自社のプレスリリースを配信する際、広報PR担当者はできるだけ他社との差異化を図り、より多くの人に情報を周知したいと考えるのではないでしょうか。
なかには目を引くプレスリリースにするために「日本初」「No.1」などの表現を取り入れたいと考える人もいるかもしれません。確かにそのような表現は、読み手の興味や関心を高める効果があります。しかし、事実を書くことが大前提のプレスリリースにおいて、「日本初」などの表現は認められるのでしょうか。
本記事では、プレスリリースで使用を避けるべき表現とその理由、適切な表現でインパクトを与えられる方法について解説します。
インパクトを与えるために「日本初」「No.1」などの最上級表現をしてもよいのか
「日本初」「No.1」などの表現は、自社の商品やサービスを印象付ける効果があり、一見目を引く良いキーワードに感じられるかもしれません。しかし、こうした表現は軽率に使用するべきではありません。ここでは、プレスリリースでの使用を控えるべき表現について理由とともに説明します。
「日本初」「No.1」などの表現を、最上級表現といいます。これらの表現を使う際には客観的・社会的根拠や裏付けが必要です。根拠や裏付けがないまま最上級表現を使用した場合、生活者が不利益を被る可能性があり、自社の社会的信用を失うことにつながります。さらに、後に説明するように法律に触れてしまう恐れもあるのです。
PR TIMESでは、メディアや生活者など、あらゆるステークホルダーに安心して情報を活用してもらうために、プレスリリースに記載する際の「日本初」「最安値」などの最上級表現には、必ず客観的根拠を併記するよう規定を定めています。
参考:(2022/6/16新設)日本初や最安値等の最上級表現
不当な表現は「景品表示法違反」の「優良誤認表示」「有利誤認表示」に該当する
もし客観的な根拠や裏付けがないままプレスリリースに最上級表現を載せてしまった場合、「景品表示法違反」となる「優良誤認表示」や「有利誤認表示」に該当する場合があります。
景品表示法とは、「不当表示」や「不当景品」を規制する法律です。生活者が良い商品やサービスを享受できるようにするために、誇張表現した商品や過大な景品類の提供を禁止しています。
優良誤認表示とは、商品・サービスの品質や規格などの「不当な表示」にあたる行為です。「実際よりも良いものであると示す」「競合他社の商品・サービスよりも著しく優れていると示す」などが該当します。
例えば、新商品に関するプレスリリースで「この新技術を有しているのは世界で当社だけ」と謳った場合、読み手はその商品に使用されている技術は唯一無二であると認識し、この企業の商品がもっとも優れていると認識するでしょう。しかし、実際は競合他社でも同じ技術を使っているなら、事実とは異なります。事実ではないにもかかわらず、他社の商品よりも良いものだと誤認させてしまうケースは、優良誤認表示に当てはまります。
有利誤認表示とは、商品・サービスの価格やそのほかの取引条件についての「不当な表示」に当たる行為です。「実際よりも有利に取得できることを示す」「競合他社の商品・サービスよりも著しく有利であると示す」など「お得感」を示すものが該当します。
例えば、自社の商品やサービスの価格について「業界最安値」などとアピールした場合、生活者は「この企業のこの商品が一番安いのだ」と認識します。しかし、合理的な調査などを実施しておらず何の根拠もない場合は、生活者を誤認させたこととなり、景品表示法違反となります。
景品表示法についてはこちらの記事で詳しく紹介しているので、併せて確認してみてください。
プレスリリースで最上級表現を使用するときに確認する3つのこと
では、プレスリリースを作成する際、具体的にはどのような表現に注意する必要があるのでしょうか。注意が必要な表現を把握しておくことで、読み手に誤解を与えたり、法律に抵触したりすることを避けられます。ここでは、押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
1.最上級表現にはどのような種類があるかを把握
最上級表現には主に以下の3つがあります。
- 比較系
- 最上系
- 保証系
