態になっていないか、お互いに確認し合う習慣づくりが重要だといえるでしょう。

アンコンシャスバイアスの代表的な例

アンコンシャスバイアスに対して、具体的にどのような考え、行動に気をつけていくべきなのでしょうか。

次に、アンコンシャスバイアスにつながる代表的な心理バイアスの例を7つ挙げて説明します。

どれも特別なものではなく、日常生活で思い当たることの多いものです。広報活動を行う際、また広報としてメッセージを発する際、これらにあたる考えをしていないか、そう受け取られてしまう可能性のある表現を用いていないか、つねに照らし合わせる習慣をつけていきましょう。

正常性バイアス

正常性バイアスとは、事態が悪化しても「まだ大丈夫」と楽観的に考え、適切な判断を見失うことを指します。

具体的には、大きな災害が起きても「そのうち収まるだろう」と考えて避難のタイミングを逃したり、大きなトラブルの発生を予感しながらも「以前もなんとかなったから、今回も大丈夫だろう」と考え、未然に防ぐ対策が取られないまま問題が顕在化するというものです。いわゆる「性善説」が悪い方へ作用したものともいえます。

ハロー効果

ハロー効果とは、好感を抱いた人物の考えや行動を、疑うことなくすべて肯定してしまうことを指します。

好感を抱いた人の行いを肯定することは自分自身を肯定する気持ちにもつながりやすく、たとえ違和感を抱いたとしても「この人が言うならば間違いない」「この人を疑うのは間違っている」という気持ちで、違和感を押し留めてしまいがちです。その結果、思考が相手に大きく依存し、主体的な判断ができなくなってしまいます。

ハロー効果を回避するためには、「この人がどのような背景を持ち、どのような立場にあるのか」「どのような意図をもってメッセージを発しているのか」「その行動を通じて、何を達成しようとしているのか」といった洞察の気持ちを持って向き合うことが大切です。

確証バイアス

確証バイアスとは、自分の信じる考えを補強する材料ばかり集めてしまい、客観的な視点を欠いていくことを指します。

たとえば、「Aという考えが優れている」という論説に対して、「Aにはこのような問題点がある」「Bという考えも存在する」といった反証材料に目を背け、「Aをよいという人がこれだけいる」「著名人もAという考えだ」という都合のよい材料ばかりを取り入れることで、考えの偏りはますます強まってしまいます。

確証バイアスを回避するためには、正反対の論証を意識的にあたり、自らが確かめようとする考えと同じ以上の否定材料に触れ、考えのバランスを中立に保ったうえで、客観的に見て有効だと思われる情報を取捨選択し、判断していくことが大切です。

ステレオタイプバイアス

ステレオタイプバイアスとは、「男性は強くて決定権がある」「女性は弱くて知識に乏しい」など、特定の性別や属性、職業などに対する偏ったイメージ(ステレオタイプ)にもとづいた決めつけを行うことを指します。

「AといえばBなのだから、AはBだ」という考えは、相手の存在を認めないばかりでなく、「AといえばBでなければならない」と、自分自身の考えをも大きく縛り付けていくことになります。

ステレオタイプバイアスを回避するためには、「そうではない場合」にも意識的に目を向け、必ずしもひとつの価値観だけでは判断できないケースがあることを念頭に置くことが大切です。「自分にとっての常識は、他の人にとっては非常識である可能性がある」ということを常に考えるようにしましょう。

権威バイアス

権威バイアスとは、上司や組織の長、特定の肩書を持つ人の意見はつねに正しいと思い込むことを指します。

「有名なこの人が言っているのだから、間違いない」といった考えにはじまり、とくに組織においては「社長が言うことなのだから、間違っているはずがない」「この組織でこれだけの地位の人なのだから、きっとその通りだ」と、ついつい考えがちです。

