昨今急激に普及している「生成AI ChatGPT」は、広報PR活動において非常に有用なツールです。プレスリリース作成時の校閲を依頼したり、SNS用の投稿を提案してもらったりできます。
一方で、確認不足による誤情報の発信や、機密情報の漏えいといったリスクがある点には要注意。広報PR業務を効率化し、担当者としてのスキルアップにつなげるためにも便利な生成AIの活用方法・注意点を解説します。
生成AI ChatGPTが広報PR活動に与える影響とは
AI技術が発展する昨今、ChatGPTをはじめとする「生成AI」が急激に普及しています。メールなどのテキストや画像を依頼すると、数秒単位で自動的に作り出せるツールです。
多様な業界・業務で生成AIの導入が進んでおり、広報PR活動はそのひとつ。生成AIのリリースをきっかけに、福利厚生として有料ツールを取り入れた事例もあります。
メールやプレスリリースの作成に役立つため「広報PR業務が各段に楽になる」ともいわれる便利な生成AIですが、システムの得意・不得意を理解したうえで活用することが大切です。
特に、セキュリティに関するリスクヘッジや、広報PR担当者としてのリテラシーはしっかりと備えておきましょう。
生成AI ChatGPTを広報PR業務に活かす方法9選
広報PRでは、市場調査から文章の校閲、SNS投稿用コンテンツの作成まで幅広い業務でAIを活用できます。具体的な活用方法を押さえておきましょう。
1.文章の校閲と改善
プレスリリースの記事作成などで役立つのが、文章の校閲です。「以下の文章を校閲してください」という指示とともにチェックしたい文章を送れば、誤字脱字を修正した文章が瞬時に確認できます。
また、「文章の問題点の提案」や「文章の改善」といった指示を送ることで、プレスリリース全体での問題点を明らかにし、さらによいコンテンツへと仕上げていくことも可能です。
例えば「あなたは新聞記者です」と設定を与えたうえで「プレスリリースをレビューし、改善点を挙げてください」と指示すると、新聞記者の視点での改善案が獲得できます。
1,000字以上にわたる文章を、数分で校閲・改善できる点は生成AIならではの魅力といえるでしょう。長い文章を箇条書きにまとめたり、記号を追加して視認性を上げたりといった提案もできるため、プレスリリース作成のクオリティアップにも有効です。
2.市場調査
生成AIには、特定の分野における市場調査を依頼することもできます。例えば、農業関連の広報PR業務に市場調査が必要になったとき、「日本の農業の市場規模を調査してください」という指示を出すと、具体的な動向を知ることが可能です。
ChatGPTにおいては有料版の「GPT-4 Web browsing」機能を利用する必要がありますが、Microsoft BingやGoogle Bardなど無料でWeb検索できるツールもあります。
市場調査と同時に参照元の提示を依頼すると、情報源が明確になりファクトチェックの手間も省けるでしょう。
生成AIのみで調査がまかなえない場合は、リサーチしたい業界に関する機関・団体のホームページを提示してもらい、市場調査に活かす方法もあります。
ただし、無料版のChatGPTのように検索機能がない生成AIもあるため注意が必要です。
3.課題のピックアップ
市場調査をもとに、課題をピックアップしてもらうことも可能です。「日本の農業における課題を教えてください」と依頼すると、後継者不足や生産量の低下、産地の偏差といった問題点が提示されます。
プレスリリースなどで業界について言及する際、このような課題と、解決に向けた取り組みを併記することで具体性も増すでしょう。
4.ファクトチェック
市場調査をはじめ、数字を用いた情報を記載する場合には、ファクトチェックが重要です。有料版のChatGPTのWeb検索機能を使えば、情報に誤りがないか、どのサイトを参考にした情報なのかといった事実確認も容易にできます。
ただし、生成AIによるファクトチェックはあくまで工程のひとつであり、最終的には広報PR担当者のチェックが必要である点は理解しておきましょう。
5.ネーミングやキャッチコピー候補
商品やイベント企画のネーミングとキャッチコピーを考える際にも、生成AIが活躍します。イメージしている言葉に合ったネーミングを依頼することで、複数の候補を挙げてもらうことが可能です。
例えば、「『幸せ』をイメージさせる言葉を10個挙げてください」「『幸せになるイベント』であることがわかるキャッチコピーを考えてください」といった指示を出すと、多様なパターンの候補が提案されます。
ユニークな言い回しを希望する場合は「『幸せ』という言葉を使わずに『幸せ』を表現してください」「幸せな人が出す音や擬音を使って『幸せ』なキャッチコピーを提案してください」といった少しひねった指示を試してみるのも有用です。
