取材対応の際、自社の情報がわかりやすくまとまった資料を渡せると多忙なメディア関係者に重宝されます。メディア関係者に情報を提供するためのこのようなツールを「プレスキット」と呼びます。
本記事では、プレスキットとは何か、どのような目的で作成するかを説明し、実際にプレスキットを作成する際の流れや必要な項目を具体的にご紹介します。
プレスキットの作成を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
広報PR活動に欠かせない「プレスキット」とは?
「プレスキット」(または、「メディアキット」)とは、一般的に「メディア関係者向けに企業や事業に関する資料・画像・動画素材などをまとめたもの」とされます。
記者やライター、ディレクターが企業について報道する際に参照する項目を網羅し、多忙なメディア関係者が事実確認や画像提供依頼などのやりとりをする手間を省きます。
形式は企業によってさまざまで、紙に印刷して手渡しする場合もあれば、自社のコーポレートサイトなどWebからダウンロードできるようにしておくことも。自社の方針やメディア関係者からの要望に合わせ、ケースバイケースで展開しましょう。
プレスキットを作成する目的・メリット
プレスキットは、メディア関係者に対して自社の情報を正しく伝えてもらうために作成します。自社から公式にデータや紹介文などを提供し、ブランディングに関わる細部のニュアンスを、齟齬(そご)なく読者に届けてもらうことを目指します。
メディア関係者にとっても、企業公式のデータや画像などをあらかじめ用意してもらえれば、記事や番組を制作するためにいちいち問い合わせや事実確認をする必要がなく、業務をスムーズに進められるというメリットがあります。
メディア関係者は多忙なため、「あの企業はプレスキットを用意してくれるから取材しやすい」と認識されれば、繰り返し取材をしてもらえる可能性もあるでしょう。
プレスキットの事例
具体的なイメージがしやすいよう、実際にWeb上でプレスキットを公開している企業をご紹介します。
コーポレートサイト内でプレスキットを展開している場合、企業に関するデータなどは別ページで公開し、プレスキットとしては画像や紹介文など簡潔な内容にまとめることが多いようです。
株式会社メルカリ
株式会社メルカリのコーポレートサイトでは、メディア関係者向けのページとして「お知らせ/プレスリリース」と「プレスキット」を用意。
「プレスキット」のページでは、ブランドごとに以下をダウンロードできるようになっています。
- ブランドガイドライン
- コーポレートロゴ・サービスロゴ
- サービス画面のスクリーンショット画像
- 経営陣のプロフィール画像
- オフィスの画像
※ブランドにより異なります
株式会社セールスフォース・ジャパン(Slack)
2021年の合併以来、株式会社セールスフォース・ジャパンが運営するSlack。サービスサイトから確認できる「会社情報」の一部として、「メディアキット」が用意されています。
「メディアキット」のページでは、以下をダウンロードできます。
- ブランドガイドライン
- 製品のスクリーンショット
- 経営幹部の写真
- Slackで働く人とオフィスの画像
株式会社 Mr. CHEESECAKE
チーズケーキの製造・販売を手がける株式会社Mr.CHEESECAKEは、サービスサイト内に「メディアキット」のページを用意。
以下、ダウンロードできるようになっています。
- ブランド紹介文
- ブランドロゴ(png, ai)
- キービジュアル
- シェフ紹介(写真)
- シェフの紹介文(文字数別2パターン)
PR TIMESのプレスキット機能
プレスリリース配信サービス「PR TIMES」では、企業がプレスキットを簡単に作成できる「プレスキット機能」を提供しています。PR TIMESユーザーであれば、管理画面から設定するだけで、ロゴ・画像・資料・ガイドラインを「プレスキット」としてWeb上にまとめてアップロードしておけます。
プレスキット機能は無料で利用可能です。自社サイトを改修するリソースがない場合など、ぜひ活用してみてください。
プレスキット機能の利用方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
プレスキット機能を今すぐ利用したい場合は、こちらから管理画面の該当ページに遷移できます。
プレスキットに必要な7つの項目・資料
プレスキットの内容として、具体的にどのような項目を準備したらよいでしょうか。ここでは、紙に印刷して配布するプレスキットを想定し、メディア経験者からの意見をもとに記載しておきたい項目や資料を7つ紹介します。
1.企業概要・問い合わせ先
プレスキットに必要な項目の1つ目は、企業概要や問い合わせ先です。
