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うちなーんちゅに愛される、地産地消の広報PR|ブルーシール × 沖縄タイムス × 琉球新報

2022年10月の福岡県での開催を皮切りに、全国各地の都道府県で開催されている「そこで、PRゼミ!」。沖縄県では2022年11月11日(金)に実施され、当日は「広報PR活動を始めたが効果がない」「売り上げが伸びている企業の取り組みが知りたい」など、さまざまな目的や課題を持つ地元企業の方々が集まりました。

本イベントレポートは、観光客やうちなーんちゅ(沖縄県民)に愛されるアイスクリームを製造・販売するフォーモスト ブルーシール株式会社の友利周作さん、沖縄タイムスの仲田佳史さん、琉球新報の黒田華さんを加えたトークセッションを中心にまとめています。

フォーモスト ブルーシール株式会社の最新のプレスリリースはこちら:フォーモスト ブルーシール株式会社のプレスリリース|PR TIMES

フォーモスト ブルーシール株式会社 マーケティング部商品企画課 企画推進課 

友利周作(Tomori Syusaku)

沖縄国際大学卒業後、2010年にフォーモスト ブルーシールに入社。マーケティング部商品企画課に配属され、商品開発などに10年間携わる。2020年より、同部企画推進課長として広報PR担当に。

「アイスがもたらす笑顔」のための広報PR(第一部)

投影資料
当日の投影資料より引用

友利さん:私たち「ブルーシール」の発祥は、米軍基地の中で乳製品を提供する会社でした。約60年前、現在の沖縄県浦添市の本店でアイスクリーム事業を始めたのがきっかけです。「アイスがもたらす笑顔のために」という理念を軸に、あらゆる施策に取り組んでいます。店舗で販売するアイスを中心に、コンビニやスーパー向けにカップアイス、ギフト商品やグッズなども展開しています。2013年の65周年を迎えた際に、企業ロゴを笑顔に見えるように刷新して、現在のロゴマークが生まれました。

うちなーんちゅと観光客に愛されてこそ。コロナ禍で施策見直し

2019年までは、沖縄県を訪れる観光客が1,000万人を達成したこともあり、売上高は堅調に推移していました。しかし2020年にコロナで大きな打撃を受け、観光関連で売り上げが約30%落ち込みました。

投影資料
当日の投影資料より引用

「これまでは沖縄の観光関係の皆様のご尽力によって、恩恵に預かっていただけなんだ」と思い知りましたね。あらためて、今後100年を目指す企業としてのあるべき姿を見つめ直しました。今では、沖縄県民、つまりうちなーんちゅに認められてこその「ブルーシール」であるという方向性が、クリアになったところです。

コロナ禍以前は県民向けの施策が充実していなかったということに気付き、大いに反省したのも覚えています。以降は、企業としてあるべき姿に戻るため、広報PRにおいても下記4つの軸を重点的に施策に落とし込むようにしました。

  • 魅力ある沖縄素材を積極的に使用
  • 自治体・県内民間企業協業の開発
  • 店舗企画の推進
  • 情報発信の強化

特に、県民向けには店舗企画の刷新を行っています。実は2019年まで、県内の来客数が横ばいでした。数々のフレーバーがお得になるサービスデーを2日間から3日間に増やして、少しでも地元の方に足を運んでほしい、新商品を知ってほしいという思いからリスタートしました。県民の皆さんに親しまれているタレントをプロモーションに起用するということで、地元発祥のバンド「HY」を起用して、マスメディア向けのアプローチを中心に展開してきました。地道ではありますがポスティングなども行いながら、WebメディアではSNSを中心に発信を強化。現在は、県内の来客数が前年同期比の約150%で推移しています。

沖縄の六次産業化に貢献する

沖縄県の1次産業には、例えばシークヮーサー、紅芋、黒糖などの農業があります。私たちは、2次産業以降の領域を事業分野とするメーカーとして、地元の6次産業化に少しでも貢献しようと新商品開発を進めてきました。特に紅芋、黒糖に関しては、実は土産物として加工される需要が下がって余ることも。「ブルーシール」は地元のメーカーとして、アイスクリームのフレーバーに紅芋、黒糖を加え続けています。