ブランドのネーミングを提案してもらったり、企画・商品のキャッチコピーを決める際の参考にしたりできるでしょう。
類語や同義語を検索する手間が省けるだけでなく、さまざまな言葉の使い方・言い回しを知る機会にもなる、生成AIならではの活用方法です。
6.企画の問題提起と解決策の提案
広報PR業務において企画検討中の段階であれば、生成AIを用いて企画内容の問題点・解決策を提案してもらうこともできます。
「以下の企画に関する問題点を挙げてください」という指示とともに、企画内容を記載。期間限定イベントを例に挙げると、営業時間・料金・開催期間・特典などに対して問題点が提起されます。
生成AIが考える問題点をピックアップし、企画内容を再考することで、プロジェクトの見直しや改善といった作業が可能です。
企画段階では気付かなかった問題を思わぬ視点から指摘してもらえるため、考慮の漏れを防ぐきっかけにもつながります。アイデアが煮詰まったときに生成AIを活用すると、解決の糸口になることもあるでしょう。
7.ビジネスメールの作成
生成AI ChatGPTは、ビジネスメールをはじめとするメール文章の作成にも活用できます。「〇〇に関するビジネスメールを作成してください」と指示すると、ビジネスシーンに適した本文を獲得することが可能です。
簡単な指示内容では形式的な構文と堅い口調で生成されるケースがほとんどなので、なるべく詳しい情報提供を意識しましょう。
例えば「あなたは農業ロボットを開発する企業の広報PR担当者です。ロボットの専門雑誌記者に、自社の取材を提案するメールを作成してください」というように、生成AIの立場・役割と、相手の設定を与えることが重要です。
また、プレスリリース配信と合わせて、各メディアに送付するメールを作成してもらうこともできます。
プレスリリースを読み込ませたうえで「プレスリリースをメディアに送付するメールを作成してください。メール本文には、プレスリリースを100文字程度に要約した内容も記載してください」といった指示で、メディア宛てに有用なメール本文が獲得できるでしょう。
8.SNS用の投稿内容やハッシュタグを生成
広報PR業務でTwitterを運用している場合は、投稿用のコンテンツを生成してもらうのもよいでしょう。プレゼントキャンペーンに関するツイート内容を依頼したり、ブログやSNSへの流入が見込める投稿を考えてもらったりできます。
プレスリリースの内容を読み込ませたうえで「このプレスリリースを紹介するツイートを検討します。プレスリリース内からパンチラインをひとつ引用し、ツイートを考えてください」といった指示が有用です。
運営しているツイートとトンマナが合わない場合は、過去のツイートを数個貼り付けてから再度依頼するとよいでしょう。
9.企画書や社内報の作成
企画内容が固まっているのであれば、ChatGPTなどを用いて企画書にまとめてもらうのもおすすめです。
企画の背景・目的や目標、プロジェクト内容や予算などを明記したうえで「企画書を作成してください」と指示すると、条件に応じた企画書が瞬時に生成されます。ただし、生成された企画書からさらなる調整は必要です。
また、企画書・社内報に適した記載事項がわからない場合は、生成AIにテンプレートを依頼し、項目を埋めていってもよいでしょう。「社内報に記載すべき項目を提示してください」と指示すれば、社内報作成時の記載漏れ防止にも有効です。
このように、テンプレートの提示から企画内容の問題提起、校閲までを生成AIに任せることで、完成までの業務時間を大幅に短縮できます。
生成AI ChatGPTを広報PR業務に活用するときの注意点やリスク
生成AIは広報PR業務において非常に便利なツールですが、活用する前に注意点・リスクを理解しておくことが大切です。
1.誤情報の発信を避けるため、人間がファクトチェックする
記事の校閲や参照元の提示を生成AIに任せた場合は、公開前に必ず人の手でチェックしましょう。記載内容や公開時期を問わず、情報の正確性を徹底する必要があります。
万が一、誤った情報を発信してしまうと、読者やメディアの混乱を招くかもしれません。誤情報の内容によっては、関連の事業や企業が風評被害を被る可能性も。
広報PR活動だけでなく企業全体の信用を下げる結果にもつながるため、生成AIによるファクトチェックは途中段階の作業として捉えましょう。
2.個人情報や機密情報の漏えいを防止する
生成AI ChatGPTのデメリットや大きなリスクとして考えられるのが、個人情報・機密情報の漏えいです。生成AIが企業情報などを学習することで、社外の利用者に情報を提供してしまう可能性があります。