これらを掲載するためには客観的な根拠や裏付けが必要です。根拠が併記されていない場合にPR TIMESでは掲載不可となるプレスリリースの表現例とともに、それぞれ具体的なワードを確認していきましょう。
A.比較系
掲載不可となる表現例:世界シェアNo.1 コスメブランド「〇〇」オリジナルスキンケアセットプレゼントキャンペーンを開催
比較系は、「日本初」「No.1」といった、ほかと比較した表現のことです。根拠のない「人気No.1」などの表現は誇張表現とされてしまうため、プレスリリースでは使用禁止です。
例)日本初、世界初、唯一、No.1、1位……など
ただし、「日本一高い山、富士山」などといった、事実に基づいた表現の使用は問題ありません。また、むやみに使用することは推奨できないものの、客観的根拠を示すことができる場合、地域で初めて、該当領域で初めてなどの自社における試みについてであれば、「初」というワードは使用可能です。ニュース性のある情報を発信できるチャンスもあるので、新規性のあるプレスリリースを作成するテクニックとして覚えておくとよいかもしれません。
B.最上系
掲載不可となる表現例:全国に学習塾を展開する業界最大手の株式会社〇〇
「最高」「もっとも」といった最上系の表現も、根拠がない場合は使えません。これも比較系と同様、根拠を明確に提示できる場合は使用できます。しかし根拠が明示できない場合は、自社の信用を守るためにも使用しないようにしましょう。
例)最高、最大、最強、もっとも〇〇……など
C.保証系
掲載不可となる表現例:100%除菌!「バイオ酵素配合〇〇」〇月〇日発売開始
保証系は、「絶対」「必ず」などの言葉を含む表現のことです。「絶対」を保証するものは基本的に世の中に存在しないとされているので、プレスリリースにはふさわしくない表現です。
例)絶対、必ず、100%、完璧……など
2.医療法、薬機法に準ずる
医療関係、医薬品、化粧品関係については、原則的に最上級表現は使えません。最上級表現を使うことで、医療関係や医薬品の適正な価格や品質が保たれなくなってしまう可能性があるからです。これらは医療法・薬機法で定められています。
ただし、化粧品については、「客観的事実に基づく具体的な数値」と「根拠」のある場合は最上級表現を使用してもいいということになっています。この場合も必ず根拠が必要になるので、掲載する場合は注意してください。
参考記事
広報担当者が知っておきたい「薬機法」に関する8つのこと
化粧品・コスメの広報で気をつけたい薬機法とは?知っておきたい10のこと
3.客観的根拠の提示を推奨
メディアはプレスリリースの社会的根拠を重要視しています。メディアに掲載されるプレスリリースにするためにも、最上級表現と客観的根拠の明示には気をつけなければなりません。
では、客観的根拠とは何か、具体的にどのようにして獲得するのかを見ていきましょう。
試験・調査による客観的結果
「客観的根拠」のひとつとして、まずは「試験・調査による客観的結果」が挙げられます。
この場合の試験や調査は、関連する学術界や産業界で認められた方法や、複数の専門家が認めた方法で実施する必要があります。
専門家、専門家団体・専門機関の見解または学術文献
専門家や専門機関の見解や学術文献があれば、客観的根拠として認められます。見解、学術文献の基準は「専門家等が客観的に評価した見解または学術文献で、その専門分野に一般的に認められているもの」とされています。
参考:消費者庁|事例でわかる景品表示法(平成28年7月改訂)
プレスリリースで最上級表現を使わずにインパクトを出す3つの方法
ここまでで、プレスリリースでは使わないほうがいい表現とその理由を説明してきました。それでは、魅力的なプレスリリースにするためにはどのような手法を用いればいいのでしょうか。最上級表現を使わなくてもインパクトのあるタイトルにするために、工夫できる3つのポイントを紹介します。
1.具体的な数字や商品・サービス内容を記載する
具体的な数字やどのような商品・サービスなのかを表現するだけで、わかりやすく信頼感のあるタイトルになります。例えば、次の2つの文章を読み比べてみてください。
①駅近、広々マンション。来春オープン!
②駅から5分、3LDKマンション。2022年4月オープン!
