PR TIMESは、広報PRに関する学びと交流の場「そこで、PRゼミ!」を2022年10月より全国で展開しています。第3回となる「そこで、PRゼミ!さぁ徳島」は、2022年11月2日(水)に徳島市で開催されました。
当日は、「売り上げが伸びている企業の取り組みが知りたい」「もっと多くの人に自社の商品を知ってほしい」「広報PR活動を始めたが効果がない」など、さまざまな目的や課題を持つ地元企業の広報担当者が集まりました。
イベントの第一部では、食用コオロギの生産・開発・販売で日本全国から注目を集める徳島発のフードテック企業・株式会社グリラスが、「地域から全国に発信する広報PR活動」をテーマに登壇。
第二部は「地方企業・ベンチャー企業に伝えたい、メディアの目に留まるポイント」をテーマに、一般社団法人徳島新聞社、株式会社あわわを交えた3社によるトークセッションが行われました。
第一部 徳島のベンチャー企業が全国から注目されるための広報PR術
第一部は、徳島県を拠点に食用コオロギの生産・開発を行い、全国各地に販路を拡大している株式会社グリラスから、代表取締役CEO兼CTOの渡邉崇人さんと広報PR担当の川原琢聖さんが登壇しました。
株式会社グリラス 代表取締役CEO兼CTO
徳島生まれ徳島育ち。学士から博士までの全課程を徳島大学で過ごし、現在は徳島大学バイオイノベーション研究所の講師として昆虫の発生・再生メカニズムを専門に研究を行う。また2019年に株式会社グリラスを設立し、CEOとCTOを兼務する。
株式会社グリラス PR & Sales Manager
大学卒業後、新卒で都内PR会社に入社。
2021年7月にグリラスに広報として入社して以降は、基本広報業務に加えてマーケティングやセールス関連のイベント企画・運営などを行う。
徳島大学の研究者でもある代表取締役の渡邉さんは、経営者として広報PR活動に力を入れている理由を「宣伝やプロモーションばかりではなく、われわれの取り組み自体を理解してもらう努力をしないといけない」と考えているためだと話しました。
食用コオロギは、生産時の環境負荷の低さなどの点で牛・豚・鶏といった従来のたんぱく源よりも優秀である一方、一般の消費者にはまだなじみがないのが現状です。販路を拡大し取り扱いを増やしてもらうためには、開発背景への共感を醸成する広報PR活動が欠かせないと言います。
広報PRの実務を担当する川原さんは、「コオロギが生活の中で当たり前になる未来を創出する」という会社全体の目標に紐づけ、
- プレスリリースの配信件数
- メディア掲載件数
- 実売件数(=どれだけの人が実際にコオロギを食したのか)
をKPIに設定。
広報PR活動を行う際は、取材してほしいメディアに合わせた自社の特徴を強調しています。新聞などのメディアに向けて「大学発スタートアップ」「代表が現役研究者」などアカデミックな側面を意識的に見せることもあれば、ライフスタイル系メディアには「伝統的な食文化(昆虫食)の継承」「地方活性化」といった切り口で発信することも。相手に応じて「どのように見せるのが最適か」を考えて情報を整理しているそうです。
また、広報PR視点で積極的に社内の情報を収集することも大事だと語りました。
例えば、同社の商品が国際線のLCC(格安航空会社)の機内食に採用されたとき、営業担当者は「発注ロットとしては少ない」という理由で、さほど重大に受け止めていなかったそうです。しかし川原さんは「大手グループの系列企業」に「世界初」の導入、という切り口で大きな話題化が狙えるネタだと考え、大々的な記者発表会を実施。全国放送のテレビ局4社に取り上げてもらうことができました。
グリラスが全国から注目を浴びている背景には、全社の目標に対して忠実でありながらも、受け手の立場から逆算して考える丁寧な情報発信がありました。
株式会社グリラスの広報PR活動については、こちらの記事でもインタビューしています。
第二部 地方企業・ベンチャー企業がメディアの目に留まるためのポイント
第二部では、株式会社グリラスの渡邉さん・川原さんに加え、一般社団法人徳島新聞社から高島 卓也さん、徳島県の生活情報メディアを運営する株式会社あわわから松富 康平さんが登壇。
「地方企業・ベンチャー企業に伝えたい、メディアの目に留まるためのポイント」をテーマにトークセッションが行われました。
一般社団法人徳島新聞社 編集局報道本部デジタル報道部部長
徳島県阿南市出身。慶應義塾大学法学部を卒業後、1992年に徳島新聞社入社。地方部、社会部、阿南支局、美馬支局、政経部、編集委員などを経て2021年4月より政経部部長(イベント登壇当時)。23年4月からデジタル報道部長。
株式会社あわわ メディア推進ユニット あわわ、ワイヤー編集部
