生活者のニーズは細分化し、市場には情報があふれています。そのなかで、商品やサービスが人々に選ばれ続けるためには、戦略的に現代の生活者の興味・関心を捉え、情報を確実に届けるための工夫が必要です。
株式会社PR TIMESは、「おいしい博覧会2025秋冬」にて、出展企業向けに特別セミナーを実施しました。登壇したのは、高橋咲彩さん(LDK 編集長)、和田史子さん(GetNavi 編集長)、峠田浩さん(THE TIME, プロデューサー)、森岡大地さん(日経クロストレンド 副編集長)の4名です。
本記事では、セミナーで語られた「近年の生活者の食に対する傾向」や「情報発信の重要なポイント」について、当日のお話をもとにレポートします。
2025年9月30日当時の内容となります。
生活者目線で見る2つのキーワード「栄パ」「家狭」
広告やタイアップを行わず、商品評価を掲載することで知られる雑誌『LDK』。使う人の視点を重視したコンテンツづくりを大切にしています。商品を編集部と専門家が試し、科学的な検証と生活シーンを想定したテストの両輪で判断し、ユーザーに正直な評価を伝えています。
新しい商品でなくても、話題になっていなくても、生活者のためになるものを取り上げていると語る編集長の高橋さん。読者の反応から得られた2026年につながる2つのキーワードを紹介してくれました。
栄養パフォーマンスの「二極化」
一つ目のキーワードとして紹介されたのは、栄養パフォーマンスの「二極化」。「効率的に取りたい」というニーズと「食材から丁寧に取りたい」というニーズが顕著だといいます。
効率的に取りたいニーズに対しては、フリーズドライ野菜スープや高タンパク食品のように、手軽でありながら、しっかり栄養が取れる商品が人気だとのこと。食材から丁寧に取りたいニーズに対しては、2025年にブームとなったせいろ蒸しを筆頭に、時短調理グッズなどを活用して素材のおいしさを活かした手間の少ない調理が注目を集めているそうです。買い物時の視点で考えると、「効率的に栄養が取れる」などのおいしさやボリューム以外の魅力がパッケージに打ち出されていると、より手に取りやすくなるのではないかと述べていました。
「おうちが狭い」「キッチンが狭い」問題
二つ目のキーワードとして挙げられたのは「おうちやキッチンが狭い問題」です。「収納がとにかく足りない」「箱ごと置いておくスペースがない」といった声が、生活者からよく聞かれるといいます。
とくにキッチンについては、保管しておかなければいけないものが多いため、箱以外の簡易なパッケージの需要が高くなっているそうです。SDGsの観点から「外箱をなくす」という動きと合わせて、「収納負担が減る」という生活者目線のメリットもあるとのことでした。
家電と食品に起きた、時代に合わせた変化とは
続いて登壇したのは、2025年12月号よりカタログ主体の誌面づくりから脱却し、テーマを深掘りする特集主義へと全面リニューアルを図った『GetNavi』の編集長の和田さん。生活家電やIT・デジタルガジェットを中心に、モビリティ、雑貨・日用品、グルメやお酒に至るまで、幅広い「モノ情報」を紹介しています。和田さんは、編集部がとくに注目している、二つの商品カテゴリについて解説しました。

株式会社ワン・パブリッシング 『GetNavi』編集長
女性誌や情報誌などの編集を経験した後、2017年学研プラスに入社。ウェブメディア『GetNavi web』編集部にて文房具ジャンル等を担当、『文房具総選挙』の企画運営に携わる一方で、企業受託案件なども多数担当。また20-30代女性向けのライフスタイルウェブマガジン『@Living』編集部を兼務し、家時間の快適化を多角的に発信。2021年にGetNavi web副編集長、2022年より@Living編集長、 2024年7月にはGetNavi web編集長に就任し、2025年にサイトのフルリニューアルを果たす。2025年12月号(10月24日発売)より現職。
冷凍食品の定着による調理家電の進化
