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社内を動かし相乗効果を狙う広報PR。成功の鍵とは| EAT UNIQUE 小野茜

さまざまな企業の広報PR活動の支援やコンサルを行う、株式会社EAT UNIQUE(イートユニーク)代表の小野さん。10年におよぶ広報PRの経験を生かし、2022年には初の書籍『ひとり広報の戦略書』を出版。広報PR担当者同士の出会いや学びの機会を創出するなど、PRパーソンをサポートする活動にも力を入れています。

今回は、小野さんのトレンドのキャッチアップ方法や、クライアントとの向き合い方についてなど、広報PRに欠かせない内容を伺いました。

記事の後半では、「ひとり広報の物量をカバーするChatGPT活用事例」として、小野さんのChatGPT活用法や使いこなすポイントについてもお話しいただいています。

株式会社EAT UNIQUE 代表

小野 茜(Ono Akane)

サービス業や外食業界向けWEBメディアでのライター・デスク業を経て、株式会社ABCクッキングスタジオに入社。約5年の在籍中に、広報・アライアンス・新規事業開発に携わり、ゼロイチを生み出すことにチャレンジ。2016年末に退職し独立。翌年にPR支援会社として株式会社EAT UNIQUEを設立。業界・業種問わず企業の広報活動を幅広くサポート。2022年、初代プレスリリースエバンジェリスト(PR TIMES公認)に選出され、著書には「ひとり広報の戦略書」がある。

広報PRの成果に不可欠な、二人三脚と掛け算

──現在、EAT UNIQUEではどのような業務を対応していますか。

現在、クライアントは10社ほどで、スポット的な広報PRのサポートから社長室長として組織に深く入り込む仕事まで、業務の振り幅はかなり大きいですね。

一番深く関わっているクライアントでは、一般的な広報業務から企画・新規事業の立ち上げなど組織を変えるレベルの仕事まで。必要なことはなんでもチャレンジするといった感じで、業務範囲の区切りなく全部やらせてもらっています。

例えば、経営層がどうしていきたいかを聞いて、社内で共有して業務を推進するという役割。社長と二人三脚で動くことが多いですが、幹部とのコミュニケーションや現場理解も重要になってきます。

スポット的な仕事で多いのは、新商品発売の広報PRやイベントの集客のための認知獲得です。1年くらいかけて取り組めると理想的なのですが、なかにはイベント3ヵ月前になってお手上げ状態で依頼されることもありますね。

できることはゼロではないのですが、1年前と3ヵ月前とでは、仕掛けられることや巻き込める人の数が違います。残された時間が少ない場合は、広報PRの特性上、成果が出にくいことをお伝えしてご理解いただくように努めています。

──クライアントの期待値調整は広報PR担当者が悩むところですよね。小野さんが心がけていることを教えてください。

過度な期待を持たせないことは意識しています。広報PR担当者を雇いさえすればメディアに出してもらえると思っている経営者の方は少なくありません。メディア露出の意思決定は、あくまでメディア側にありますよね。広報PR担当者に全責任を負わせるというのは酷です。とはいえ準備期間が少なく、成果につなげるのが難しい状況であっても、最大限サポートいたします。ただし、同時に「社内を動かしてください」ということはしっかりお伝えしています。

広報PRの成果を出すために大切なのは、企業と広報PR担当者が二人三脚で取り組むこと。社内の動きと広報PR活動が掛け算になることで、相乗効果が生まれて成果に結びつくんです。

──多くの企業の広報PR支援をしていると、情報のインプット大変なのでは……。トレンドをキャッチアップする方法、情報を見るときのポイントはありますか。

1つは、普段から地道にテレビや雑誌などのメディアに触れることでしょうか。「仕事だから見なきゃ」という感覚ではなく、日常生活の中で自然に触れるように意識しています。

食事、読書、入浴をするときは、1つのことだけに集中するのではなく、同時に動画を流したりしています。仕事中はテレビをつけて音をミュートにしていて。番組のラインナップをサッと見て、興味があれば音を出して観るという使い方をしていますね。

雑誌はスマホで隙間時間に見るのですが、書籍は買って読んでいます。最初に目次に目を通して、読んだほうがいいと思ったところにポストイットを貼っておく。新幹線の車中や、飛行機移動時の空港や機内で過ごすときなど、まとまった時間が取れるときに読んでいます。