徳島県小松島市出身。高校卒業後、県内の印刷会社に就職。2011年秋に『あわわ』入社。記事取材や広告制作を行い、2021年5月より編集長に就任。「徳島をユニークに。」というスローガンのもと、現在はフリーマガジン『あわわ』の発行及び、ポータルサイト『あわわWEB』や『あわわのアプリ』の統括メンバーとして運営に携わっている。趣味はスポーツ観戦と料理、写真撮影など。
各メディアは取り上げる情報をどのように選んでいるのか
第一部で川原さんから「メディアに応じた訴求ポイントの使い分け」について言及があったことを受け、徳島新聞・あわわのおふたりが、日頃の情報選定の基準について語りました。
徳島新聞の高島さんは「徳島県という地域へどのように関わっているか、徳島県にとってどのような影響があるのか」という視点で情報を見ているのに対し、あわわの松富さんは、ニュース性の高い情報であるかどうかに加え、「徳島での生活が楽しくなる情報かどうか」という観点でピックアップしていると話しました。
このように、メディアごとに情報を取り上げるかどうかの着眼点は微妙に異なるようです。
松富さんは、「一度メディア視点に立って自社を分析してみると、情報の見せ方がわかり、ニュースとしての魅力も大きく変わってくる」と徳島県の広報PR担当者の方に向けてアドバイスしました。
取材したくなるプレスリリースの特徴と事例
実際に取材したくなるプレスリリースの特徴についておふたりが挙げたのは、「キャッチーさ」と「将来性」。
まず「キャッチーさ」について、高島さんは、「企業からのプレスリリースは毎日大量に届き、一つひとつじっくり読むことはやはり難しいので、冒頭が非常に重要。読み始めて5秒で内容がわからなければ読み飛ばしてしまう」と言います。
- タイトルがキャッチーか
- タイトルに続く説明文で、ニュースのポイントを明瞭簡潔に伝えているか
この2点を念頭に置いてほしいと呼びかけました。
<事例①>自社製品のブランド設立1周年を記念したゴミ拾いイベントのプレスリリース
「環境負荷が低い」「たんぱく質が摂取できる」というグリラスの製品の特徴を掛け合わせた「エコマッチョ」というキャッチーな言葉がフックになり、つい読み進めたくなるプレスリリースです。さらに、マッチョな男性がゴミ拾いをしているというビジュアル(画像)によってニュースのポイントが強調されています。
川原さんによると、この取り組みは当日の様子がテレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』で取り上げられ、SNSでも話題になるなど特に反響が大きかったそうです。
ビジュアルのインパクトに加え、イベントの開催日程を6月4日の「虫の日」に合わせたという細やかな工夫も功を奏したと分析しています。
続く松富さんは「将来性」について、「これから社会に対して意味のある事業を展開していきます。その一歩目として徳島で取り組みを行います」という書き方がされていると、記事に落とし込みやすいと話しました。
<事例②>資金調達のプレスリリース
松富さんによると、このように起承転結がはっきりしているプレスリリースは目に留まりやすいそう。特に「徳島から社会課題を解決する」という将来性を感じさせるストーリーは、読み手の共感や期待を喚起し、SNSでの拡散など話題化にもつながります。
川原さんは、このプレスリリースを手がけた際に「調達した資金を使ってどのように社会課題を解決していくか」という用途をできる限り具体的に記載して、読み手の興味を惹きつけるよう心がけたそうです。
またこれに限らず、すべてのプレスリリースの文末に必ず「社会課題の説明」と「課題に対して食用コオロギがどういう役割を果たすのか」について書くようにしていると語りました。
地方企業・ベンチャー企業が全国へ発信するカギは「メディア視点」
第一部・第二部を通して、地方企業・ベンチャー企業が広報PR活動に力を入れることのメリットや、メディアが取材したくなる伝え方のポイントについてナレッジが共有されました。
登壇者の方々が実際に心がけていると話されたポイントを下記にまとめます。
- まったく新しい製品を世に出す際には、宣伝やプロモーションだけではなく、広報PR活動を通じて自社の取り組みの背景を理解してもらう必要がある
- どのようなメディアにどのような取り上げ方をしてもらいたいかを考え、それに合わせて強調する要素を使い分ける
- 取材したいと思ってもらうためには、プレスリリースの「タイトル」「冒頭の説明文」「画像」で内容が伝わるように注意し、「将来性」を感じさせることを意識する
これから情報発信に注力したい、情報発信をもっと効果的に行いたい、と考えている徳島県の企業の方は、ぜひこうした点を意識し、行動されてみてはいかがでしょうか。
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