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広報PRの介在価値を体現。AIと部分最適を図り社内のKPI達成へ貢献|ラフール 大澤直人

顧客との有効な関係を築きメディアリレーションズにつなげ、年間のプレスリリース発表数は60件以上、メディアへの寄稿は10件以上。そして、営業部をはじめ、各事業部のKPI達成のために貢献するなど、多くの役割を担う株式会社ラフール大澤直人さん。

広報PRに対してどのような考えを持ち、日ごろ活動しているのか。多くの役割をひとり広報として務める大澤さんに迫ります。

また、記事の後半では「生成AI ChatGPTの広報PR活用術」として、大澤さんのChatGPTの活用術、ChatGPTとの付き合い方についてもお話いただいています。

株式会社ラフールの最新のプレスリリースはこちら:株式会社ラフールのプレスリリース

株式会社ラフール 経営戦略室 広報PR

大澤 直人(Osawa Naoto)

広告代理店、PR会社にて、大手菓子メーカーや自動車メーカーなどを中心としたプロモーション支援に従事。その後、広報PR・マーケティング支援のフリーランスを経て、2018年に株式会社ラフールへ入社。現在は経営戦略室にて、組織改善SaaSプロダクト「ラフールサーベイ」のサービス広報PR、コーポレートブランディングに従事。

広報PR担当者の強みを活かし各部署のKPI達成へ貢献

──大澤さんは普段どのような業務をされていますか。

社内の資産を整理し、社外へ情報を発信。簡潔に言うとステークホルダーとの良好な関係を築いていけるように日々動いています。

例えば、自社サービスをご活用いただき、成果が出ているお客さまの事例、自社の取り組みや社員の働きをまとめ、企画書を作ってメディアの方にアプローチ。サービスの新機能、協業や新たな取り組みを発信する際のプレスリリースの作成、そして定期的にニュースレターを活用して、メディアの方に情報を提供しています。ほかにも、さまざまなアワードへのエントリーをしたり、メディアに寄稿するために原稿を考えたりと広く活動していますね。

そのために、社内の情報のキャッチアップは常に行っています。

──社内の情報のキャッチアップ、ネタ探しはどのように行っていますか。

現在、経営戦略室という部署に所属しており、社内の情報のキャッチアップのため、経営陣、各部署の部長やマネージャーの意見を得やすい体制にしてもらっています。

週1回の執行会議に参加して会社全体の動きや課題の把握、もう少し現場寄りのセールス、マーケティング、カスタマーサクセスの情報は、隔週で各マネージャーと定例を設けつつ、大きな動きや広報が力になれそうなことを提案・ヒアリングさせてもらうようにしています。また、各部署のSlackに参加し、普段の動きを追うことで、受注状況や導入企業の課題、導入後の活用状況、成果など、現場では当たり前になっていて共有されていないネタも逃さないようにしています。そこで見つけた情報はすぐに、「プレスリリースに使えないか」「企画として出せないか」など、担当に相談しているんです。

とは言え、広報PR活動のためだけに協力をあおぐのは難しい。広報PRとしてのKPIだけでなく、各部署のKPI達成への貢献、顧客ロイヤリティを高めるためを大前提としているので、コミュニケーションが図りやすいんですよね。

──各部署のKPI達成への貢献。具体的にどのような指標を持っているのでしょうか。

マーケティング、セールスのKPIに「リード数」「商談化数」「受注数」がありますが、その数字に可能な限り貢献できるようにしています。例えば、セミナーLPを制作しているタイミングで「もしかしたらもっとこういうKWや表現のほうが参加したくなるかも」「プレスリリースでも発信してみない?」と、提案することもあります。

また、私はSNSでもよく発信しているのですが、広報PR活動をする中で自社のサービスに興味を持っていただくときがあり、サービス紹介のご希望をいただいた場合は、できる限りスムーズに案内、商談へトスアップしています。

もうひとつは、お客さまの満足度向上に寄与することです。当社のサービス※の導入で人的資本経営の取り組みや組織改善を進める企業、成果につながった企業にスポットを当てた企画を起こし、メディアの方に展開しています。何より成果を通して、働き方や生産性がどう変化したのかのお客さまのストーリーを露出につなげられるのが理想だと思っているんです。もちろんプレスリリースを出すことで、当社のメディア露出を図っていますが、その先にはお客さまがいます。そのお客さまに喜んでいただくという点に重きを置いているんですよね。

そのために、部門長やマネージャーとの定例、Slackでのキャッチアップだけでなく、週3~4日は出社して、メンバーにお客さまの声をヒヤリングに。このときも、協力してくれるメンバーに少しでもお返しができるよう、担当領域の情報や担当企業の情報などをシェアできるよう準備して臨んでいます。

※株式会社ラフールは、企業の人的資本経営やウェルビーイング経営支援を行っており、メンタルビッグデータを活用した組織改善ツール「ラフールサーベイ」を提供しています。

