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地方自治体の年間広報計画・プランの立て方とは?必要な項目とステップ・ポイントを紹介

住民をはじめとする数多くのステークホルダーと円滑なコミュニケーションを目指す地方自治体の広報PR活動は、プレスリリースの配信やSNSでの情報発信、イベント運営など今までよりも仕事量が増えてきています。そんな地方自治体の広報PR業務だからこそ、効率的に地域の魅力を伝え、住民が安心して暮らすための情報発信を行いたいものです。

今回は、地方自治体ならではの年間広報計画を立てる時期や立て方、ポイントを紹介していきます。

地方自治体の年間広報計画・プランを立て始める時期

地方自治体の年間広報計画やプランは各自治体であらかじめ決まっています。市民へ発信する情報はさまざまあり、観光であれば四季に合わせた名産や恒例行事の案内、市報であればゴミの捨て方や確定申告、健康診断の案内などが挙げられます。

自治体によって異なりますが、多くの場合は10月頃に予算立てを行います。できれば8月頃から施策を振り返り、計画立案に余裕を持つことが重要です。翌年1月頃までに取り組む施策と、PR会社、印刷業者など外注業者の選定をして起案し、4月から新年度を迎えます。前年施策の振り返りをしながら最善の広報PR施策を考え、各企業から提案を受けた場合は見積もりをもとに入札や選定委員会にかけて予算を決めていきます。

地方自治体の年間広報計画・プランの立て方

住民や地方自治体の関係者にとって有意義な情報を届け、交流を図るために広報計画・プランを立てていきます。地方自治体ならではの計画・プランというと、難しい印象を持たれるかもしれませんが大まかな流れは企業における広報計画と通じる点があります。情報を整理する方法や計画・プランについて考えていきながら地方自治体ならではの福祉、経済、防災、観光といった情報を織り交ぜながら最善のプランを考えていきます

地方自治体の年間広報計画・プランの立て方イメージ

STEP1.課題と強みの洗い出しを行う

広報PR施策を設定する前にやっておきたいのが、課題と強みの洗い出しです。地方自治体の広報PR業務は増えているため、慣習化されている業務に加えてSNSなど新しい取り組みを始めると時間が足りなくなります。施策を打つ前に、表面化している課題を掘り下げて組織の強みに照らし合わせて優先順位を決めていきます。

よく課題に挙がる人口減少も、子育て世代の経済負担や不妊治療、都内への移住などさまざまな原因が考えられます。今後、他地域と比べて差別化になる要素などと照らし合わせながら地域の強みを言語化して解決すべき課題の優先順位を付けていきます。

STEP2.目的を言語化して共通認識を持つ

広報PRにおける目標、目的を明確にしていきます。広報PR施策は、上席の方やチームメンバーはもちろん、職員全員で行うとより効果的です。広報PRの役割は広いため、ステークホルダーとの関係構築を良好にするなど同じ目的に向かって歩んでいきたいものです。そのためにも広報PR目的が言語化されると一体感が出て、軌道修正もしやすくなります。

広報PR施策を行う理由を言葉にし、場合によっては部内や職員間で勉強会を開催する、組織向けの情報発信や冊子を配布するなどして共通認識を持っていきます。

STEP3.ステークホルダーごとに目標を定める

地方自治体の広報PR対象は多様で、各年齢層はもちろん、海外在住者、障がいのある方など、極めて幅が広くなります。すべての方に対して平等に開かれたメッセージを届けるのが理想ですが、その際に誰に対してどのような印象を持ってもらいたいのか、何を最低限伝える必要があるのかを考えながら対象者ごとに目標を設定することが重要になります。

たとえば観光者に向け、「誰でも歓迎しているまち」という印象を持ってもらいたい場合、住民や旅行者を受け入れる宿などの事業者への認識合わせ、ポスター配布によるスローガンの浸透といった施策が挙げられます。アンケートの実施、SNSのフォロワー数の増加、来訪者の数などで効果測定も併せて検討します。

