企業による一般公募のコンクール・アワードは、毎年数多く実施されています。ユニークな受賞作品や表彰式は、メディアで報道されることも多いですね。さまざまなメディアで取り上げられるようなコンクール・アワードを実施したい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、企業が一般公募のコンクール・アワードを実施のメリットや、実施する流れ、成功させるために大切なポイントと注意点を解説します。
企業や自治体が実施している一般公募のコンクール・アワードの例
一般公募のコンクールやアワードで募集される作品には、以下のようなものがあります。
- 俳句、川柳
- 標語
- 名称やコピー
- 絵画
- 写真
- ロゴマーク
- 作文や読書感想文
- 小説・物語など読み物
まずは、一般公募のコンクール・アワードの代表的な例を確認しましょう。
事例1.伊藤園お~いお茶新俳句大賞
「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」は、緑茶飲料「お~いお茶」の新発売のプロモーションのひとつとして1989年に始まりました。
発売時の1989年は、松尾芭蕉の『奥の細道』300 周年にあたります。その2年前の1987年に刊行された歌人・俵万智の歌集『サラダ記念日』がベストセラーになったこともあり、当時は俳句・短歌の創作が流行していました。入賞作品を商品パッケージで紹介することで作品発表の場を提供しようと、「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」が企画され、現在まで続いています。
現在では、文部科学省が後援して学校の授業でも取り上げられており、小・中学生・高校生からの応募が全体の9割を超えます。
参考: 伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
事例2.第一生命のサラリーマン川柳コンクール
職場や家庭の一場面をコミカルによんだサラリーマン川柳は、もともと第一生命保険株式会社の社内報の企画でした。優秀100句の中から一般投票を経て、ベスト10の作品が選ばれます。優秀100句とベスト10のどちらも、発表されると多くのメディアで毎年紹介されるので、ご覧になった方も多いでしょう。
2022年5月下旬のベスト10発表時には、コンクールの新名称も発表される予定です。
優秀100句などをまとめた書籍は毎年発売され、第一生命と包括連携協定を結ぶ京都府が「京都の文化自慢サラ川(サラリーマン川柳)2021」を募集するなど、サラリーマン川柳から派生したプロジェクトも登場しています。
参考:書籍「サラリーマン川柳傑作選」シリーズの2021年最新版『サラリーマン川柳 いっしん傑作選』が発売!
「京都の文化自慢サラ川(サラリーマン川柳)2021」で、京都の魅力溢れる文化自慢の句を大募集!
事例3.受賞作品による「うな重高校創作料理フェア」
地域活性化や町おこしのために、多くの地方自治体がコンクール・アワードを実施しています。
浜松市・湖西市で開催された「うな重高校創作料理フェア」では、飲食店が高校生によるレシピを再現・アレンジして提供しました。これらのレシピは、静岡県内の高校生を対象に開催した浜松市地域力向上事業「第2回うな重高校創作料理コンテスト」の受賞作品です。
参考::うな重高校創作料理フェアのご案内
企業が一般公募のコンクール・アワードを実施する3つのメリット
一般公募のコンクール・アワードを企業が実施すれば、生活者が企業を知る機会が増えるなどのメリットがあります。コンクール・アワードを実施したいけれど、先ほど紹介した事例の通りに行うのは難しいとためらっていませんか。
ここでは、企業がコンクール・アワードを実施する3つのメリットを解説します。
メリット1.商品・サービス、自社への認知を拡大できる
コンクール・アワードを成功させるためには、より多くの人に知ってもらうための広報PRが欠かせません。生活者へコンクール・アワードを広める際、主催する自社と商品・サービスを改めて紹介できる機会が生まれます。その結果、商品・サービス、自社への認知の拡大が期待できるでしょう。
メリット2.好感や親しみを持たれやすい
コンクール・アワードの実施は、自社から生活者への一方通行の活動ではありません。生活者がコンクール・アワードに作品を応募したり審査に参加したりすることは、自社と生活者とのコミュニケーション活動ともいえます。その結果、参加した生活者は、自社に好感や親しみを抱くでしょう。
作品の応募や審査に参加しない生活者でも、作品募集の告知や受賞作品・審査過程の発表を通じて自社を目にする機会が増えて、好感や親しみを持つことが期待できます。
メリット3.自社に合わせて始めやすく、続けやすい
コンクール・アワードは、周年事業のように単発で記念碑的にも、毎年恒例のコミュニケーション活動にもなります。自社の目的に合わせて、始めやすく、続けやすい点もメリットのひとつです。