②の具体的な数字や商品の内容を盛り込んだタイトルのほうが、具体的で興味を持ちやすいのではないでしょうか。
例えば、2022年7月に配信された株式会社Serenoのプレスリリース7月オープン!東京白金台駅から徒歩5分の「一軒家古民家ウエディングフォトスタジオ」はタイトルからだけでも、
- 東京白金台駅から歩いて5分で行ける
- 一軒家古民家ウエディングフォトスタジオが
- 7月にオープンする
ということがわかります。さらに、プレスリリースの概要文では「敷地面積150平米」と広さについても記載しており、どのくらいの規模感のフォトスタジオなのかが想像しやすくなっています。
注意点として、プレスリリースは後からの修正、変更、消去ができません。具体的な数字を使う際には、必ず正確かつ最新のデータを使うようにしましょう。自社の信頼を保つためにも、最後のチェックは複数回、複数人で行うことをおすすめします。
2.トレンドのキーワードを入れる
注目されやすいプレスリリースには、「ニュースバリュー」があります。世の中のトレンドと関連していることを示す「時事性」は、ニュースバリューを演出するポイントのひとつです。
ほかのプレスリリースと差異化を図る手法のひとつが、トレンドのキーワードを入れること。その時々のトレンドをチェックして、興味を持ってもらえるようなプレスリリースにしましょう。
2022年10月に配信されたNSGグループのプレスリリース【国際音楽・ダンス・エンタテイメント専門学校】~ NFT、メタバース、DAO IT×エンタメ~いま話題の最先端テクノロジーの世界を学ぶは、「NFT」「メタバース」「DAO(分散型自律組織)」といったテクノロジー分野におけるトレンドキーワードを盛り込んだタイトルとなっています。これだけでも、最先端技術が絡んだプレスリリースであることがわかります。
トレンドのキーワードはインターネット検索をするほか、SNSからも拾うことができます。常に多方面にアンテナを張り、旬のキーワードをキャッチできるようにしておきましょう。ただし注意点として、時事性があるからといってネガティブな要素を含むキーワードを選ぶのはおすすめできません。自社の商品やサービスを魅力的に表現できるような最新ワードを見つけてみてください。
3.30文字程度の最適な文字数でまとめる
プレスリリースのタイトルは、30文字程度でまとめると読みやすいとされています。長すぎる文章は煩雑になってしまったり、改行してしまうと次の行を見失ったりする恐れがあります。
特にわかりやすい文章では忙しい読者やメディア関係者を引きつけるタイトルにするために、必要な情報を過不足なくまとめることがポイント。そのためにも30文字程度が最適な文字数です。もし30文字で収まらない場合は、サブタイトルを活用しましょう。
2022年10月に配信された株式会社ブリス・ダイニングのプレスリリース11月1日(火)「伊勢美し国醸造所」オープンのお知らせを例に挙げてみます。タイトルは27文字に押さえていながらも、どのような内容のプレスリリースなのかがわかります。詳細の説明にはサブタイトルや概要文を活用しており、プレスリリースの前半だけである程度の内容を把握できるように工夫しています。
プレスリリースは信頼が重要、安易な最上級表現は慎もう
この記事では、プレスリリースで使用する際に注意が必要な表現やその理由、表現の工夫の仕方、実際のプレスリリースの事例などについて紹介しました。
プレスリリースにインパクトを持たせるためについ使ってしまいたくなる最上級表現ですが、根拠なく使ってしまった場合、法律に抵触してしまうだけでなく、自社の社会的信頼も損なうことになります。安易に最上級表現を使用することは避け、別の方法で魅力あるプレスリリースを作成することを心がけるとよいでしょう。
最上級表現を使わなくても、読み手を引きつけるための方法はたくさんあります。トレンドのキーワードを取り入れたり、具体的な表現でタイトルを作成したり、さまざまな工夫を凝らすことで、インパクトを与え読者に大きなメリットを感じてもらうことができるでしょう。本記事で紹介した事例を参考にしながら、多くの人の目に留まり、思わず全文を読みたくなるような表現を考えてみてください。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
プレスリリースで「日本初」などの最上級表現を使用する際のQ&A
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