投影資料
当日の投影資料より引用

地方自治体との協業も進めています。沖縄原産の柑橘「カーブチー」とアセロラを使った「やんばるダブルシャワー」という商品も作りました。地域の特産品である素晴らしい原材料を、しっかりとアイスに活用して、最後は売り上げの一部を「ゆいまーる基金」という子どもたちの成長や子育て世代を支援する基金に回します。具体的なPR施策としては、本部町の役場で記者会見を行ったり、キッチンカーで現地のお祭りに参加したりしてきました。

県内企業との密なコラボ

また、県内の企業との協働も進めています。地元のチーズケーキ専門店「PUZO」とのコラボレーションでは、沖縄県で活動する2社が一緒になることで、地域経済を少しでも活性化したいという思いがありました。原材料にも沖縄県産の素材を使う事で新しいおいしさや新しい魅力を発信できるのではないか、ということで進めていきました。

投影資料
当日の投影資料より引用

コストの制約がある中で幅広く発信する工夫

県外向けの広報PRでは、「沖縄ブランドの価値をもっと発信していく」ためのギフト商品を拡充しつつ、SDGsのコンセプトを取り入れてニューアルも行いました。コンビニエンスストア、スーパーマーケットでの販売、催事の沖縄フェアなども、Web メディアを中心に強化する必要がありました。

ただ、県外のマスメディア向けには経費の制約もあり、大きく発信できないという状況がありました。諸々の状況を考えて、PR TIMESのプレスリリース配信サービスの導入につながったというところです。サービスを使うことでリアルタイムで転載・掲載されたメディアがどんどん増えたので、県外発信のひとつの施策として活用できましたね。

新聞記者に刺さるプレスリリース事例3選(第二部)

第二部のトークセッションでは、沖縄タイムスの仲田佳史さん、琉球新報の黒田華さんが「取材したくなるプレスリリース」のポイントについて語りました。

沖縄タイムス DX推進部(イベント開催時)

仲田佳史(Nakada Yoshihito)

2005年入社、記者歴は14年。社会部で沖縄市や宮古島などの担当を経て、経済部で5年間取材・記事執筆を担当した。企業のプレスリリースに数多く目を通す。Webオリジナル記事を作成するDX推進部を経て、現在は企画経理部に所属。

琉球新報 広告事業局 特任広告事業班

黒田 華(Kuroda Hana)

20年以上記者としてキャリアを積んだ後、2022年から広告事業局へ。約70社の県内企業や自治体、学生らと社会課題解決につながるプロジェクト創出を目指すOSP(OKINAWA SDGs プロジェクト)運営に携わっている。

事例1. 地元産シークヮーサーとグァバを使用したアイス

ブルーシールプレスリリース01

沖縄タイムスの仲田さんが「取材したくなる」と選んだのは沖縄県産原料使用アイスバー「ブルーシールシークヮーサー」「ブルーシールグァバ」4月26日より数量限定発売!

のプレスリリース。以下の理由から、メディアとして取り上げやすいと感じたそうです。

  • 沖縄県民に馴染みのある地元食材を使った商品
  • 地元出身のイラストレーターが包装をデザインしているストーリー
  • 収益の一部を沖縄県の子どもへの貧困支援につなげている

仲田さん:地元産のシークワーサーとグァバの果汁を使用している、こちらの商品を選定しました。メディア視点では、まずこの原材料を記事で取り上げる必要があるかどうかを考えます。最近は地産地消への関心が高まっており、沖縄県出身のイラストレーターによるパッケージも特徴がありますね。こちらのリリースのいいところは、デザインにどういうこだわりを持ったかというイラストレーター視点のストーリーを書いている部分ですね。

売り上げの一部を貧困解消に寄付するというところもポイント。沖縄県では、子どもの貧困問題は非常に重要なテーマです。商品の収益を社会へ還元していこうというようなところに、メディアが取り上げる意義があります。

プレスリリースの賞味期限は1週間くらいと思われているかもしれません。でも意外と賞味期限が長いです。例えば「子どもの貧困」は、メディアとしても長期的な課題として取り組むべきテーマでもあります。新聞社やテレビ局が子どもの貧困についての特集を制作するタイミングで検索したときに、こちらのプレスリリースが目に留まります。すると、こちらを特集の中に組み込もうとして取材が成立することもあります。プレスリリースの賞味期限というのは忘れた頃にやってくる、という点にも留意してもらいたいですね。