前述した「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」や「第一生命のサラリーマン川柳コンクール」のように大規模なものでなくても、コンクール・アワードは開催できます。応募対象者・地域の限定、審査方法や授賞式の簡素化などの工夫で、自社に合ったコンクール・アワードにアレンジしましょう。
企業が一般公募のコンクール・アワードを実施する流れ
一般公募のコンクール・アワードを実施するには、どのような準備が必要でしょうか。5つのSTEPに分けて、見ていきましょう。
STEP1.募集要項の作成
応募しようと多くの方が思うようなコンクール・アワードになるように、募集要項を作成します。項目・段階ごとに発生する作業や必要な人員を明らかにして、スケジュールや担当者を決定しましょう。
- テーマ・募集作品
参加者の年齢・学年ごとに部門を設置することをおすすめします
- 賞・賞品
より魅力的な賞・賞品を準備するために、後援を依頼しましょう
- 審査員・審査方法・審査基準
- 応募方法・期間
- 受賞作品の発表方法と取り扱い
STEP2.コンクール・アワード実施の発表
多くの応募作品が集まるように、コンクール・アワードの実施を広く知らせます。プレスリリースの配信や記者発表会の開催など、可能な限りの広報PR活動を行いましょう。
多くのコンクール・アワードが、メディアスポンサーを得て実施されています。あらかじめメディアへの露出を確保すれば、コンクール・アワードの成功がより確実になるでしょう。メディアスポンサーの募集の検討をおすすめします。
発表方法は広報PR活動のほかにも、以下のようなものがあります。
- Webサイトやメールマガジン、広報誌など自社メディアでの紹介
- 広告出稿
- ポスターやチラシを制作して掲示や配布
- 生徒からの応募を募るために学校へのポスターやチラシの送付
STEP3.応募作品の受付
応募作品の種類によって、受付や管理・保管のために必要な業務は異なります。
絵画や工作の作品の募集には、保管スペースを確保しなくてはなりません。応募方法がインターネットであれば、フォームやシステムを準備します。郵送の場合は、郵便局留・郵便私書箱を利用する方法もあります。
販売促進キャンペーンでよく見られるように、事務局機能を外注すれば、応募作品の受付先を社外にして効率化を図ることができます。
STEP4.応募作品の審査
応募期間が終了したら、審査をして受賞作品を決定します。審査員に外部の専門家を招いたり、生活者から投票を募ったりすることで、コンクール・アワードの公平性と価値を高める効果が期待できます。
受賞作品の発表と同時に、審査基準と審査過程を公表できるように準備しましょう。特に、社内だけで審査をする場合には、コンクール・アワードの透明性を保つために大切です。
STEP5.受賞作品の発表と活用
受賞作品が決まったら、多くの人に知ってもらえるように発表しましょう。
授賞式は「メディアが取材したくなる、露出がより多くなる」ように企画します。授賞式当日に来場しなかったメディアには開催報告のプレスリリースを配信して、取り上げてもらうことを目指します。
授賞式のほかにも、プレスリリースの配信、自社のWebサイトでの紹介、ポスターやチラシの制作などの発表方法があります。
発表と同時に、商品パッケージや販促ツール、名刺への掲載など、受賞作品を活用しましょう。
企業が一般公募のコンクール・アワードを実施するときの3つのポイント
企業による一般公募のコンクール・アワードの事例や、実施するメリットと流れを見てきました。コンクール・アワードを実施するときに大切にしたいポイントには、どんなものがあるでしょうか。成功させるための3つのポイントを紹介します。
ポイント1.実施の目的を明確にする
企業がコンクール・アワードを実施する目的には、以下のものが挙げられます。
- 自社や商品・サービスの認知度やイメージの向上
- 地域貢献
コンクール・アワードの応募対象を地域住民にして、地域の活性化や地域振興を目指します
- 質の高いコンテンツを活用する
コピーやロゴマークを広く募集すれば、多くの作品の中からより質の高いものを選出することができます
コンクール・アワードを成功させるためには、実施前に目指すべきゴールを決めることが大切です。ここで、「盛り上がりそうだし、良い作品ができるだろう」とコンクール・アワードを実施しましたが、生かしきれなかった筆者の体験を紹介します。
そのアワードは、商品ロゴマークを子どもと大人から募集するものでした。アワードのプレスリリースを配信して、新聞や公募誌などに紹介されました。小・中学校や高校の壁に掲示される新聞に出稿しました。
作品は順調に集まり、審査後のロゴマークの発表と授賞式の開催までは、スムーズに進みました。しかし、商品ロゴマークの活用方法が決まっていませんでした。
ロゴマークができてから、「さぁ、どうしよう」と頭を抱えることに。その後は、通常の業務に追われ、活用するタイミングを逃してしまいました。
