オウンドメディア・ペイドメディアと並んでトリプルメディアのひとつに数えられるのが「アーンドメディア」です。従来は広告出稿による広報PR活動が重要とされてきましたが、今では一般生活者から信頼を得るためにアーンドメディアの活用が重要視されています。
アーンドメディアにはどのような特徴があるのでしょうか。トリプルメディアの違いや事例、活用方法やポイントなどを詳細に解説します。
アーンドメディアとは
アーンドメディアとは、有料広告ではなく生活者やメディア関係者など企業に直接関わりのない第三者が発信する媒体のことを指します。企業側と発信者の間で金銭のやりとりが発生していないため情報への信頼を獲得しやすいのが特徴です。
企業側が実施する商品やサービスのマーケティング施策として、広告出稿は非常に一般的な手法です。しかし、最近ではユーザーもそのことがわかっているため、広告から売上向上につながらなくなってきています。
アーンドメディアは広告ではなく実際に商品やサービスを使った方が自身の感想を述べているので、口コミとして参考にしやすいという面があります。有料広告に比べて売上につながりやすいため、多くの企業がアーンドメディアに力を入れています。
アーンドメディアの種類・例
一口にアーンドメディアといっても、レビューサイト・口コミサイト・SNS・メディア・ブログなど複数の種類があります。アーンドメディアを活用した広報PR活動を行う際は、各メディアの特徴を把握しておくと効果的に施策を実施できます。新商品なら拡散性重視、既存商品なら信頼性を高められる媒体を重視するなど使い分けが可能です。それぞれの特徴と例となるアーンドメディアをご紹介します。
レビューサイト・口コミサイト
生活者の購買意思決定に大きな影響があるのがレビューサイトです。企業発信の情報より個人発信の情報のほうが信頼できると考えている生活者が多いため、商品やサービスのイメージを向上させるうえで非常に重要なアーンドメディアです。
レビューサイト・口コミサイトの例としてあげられるのが、グルメジャンルでいえば「食べログ」「ぐるなび」など。美容系であれば「ホットペッパービューティー」も有名なレビューサイトです。
口コミ機能が搭載されている「Googleマップ」もアーンドメディアのひとつです。実際に店舗に足を運んだ方や商品を使った方が自身の感想を書き込む媒体であれば、レビューサイト・口コミサイトとなります。
SNS
一般生活者から影響力のある個人まで、幅広い方が情報発信できるSNSもアーンドメディアのひとつです。X(旧 Twitter)・Facebook・Instagram・TikTokなどが該当します。
基本的には投稿される自社商品やサービスへの感想はコントロールできないものの、関連する情報の出し方を操作すればSNS上での見せ方は工夫できます。非常に拡散性が高く、新商品や新サービスの認知を拡大したいときにおすすめのメディアです。
メディア・ブログ掲載
メディア・ブログ掲載もアーンドメディアの種類のひとつです。ただし、広告記事やスポット記事は該当せず、金銭のやりとりなしに自社商品やサービスがメディアに掲載された場合のみを指します。
有料広告ではない形で自社商品やサービスに関する掲載を狙うには、Webメディアやテレビなどへの積極的な働きかけが大切です。商品やサービスのポイントを各媒体の方向性に合わせてまとめ、記事の切り口も同時に提案するのがおすすめです。
オウンドメディアとは
オウンドメディアとは、企業イメージを作り出すために自社でコンテンツを内製して運営するメディアのことを指します。
アーンドメディアはより多くの方向けの媒体ですが、オウンドメディアはすでにブランドや企業を知っている方向けの媒体です。そのため多くの企業では、オウンドメディアに社員インタビューや企業風土をよりリアルに伝えられるコンテンツを掲載しています。採用コンテンツとして活用している場合が多いのが特徴です。
ペイドメディアとは
ペイドメディアとは、費用を支払って広告を出稿できるメディアのことです。Webメディアをはじめ、印刷物・テレビ・看板・SNSなど、さまざまな媒体が該当します。
ペイドメディアの役割は、新商品や新サービスの認知を拡大すること。効果を最大化するには広告費用がかかるものの、露出先や広告の内容などをコントロールできるのはメリットです。
シェアードメディアとは
シェアードメディアとは、X・Facebook・Instagramなど投稿されたコンテンツがシェア可能なSNSのことを指します。
