広報PR担当者として知っておきたい「メディアトレーニング」。存在については知っていても、実際にやったことがない企業も多いのではないでしょうか。
取材を受ける、記者会見を開くなど、実際の広報活動を想定したトレーニングを実施するメディアトレーニングを通じて、危機管理意識の向上などのメリットを得ることができます。本記事では、メディアトレーニングの内容やメリット、費用、効果的に実施するための3つのポイントについて紹介します。
「メディアトレーニング」とは?
メディアトレーニングとは、企業や団体の取材対象者(インタビュイー)となり得る人物を対象にメディア対応スキルの習得を目的として実施する研修です。
トレーニングの対象となるのは、広報PR担当者のほかに社長や役員など、インタビュー対応が多く、記者会見などで発言する機会もある人物です。可能であれば事業部長クラスにも参加してもらえるとよいですね。
メディアトレーニングを実施する目的は、メディア対応スキルの習得です。インタビュー、記者会見、緊急時の謝罪会見など、事前にトレーニングを積んでおくことで本番も落ち着いて対応できるようになります。
また、自社のスポークスパーソンがメディアトレーニングに参加することで、緊急時の対応を見直せたり、危機管理意識の向上につながったりします。
メディアトレーニングを行う3つのメリット
メディア対応スキルの習得を目的に行うメディアトレーニング。実施することで得られるメリットとは何なのでしょうか。ここからは、3つのメリットを紹介します。
1.緊急時に落ち着いて対応できる
メディアトレーニングを行う1つ目のメリットは、緊急時に落ち着いて対応できるようになることです。
緊急時の謝罪会見などは、緊張や準備不足から不用意な発言や、事実とは異なる発言をしてしまうリスクも。平常時のメディア対応と比較すると、発言に気を配りつつも、より冷静に臨むことが求められるのです。
記者役を立てて模擬会見を行っておくことで、謝罪会見の雰囲気をイメージすることができます。メディアトレーニングを請け負う企業には現役のメディア関係者や元メディア関係者が在籍しているところも多く、リアリティのある訓練ができるでしょう。
2.誤解なく伝える練習ができる
メディアトレーニングを行う2つ目のメリットは、誤解なく伝える練習ができることです。
メディア対応は緊張感を伴います。質問に対してちぐはぐな回答をしてしまったり、不確定な内容を確定事項のように話してしまったりすることは避けなければなりません。
伝えたい内容がスムーズに伝わるような言い回しや、説得力を与える話し方、身だしなみなどを学ぶためにも、メディアトレーニングは効果的です。
3.危機管理意識を醸成し、リスクを未然に防ぐ
メディアトレーニングを行う3つ目のメリットは、危機管理意識を醸成し、リスクの顕在化を未然に防ぐことです。
メディアトレーニングをする中で、事件・事故などの不祥事が発生した際の対応フローを正確につかめるようになり、緊急時の危機管理意識が向上します。
実際には不祥事が発生しないことが一番ではありますが、トレーニングを積むことで、研修に参加した社員や経営層がリスクを具体的に認識し、危機意識を持つことができます。
メディアトレーニングの基本の内容5つ
メディアトレーニングと聞いても、実際どんな研修を実施するのかイメージが湧かないかもしれません。トレーニングの内容は一体どういったものなのでしょうか。こちらからは、メディアトレーニングの内容、5つを紹介します。
1.平常時のインタビュー研修
まずは、平常時のインタビュー研修です。
一般的なトップインタビューや事業責任者向けのインタビューなどを想定し、実際に記者役からの質問に回答する形で実施します。
受け取った取材依頼書をもとにした想定質問・回答の作成や取材時の立ち振る舞いなど、広報PR担当者にとってよいトレーニングとなります。
2.平常時の記者会見研修
次に、平常時の記者会見を想定した研修です。
記者会見では、一度に多くのメディア関係者を相手に話すことになります。テレビカメラが複数台入ることも。大人数のメディア関係者の前でカメラで撮影されながら話をするという特殊な環境になるため、緊張しやすいです。事前に研修しておくと本番で緊張しにくく、想定外の受け答えをすることを防げるでしょう。
「経営戦略説明会」「事業戦略説明会」「新製品発表説明会」「業務提携発表会見」など、企業が会見を開く機会は多いものです。記者会見は広報PR担当者にとっても、企画・集客・会場セッティング・スタッフ確保・会見後フォローなどすべきことが盛りだくさんのイベントです。本番であたふたしないためにも、メディアトレーニングで一度経験しておけるとよいでしょう。
なお、記者会見を開催するときのポイントについてはこちらの記事でも紹介しています。
3.緊急時の謝罪会見研修
次に、緊急時の謝罪会見を想定した研修です。
謝罪会見は、事件や事故などの不祥事が発生した際に、経営トップや現場責任者がメディア関係者・生活者に向けて説明する場です。メディアでの報じられ方次第で世間に与えるイメージが大きく左右されるため、謝罪会見での対応は重要といえます。
先述の通り、緊張から質問に対してちぐはぐな回答をしてしまったり、不確定要素を確定事項のように話してしまったり、思わぬことを口にしてしまったりする可能性があります。さらに謝罪会見では、「当時はあたりまえだった」「知らなかった」などと、印象が悪い発言をしてしまうことは避けましょう。
記者から矢継ぎ早に繰り出される質問や、カメラのフラッシュなど、緊急時の会見特有の雰囲気に慣れておくためにも、メディアトレーニングの実施は有効です。
