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繁盛店の企画の裏側と目を惹く発信術|月刊食堂×エムピーキッチン×サザコーヒー

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESでは、2024年1月19日に「繁盛店の企画の裏側と目を引く発信術」をテーマにしたユーザー会を開催しました。

登壇は、「つけ麺専門店三田製麺所」など飲食チェーン店を運営する株式会社エムピーキッチン広報部の堀遼平さん、創業50年を超える老舗コーヒーチェーン「サザコーヒー」の代表を務める鈴木太郎さん、そして『月刊食堂』の編集長を務める株式会社柴田書店の通山茂之さん。

本記事では、飲食店における情報発信のポイントやプレスリリースの活用など、企業とメディアの双方の視点から語られた内容をレポートします。

株式会社柴田書店 雑誌編集部部長 兼『月刊食堂』編集長

通山茂之(Toriyama Shigeyuki)

1998年株式会社柴田書店入社、広告部(現:企画部)配属。同社発行の外食産業のための経営誌「月刊食堂」副編集長、売れるメニューと繁盛店の秘訣を提供する「居酒屋」編集長を歴任し、2011年7月より「月刊食堂」編集長。2017年2月からは雑誌編集部部長も兼任し、現職。柴田書店入社以降、日本全国はもちろんアジアなどの海外へも繁盛レストランの取材を数多く重ね、その豊富なデータと経験をもとにした情報発信・セミナー登壇を行う。

株式会社エムピーキッチン 広報部 マネージャー

堀 遼平(Hori Ryohei)

1993年生まれ。2017年エムピーキッチン入社。マーケティング業務や新規事業の立ち上げ、広告運用に従事。複数のIPコラボ企画を担当する。2023年より広報部専任。

株式会社サザコーヒー 代表取締役社長

鈴木太郎(Suzuki Taro)

1969年茨城県生まれ。コロンビアサザコーヒー農園主、コーヒー味覚鑑定とコーヒー豆買い付け業務担当、日本スペシャルティコーヒー協会理事(コーヒーブリューワーズ委員会委員長:ハンドドリップやサイフォンの競技会担当)、元Qグレーダー、コーヒー品評会の国際審査員(BoP CoE ToH など)。

話題を集める情報発信のポイント

広報PR活動で欠かせない、プレスリリース。飲食店の配信機会として、新商品の発売や季節のキャンペーン、新店舗オープンなどが挙げられますが、その幅を広げるにはどうしたらよいのでしょうか。

エムピーキッチンの堀さんとサザコーヒーの鈴木さんに、プレスリリース配信のタイミングや情報発信するうえで大切にしているポイントを伺いました。

生活者が求める「ベター情報」を積極的に配信

堀さん(以下、敬称略)/エムピーキッチン:企業がプレスリリースで発信する情報は、大きく分けて「マスト情報」と「ベター情報」の2種類があります。

  • マスト情報:決定事項や商品・企画の概要など、企業として発表しなくてはいけない「事業者目線」の情報。営業本部や商品部が主体となって決定
  • ベター情報:反響などのファクトや動画・画像コンテンツなど、必須ではないけれど出したほうがいい情報。「生活者のニーズからどのような情報が求められているか」に基づいて発信

現在弊社が力を入れているのが「ベター情報」の発信です。口コミやネットの評価、売れ行きなどのデータから「生活者が求めている情報や興味を持つ情報は何か」という「生活者目線」を大切にした客観的なネタづくりを心がけています。

また、マスト情報とベター情報に加えて、弊社が成長していく中で発信していくべき情報に“こうありたい”という想いを乗せた「ウォント情報」があります。これは、三田製麺所が未出店の地域で「つけ麺」の認知を拡大させ、「常連さん」にひとつ上のフェーズである「ファン」になってもらうための、価値創造やエムピーキッチンが目指したい姿に関する情報です。

例えば、三田製麺所でファンミーティングをしたり、毎週水曜に公式ライブ配信をしたり、三田製麺所が好きでたまらないというファンを増やす、さまざまな取り組みをプレスリリースで配信しています。

参考:【三田製麺所】つけ麺店による公式LIVE配信 !?『#みたラジ』 毎週水曜日18時ころ放送スタート!
参考:三田製麺所初のファンミーティング実施リポート! 12月からの15周年大感謝祭 第2弾も発表