シェアードメディアはアーンドメディアの一部であるともいえそうですが、レビューサイト・ブログなど拡散性の低い媒体も含まれているアーンドメディアと、拡散を重視するシェアードメディアとは区別して覚えておきたいところです。
シェアードメディアは拡散性が高いため、ひとつの商品やサービスの口コミがより多くの方の目に触れやすいのがメリットです。
4つのメディアの違い
4つのメディアは、アピールできる層が異なります。アーンドメディアは商品やサービスを知らない方にも情報を届けられるのが特徴です。
オウンドメディアは、すでに企業や商品のことを知っている方に向けて情報を発信します。基本的な内容から深堀りした内容までを届けるのに適したメディアです。
ペイドメディアは、広告出稿した媒体に集まってくるユーザーに対して、商品を知ってもらえる機会を作れます。例えば、リスティング広告であれば、ターゲットを設定して関心のありそうなユーザーに広告を表示させられます。
シェアードメディアは、SNSを利用するような情報感度の高いユーザーに向けて情報発信するのに適したメディアです。ただし、各SNSによって利用者層が異なるため、情報の見せ方・出し方は工夫する必要があります。
アーンドメディアを活用する5つのメリット
商品やサービスの認知拡大を最大化させるには、アーンドメディア・オウンドメディア・ペイドメディア・シェアードメディアをそれぞれ活用することが大切だといわれています。アーンドメディアはそのなかでどのような役割を持っているのでしょうか。活用することで得られる5つのメリットをわかりやすく解説します。
メリット1.認知の拡大が期待できる
アーンドメディアを活用する1つ目のメリットは、認知の拡大が期待できることです。
アーンドメディアの種類のひとつであるSNSは、拡散性の高いメディアです。そのため、ひとりのユーザーの口コミやレビューが思わぬ形で広まる可能性があり、認知の拡大を期待できます。
拡散されやすい性質を利用して、あらかじめフックとなりそうなポイントを新商品や新サービスに潜ませておくのがおすすめです。SNSならではのハッシュタグを利用した施策も検討してみてください。
メリット2.信頼してもらいやすい
アーンドメディアを活用する2つ目のメリットは、信頼してもらいやすいことです。
アーンドメディアで発信される情報は、企業と利害関係のない第三者からがほとんどです。そのため、購入を検討している方はそれらの情報を信頼しやすく、スムーズな購買につながります。
企業発信ではなく第三者発信の情報ほど人は信頼しやすい傾向にあり、周囲から評判の良いものほど好意を持ちます。そのためアーンドメディアを活用することで、企業やブランドを信頼してもらいやすい状況を作れます。
メリット3.低コストで効果的な情報拡散を期待できる
アーンドメディアを活用する3つ目のメリットは、低コストで効果的な情報拡散を期待できることです。
アーンドメディアのなかでもSNSは拡散力の高いメディアです。そのため、共感しやすい情報や有益な情報が投稿された場合には、いわゆる「バズ」と呼ばれる爆発的な拡散を期待できます。
SNS単体ではなく、ブログ×SNSやレビューサイト×SNSの組み合わせで情報の拡散も狙えます。SNSでは端的に魅力を伝え、ブログやレビューサイトで内容をしっかりと伝える手法です。
低コストで効果的に商品の認知拡大を期待できるのがメリットです。
メリット4.ユーザーと直接コミュニケーションが取れる
アーンドメディアを活用する4つ目のメリットは、ユーザーと直接コミュニケーションが取れることです。
アーンドメディアのひとつであるSNSやブログは、他者と気軽にコミュニケーションを取れるツールであり、それは企業とユーザーでも変わりはありません。
例えば、好意的な意見に対してコメントをするのはもちろん、手厳しい意見に対しても素早く誠実な姿勢を見せられるのがメリット。地道ですが相互のコミュニケーションを重ねることは、信頼の獲得や好感度アップにつながります。
メリット5.被リンクの獲得につながる
アーンドメディアを活用する5つ目のメリットは、被リンクの獲得につながることです。
ブランドページや商品ページを検索上位に表示させるには、SEO対策のひとつである被リンク施策が非常に重要です。被リンクは多ければ良いというものではないものの、外部サイトに自社のリンクが張られていることで、Googleから信用度の高いサイトと判断される可能性が高まります。
特に大切なのが、質の高い被リンクです。関連性のあるサイトでリンクが張られていることに意味があるため、アーンドメディアのひとつであるメディアやブログへの情報提供は、関連性の高い情報を発信している媒体から優先的に行っていきましょう。
