最近、広報PRの領域でも注目されている「ナラティブ」。皆さんも1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。しかし、ナラティブが一体どういうものなのかわからない、自社で活用できるものなのかわからない、という声もよく聞きます。
ナラティブは、1960年代からある文芸理論の言葉です。それが、なぜ企業経営や広報PRの文脈で使われるようになってきているのでしょうか。今回は、ナラティブとはどんなものなのか、ナラティブとストーリーの違いは何か、企業におけるナラティブアプローチとはどんなことをすればいいのかなど、企業にナラティブが重要とされる必要な理由を解説していきます。
ナラティブとは?
ナラティブ(narrative)は、「物語」や「語り」などと訳される言葉です。
もともとナラティブは、文学とは何かを解釈するために使われる文芸理論の用語のひとつで、主に物語の「語り方」を研究するために用いられてきました。その後、ナラティブの考え方は、医療・介護、教育、ビジネス全般に取り入れられるなど幅広い領域に影響を及ぼしていきます。
企業経営や広報PRにおいて、私たちのさまざまな認識をつくり出しているナラティブによって、新たな生活者との関係性を構築しようとしているのが、近年のナラティブアプローチと呼ばれている課題解決の手法です。
ナラティブとストーリーの違い
ナラティブは、物語や語りと訳すことができますが、同じようにストーリーも物語と訳されます。これら2つの言葉の違いはどんなところなのでしょうか。実はストーリーも、もともとは文芸理論の用語のひとつ。ストーリーが物語の「内容そのもの」を指すのに対して、ナラティブは物語の「語られ方」を指します。
ストーリーを重視したアプローチでは「何を語るのか?」に着目するのに対して、ナラティブでは、誰がどのように語るのかが重視されます。
また、ストーリーは語り手によって変化しません。一方、ナラティブは同じ事象でもどう語るかは語り手によって異なり、完結しない場合もあります。
ナラティブが重視されるようになった背景
ナラティブが重視されるようになった背景には、スマートフォンやSNSの普及と、SDGs、ESGなどの社会意識の高まりが関係しています。
まず、スマートフォンやSNSの普及によって、私たちの日々の体験は細分化されています。SNSは、好きなことや興味を共有する人たちが集まって、セグメントされた情報だけに触れられる環境が整えられています。クチコミやレビューなどをはじめとする専門家やその道の権威ではない一般の生活者による情報発信も活発になっており、まさに語り手によるさまざまな物語が語られています。
もうひとつは、SDGs、ESGなどの社会意識の高まりが背景にあります。社会や環境への配慮が新しい常識として世界中に根付き始めたことで、人々が関連したそれぞれの体験を持つようになっています。世界規模で人々に共通した目標や目的が共有されたことは、企業がナラティブアプローチを行うに当たっても活用しやすい要素が整ったともいえるのです。
広報PRにおけるSDGsやESGへの取り組み方についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェックしてみてください。
企業におけるナラティブアプローチとは
企業におけるナラティブアプローチは、企業の価値観に基づいて、物語の力で新しい社会的認識を実現することを指します。生活者の行動変容を起こし、その企業の存在価値を強めることを目的とするコミュニケーションです。
日本のPR市場の市場規模は少しずつ大きくなってきており、想いを生活者に届けようという企業は増えてきました。便利な機能、役立つサービス、綺麗な商品。それだけでは生活者から評価されず、企業としての差別化を図ろうとする企業も同様です。だからこそ、生活者が企業やサービスを判断する重要な要素にストーリーがあります。
さらにそのストーリーを当事者が語り、届ける相手によって変化させていくナラティブアプローチでは受ける生活者によって企業との体験を共に有することができます。ナラティブアプローチでは、生活者と経験を共にして、継続的に物語を共創できる仕組みとそのきっかけづくりを行います。
より具体的にナラティブアプローチの方法を知りたい方は、こちらの記事もチェックしてみてください。
ナラティブを活用して企業の存在価値をアップしよう
ナラティブとは何か、言葉の意味や重要視されている背景についてお話ししてきました。一見ストーリーと同じもののように捉えられがちですが、ナラティブは「語られ方」を指す言葉です。多くの人が仲間意識を持つことで、新しい認識が生まれやすくなります。ぜひ、企業の存在価値を高められるようなナラティブアプローチを模索してみてください。
(PR TIMES MAGAZINE編集部 編集)
ナラティブに関するQ&A
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