企画書や社内報のように、自社情報が多く盛り込まれているコンテンツを作成する際には、特に注意が必要です。
情報漏えいの防止策としては、今後は法人向けのChatGPT Businnesプランなどによって、安全に情報を取り扱うシステムの拡大が期待されています。
個人の独断による情報入力はリスクが高いため、社内のガイドラインを作成したうえで活用していきましょう。
3.著作権を侵害する可能性
インターネット上のあらゆる情報をもとに提案する生成AIの活用においては、著作権に関する知識も重要です。
例えば、イラストレーターが作成した著作物を無断で掲載し、プレスリリースを配信した場合、著作権の侵害にあたります。著作物そのものでなくとも「既存のイラストに似ている」「キャラクターに酷似している」といった理由でトラブルになる可能性も。
キャッチコピーや企画タイトル、画像・イラストなどを生成AIで作る場合は、完成した素材を広報PR用として使えるかどうか入念に確認しましょう。
4.ブランドイメージの一貫性を徹底する
生成AIを活用することで、プレスリリース作成時の校閲や改善などを任せられます。業務を効率化し、自身の学びにつなげるためにも有効ですが、自社やブランドのイメージを崩さない意識も必要です。
ブランドイメージに沿わない文章をそのまま掲載し、認知拡大や販促効果を狙うのは適切とはいえません。広報PR担当者としての理念・こだわりを持ったうえで、文体を調整したり、情報を追加したりしましょう。
特に法人・個人を問わず多くの人々が読むプレスリリースにおいては、生成AIによる提案のよい部分と不要な部分を見極め、取捨選択することが大切です。
生成AI ChatGPTの普及でこれからの広報PR担当者に求められること
今後、生成AIを活用した広報PR活動は、さらに普及していく見込みです。担当者として有効活用するためには、リテラシーを高め、生成AIと広報PR業務の関係性を理解する必要があります。
1.生成AIのリテラシーを高める
生成AIを効率的に使うためには、生成AIそのものがどのような仕組みで動いているのかを学ぶことが重要です。テキスト・画像を問わず、人が望んでいる通りの提案へと誘導させる近道を知らなければなりません。
例えばプレスリリースの作成を依頼する場合、訴求したい商品・サービスや概要、販売期間といった情報を提示します。指示する条件が細かくなるほど、求めている内容に近づきやすいと考えてよいでしょう。
このとき、個人情報や企業の機密情報には細心の注意を払うことが大切です。生成AIのトレーニングデータに関する理解を深め、入力情報の安全性を確保したうえで活用していきましょう。
2.社内で生成AIの活用ルールを徹底する
セキュリティ対策を講じながら有効に使うには、生成AIに関する社内ルールを決めておくのがおすすめです。基本的な操作からセキュリティ、入力可能なデータに関する情報まで網羅したマニュアルを備えたほうがよいでしょう。
社内ルールを徹底することで、広報PR活動以外の業務でも生成AIを活用しやすくなります。必要であれば、生成AIに関する社内研修会を開いたり、福利厚生として有料ツールを配布したりすることで企業全体の業務効率向上も期待できます。
3.生成AIで広報PR業務のスキルを磨く
生成AIを使ううえで意識したいのは、あくまでも補助的なツールであるという点です。広報PR活動においてさまざまな業務を任せられますが、すべて委ねてしまうのは賢明とはいえません。
人の手では時間がかかる作業を代わってもらったり、短時間で思いつかないアイデアを提案してもらったりできるのが、生成AIならではのメリット。
生成AIの提案と回答を自分の中で蓄積し、新たな価値を生み出してプロジェクトの発案につなげる企画力や、知識・経験を磨き上げることこそが、広報PR担当者に求められる成果といえるでしょう。
生成AI ChatGPTのリテラシーを高めて広報PR業務を効率化しよう
テキストや画像、音楽などを作成できる「生成AI」は、広報PR活動においても有用なツールです。プレスリリースをはじめさまざまなシーンで役立ちますが、誤情報や情報漏えいといったリスクを理解しておく必要があります。
生成AIのリテラシーを高めることで、安全性を確保しながら広報PR業務を効率化できるでしょう。自身の専門知識をさらに蓄えて解釈を磨いたり、生成AIの提案によって新たなアイデアを発見したり、広報PR担当者としての業務効率化・スキルアップに役立ててください。
広報PR活動における生成AIに関するQ&A
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