アーンドメディアの活用方法【事例あり】
アーンドメディアはその性質上、企業側のアクションが限定されやすい傾向にあります。それではどのようにしてアーンドメディアを活用すればよいのでしょうか。ここでは、アーンドメディアの活用方法を5つご紹介します。何から始めればよいのか困っている方は、紹介している企業の施策を参考に、自社での取り組みに活かしてみてください。
活用方法1.無印良品(良品計画)
無印良品は、X・Facebook・Instagram・LINEを開設し、各SNSごとに見せ方を工夫しているのが特徴です。総フォロワー数は500万人以上。各SNSで積極的にキャンペーンを実施したり、新規情報を発信したりと、相互のコミュニケーションを活発に行っています。
特に上手なのは、Instagram上での見せ方です。無印良品の世界観が伝わる写真を高頻度で投稿しており、季節感も意識されています。高いブランド力をアーンドメディアで活かしています。
参考:無印良品(@muji_global)|Instagram
活用方法2.トヨタ自動車
無印良品同様、各SNSを使い分けて広報PR活動を行っているのがトヨタ自動車です。例えば、YouTubeではブランドイメージの向上施策を行っており、YouTubeだけでも複数のアカウントを使い分け、情報を細かく発信しています。
InstagramでのUGCを活用したマーケティングも有名です。「#みんなのトヨタグラム」というハッシュタグを作り、一般生活者による自然な投稿を誘導しています。投稿のなかから写真をピックアップし、特設サイトに掲載しています。
アーンドメディアとオウンドメディアをうまく掛け合わせた、参考にしたい事例です。
参考:みんなのトヨタグラム
活用方法3.ハーゲンダッツジャパン
「ハーゲンダッツ」は、元々あるブランド力をアーンドメディアで活かしている成功事例のひとつです。
例えば、Xで新作の情報を必ず発信しています。ポップな絵文字を使うことで、ハーゲンダッツの美味しさをかわいらしく表現しているのが特徴です。
また、「食べたい人はRT(リツイート)」などの文言を加えることで、自然な拡散を狙っているのもポイントです。SNSの特性をうまく活かしたアーンドメディア活用法のひとつです。
参考:ハーゲンダッツ(@Haagen_Dazs_JP)/ Twitter
活用方法4.キングジム
Xの運用が上手であるとして有名なのが「キングジム」です。「中の人」のキャラクターを確立させることで、数多くのフォロワーを獲得しました。ツイートしている人の個性が見えているため、フォロワーはリプライがしやすく、相互のコミュニケーションが積極的に行われています。
キングジムのアーンドメディア活用法は、比較的どの企業でもトライしやすいのが特徴。ただし、アカウントに人格を持たせる場合は「ソーシャルメディアガイドライン・ポリシー」の策定も行いましょう。また、投稿前には必ずダブルチェックを行うなど、ブランドイメージを崩さず上手に商品をアピールできる運用体制が重要です。
活用方法5.キリンビバレッジ
「キリンビバレッジ」は、Facebookの活用事例で有名です。
事前のサンプリングプロモーションへの参加者を募集し、リーチと認知の獲得に成功しています。サンプリングされる商品は、なんと従業員の直筆メッセージ付き。ユニークなキャンペーンを通して商品開発への想いを発信したところ、商品の売上が向上しました。Facebookには一般生活者から好意的なコメントが数多く寄せられました。
キャンペーンと自社発信のコンテンツをうまく掛け合わせることで、一般生活者との積極的なコミュニケーションが生まれた、アーンドメディア活用の参考事例です。
参考:キリンビバレッジ(KIRIN Beverage) – Home | Facebook
アーンドメディアを活用するときの5つのポイント
今後、自社の商品やサービスの認知度を拡大するには、アーンドメディアの活用が必要不可欠です。ただし、短期的には成果の出にくいメディアのため、長期的に取り組まなくてはならないことは留意しておきましょう。また、ひとつの施策だけを行うのではなく、同時並行で複数の施策に取り組むことも大切です。ここでは、アーンドメディアを活用するときの5つのポイントを解説します。
ポイント1.ブランド力を強化する
アーンドメディアを活用するときの1つ目のポイントは、ブランド力を強化することです。