企業名・本社所在地・代表者名・事業内容・設立年月など、シンプルにまとめます。メディア関係者向けの問い合わせ先も忘れず明記しておきましょう。担当者の携帯電話など、できる限り対応しやすい連絡先がおすすめです。
基本的な内容ですが、企業概要や問い合わせ先はメディア関係者が報道の際に必ず参照する情報です。メディア関係者にとって使い勝手がよいよう、端的に見やすくまとめましょう。
2.ロゴやブランディングに関わる写真など、画像素材
プレスキットに必要な項目の2つ目は、ロゴや写真などの画像素材です。
メディア関係者にとって画像は非常に重要な要素です。高解像度の画像や、さまざまな画角の画像が用意されていると、自社メディアに合った素材を即座に使え重宝されるでしょう。ロゴだけでなく経営陣のプロフィール画像、オフィスの画像なども希望されることがあるため、確認のうえ用意しておきたいところです。
画像を提供する際は、ブランドガイドラインも合わせて提供します。ブランドガイドラインには、ロゴや人物の写っている画像などが自社の方針に反する形で使われることがないよう、ルールや禁止事項などを明記しましょう。
提供された画像にクレジット表記が必要か否か、必要な場合はどのような形式で表記すべきかなどがガイドラインにまとまっていると、社内確認がスムーズになり助かります。(元新聞記者・Aさん)
3.企業・サービスの紹介文
プレスキットに必要な項目の3つ目は、企業・サービスの紹介文です。
自社がどのような事業領域でどのようなサービスを展開しているのか、どのような姿を目指しているのかを端的にまとめます。企業やブランドのストーリー・ミッションなどをわかりやすい言葉で表現し、同業他社との差別化を意識できるとよいでしょう。
端的に伝わるよう要素の優先度を整理し、300字程度にまとめることをおすすめします。
4.代表や幹部の経歴・紹介文
プレスキットに必要な項目の4つ目は、代表や幹部の経歴・紹介文です。
企業のトップの人物像は、事業内容やミッションと同様に企業イメージを大きく左右します。画像と合わせ、名前・肩書・経歴についてわかりやすくまとめましょう。メディア関係者がそのままコピーして使えるよう、細かく記載したものと端的にまとめたものの2パターンを用意しておけるとベターです。
経歴など複雑な内容について説明文をあらかじめ用意しておいていただけると、誤表記のリスクが減らせますのでとてもありがたいです。(元新聞記者・Aさん)
5.企業・サービス概要の資料
プレスキットに必要な項目の5つ目は、企業・サービス概要に関する資料です。
特に自社のサービスやビジネスモデルが新しく、まだ一般的になじみのない場合は記載しておきたいところ。事業や業界に関するデータやビジネスモデル、サービスの流れを図解してメディア関係者に理解を深めてもらいます。
企業・業界に関するデータのまとめ方については、同じく広報PRのツールのひとつである「ファクトブック」に関する記事も参照してみてください。
6.プレスリリース一覧
プレスキットに必要な項目の6つ目は、プレスリリース一覧です。
プレスリリースは、自社の企業活動におけるトピックスを端的に伝えるもの。プレスリリースの一覧を添付しておくことで、発表した日付、発売日、企業にとって最新情報かどうかの確認がしやすくなります。また、既存の商品・サービスとの比較などがしやすく、企画に落とし込みやすくなります。
自社のオンラインストレージや、PR TIMESの企業ページなどのURLをQRコードにして掲載すると便利です。
毎年恒例の企画や商品などを取り上げる際に、前年の内容をすぐに確認できると助かります。(元雑誌編集者・Bさん)
7.メディア掲載実績
プレスキットに必要な7つ目の項目は、メディア掲載実績です。
自社やサービス、代表についてすでに取り上げられた記事があれば記載しましょう。メディア掲載実績があると、自社が取材に値する企業だとメディア関係者に感じてもらうことができます。
なお、メディア掲載実績を掲載する場合、必要に応じて二次利用に関わる許諾を得るよう注意してください。
他社が取り上げているかどうかを気にする記者は多いです。具体的にどのような記事なのか確認できるよう、WebメディアであればURL、紙メディアであれば日付・見出しなどが記載されているとよいと思います。(元新聞記者・Aさん)
プレスキットの作り方5ステップ
プレスキットに掲載する項目を決めたら、実際にプレスキットを作成していきましょう。ここからは、プレスキットを作成する5つのステップを紹介します。
STEP1. プレスキットの展開方法を決める
まず、プレスキットをどのようなシーンで活用するのかイメージし、展開方法を決めます。
展開方法を決める際は、まずメディア関係者にプレスキットをどのように利用してもらいたいかを考えることをおすすめします。