権威バイアスを回避するためには、価値観や物事の前提はつねに変化しており、同様に、同じ人物でも考え方がよくも悪くも「変化していく」ものだという考えが欠かせません。とくに価値観の変化が加速し続けている現代においては、長年にわたって支持されてきた権威が、ものの数日、数ヵ月でガラリと変化することも決して珍しくありません。常に考え方をアップデートする必要があるといえるでしょう。

集団同調性バイアス

集団同調性バイアスとは、所属する集団のなかに存在する価値観や行動に、個人としても影響されてしまうことを指します。

具体的には、「社長がそういうのなら、そうなのだろう。違う考えを抱くことは、自分が間違っているからだ」と、組織の考えと自らの考えを鏡写しにしてしまう例が挙げられます。集団同調性バイアスにかかる要因には、感情的な要素も少なからずあり、対抗する考えや存在に対して、ついつい客観性を欠いた衝動的な行動にも出てしまいがちです。

組織にとっては「常識」でも、その外では必ずしもそうとは限りません。集団同調性バイアスを回避するためには、組織や集団の考えに対して反証的な視点を意識的に設定し、「その考えに対して否定的な立場から見た場合、どのように感じるか」という考えのものもと、メッセージを検証していくことが大切です。

アインシュテルング効果

アインシュテルング(ドイツ語で「心構え」)効果とは、これまでの考えに固執し、新たな考えを受け入れないことを指します。

年長者が「若い人は何もわかっていない」と頭ごなしに否定したり、「営業部署の人間は開発部署の人間の都合を何も考えていない」といった組織間の対立などにも見受けられます。

背景の理解なしに相手を一方的に否定することは、自らの不安を一時的に遠ざけることができたとしても、物事の本質的な解決にはつながりません。

アインシュテルング効果を回避するためには、目の前の相手に対して、ひとりの人間としてきちんと向き合い、「なぜこのような考えを持つのか」「その考えは、相手のどのような背景から構成されているのか」、そして「相手にとって、もっとも大切としていることは何か」をきちんと見極め、受け入れる姿勢が大切です。

アンコンシャスバイアスを生み出してしまう要因とは?

アンコンシャスバイアスは、「行き過ぎた自己防衛」から生まれがちです。ときに人は、自分と異なる価値観や批判意見を「自分自身に対する否定」と混同し、自分を無意識に守ろうとしてしまいます。

特定の考え方に偏ってしまってしまわないためには、価値観の変化や否定的な意見の存在を受け止め、「無意識の偏り」に対してつねに自覚的でなければなりません。アンコンシャスバイアスを防ぐためには、価値観と人格を切り離して考えることが重要なのです。

アンコンシャスバイアスを生み出してしまう要因

アンコンシャスバイアスへの5つの対策方法

最後にアンコンシャスバイアスを防ぐ5つの対策方法について紹介します。

1.対抗意見にも目を配り、自分の判断が偏っていないかチェックする

アンコンシャスバイアスを防ぐ前提としてもっとも大切なのは、「自分の考えは偏っているのではないか」という視点を持つことです。不必要に自分の考えやメッセージを否定しすぎる必要はありませんが、それでも「誰かを傷つけてしまう可能性を持っていないだろうか」と、相手の立場にたった検証は欠かせません。

考えのバランスを取るために有効なのは、自分の考えと正反対ものや、批判的な視点を持つ意見に目を配ることです。全部とは限りませんが、批判的な意見の多くは、自分がこれまで気が付かなかった考えや視点の存在を示唆する貴重な材料となります。

「まったくことなる立場から見たとき、自分の判断はどう見えるだろうか」という考えのもと、微調整を繰り返していくことで、自分の判断の偏りを最小限に抑えることができ、それを受け取ってもらえる相手の数を増やしていくことができます。

2.肩書のみを信頼の担保とせず、客観的な立場からの視点を意識する

組織や集団の長であったとしても、その判断がつねに正しい方向性を指しているとは限りません。特定分野の専門家や、その経験者を名乗る人であっても同様です。肩書はあくまで対外的な役割や立ち位置を示すものであり、その人物の人格や考えの確実性を絶対的に保証するものではないという点に注意する必要があります。