STEP4.メッセージを伝える手段を選定する

ステークホルダーごとへのメッセージが定まったら、伝える手法を考えます。SNSひとつをとっても年齢層が変われば選ぶ手段は変わります。

総務省情報通信政策研究所「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」69ページ
出典:総務省情報通信政策研究所「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」69ページより(https://www.soumu.go.jp/main_content/000831290.pdf

Webサイトや広報誌、防災無線は、各自治体で発信できるオウンドメディア、基本的に無償でありフォロワー数やシェアができるSNSを基本とするアーンドメディア、広告費用を用いて広く情報を届ける交通広告やプレスリリース配信サービスを用いるペイドメディアなど、さまざまな手法を検討しましょう。

参照:令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書 令和4年8月 総務省

STEP5.情報の発信時期や広報の方法を企画する

情報を通じて行動を起こしてもらうためには、発信時期や広報PRの方法を検討する必要があります。広報というと広報誌やSNSといった情報発信手段を想起する方が多くいますが、イベント開催や勉強会、動画配信、キャンペーン、企業タイアップなど広報PRの方法は多岐にわたります。

発信記事も重要になります。「なぜ今この情報なのか」を意識すると報道につながりやすいだけでなく、情報の受け取り側も興味関心を持って見てくれるはずです。たとえば免許返納制度の案内であれば、ニュースがにぎわっている時期や過去に重大な事故が起こってしまった月日など、時期と広報手段を幅広く検討して発信します。

地方自治体の年間広報計画・プランに検討が必要な項目

地方自治体の年間広報計画において考えておきたい項目を確認していきます。各項目を検討したうえで、いつ誰に何を伝えるかを年間計画に落とし込んでいきます。

健康情報
保険制度など生活支援に必要な情報はもちろん、健康診断やワクチン・予防接種など、市民の健康を守るための情報発信が必要です。地域の食材を生かしたバランスがとれた食事方法を提案するなど、読み手が楽しみながら学べるように工夫をしながら発信をします。

生活支援
ゴミの分別といった日常生活に必要なお役立ち情報から、生活支援が必要な方に対する生活支援情報、住民の経済をサポートするための補助金や年金について情報提供をします。

防災
有事にそなえてハザードマップや災害時に必要な備品、避難訓練や防災訓練に関わる住民の命を守るイベントや情報は広報PR施策を考えるうえで織り込みたい項目です。

教育
子育て支援や学校の情報といった教育情報を充実させます。魅力的な学校の取り組み、教育に役立つ知識や情報提供の発信が喜ばれます。市民に注目したインタビューや教育従事者の話を取り上げることで読み手の関心が高まるのではないでしょうか。

観光・地域案内
観光者や移住者向けに地域を楽しめる情報、知っておきたい、訪れたい場所を発信します。まちの魅力を伝えるのは定住や移住を促す施策につながるため、必ず押さえておきたいポイントです。場所以外にも地域で活躍する注目選手や、その場所に行くことで会えるおもしろい方についても取り上げるとよいでしょう。

地方自治体の年間広報計画・プランを立てるときの3つのポイント

地方自治体の年間広報計画・プランを立てる際はどうしても情報過多になり、説明が多すぎてわかりづらいなど、発信が目的になるケースが散見されます。地方自治体における計画立案時につまずきやすい点や、気を付ける点をまとめました。ステークホルダーを意識することを忘れずに、重要となるポイントを押さえて計画を立てていきましょう

ポイント

ポイント1.地域の強みを俯瞰する

計画を立てる際に重要になるのが課題の洗い出しです。正確な課題を洗い出すと効果的な対処法、施策が立てられます。一方で、地域の課題に注目するのはもちろんですが強みに言及するのも大切です。

自分の地域には強みや特長がないと思い込んでいるケースが往々にしてありますが、どの地域にも必ず強みや特長はあります。フレームワークを活用する、住民や来訪者にアンケートを実施する、SNSでの口コミを確認するなどして地域資源を確認します。

ポイント2.わかりやすさにこだわる

地方自治体の発信に共通する点は情報過多であることです。読み手から寄せられるクレームや問い合わせに対応するのはすばらしいことですが、説明書きや注意事項が多くなると情報の受け手にとってわかりづらくなるケースもあります。