4.IRイベント向け研修
次に、決算説明会、中期経営計画発表会、M&A公表などのIRイベントに向けた研修です。
IRイベントは、株主や投資家から鋭い質問が向けられ、経営トップや最高財務責任者(CFO)、事業担当役員であってもプレッシャーを感じる場面でしょう。そのような場においても、冷静にわかりやすい説明や説得力のある立ち振る舞いができるよう、メディアトレーニングに組み込んでみてもよいでしょう。
特に商品・サービスごとの利益率や売上高は、プレゼンテーションや配布資料になくても記者から質問が飛び出すこともあります。細かな数字まで想定した資料を手元に、トレーニングに臨むようにしましょう。
5.外見リスクマネジメント研修
最後に、気軽に受けやすいのが外見リスクマネジメント研修。身だしなみを整え、清潔感と誠意が伝わる装いをコンサルティングしてもらうものです。
スーツやネクタイの選び方、頭髪や肌が整っているか、アクセサリー類はどうするかなど、会見時にチェックすべきポイントはたくさんあります。また、平常時の会見と緊急時の会見では、適切とされる身だしなみも異なります。
事前に研修を実施しておくことで、当日慌てずに外見を整えられるようになります。
謝罪会見など、誠意を持って説明する場で身だしなみに清潔感がないと、メディアで取り上げられたとき、装いに目が奪われてしまい、イメージ悪化につながりかねません。
余裕があればあらかじめプロに依頼し、会見時の衣装や外見についてもマネジメントを行っておくことがおすすめです。平常時のインタビューや会見、緊急時の謝罪会見、それぞれについてどんな服装が適切なのか、改めて確認しておきましょう。
メディアトレーニングにかかる費用の目安
メディアトレーニングにかかる費用は、研修内容や研修を実施している企業によってさまざまです。一般的には40万円程度かかると認識しておいたほうがよいでしょう。
半日かけてじっくり研修を行う場合や、自社に合わせて内容を細かくカスタマイズしてもらう場合は、100万円近い金額になることもあります。
メディアトレーニングを効果的にするための3つのポイント
ここまで、メディアトレーニングを実施するメリットや研修内容について説明してきました。費用をかけてメディアトレーニングを実施するなら、より効果的に実践したいものです。そこで、メディアトレーニングを行う際の3つのポイントを以下に紹介します。
1.メディア関係者側の気持ちを意識しながら行う
メディア関係者側の気持ちを意識しながらメディアトレーニングを行いましょう。
例えば、謝罪会見時には記者の問いかけが高圧的に思えたり、質問が矢継ぎ早で責められているように感じたりすることがよくあります。このとき、メディア関係者は真実を引き出そうと行動している、というマインドセットを持ちましょう。
「攻撃されているわけではなく、事実を話すことが求められている」と認識するだけでも、冷静に切り返しやすくなるでしょう。
感情的にならず、メディア関係者側の立場になって、あくまで質問内容に応えようとする癖をつけることで、落ち着いて対応できるようになります。
2.実施するだけで終わらせず、きちんと振り返りを行う
メディアトレーニングは一度実施するだけで終わらせず、振り返りを行いましょう。
おすすめは反省会の実施です。メディアトレーニングの様子を動画で撮影しておき、参加者全員で見返します。
お互いの言動の気になるポイントを、それぞれがリストアップします。細かい部分であっても構いません。自分たちで再度練習し、気になる言動が改善されていたかを確認し合います。
気になる言動とは、例えば以下のようなものです。
【気になる言動】
- 目がキョロキョロ泳いでしまう
- 手で口を隠す仕草が多い
- 首が傾いている
- 身だしなみの乱れ
- 前髪で目が隠れている
- 服の胸元が開きすぎている
- ネクタイの締め方が緩い
- 「あの~」を多用する
- 一文が長く、何が言いたいのかよくわからない
- ぼそぼそ喋っていて聞き取りづらい など
これらを改善して次につなげることで、メディアトレーニングの効果が倍増します。
3.本番想定で、台本にないアドリブも入れてみる
どんなに準備したと思っても、想定外の質問が飛び出すこともあるのが記者会見。練習の場では、記者役の担当者に、質問に対する回答に食い下がってみたりといった、想定質問にはない問いかけをしてみたり、アドリブを挟んでくれるよう依頼してみてください。
質問が予想外だったときの反応に、改善点やリスクコントロールすべき部分が見つかるかもしれません。「想定質問以外の質問には答えられないが、誠意が伝わる切り出し方を研究する」「記者の目を見て答えるようにする」など、細かいポイントも盛り込んで練習してみましょう。
メディアトレーニングの実施で社内の広報PR意識や危機管理意識を向上させよう
本記事では、メディアトレーニングの目的やメリット、その内容や、効果的に実践するための3つのポイントを紹介しました。
メディアトレーニングを行うことで社内の危機管理意識が醸成され、取材対応能力の向上やリスク発生の予防につながります。また広報PR担当者のスキルアップや知識アップにも大いに役立つことでしょう。
備えあれば憂いなしの精神で、ぜひ実施を検討してみてください。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
広報が知っておきたい「メディアトレーニング」の内容やメリットなどに関するQ&A
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