コーポレートサイト上にアップロードするのか、メディア関係者から問い合わせがあった際にデータファイルとして送れるようにまとめるのか、印刷して配布するのか。展開方法によって、項目やデザインの形式なども変わってくるでしょう。経営陣などとも話し合い、自社に合った活用方法を選択します。
STEP2. プレスキットに掲載する内容を決め、データを集める
「プレスキットに必要な7つの項目・資料」で紹介した項目を参考に、自社のプレスキットに盛り込む内容を決めていきましょう。
STEP1で決定した展開方法によって記載すべき内容は変わります。Web上にアップロードするのであれば、すでにコーポレートサイトに掲載している企業情報や企業・サービス概要資料などは掲載する必要はないといえます。
STEP3. プレスキットに含める項目・資料を作成する
関係各所と連携のうえ、プレスキットに掲載する項目に準じた画像・データ・文章などを作成します。
経営陣のプロフィールは、画像の掲載可否や経歴の順序などをしっかりと確認する必要があります。また、ロゴなどの使用に関するブランドガイドラインがこれまで準備できていなかった場合は、この機会にデザイナーや経営トップとすり合わせ作成するようにしましょう。
STEP4. プレスキットを展開し、発信する
STEP1で決めた方法でプレスキットを展開していきましょう。
プレスキットの活用目的にもよりますが、より幅広いメディア関係者に自社への興味を喚起したい場合など、プレスキットの公開についてプレスリリースで発信することもおすすめします。
STEP5. 定期的に情報をアップデートする
プレスキットには、常に最新の情報を記載しておかないとその意味がありません。
公開が完了したら、どのような周期・フローで内容のチェックや更新作業を行っていくか、しっかりと仕組みづくりを行う必要があります。属人化を防ぎ、常に正確な最新情報が掲載されている状態が保てるようにしましょう。
プレスキットを作成するときの3つのポイント
実際にプレスキットを作成するにあたって、どのような点を意識するとよいでしょうか。ここでは、押さえておくべきポイントを3つ紹介します。
ポイント1.シンプルにわかりやすくまとめる
プレスキットを作るポイントの1つ目は、情報をシンプルにわかりやすくまとめることです。
メディア関係者は多忙なため、必要な情報がどこにあるかが一目でわかる資料にすることを心がけましょう。自社やブランドの世界観を伝えたいからといって、デザインに凝りすぎて「わかりづらい」と思われてしまったら本末転倒です。
企業やブランドの世界観は、プレスキットの中身(企業情報や画像素材、紹介文など)を通じて伝えるようにしましょう。
ポイント2.常に最新の情報にアップデートする
プレスキットを作るポイントの2つ目は、常に最新の情報にアップデートすることです。
プレスキットは、その内容が常に正確なものであることがもっとも重要です。「プレスキットの作り方5ステップ」でも紹介しましたが、作成が決まった時点で「いつ・誰が更新するか」という運用のルールもセットで決定し、属人化しないようマニュアル化しておきましょう。
ポイント3.客観的なデータを入れる
プレスキットを作るポイントの3つ目は、客観的なデータを入れることです。
企業やブランドのイメージや世界観を伝えるのも重要ですが、メディアが求める情報は数値・データなど客観的な情報であることもしばしば。企業・サービスの基本情報に加えて、業界全体や競合と比較したときのデータなども用意しておけると重宝されるでしょう。
「プレスキット」を整備して、いつでも取材対応ができるように準備しておきましょう
良好なメディアリレーションズを構築するために欠かせない「プレスキット」。本記事では、プレスキットの定義や作成時に必要な項目、具体的な作成手順、押さえておきたいポイントを紹介しました。
【プレスキットに必要な7つの項目・資料】
- 企業情報・問い合わせ先
- ロゴ・ブランディングに関わる画像素材
- 企業・サービスの紹介文
- 代表や幹部の経歴・紹介文
- 企業・サービス概要資料
- プレスリリース一覧
- メディア掲載実績
【プレスキットを作るときの3つのポイント】
ポイント1.シンプルにわかりやすくまとめる
ポイント2.常に最新の情報にアップデートする
ポイント3.客観的なデータを入れる
正確な情報の整理、アップデートを日頃から準備しておくことで、突然の取材対応が発生した際にも、企業の情報を誤解なく伝えることができます。
メディア関係者と円滑なコミュニケーションを行うために、プレスキットを活用してみてください。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
広報の必需品「プレスキット」の作り方やポイントに関するQ&A
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