ラフール大澤氏インタビュー01

目的別の3つの企画。ストーリーを大切に

──広く情報をキャッチアップしている広報PR担当者の強みですね。企画書の話が出ましたが、メディアに取り上げられる企画の秘訣はありますか。

ストーリーが描けることが理想だと思っています。実際にメディアの方の取材につながった例をお伝えしますね。

大阪にある製造業の企業。社長(3代目)に取材させていただきました。2代目である社長のお父さまはカリスマ的な存在で、社長が「やるぞ」と言えばみんなついてきていた。しかし、この時代になって、なかなかそれだけだと通用しない、売り上げにも影響が出てきていた。そこで、「顧客の満足度を高めるためには、従業員の満足度を高めなければいけない」と立ち返った。働きやすい環境を整え、制度や手当を充実させたことで心身の健康意識やエンゲージメントが向上。その後、売り上げはV字回復。

こちらの会社は一例ですが、同様に社長がV字回復を語ってくれる企業をもう2社ほど用意し、まとめて提案しました。

そこに、従業員の満足度を高めるためのひとつのツールとして当社サービスをご紹介いただく。お客さまもメディアに取り上げられることで喜んでいただけますし、実際に記事を目にする読者の方も具体的にどのようなツールを使って成果につながったのかは知りたい情報だと思うので、これがひとつ望む露出のかたちかな、と思っています。

実際に記事が出た後、「記事を見て問い合わせしました」と、同じような境遇の会社から数件問い合わせがありました。単にサービスの取り上げではなく、ストーリーが伴ってこそ興味関心を高められると感じています。

──プロダクトのみのニュースで大きく取り上げられるのは難しいですよね。

そうですね。メディアの方とお話をする中で、特にベンチャー企業のツールの機能やサービスの発表だけでは取り上げづらいと言われます。そのため、目的別に3つの企画にしています。

1.大手企業の導入

1つ目は、大手企業の導入、その後の業務効率化、生産性向上です。目にする読者の方から名前が知られている企業の事例がないとインパクトに欠けるというお声もあります。大手企業の導入時にプレスリリースを配信しますが、併せて「なぜ導入したのか」「期待すること」などを展開できるようにしています。

2.導入企業のストーリー

2つ目は、前述の大阪にある製造業の企業の例で挙げた導入企業に焦点を当てたストーリーですね。各メディアが求めている企画や切り口を把握し、お客さまである企業のストーリーをメインに提案します。

3.導入後の変化

3つ目は、「〇〇が何%変わった」という数字を展開すること。これは、導入時の「なぜ導入したのか」「期待すること」とともに、導入後のストーリーとして紹介する際に使います。導入後の変化だけでニュースにならない場合は、ほかの企画の中に事例を入れたり、ニュースレターで新しい活動の事例として情報を共有したりしています。

難しいからこそ向き合わなければいけないと思いますし、どう会社として見せて行きたいのか、見られたいのかによって、広報PR活動は大きく変わると思いますね。

ラフール大澤氏インタビュー02

経営者の理解から見えた広報PRの介在価値

──大澤さんが広報PR活動で大切にしていることは何でしょうか。

まずは経営者の考え、意向を理解することですね。

広報PR担当者の方の中には、会社や上司からの評価について悶々としている方もいると思います。私も以前そういう時期がありましたが、実際には会社や経営者との期待値調整がうまくいってないことが理由の大半だと思います。例えば、会社として売り上げを追わなければならないという状況で、広報は直接的には関与できないという固定観念をもったままではよくないと思うんですよね。どうすれば商談につながり、売り上げにつながるかも考えたうえで広報活動に落とし込めると、良い循環になるはずです。プレスリリースの発表数やメディアの掲載数はもちろん目標には置きつつ、それだけではいけないと改めて感じています。

また、会社の資産がないと広報PR活動はできない。お客さまの事例も資産のひとつで、その情報を基に自分は広報PRができている、と思ったら何かしら貢献しないといけないという考えにもなりました。

──それが各部署のKPIへの貢献にもつながっているんですね。

広報PR担当者として、すぐに成果は見えないけど、ゆずれない大切なものがあります。ただ、そのエゴを通しすぎて、会社や経営者が実現したいことから遠のくこともあります。自分が大切にしたいことがあるように、相手にも同じく大切にすることがあるわけです。

「このメディアに掲載されました」「いいプレスリリースが書けました」と、自信満々で社内に伝えていた時期、ふと「これは自己満になっていないか」と自分自身に問うことがあったんです。広報のためだけの活動になっていると感じ、後に周囲に聞くと案の定そう思われていたことがわかったという経験も……。

その会社、経営者の考え、意向を知り、広報PRに何を求めているのか。そこから、広報PR担当者として、何を取り組むべきか、当事者意識を持って取り組まないと理解は得られないと思います。

それ以降は内省し、経営者の考えはもちろん、各部署の意向を理解して、自分自身の考え方、行動を変えたことでしっかりと対等に会話できるようになりましたね。ある人からは「いい意味で変わったね」と言われたことはとても嬉しく、今でも覚えています。