人口減少にともなって多くの家電の販売量が減っているなか、数少ない売れ行き好調の商品が調理家電。
例えば、かつては数千円の「手軽な家電」だったトースターが、この10年ほどで2〜3万円台の「高級トースター」というカテゴリーを確立しているといいます。そして、最近の高級トースターの多くが搭載しているのが、冷凍食品などをよりおいしくリベイクするための専用モード。冷凍食品へのニーズの高まりを受けて、家電も進化しているそうです。
また、オーブンレンジも冷凍食品人気の影響を受け、「温め」という基本機能を徹底的に見直す方向にシフト。セカンド冷凍庫の注目度も高まっており、冷凍食品の人気に拍車をかけています。
機能性だけでなく「おいしさ」を求める動き
もう一つ、『GetNavi』の編集部で注目しているのが「機能性食品のグルメ化」です。
便利・ヘルシー・時短などの機能性をうたう食品は、今までは「味が二の次」と見られがちでした。ところが近年、それらの食品は、おいしさの面でも大きく進化。従来の食品と遜色なく、ライフスタイルや、その日の体調・都合に合わせて選べるように変化を遂げているそうです。
(例)
- アルコールテイスト飲料
- ノンカフェイン飲料
- 糖質オフ・ゼロビール
- 冷凍食品
- プロテイン食品
- 回転寿司
エモーショナルな開発ストーリーが不可欠
また、新製品情報として、機能や性能、スペックを横並びで伝えることは重要ですが、それだけでは生活者の心には残りにくい。最終的に選ばれ、長く支持されるかどうかを左右するのは、その商品がどんな思いで、どんな苦労を経て生まれたのかという「製品開発の背景にあるストーリー」だと和田さん。
大企業やロングセラー商品ほど、開発当時のエピソードが社内で失われているケースも少なくありません。だからこそ広報やマーケティング担当者が開発現場と積極的に対話し、数字には表れない物語を掘り起こして蓄積し、外に伝えていくことが、ブランドへの理解と継続的な支持につながると強調しました。
情報があふれる時代、どうすれば振り向いてもらえるか
続いて、TBSの報道・情報番組の『THE TIME,』プロデューサーの峠田さんが登壇。報道・ドラマ・営業部門を経て、再び情報番組に戻ってきた経験をもとに、食に関わるテレビのトレンドについて解説しました。

株式会社 TBSテレビ『THE TIME,』プロデューサー
2004年、TBSに入社。情報制作局で「みのもんたの朝ズバッ!」を担当。その後、2009年より報道局で「NEWS23」「Nスタ」、「サンデーモーニング」や政治部記者を担務。選挙特番や報道の日などの報道特番を演出。2014年制作局・ドラマ制作部へ異動。プロデュース作品は「逃げるは恥だが役に立つ」「コウノドリ」「下町ロケット」など。その後営業局を経て現在は情報制作局に戻り、「THE TIME,」の番組プロデューサーとして「TIMEマーケティング部」「プチマーケ部」を立ち上げる。
「自分ごと」として受け取られる特別感を伝える
SNSが広がり、自己発信をする人が増えたことで、「自分なりの体験」「自分なりの特徴」を実現する商品やサービスへの関心が高まっていると峠田さん。多くのメーカーが「この商品はあなたに合っている」「あなたが求めているものである」とどう打ち出すかに工夫を凝らしているといいます。大量消費時代においては、その人にとっての「特別感」をどう表現し伝えるかが課題になると語りました。
また、峠田さんが作るテレビ番組においては、その商品やお店、サービスの「特別感」を生活者に伝えるために、2行の文章で興味を持たせる工夫をしています。情報過多の時代のため、できるだけ端的に生活者に届くメッセージを打ち出すことが大事だそうです。特に、忙しい方が多い朝の時間帯においては、視聴者に合ったキーワードを最低一つ用意して、それだけでも覚えてもらえるように番組を構築しています。
共感を生む端的なメッセージを採用する
キャッチコピーなどで、シンプルでパーソナルなメッセージを伝えていることも、最近売れている商品の共通点です。商品開発の背景にあるエピソードは視聴者の共感を生みやすく、テレビでも取り上げやすいため積極的に伝えてほしいと締めくくりました。