アワードの実施前に、ロゴマークを使用した販促ツールやWebサイトなどの制作を企画しておけば、即座に活用することができたでしょう。コンクール・アワードを企画する際には、実施することで達成したい目的を明確にすることが大切です。
ポイント2.応募しやすい・メディアに紹介されやすいように企画する
応募作品を多数集めるには、応募したくなる・応募しやすいようなコンクール・アワードでなくてはなりません。応募してほしいと考えるターゲット層が「欲しくなる賞品」「挑戦しやすい作品テーマ」「開催告知から締め切りまで、十分な時間」を感じるようなコンクール・アワードを企画しましょう。
応募数を増やすためには、コンクール・アワードについてメディアへの露出を増やし、より多くの方に知られることも大切です。メディアが取り上げたくなるような社会性・ニュース性のあるテーマやユニークな賞品などを検討してみてください。
ポイント3.社内で認識を共有して取り組む
ポイント2.を達成するためには、担当社員だけでなく社員全員の協力が大切です。協力が得られれば、社外へのコンクール・アワードの案内やポスターやチラシの掲示・配布の依頼がしやすくなります。受賞作品をより広く活用するためにも、社内の連携は欠かせません。
目的や受賞作品の活用方法など、詳細を社内で共有して、全社を挙げて取り組んでください。コンクール・アワードを企画し始めたときに、担当以外の部署からアイデアや希望を集めることができれば、より協力を得やすくなるでしょう。
企業が一般公募のコンクール・アワードを実施するときの3つの注意点
コンクール・アワードは企業からの働きかけだけでは成り立ちません。SNSの発達など、社会の変化に合わせることも必要です。企業が初めてコンクール・アワードを実施する場合には、慣れない業務でのトラブルは避けたいものです。ここでは、企業が一般公募のコンクール・アワードを実施するときに気をつけたい3つの注意点を解説します。
注意点1.作品の作成、メディア露出、ゴールを考慮したスケジュール
コンクール・アワードは企業の活動と生活者からの応募があって成立するものですから、スケジュールを企業の都合だけで決めると成功は難しくなります。
コンクール・アワードのゴールともいえる受賞作品の決定とその活用から逆算して、スケジュールを立てましょう。実施を発表してからメディアに露出するまで、メディアを見て興味を持った生活者が作品を制作して応募するまでには、一定の期間が必要です。募集する作品やテーマ、露出させたいメディアの種類によって、必要な期間は異なります。
周年事業のようにコンクール・アワードを着地させる時期が決まっている場合には、特に注意が必要です。
注意点2.公平性、価値、臨場感を感じられるような審査過程の発信
STEP4で紹介しましたが、コンクール・アワードを公平性と価値があるものにするには、審査過程を発信することが大切です。受賞作品と同時に、審査過程も発表しましょう。
コンクール・アワードへの募集要項を発表する際に、審査基準や審査の流れを明確に伝えることも大切です。審査の段階が進むごとに、随時詳細を発信すれば、生活者が臨場感を感じることができるでしょう。
公平性やコンプライアンスへの意識は年々高まっています。審査過程に疑問が生じて、SNSで話題になることを避けるためにも、細心の注意を払ってください。
注意点3.個人情報や著作権の管理を徹底する
応募作品を受け付けることは、大量の個人情報を受け取ることともいえます。個人情報の漏えいはあってはなりませんので、管理を徹底しましょう。
受賞作品の著作権の取り扱いは、コンクール・アワードの募集要項に明示しなくてはなりません。受賞作品が既存のものに酷似・類似していないか、いわゆる「盗作」「コピペ」ではないか検査する必要もあります。自社のビジネスや業務で著作権の扱いに慣れていなければ、専門家への相談も検討してみてください。
コンクール・アワード情報のWebサイトを運営する会社は、企業向けにコンクール・アワードの企画、事務局サービスを提供していることがあります。個人情報や著作権の管理をスムーズに行うためには、このような会社に依頼するのもよいでしょう。
事務局や運営を依頼した例を紹介します。
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より多い応募とメディア露出を獲得できるコンクール・アワードを実施しよう
今回は、企業が実施する一般公募のコンクール・アワードについてご紹介しました。コンクール・アワードを実施すると、認知の拡大や親しみが持たれやすいなどのメリットがあります。コンクール・アワードを成功に導くには、多くの応募とメディアへの露出が必要です。大規模に実施できなくても、アイデアと工夫でより多くの応募と露出が得られるでしょう。コンクール・アワードの目的を明確にして社内で認識を共有して取り組むことも、成功のポイントです。
上記でご紹介した内容を参考に、一般公募のコンクール・アワードの実施を検討してみてはいかがでしょうか。
一般公募のコンクールやアワードに関するQ&A
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