社会や人の価値観は常に変化しつづけています。数年前にはあたりまえとされてきたことが、現在は通用しないという場合も少なくありませんし、同じ人物の考えも、時間や状況によって変化していきます。「この肩書の人が言うのだから間違いないだろう」という考えからは脱却し、反証材料や批判的な意見にも目を通しながら、客観的な立場からの視点を意識することが大切です。

3.多様な考えの存在を認め、常にひとつ以上の角度から物事を見る

人の数だけ、さまざまな考え方が存在します。自分を含め、ある人々にとって「常識」とされることは、ほかの人々にとって「非常識」かもしれません。「AはBであるべき」「CといえばD」といった、特定の考え方を前提とするメッセージは、多くの場合において反発を生み出すもととなります。円滑なコミュニケーションにおいて大切なのは、「世の中には多様な考えがある」という考えです。

不必要に自分の考えを抑圧する必要はありませんが、「このメッセージを、他の立場の人々はどう受け取るだろうか」とう考えを念頭に置くことは必要です。公にメッセージを発信する場合は、自分のなかに「他者」を存在させ、常にひとつ以上の角度から物事を見ることを心がけていきましょう

4.組織や集団とは関係のない立場からの視点を持っておく

組織や集団に所属していると、個人の考えも組織に強く影響を受け、同一化してしまうことが少なくありません。とくに組織や集団を代表する広報という立場においては、その傾向がさらに強くなるでしょう。しかしながら前にも挙げた通り、自分たちにとっての「常識」が、外の人々に対しても同じものだとは限りません。

外に向けてメッセージでは、無数の異なる価値観のもとにメッセージが見られることを意識する必要があります。組織や集団の考えをいったんリセットしてフラットな視点を持ち、まったく組織と無関係な立場から見た際に引っかかる表現がないか、自分たちのメッセージが、ある価値観や属性の人々を否定し、傷つけていないか、つねにチェックを繰り返す姿勢が大切です。

5.自分と異なる価値観を否定せず、その背景を考える

自分と異なる価値観を目にしたとき、場合によっては不快感を感じることもあるでしょう。しかし、異なる意見を頭ごなしに否定するだけでは、自分の不安から一時的に逃れることこそできても、本当の意味で問題の解決には繋がりません。

自分にとっての「常識」が他者にとっての「非常識」である場合があるように、自分にとっての「非常識」が、他者にとっては「常識」とされることも少なくなりません。人の価値観は突然に生まれるものではなく、そこに至るまでに、必ず何かしらの背景が存在するのです。

私たちがとるべき行動は、価値観や属性などによって目の前の相手を決めつけることではありません。相手がなぜその価値観に至ったのか、そこにはどのような背景があるのかを洞察し、しっかりと受け入れたうえで行動することが、お互いの信頼へとつながります。

「そうではない人もいる」という視点を持つことが大事

広報業務において大切なのは、さまざまな価値観を持つ人々に、自社の提供する価値を理解してもらうことです。

「すべての人にとって幸せなこと」は、基本的にはありえません。アンコンシャスバイアスについて理解をし、「ある人にとってはポジティブなことも、他の人にとってはネガティブなものである」という考えを持つことがスタートです。

そして、「他の立場の人は、この情報はどう感じるだろうか?この表現は問題ないだろうか」などと異なる視点からのチェックを繰り返すことで、トラブルのリスクを可能な限り減らしていきましょう。

この記事のライター

天谷窓大

エンタメ・広告・PRを得意分野とするライター。構成作家・イベントディレクターとしても活動しており、大規模フードフェスやライブイベントなど、大規模イベントの企画運営するほか、広報全般を担当。「取材する側」と「取材される側」両方の立場を長らく経験してきました。自ら当事者側として蓄積してきた知見を活かし、広報担当者のみなさんのお役に立ちたいと考えています。

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