特に免責事項が多いケースは何度も読み返す必要がある文章になり、伝わりづらくなってしまいます。結果的に問い合わせが増えて対応コストがかかります。そこで、デザインやわかりやすさにこだわる必要があります。情報格差が出ないようにアナログも並行する、住民の年齢層や属性を意識するなどして発信をしましょう。

ポイント3.時流を意識する

地方自治体から発信する情報は多岐にわたるだけでなく、際限がありません。すべての情報を五月雨に発信するのは得策ではないといえます。そこで、納税のお知らせ、免許返納支援制度の案内、防災や健康情報などは社会の関心が高い時期に送ります。

年間計画策定時は季節のイベントや記念日、社会的イベントに合わせて企画を立てます。参考になるのはメディアの動きです。メディアは社会情勢や祭事を重要視するため、前年度の報道内容をひととおり確認するだけでも傾向がつかめます。

地方自治体における広報予算の立て方

地方自治体における広報PRの予算を立てる際は、通例行事やテンプレート化しているノウハウを定期的に見直しながら、発注業者の選定、通例企画の刷新など計画を立てます。ノウハウがないと「一部業者に頼んだまま」「どういった役割をはたしているのか」「効果が出ているのか」不明確になる場合があります。

ステークホルダーに対するアンケートは、Webツールを用いることで想定以上に簡単にできるので、関係者の声や効果を分析しつつ施策を厳しく判定しながら業者選定、予算決めを進めます。慣例や付き合いなどしがらみもあるかもしれませんが、実施できる部門は、取り組んでいくことを意識して進めましょう。

地方自治体の広報計画・プランを検討するときに連携したい部署

地方自治体の活動において大切になるのは、全員が広報PR担当者であるという意識を持つことです。関係者とのコミュニケーションを円滑にするためにはすべての部署と連携が必要になります。そのなかでもとりわけ重要になる部署を中心に紹介していきます。

観光
年間行事、新設された施設、イベント情報など、地域の認知度を上げるチャンスが眠っているのが観光コンテンツです。観光課が持っている情報を常に確認し、企画段階でより魅力的なコンテンツになるように協力するとよいでしょう。まちづくりや、定住につながる関係人口づくりにも深く関わっている課といえます。

環境
住民の環境課題に対する取り組みに関心が高まっています。表面的な施策や情報発信をするのではなく、長期的な広報計画に取り込むことが重要です。事業者との連携も検討しながら本質的な活動を計画します。

教育
地域の学校と連携して学校情報や活躍する人物に焦点を合わせるなど、連携をとりながら情報発信を進めます。子育て支援センターなど住民とのコミュニケーションが盛んな部署からの情報は把握しておきたいところです。

防災・危機管理
住民やまちを訪れる人々の命を守るために日頃から防災意識を高め、有事の際に安心して動けるライフラインを構築するのも広報PRの力で成せることです。防災課などと連携をとりながら人々の関心や意識を高めるイベントの企画や情報の発信が必要です。

地方自治体の広報プランや戦略事例5選

地方自治体の広報プランにおける気を付ける点や押さえておくポイントを理解したうえで、さまざまな自治体の取り組みを参考にしながら、取り入れられる点を模索していきます。すべてを踏襲できないとしても、参考にできる点は見つかるはずです。住民やステークホルダーに対して関心を集めた広報PR施策を紹介します。

事例1.佐賀県全域

生活支援の一環として、ヘルプマークの普及に貢献している佐賀県の取り組みを紹介します。援助や配慮を必要としている方が援助を受けやすくなるために身に着けるヘルプマーク。一部窓口で限定的に配布をしていましたが、JR佐賀駅内みどりの窓口で受け取れるように連携をしています。

JRでヘルプマークが配布されるのは初の試みだそうで、プレスリリースでも「全国初」とニュース性をアピールしています。ヘルプマーク配布開始日に交付式を開催するといったメディアや住民の注目を集めるタイミングも最適な事例です。

参考:ヘルプマーク全国初の取組!JR佐賀駅でヘルプマークを受け取れます!

