雑誌は発行部数や売り上げは減少しているものの、オンライン化や電子化によって読者層の広がりを見せています。特集記事を中心に掲載する雑誌は、情報を深く理解するのに適し、可読性や一覧性が高いため読者が保存しておく傾向にあります。
今回はPR手段としても有効な雑誌掲載を実現するために、PR担当者が知っておきたい情報やテクニックを、誌面を持つ雑誌を前提に紹介します。
広報活動前に知っておきたい雑誌の種類
雑誌には複数の種類があります。PR担当者に関係があるものを中心に紹介します。それぞれの違いを理解して媒体研究を進めていきましょう。
発行頻度別
雑誌がどれくらいの頻度で発行されるのか、どういった流れで発行されるのかをまとめました。雑誌の発行頻度は、これから紹介する「月刊誌・隔月誌」「週刊誌・隔週刊誌」のほか、季節ごとや年1回など決めて発行する「季刊・年刊」もあります。
1.月刊誌・隔月誌
月に1度発行される月刊誌と、2ヵ月に1度の隔月誌があります。発売の約1〜2ヵ月前に取材内容が決まるケースが多く、1〜2週間前に原稿を締め切って製本されます。取材期間が比較的長く、編集者や外部ライターの企画を基に記事が作成されます。
2.週刊誌・隔週刊誌
『週刊ダイヤモンド』や『週刊東洋経済』に代表される週刊誌は、その名の通り週に1度の発売です。隔週刊誌とは2週間に1度の発行形態をとる雑誌を指します。出版社によりますが、通常は発売2〜3週間前に企画会議が開かれ、テーマが決定、記者が取材に入ります。
ジャンル別
雑誌の種類を大きく3つに分類して説明します。
1.一般誌
雑誌全般の総称を指す一般誌。発行頻度は先に挙げた週刊から季刊(季節ごと)など出版社によって異なりますが、月刊誌が多く見られます。ファッション誌、ビジネス誌、娯楽誌も一般誌に分けられます。ビジネス誌は基本的に取材・編集を社員の記者が行い、編集者が原稿をまとめます。
週刊誌は企画会議を経て内容が決められます。速報性のあるニュースを詳しく解説する企画が多い傾向にあるのも特徴です。『週刊朝日』や『サンデー毎日』のように、新聞社系の週刊誌は社員の記者が取材から原稿執筆、編集までを担当します。『週刊文春』『週刊新潮』『週刊現代』『週刊ポスト』など出版社系の週刊誌は、契約記者が取材を行い、その原稿を社員の編集者がまとめることが多いです。
2.専門誌
カメラ、飲食、サーフィンなど、ジャンルごとに絞った特集を組むのが専門誌です。一般誌に比べて読者層が細かく分かれており、ひとつのカテゴリを専門的に取材しているため知識が深められます。
3.団体誌、協会誌、企業誌
PR誌や社内報、技報など、出版を目的としない、組織に属する人に向けた情報誌です。組織内の理解促進や情報共有に用いられ、組織の帰属意識向上やコミュニティ形成に役立てられます。
雑誌出版社の編集者が行う主な3つの情報収集方法
企業の情報を伝えるために、雑誌出版社の編集者がどのような手段で情報収集をしているのかを理解します。
1.SNS
世の中のトレンドを先読みする雑誌出版社の編集者は流行に敏感です。シェアされているコンテンツやトレンドワードをSNSで積極的に確認しています。企画や取材先の選定をSNSから行う編集者は多く、日常に潜む変化や注目スポットにアンテナを張っているといえます。
2.人づて
編集者は今までの取材先や広報担当、日常会話などから情報収集をしています。日常に隠れている変化、インサイトを定義づけて言語化(例:「美魔女」「おひとりさま」など)しようと企画を立てる編集者は人から直接得られる情報や小さな変化を大切にしています。
3.プレスリリース
プレスリリースから情報収集をしている編集者は多く見られます。商品発表など話題性のある情報から、調査レポートなど数字の裏付けがとれるトレンド情報を企画のヒントにしています。
雑誌出版社への主な広報アプローチ方法と時期
雑誌出版社、編集者が喜ぶ連絡手段を理解したうえで状況に合わせてアプローチをしていきましょう。
1.メール
リモート勤務の増加に比例してメール連絡を希望するメディア関係者が増えています。雑誌編集者や出版社が公開している問い合わせフォームからのメール連絡が可能です。署名記事から電話で編集者・記者を指名してアドレスを聞き出す方法も大変有効です。
基本的に送る時間や時期に制限はないものの、企画を考えるタイミングで情報提供ができるように月刊誌であれば2ヵ月前には情報を送ります。
2.SNS
署名記事や番組のクレジットを頼りにSNSで名前を検索すると、ダイレクトメッセージを受け付けている記者が案外多くいます。雑誌の場合は外部記者が媒体に記事を提供しているケースも多いため、自社のサービスと親和性の高い記事を書く記者にアプローチもできます。
SNSでの連絡は基本的に業務が忙しくない時間帯の昼休みや夕方から夜にかけてにはなりますが、相手によって異なるので都合のよい時間帯はやり取りを重ねるうえで確認して負担をかけない時間に行います。