ラフール大澤氏インタビュー03

AIと部分最適して効率化を図る

多くの企画を遂行し、企業の広報PR活動の成果を上げる大澤さん。ここからは、そんな大澤さんのChatGPTの活用をお伺いしていきます。

データ検索にChatGPTを活用、新しい企画の切り口につなげる

──普段のお仕事についてお伺いしてきましたが、どのような業務にChatGPTを使っていますか。

プレスリリースや企画のタイトルを作成する際に使用したり、企画の壁打ち相手にしたり、何か情報を調べる際に使ったりしています。先日掲載されていた記事の中でChatGPTは「情報加工が得意」とありましたが、この「加工」という表現はとてもしっくりきました。プレスリリースや企画書のタイトルを何パターンか提案してもらい、その中から自分が伝えたいこと、届けたい相手に響きそうなことを選択して組み合わせる。

使い分けたり、自分で咀嚼して調整するのは人間ですが、最適から見つけていくことで、考える時間や実際に文章に起こしていく作業時間は大幅に削減できるはずです。すべての業務を置き換えられるわけではないと思っていますが、うまく付き合っていきたいと思っています。

企画書にしてもプレスリリースにしても、背景などを伝える際に、エビデンスとして調査結果や文献を調べると思うのですが、私の場合、逆の進め方をすることも多くて。企画ありきで調べるのではなく、見つけた調査結果から企画の切り口を探し、当初考えていなかった企画を作る。ChatGPTやBardなどのAI(人工知能)を使うと調べる時間がかなり短く済むので、この調べる作業に使うことが多いですかね。また、そのときに使えなかったとしても、おもしろいデータは後日使えるように控えておいて、探す手間を省いています。

最近は、自分が書いた寄稿文をアレンジする、メディアの特性に合わせて表現を変えるときにも活用しています。社外に情報を出していく際、経営層の考えや経営方針を入れていますが、「もっとこの観点から加えてほしい」など要望があったときのブラッシュアップにも。もちろん、そのまま使用するわけではないですが、プレスリリースや企画のタイトル同様に、選択肢を増やすうえで便利ですね。

ラフール大澤氏インタビュー04

ChatGPTとBard、自分なりの使いわけを見つける

──実際に使っている様子がわかる画面を見せていただけますか。

個人的に、ChatGPTは望んだ答えを出してくれて賢いと思うんですが、表示が遅く使いづらいなと感じるところもあるんですよね。そこで、ChatGPTを使って要素を出して、これをBardで深掘りしています。

例えば、人的資本経営についてまとめるときに使ったものを紹介しますね。

1.人的資本経営に取り組むうえで必要な要素の洗い出し(深掘りするためのプロンプトの元となる)

ChatGPTの使用例01

2.最大限に活用する要素をより詳細に挙げる(1で挙げられたものからピックアップ)

ChatGPTの使用例02

3.必要とされる仕組みを洗い出し(2をさらに深掘りする)

ChatGPTの使用例03

細かな数字は別ですが、提案された内容が正しいか、違和感がないかなどは、すぐ判断ができるので、提案されたものを確認し、またどんどん深掘りする。このように活用しています。

部分最適をして思考の時間を増やす

僕自身、企画書や依頼メールなどは、フォーマットや定型文がすでにありますが、やはり情報を整理してまとめてくれるのは便利ですよね。

例えば、調査データをだしてもらい、その出典元をもらう。そして、300~500字くらいなどを指示をして、簡潔にまとめてもらう。このような感じで使っています。

1.調査データを出す

ChatGPTの使用例04

2.出した調査データをまとめる

ChatGPTの使用例05

成果が見えづらい中で、いかに広報PRとしての介在価値、広報PR担当者の必要性を体現していくか。それこそ、広報PR担当者の業務がたくさんある中で、AIができる部分は任せて工数を削減して、新しい情報を探したり、思考する時間に使う。情報感度を常に高く持って、取り入れられるものは取り入れたいですね。

ラフール大澤氏インタビュー05

限界を決めない、枠を越えた広報の介在価値

「ゆずれない大切なものがあります」。

その言葉の通り、広報PR担当者としての信念を持ち、成果につながる取り組みができているのは、会社や経営者に対する理解が前提にあるからではないでしょうか。

今回のポイントは、

  • 企画はストーリーを大切にし、伝えたいことに応じたパターンを作る
  • 会社と経営者への理解を深め、広報PR担当者としての介在価値を考える
  • 広報PRの限界を決めず、各部署への貢献のために活動する

また、大澤さんにはChatGPTの活用と今後の付き合い方についてもお話いただきました。ぜひ、これからの広報PR活動で参考にしてみてください。

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この記事のライター

丸花 由加里

丸花 由加里

PR TIMES MAGAZINE編集長。2021年、PR TIMESに入社し、「PR TIMES MAGAZINE」、ご利用企業向けのコミュニティイベント「PR TIMESカレッジ」の企画・運営を行う。2009年に新卒入社した大手インターネットサービス運営会社では法人営業、営業マネージャーとして9年半、その後オウンドメディアの立ち上げに参画。Webコンテンツの企画や調査設計に携わる。メディアリレーションズを主とした広報を経て、現職。

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