再注目される消費行動と新しい現代ニーズ
生活者に価値を届ける工程のすべてを「マーケティング」と定義して、マーケティングに関わる幅広い情報を発信している『日経クロストレンド』。副編集長の森岡さんが、現代人の消費行動のどのような点に注目し、記事を作成しているかについて紹介します。
あらためて重要視されるリアルな売り場の「体験」
森岡さんは、つい注目しがちなデジタルマーケティングやSNS、CMだけではなく、「リアルな売り場」の大切さを再認識しているそうです。
コロナ禍以降、人々の購買活動がEC中心になるのではと言われていましたが、その予想に反し、多くの生活者が実店舗に足を運び、実際に商品を手に取ってから購入。「売り場」は一番身近な体験の場として重要であり、あらためて、物を買うという体験自体が楽しいことに気づいた方も多いはずだとお話されました。
近年売り上げを伸ばしている企業の多くは、商品への思いや熱量をバイヤーや店長に直接伝え、売り場の確保に奔走しているそう。人と人との関わりの重要性が、今一度見直されているのではないでしょうか。
ヤッホーブルーイングとセブン‐イレブン・ジャパンが共同開発したクラフトビール「有頂天エイリアンズ」は、象徴的な事例です。SNSでの話題化に加え、全国の店舗での展開を見据えたコミュニケーションや調整を重ねることで、想定を超える販売実績を記録しています。
参考:ヤッホー×セブン初共同開発「有頂天エイリアンズ」発売から3か月で合計出荷数量110万本を突破
「思考負担を減らしたい」というニーズの増加
さらに森岡さんは、共働き・フルタイムで日々忙しく働く方が増えるなか、「考えるリソース」が圧迫しているという現代人の生活課題を指摘しました。
「考える量を減らしたい」「選択する負荷を減らしたい」というニーズに対して人気を博しているのが、「思考負担軽減食」。電子レンジで加熱するだけで食べられる、オイシックス・ラ・大地が展開する「デリOisix」がヒットしています。主菜と副菜がセットになっており、野菜などもしっかり入っていてメニューに悩まずに済むうえ、注文や宅配のスキップも簡単で、考える負担を減らしているのが特徴です。
参考:調理不要のReady to eat食品市場が世界規模で急拡大中 4,000人がコース登録待ち ”超タイパ”夕食「デリOisix」がわずか11か月で50万食突破
また、近年味わいが格段に向上している冷凍食品の人気も高まっており、主食と主菜がセットになった「ワンプレート冷食」が、手軽にかつ栄養が取れる新しいジャンルとして注目を集めているそうです。大きなヒット商品だけでなく、新しい価値を少しでも届けていれば取材したいと思うメディアがあるはずなので、積極的に自信を持って情報発信してほしいとのアドバイスもありました。
まとめ:メディアと生活者に「刺さる」発信軸を見直そう
商品や情報が飽和する現代。「どうしたら生活者に届き、選ばれるか」という視点で4名にお話しいただきました。
2026年以降も引き続き予想される物価高騰やライフスタイルの変化など、企業努力だけではコントロールできない環境下にあります。また、味や時短はもちろん、栄養価や利便性、体験で得られる感動など、食に求められる価値も多様化しています。そのような中で商品の価値は「何を伝えるか」だけでなく、「どう伝えるか」も大切。生活者の思考負担を減らすというニーズに合わせた伝え方や、商品の魅力に加えて共感を生むストーリーのつくり方など、4名のお話には通ずる点がありました。
今回のセミナーで語られた、現代の生活者の心理や行動を的確に捉えた視点や手法は、業界を問わず役立つポイントが多かったのではないでしょうか。自社商品の情報発信や定番商品の魅力の伝え方に課題を感じている広報PR担当の方は、ぜひ参考にしてみてください。
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