もう1つのキャッチアップの方法は、愛好家に話を聞くこと。その分野を愛している人に聞くのが1番いいと思っていて、広く、浅く、速く情報をキャッチするには、専門家ではなく愛好家からの情報がフィットします。

友人・知人の中で、その分野の情報発信をしている人に話を聞いたり、SNSをチェックしたりしています。高級寿司なら〇〇さん、博多グルメなら〇〇さんなど、私の中にあるジャンルやエリア別の愛好家リストを駆使していますね。

また、情報を見るポイントとしては、広報PR的視点と生活者的視点の両方を持っていることが大切だと思っています。

広報PR的視点で見ると、物価高などの背景から「プチプラ特集が目立つな」とか、「SDGs特集やフェムテックの特集が増えているな」「新しい連載が始まった」などとメディアを観察し、編集部へ提案する内容のヒントにしています。

一方で生活者の視点としては、私の年代とは異なる年代向けのファッション誌を見て「オフィスでこんな格好するんだ」「こんな飲食店の使い方をするんだ」と純粋な興味本位で見ています。女性誌だけではなく、男性誌やスポーツ系・ライフスタイル系・旅行誌など広く目を向けていますね。

EAT UNIQUE 小野氏インタビュー01

ひとり広報の物量をカバーするChatGPT活用事例

──幅広い業務を行う中で、ChatGPTを使っている場面はありますか。

プレスリリースや企画書、社内向けの資料やSNS投稿の文章作成に部分的に活用しています。長文の内容を仕上げるというよりは、書く場面が多いという意味でボリューム感があるのが、広報PRの業務の特徴です。文章作成にChatGPTの力を借りることで業務の効率化を図っています。

ChatGPT活用1:ブランド認知度のリサーチ

クライアントのブランド名や商品名、店舗名を入力して、「どこまで情報が浸透しているか」「どう見られているか」の2つの視点で大まかにチェックしています。ここ最近は、問い合わせやクライアントからの仕事の依頼を受けて最初にChatGPTを使ってリサーチすることが多くなりました。

例えば、ホームページがあってSNSを運用しているクライアントでも、ChatGPTで「このお店知ってる?」と聞いたらまったく出てこない。その場合は、会社情報がネット上に広がっていない、プレスリリースを出していないなどから、ニュースや情報、アウトプットの総量が少ない、という仮説が立てられます。それを元に、クライアントの今の立ち位置を、大まかにつかむための使い方です。

飲食店検索

ChatGPT活用2:企画書のベース作り

メディアの方に向けた企画書の骨組み作りに活用しています。例えば、「〇〇という新商品の発売について、テレビ局のディレクターに提案する企画書を作って」とプロンプトを書く。すると、件名・挨拶文・企画概要が出てくるので、Wordに貼り付けて編集します。肝になる部分は自分の頭を使わないといけないので、あくまで作業効率化のためのベース作りです。

ChatGPT活用3:プレスリリースのベース作り

比較的限られた情報だけの場合や、インフォメーションのように加工する必要がない情報が大半を占めるプレスリリースを書くときに使っています。例えば、飲食店のオープンやイベント情報などのプレスリリースは型がある程度決まっています。情報解禁には慎重に、関係する情報をできる限り除き、概要や要約を入力して骨子を作ってもらう。あとは、自分で肉付けしていきます。

業務提携など相手先がいて情報の取り扱いに慎重になるケースや、戦略的な構成を書く場合など、複雑で頭を使わないといけないケースは、部分的にChatGPTを使うことがあっても、基本的にはゼロから自分で書いています。

ChatGPT活用4:Twitter投稿文の量産

新商品、既存商品にかかわらず、売り続けるためには定期的な情報発信は欠かせず、発売時だけSNSに投稿をしても、情報は瞬時に消費される時代です。複数回にわたり、いくつも投稿を考えるときに活用するようにしています。

例を挙げると、1回目はプレスリリースを流用して投稿文を作り、2回目以降は初回投稿を活用して「似た感じで5パターン作って」とChatGPTに指示する。瞬時にアレンジされた投稿文案が作成できるので、けっこう使い勝手はいいですね。