かわいらしいパッケージの写真が目を引きます。10~30代の若い方の意見をどんどん取り入れて写真や動画を作ることも、関心を集めるためには大切ですね。(琉球新報・黒田さん)

夏を少しでも楽しんでもらうデザインが今回のテーマでした。とはいえ「バキバキ」っとした感じではなく、女性らしさを残しながら作ろうとデザイナーが考えてくれています。(フォーモスト ブルーシール株式会社・友利さん)

事例2. 読谷村産のいちごを使用したアイス

ブルーシールプレスリリース02

琉球新報の黒田さんは、沖縄県産素材「読谷村いちご」使用!ブルーシールカップ新商品「沖縄ストロベリー&クッキー」発売のプレスリリースに言及しました。フードロス削減の観点から、一部規格外品のいちごも使用している取り組みです。

黒田さん:こちらのプレスリリースをきっかけに「読谷村いちご」を知りました。地方の新聞社は、基本的には地元企業や地域の取り組みを応援したいと考えており、こうした取り組みは、取材を持ちかけやすいネタでもあります。

関わっている人の顔が見えると、「応援したいな」とか「どんな商品なんだろう」という気持ちがどんどん膨らんできます。関係者の写真とともに、具体的な背景に触れている構成は素敵だなと思いました。

プレスリリースには「SDGs」という言葉がありますが、これが取り組みのどの部分を指しているのかがわからなかったため、もう少し説明があってもよかったかもしれません。

コロナ禍を機に、企業を含めてあらゆるものの存在意義を見つめ直す、「パーパス系」ともいえる取り組みへの関心が高まっています。企業が社会課題を解決していくという発信の姿勢は、時代に即していますね。(沖縄タイムス・仲田さん)

事例3. 紅イモ&黒糖を活用して地域の課題解決につなげる

ブルーシールプレスリリース03

「紅イモ&黒糖」沖縄県産素材使用アイスバー! 7月27日より全国ローソンにて数量限定先行発売のプレスリリースに触れたのは沖縄タイムスの仲田さん。プレスリリースでは、新型コロナなどの影響で観光客が減った中、生産者支援の観点で、紅イモや黒糖などの県産原料を活用した商品を開発したことが紹介されています。

仲田さん:まず「余剰在庫がある」というニュースがあって、それを解決に向かわせる取り組みです。報道する側にとって、意義深いプレスリリースといえるでしょう。社会課題を解決する取り組みは、取り上げる意義が大きいともいえます。黒糖に関しては2020年以降の在庫がかなりダブついて、最近やっと収束してきたところです。沖縄タイムスでも、何度かニュースとして取り上げています。

地元の新聞を閲覧するほか、ニュースは録画して「今の沖縄の課題が何なのか」という部分は注意しながら追いかけるようにしています。(フォーモスト ブルーシール株式会社・友利さん)

地域のつながりを大切にした発信で、うちなーんちゅの心をつかむ

講演や質疑応答を通じて「うちなーんちゅ(沖縄県民)に認められてこそ」と繰り返し話した友利さん。以下のポイントを通じて企業の姿勢を広報PR施策に落とし込むことで、地域社会で意義深いニュースを発信することができました。

  • 魅力ある沖縄素材を積極的に使用
  • 自治体・県内民間企業協業の開発
  • 店舗企画の推進
  • 情報発信の強化

講演では、地域の生産者と協働した商品開発や、社会課題にちなんだ発信の数々にも言及。いずれも、ニュースとして取り上げやすいものでした。全国47都道府県において、地域ごとのうちなーんちゅ、いわゆる地元の生活者に向けた発信をしている企業は少なくありません。地方におけるメディアリレーションズや広報PRのあり方を考えるとき、参考になるポイントも多いのではないでしょうか。

地方自治体がおさえるべき広報PRのポイントについては、こちらの記事を参考にしてみてくださいね。

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この記事のライター

渡辺 香里那

渡辺 香里那

PR TIMES MAGAZINE編集部。大手新聞社に2015年新卒入社。経済、社会、写真映像部で約7年間記者とカメラマンを経験したのち、「読者のニーズによりそった企画を考えたい」とPR TIMESに入社。広報PRパーソンにとって役立つと思った企画を日々、提案しています。趣味は写真撮影とスポーツ観戦です。

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