アーンドメディアは、生活者からの信頼を得ることを目的としたメディアです。第三者視点で情報が発信されることにより、生活者は購入時に参考になるリアルな意見を知ることができます。
第三者視点で発信する情報を魅力的に見せるには、まずブランド力そのものを強化することを検討してみてください。競合商品と比較して個性が弱かったり、おすすめのポイントがわかりにくかったりすると、アーンドメディア活用の効果が薄れてしまいます。
アピールポイントを絞り、自社SNSのブランディングを行いましょう。アカウントをフォローすることでどんな情報が得られるのか、生活者が応援したくなるようなイメージを作り上げることを意識してみてください。
ポイント2.自らSNSで情報発信を行う
アーンドメディアを活用するときの2つ目のポイントは、自らSNSで情報発信を行うことです。
例えば、生活者視点の情報発信と同時に、自社SNSでの情報発信を強化するという使い方はおすすめです。自社商品を紹介してくれている方にコメントを残すなど、積極的なコミュニケーションも検討してみてください。
トレンド入りしているハッシュタグのチェックも、こまめに行いましょう。口コミが拡散されて盛り上がっているタイミングで新情報を投入すれば、さらなる認知度向上を見込めます。
ポイント3.インフルエンサーを起用する
アーンドメディアを活用するときの3つ目のポイントは、インフルエンサーを起用することです。
アーンドメディアを利用した広報PR活動では、どのようにして生活者に情報を届けるかを考えることが大切。フォロワーが多いインフルエンサーに報酬を支払ったり、ギフティングをして情報を発信してもらえば、より多くの方に自社商品を知ってもらう機会を作れます。
ただし、インフルエンサーを起用する際は、情報の出し方をある程度コントロールする必要があります。ただ投稿してもらうだけでなく、どんな人に向けた商品なのかを理解してもらい、情報を必要としている方に届くよう協力を仰ぎましょう。
ポイント4.炎上対策を検討しておく
アーンドメディアを活用するときの4つ目のポイントは、炎上対策を検討しておくことです。
アーンドメディアは有料広告ではないため、企業側は露出の仕方をコントロールすることができません。ポジティブイメージを与えるような話題になれば問題ありませんが、ときにはネガティブイメージを与えるような口コミやレビューも投稿されてしまいます。
アーンドメディアをきっかけに炎上してしまった場合を想定して、対策内容を検討しておきましょう。
例えば、企業が独自に定める「ソーシャルメディアガイドライン・ポリシー」を作成するのがおすすめ。炎上時の運用ルールや対応を決めておくことで、できるだけ早い事態の収束につながります。
「ソーシャルメディアガイドライン・ポリシー」の詳細に関しては、下記の記事をチェックしてみてください。
参考:【企業のSNSルール】ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーとして制定しておきたい10のこと【事例あり】
参考:広報が知っておきたい、企業の炎上対策・炎上時の対応方法について徹底解説【危機管理広報】
ポイント5.長期的な計画とモニタリングを実施する
アーンドメディアを活用するときの5つ目のポイントは、長期的な計画とモニタリングを実施することです。
アーンドメディアはすぐに利益アップや認知拡大につながるメディアではありません。一般生活者からの信頼を確かなものにしていくには、長期的にモニタリングする姿勢が大切です。
実施する前から、成果を得るのに最低でも6ヵ月はかかると見越して、長期的な露出計画を立てましょう。その間、どのような形で露出しているのか、商品やサービスの購買率・利用率が上がっているのかなど、モニタリングするポイントは明確にしておくのがおすすめです。
生活者からの信頼獲得を重視することで、アーンドメディアの効果を最大限に引き出せる
最近では生活者の購買につながりやすいのは有料広告ではなく、第三者からの発信を利用したアーンドメディアだといわれています。アーンドメディアはうまく活用することで、情報の拡散や商品の認知拡大を期待できるのが特徴です。しかしそのためには、生活者からの信頼を得たり、ブランド力を高めたりすることが必要不可欠です。
自社のSNSで積極的に情報を発信するほか、インフルエンサーの起用などでブランドイメージを定着させながら、商品やサービスの認知拡大を目指しましょう。
アーンドメディアの活用方法に関するQ&A
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