SNS投稿文

ChatGPT活用5:社内資料の素案作り

社内報や研修資料用の文章生成に使っています。例えば、社内報やレターの中で「損益分岐点」や「LTV」など専門用語や業界特有の用語を社員教育の一環で解説する場面があります。そういった際に「新入社員にもわかる言葉で説明して」と指示するとわかりやすい説明文が出てくるので、パーツとして活用しやすいです。ほかにも、社長メッセージの原稿骨子作成や、季節を意識した挨拶文などの原稿作成に使うこともありますね。

EAT UNIQUE 小野氏インタビュー02

AIの苦手を把握、恐れず目的と活用範囲をルール化

──ChatGPTを使いこなすポイント、導入する際の注意点はどのようなところにあると思いますか

1. 3〜4ターンの対話で完成させる

使い始めた当初は、質問を投げて返ってくることがすべてだと思って1ターンしか見ていませんでした。使っていくうちに、返ってきたものを人間がいかにうまく対応するかが重要だとわかって。「対話型AIといわれているのは、こういうことか」と実感しましたね。

1ターン目はほしい情報の7割と考えて、3〜4ターンのやり取りでほしい回答にもっていく。AIなどに精通せずとも多くの人が活用するという点においては、それがChatGPTの上手な使い方ではないでしょうか。3〜4ターンを心積もりしておくことで、私の質問の精度も上がり、結果、アウトプットがよくなってきたと感じています。

2. 使う目的と範囲を限定する

ファクトチェックが必要な内容の場合、アウトプットされたものを自分たちで調べ直す手間がかかります。また、ChatGPTでは最新情報が出てこないため、トレンドや時代によって変数が多い内容については、ほかの検索手段のほうが向いています。

使うべきでないところで使ってしまうと、かえって自分たちの仕事を増やすことになりかねません。社内に導入する場合は、決裁者が使う目的を決めておく必要があると思いますね。

経験の浅い広報PR担当者が使う場合、業務の範囲を区切って使ってもらうとよいでしょう。例えば、SNSの投稿文であれば「こうやって指示を入れると、こんなふうに出てくるよね」と一緒にChatGPT を使ってみる。実際にやってみせてあげれば、投稿文の作成などパターン化した業務は任せられると思います。

何を目的に活用するか、どういうふうに活用するかをチームで決めて、簡単でもいいのでルール化して運用していくことが大切だと感じています。

3. ルールを変えていく柔軟性を持つ

1度決めたルールであっても、必要に応じて柔軟に変えていくスタンスは重要です。決めたことを変えようとすると反発が起こりがちですが、何かを固定化することは、変容スピードの速いこの時代においては大きなハードルになると思うんです。ChatGPT自体も変化し続けていますので、人間側も変化をいとわない姿勢が大切ではないでしょうか。

4.リスクを恐れない

リスクを懸念してChatGPTを使わないのは大きな機会損失になると思っています。これはChatGPTに限らず、これから生まれてくる新たなサービスなどあらゆる「変化」に対して言えることです。ルールを作ってトライする企業と、リスクを避けてまったく使わなかった企業では、1年後にかなりの差が生まれると考えています。

AIに限らず、リスクをとって新しいことにトライする挑戦心がなければ、今の時代やこれからの時代で存在し続けること、成長し続けることは難しいと思います。まずは、私自身があらゆることに挑戦できる姿勢や考えを持ち続けようと強く意識しています。

EAT UNIQUE 小野氏インタビュー03

広報PRの可能性を信じ、広報PRと向き合う

成果のためには臆せずクライアントに提言する小野さん。広報PRの可能性を信じて広報PRに向き合う姿勢が、よいコミュニケーションにつながっているのではないでしょうか。

今回のポイントは、

  • 社内を動かすことで、広報PR活動の相乗効果を得る
  • 情報のインプットには、広報PR的視点と生活者的視点を持つ
  • リスクをとって新しいことに挑戦する

また、小野さんには広報PRにおけるChatGPTの活用事例についてもお話いただきました。これからの広報PR活動で参考にしてみてください。

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この記事の監修者

丸花 由加里

丸花 由加里

PR TIMES MAGAZINE編集長。2021年、PR TIMESに入社し、「PR TIMES MAGAZINE」、ご利用企業向けのコミュニティイベント「PR TIMESカレッジ」の企画・運営を行う。2009年に新卒入社した大手インターネットサービス運営会社では法人営業、営業マネージャーとして9年半、その後オウンドメディアの立ち上げに参画。Webコンテンツの企画や調査設計に携わる。メディアリレーションズを主とした広報を経て、現職。

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