ユーザー会 月刊食堂×エムピーキッチン×サザコーヒー 01

プレスリリースは「記憶に残る」ことを重視

鈴木さん(以下、敬称略)/サザコーヒー:コーヒーは実際に飲んで香りや味わいを感じて初めて価値がわかるため、目からの情報だけではその魅力を伝えにくいという難しさがあります。見た目も茶色い液体なので、「うちのコーヒーは最高だ」と伝えたくても、ほかとの差別化がしにくいんですね。

だからこそ、大切にしているのは「読み手の記憶に残る」こと。ただ「おいしいコーヒー」という話だけでは、無限に流れてくる情報の中に埋もれてしまうだけですが、驚くような話やインパクトのある話題なら、人の記憶に残ると思うんです。

また、どんな情報が誰に刺さるのかはわかりませんし、とにかくプレスリリースの配信回数を増やすことも大切だと思います。

ユーザー会 月刊食堂×エムピーキッチン×サザコーヒー 02

プレスリリースから見る大反響の企画

生活者目線を大切にした2社のプレスリリース。読者が求める情報を届けるメディアにとっても、この「生活者目線」はポイントになります。ここからは、反響があった企画、そしてプレスリリースをどう活かしたのかお話いただいた内容です。

周年記念リリースの反響を分析して追加配信

堀/エムピーキッチン:三田製麺所では昨年、15周年に関連したプレスリリースを大きく2つに分けて配信しました。ひとつ目の15周年大感謝祭開催を発表した「【三田製麺所】15周年を記念して新メニュー導入&『大感謝祭』開催!濃厚スープを”もっと濃く”した特濃つけ麺や、たまごかけ麺などを導入」は、普段の10倍ほどの反響がありました。

ユーザー会 月刊食堂×エムピーキッチン×サザコーヒー 03

数ある15周年のトピックの中でも『たまごかけ麺』の反響がずば抜けて大きかったため、これをもっとプッシュしようと、追加でプレスリリースを配信。さらに人気を後押しできるように「ベター情報」を重視した内容を広報主導で作成しました。

『たまごかけ麺』の美味しい食べ方やおすすめのアレンジ、動画コンテンツなど、「あったらおもしろいかな」という情報を含めたプレスリリースにしたのですが、前回の2倍、通常時の20倍もの反響があり、三田製麺所でこれまで出したプレスリリースの中でも過去最高の反響でした。お客さまがこういう情報を求めているのを実感しています。

エムピーキッチン プレスリリース

参考:【速報】三田製麺所の新商品『たまごかけ麺』が大人気! 発売1週間で早くも“卵1万個”の大台を突破

驚きを提供するサザコーヒーの広報PR事例

鈴木/サザコーヒー:当社からの事例は、『ジャパン・ブリューワーズ・カップ』というコーヒー抽出の国内競技会で、サザコーヒーの従業員の飯高亘(いいだかわたる)君が優勝したことを伝えるプレスリリースです。日本大会の優勝者は世界大会に出場することができるため、「優勝しました」「次は世界一になればいいな」という思いを込めて配信しました。

飯高君が競技会で使用したヌグオ農園の「パナマゲイシャ」と呼ばれるコーヒー豆は、香りも濃度もほかのコーヒーとは明らかに違い、実際に飲んでみるとその素晴らしさがわかります。しかしこれは、プレスリリースだけでは伝わらないので、体験してもらうしかないと『日本のトップバリスタ 飯高亘があなたのために淹れる特別な一杯』というイベントも実施しました。素晴らしさをたくさんの人に広く知ってもらえれば、コーヒー業界のためにもなるし、コーヒー好きな人たちの生活の潤にも少しは貢献できるのではと思っています。

サザコーヒー プレスリリース

参考:今年のコーヒー チャンピオン おいしい 日本一 飯髙亘 選手

『月刊食堂』の企画の作り方・取材店の決め方

ここからは、『月刊食堂』編集長の通山さんの講演。自社が発信した情報をメディアがどのように受け取り、どう企画にしていくのか。多くの広報PR担当者から気になるポイントをお話いただきました。

──『月刊食堂』ではどのように特集や取材店を決めているのでしょうか。

通山さん(以下、敬称略)/柴田書店:『月刊食堂』は経営誌なので、企業がどういう悩みや疑問、どういう情報を必要としているのかが本づくりの土台になっています。

特集の決め方は、基本的にはお店へ足を運ぶ「フィールドワーク」と「経営者へのヒアリング」。取材先と本を買ってくれる人が同じという特殊な雑誌でもあるので、買い手である経営者にニーズを聞いてしまうのが効率的ですよね。