3.紹介
特定の記者にたどり着けない、出版社の問い合わせフォームからのメール連絡に対して返信がないといった場合は広報ネットワークなど、知り合いを通じて引き合わせてもらいます。広報仲間との情報共有や助け合いを多くの担当者が行っています。
このときに都合のよい時間帯や業務が忙しく、連絡を避けたほうがいい時間帯も教えてもらいましょう。
4.勉強会
業界トレンドや知識を深めるためにメディア関係者向けの勉強会や体験会を開きます。雑誌の編集者は取材期間が長いケースもあるため、ユーザーの声を直接聞けたり、サービスに直接触れたりする情報収集の機会を求めています。
編集者が情報収集をしている段階で求めている情報を提供するためにも、なるべく早い段階で連絡をします。後述する広告企画から特集号を選定して事前に連絡するもよし、関係を構築する中で特集する月を聞いてアプローチをするのも有効です。
雑誌出版社が取り上げやすいネタの4つのポイント
自社の情報に興味を持ってもらうため、雑誌出版社の関心事を理解します。雑誌や編集方針によって異なるため、媒体研究をしながら該当情報の有無を確認しましょう。
1.トレンド
世間の動きに関心を持つ編集者はトレンド情報に敏感です。世の中の課題や現状に対して起こっている変化を伝えます。重要なのは、トレンドを裏付ける情報や根拠です。自社サービスにおける行動変化の場合、ユーザーの声をまとめ、インタビューが可能な状態にしておくとよいでしょう。
2.人材
雑誌には変わった経歴を持つ人材や、経営者をピックアップしてくれるコーナーが見受けられます。特にビジネス誌には、インタビュー記事が多くあります。変わったバックグランドを持つ人材や、代表、役員の情報は可視化しておきましょう。
3.組織・ノウハウ
利益が出ている組織や、社員の定着率が高い企業の成功事例は有効です。組織体制や独自の人事制度がある組織は組織の課題に対する解決策やノウハウを編集者に伝えられるようにしておきましょう。
4.技術
最新技術や人気を博している技術がある場合は、取り上げてもらえる可能性が高くなります。業界関係者でなくてもわかりやすい言葉で革新性や将来性を伝えます。信頼できる情報である裏付けと一緒に資料を準備します。
雑誌出版社にアプローチする4つの広報テクニック
雑誌出版社にアプローチする際に活用できるテクニックを紹介します。
1.コーナーを指定
編集者にアプローチをする際、雑誌のコーナーを指定するのが重要です。この雑誌に載せてくださいと伝えるよりも、「自社の情報はこのコーナーにおいて役に立つ」と伝えるのです。社長のお気に入りのアイテムを紹介するコーナーや、経歴に着目するコーナーなど多岐にわたるため、少なくとも1年分のバックナンバーを見るつもりで実際に雑誌を手に取って提案ができそうなコーナーを選びます。
2.広告企画の確認
雑誌は販売部数と広告枠で利益を得ているケースがほとんどです。雑誌出版社では、広告出稿を募集する営業部が特集記事やスケジュールをあらかじめ提示している場合があります。裏技になりますが、特集記事を把握したうえで提案を行うと、編集者が欲しい情報を適切な時期に提供できる可能性があります。ホームページで広告関連の情報が掲載されたコーナーが確認できます。
3.企画書持参
上級テクニックとして紹介するのは、雑誌の企画書をつくり提案する方法です。取材時に出たキーワードなどから考案して、特集テーマを企画書としてまとめます。その際に数字やデータ、利用者の声をまとめた資料を用意すると企画として採用されやすくなります。留意すべきことは、自社の都合ではなく社会の信頼が得られる内容になっているかどうかです。
4.プレ取材
雑誌編集者には、情報を得てもすぐに企画にできないことがあります。そのため、取材対象者に対して申し訳なさを感じている方も多くいます。「企画にならなくてもいいので、プレ取材としてトレンドなど情報提供をする」と伝えるだけで時間をもらえるケースは多くあります。いざというときに思い出してもらうためにも関係を構築しましょう。
雑誌出版社の編集者とその読み手を意識した情報提供を心がける
雑誌は情報の背景が細かく描写されていて、物事の理解を促進してくれます。雑誌の特集記事は浸透力、普及力、拡大力が高く、情報が集約されているため読者の手元に長く置かれる傾向にあるといえます。自社が打ち出したい情報を整理し、届けたいユーザーが読む媒体を選定するために、雑誌のコーナーを研究し、編集者が喜ぶ方法で情報を届けていきましょう。情報提供時はトレンドや客観性、正確性に留意するという、どの媒体のメディアリレーションにも通じる事柄と、雑誌ならではのコーナーを理解して企画を考えるとより効果的です。
雑誌掲載につながる広報PR活動に関するQ&A
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