事例2.長野県 茅野市

災害に対する迅速な対応と発信を行ったのが長野県茅野市です。2021(令和3)年9月5日の大雨被害について状況報告と対策を同月17日に発信しています。大雨による土石流、川の氾濫の被害状況に加え、ボランティアによる復旧作業の様子、ふるさと納税を用いた支援金受け付けの開始を発表しています。

スピーディーな対応もさることながら、当時の現地の様子がわかる写真を使い、茅野市長からの挨拶も掲載した、わかりやすさと心意気が伝わる発信です。

参考:令和3年9月長野県茅野市土石流災害の復旧に向けて、ふるさと納税制度による支援金の受け付けを開始

事例3.奈良県 生駒市

教育分野の興味深い取り組みを発信しているのは奈良県生駒市です。地元の小学生と大学教授、地域ボランティアが協働で開発したWebアプリをプレスリリースで配信しています。地域の学校と協働で行う取り組みは、学生の成長や学びにもつながるため参考にしたい一例です。

1年間かけて開発を行ったというWebアプリは、小学生目線で集めた地域情報を発信しています。情報発信方法にも工夫を凝らしており、クイズ形式で地域の魅力を紹介する内容になっています。市内のみならず対外的に興味を持ってもらう仕組みを地域全体を巻き込んでつくった事例です。

参照:小学生が子ども目線で作った「日本で一番ニッチ」な地域の魅力発信アプリを公開

事例4.神奈川県 横浜市

神奈川県横浜市は観光・地域案内に関して、幅広い年齢の人に向けた音楽イベントを開催しています。子どもたちがプロのミュージシャンから音楽を学ぶ体験イベントや参加型ステージなど来場者を巻き込んだ企画が目立ちます。

特長的なのが、年齢はもちろん、身体的制約や事情があって外出できない人への配慮もされている点です。外出できない人の分身となるロボットOriHimeⓇを活用して、コンサート会場での案内・イベントPRなどを実施。市民に開かれたイベントを企画・発信しています。

参考:横浜音祭り2022 開催概要発表 日本最大級の音楽フェスティバルがこの秋、横浜を舞台に開幕!

事例5.埼玉県 川口市

環境への取り組みを事業会社と連携している事例も注目に値します。埼玉県川口市は水道直結ウォーターサーバーのレンタル事業を行う企業と「プラスチックごみ削減の推進に関する連携協定」の締結を発表しています。

川口市は、2022(令和4)年3月に「ゼロカーボンシティ」を表明しています。市内各所の公共施設にマイボトルへの給水が可能なウォータースタンドを設置する本取り組みのほかにも、住民や事業者と連携して施策に取り組んでいる様子がうかがえます。

参考:8/2(火)埼玉県川口市と「プラスチックごみ削減の推進に関する連携協定」を締結

地方自治体の年間広報計画は、住民に寄り添ったわかりやすい情報の発信を意識する

地方自治体における広報PR活動は、情報連携や共有事項が多くなるので、可能な限り職員全員で広報PRへの意識を持つのが理想です。

広報PRの目的の明確化や言語化をしたうえで、勉強会実施や庁内報配布など意識の統一を目指していきます。住民向けにも、地域が持つ課題と強みを意識しながらわかりやすい情報の発信を目指していく必要があるため、過去の施策を振り返りながら行動変化が起きているかを分析します。

情報が届いていない場合は、見ていない、理解していない人に責任があると考えるのではなく、各部署で連携をしながら情報を受け取りやすいツールや方法、時期を考慮して、地域に関わる人々が快適に過ごせる情報提供ができるように、年間広報計画を立てていきましょう。

地方自治体の年間広報計画に関するQ&A

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この記事のライター

坂下 彩花

坂下 彩花

合同会社KOUYO代表。スタートアップ企業で広報と人事を兼務しながら、広報業務を一通り経験。提供する情報がない中での企画作り、メディアアプローチが強みです。これまでの広報経験を生かして広報担当者さんの役に立ちたいと思いPRTIMES MAGAZINEに参画。現在シェアハウスの愉快な仲間たちと賑やかに暮らしています。

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