一方、取材店を決めるときには、インスタグラムやX(旧 Twitter)などのSNSを活用します。『月刊食堂』はBtoBの雑誌ですが、その飲食店を実際に評価するのは一般の生活者です。経営の最終目標である「利益をどう残すのか」という部分にわれわれが貢献するためには、「どれぐらいその飲食店が愛されているか」「どれぐらい社会に必要とされているか」を知ることが大切で、その点においてSNSはとても効果的なツールだと思います。

また、僕自身は取材店を決める際には、「あの店を絶対に取材したほうがいいよ」「あの店に行くべきだよ」という経営者からの声も確度の高い情報としてとても大事にしています。

──経営者のヒアリングから決まった特集などがあれば教えてください。

通山/柴田書店:『繁盛店の全メニュー』という特集はそのひとつです。その店が提供している商品130点をすべて撮影し、その原価率や一品あたりの調理時間、キッチンのポジション別の作業負荷などをすべて数値化しました。

この特集は、外食経営者さんとの会話の中で「私たちが本当に見たいのは君たちのバイアスがかかっていない情報だ」と言われたのがきっかけで実現した特集です。僕にとってはショックな言葉でしたが、読者が求めていることならそれを特集するのが一番いいだろうと思いました。

また、『調理を合理化する裏技・隠れ技』という特集も経営者とのヒアリングから生まれたものです。人材不足という飲食店の課題に対して、「一人ひとりの力を上げていきましょう」という道徳的な話ではなく、経営者目線に立って「人をなるべく使わなくて済む、調理の合理化策」を特集の内容にしました。

ユーザー会 月刊食堂×エムピーキッチン×サザコーヒー 04

メディアや生活者の目を引く飲食店のプレスリリース

──最後に、通山さんに事前に見ていただいた株式会社アークミールさんのプレスリリースをもとに、プレスリリースで必要な視点について解説していただきたいと思います

アークミール プレスリリース

参考:2023年末、神奈川・栃木に「ステーキのどん」新店舗がオープン!12月22日 川崎生田店オープン、12月29日 小山犬塚店オープン予定

通山/柴田書店:飲食店はスマートフォンの画角サイズにとっても合う商売です。同じサイズで飛行機のような大きなものを宣伝しても、イメージが湧きにくいと思いますが、飲食店の場合、料理はもちろん、店内やスタッフなど画角がちょうどよくて情報が伝わりやすいんです。

僕たちがお店を選ぶとき、理屈は決めないですよね。では何で決めるかというと、「おいしそう」「行ってみたい」と思うかどうか。そういう意味で、スマートフォンの画角に合っているというのは、飲食店の大きなアドバンテージだと思います。ですから、プレスリリースも、ビジュアルを中心にして見せていくのがいいでしょうね。

また、このプレスリリースにはテーブルと座席数、駐車場台数についての記載があります。われわれは外食業界の経営誌なので、写真だけでなくこうした数字からもさまざまな情報を読み取ることも多いです。

通山さんに外食産業を20年以上追い続けてきて感じる広報PRの変化、メディアの介在価値を窺っています。「飲食店は「信頼」を得ること。広報PRがうまい店に共通する5ヵ条」を合わせてご覧ください。

月刊食堂×エムピーキッチン×サザコーヒー

まとめ:生活者目線に立った広報PRで必要とされる情報を発信

企業とメディア、いずれも生活者の目線を大切にしています。登壇者の方々が話した内容の中から、広報PR・情報発信に関する考え方のポイントを下記にまとめます。

堀さん/株式会社エムピーキッチン

  • 「マスト情報」だけでなく、生活者が興味を持つ「ベター情報」を積極的に発信する
  • 配信したプレスリリースを分析し、さらなる話題につなげる

鈴木さん/株式会社サザコーヒー

  • インパクトや驚きを大切にした「読み手の記憶に残る」プレスリリースを配信する
  • 情報が埋もれないために、漏れなく届けるために配信回数を増やす

通山さん/株式会社柴田書店

  • 自社が発信したい情報ではなく、読み手が必要とする情報を大切にする
  • 飲食店はスマートフォンの画角にぴったり。プレスリリースも画像を大切にする

飲食店側とメディア側の双方の視点からの情報発信で大切にしていることや企画の考え方は飲食店を運営する企業はもちろん、幅広い業界の人にとって参考になるユーザー会だったのではないでしょうか。

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