「広報大使」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。芸能人やゆるキャラなどが任命されたというエピソードをメディアで見かけることもありますよね。
「広報」と名前についているものの、広報大使の役割や活動内容は一般的な広報PR担当者とは大きく異なります。
この記事では、広報大使の意味や役割、選び方、活動内容などを事例とともに紹介します。
広報大使とは?
そもそも「大使」とは、国家を代表してほかの国と交渉を行う外交使節の最上位の階級のこと(参考:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)。
「広報大使」とは、上記のような「正式な職業」としての大使ではないものの、国家・地域・団体などの対外的な発信や交流を図ることを任命された人物に与えられる役職・称号です。
国家・地域・団体などを象徴する存在とされるため、活躍している芸能人や文化人など著名な民間人から選出されることが多いですが、2022年に神奈川県中井町の応援大使となった「シナモロール(シナモン)」など、人気のキャラクターやオリジナルキャラクターが任命される例も日本国内では見られます。
1団体につき1名とは限らず、富山県の「とやま大使」「とやまふるさと使節」「とやま名誉友好大使」のように、数種類の肩書を設けて複数名を任命することもあるようです。
広報大使に似た役職
「広報大使」以外にも、同様の意味で使われるさまざまな「○○大使」という役職が存在します。
基本的には「国家・地域・団体などの対外的な発信や交流を図ることを任命された人物に与えられる役職・称号」であることに変わりありませんが、名称によって役割に差異があることも。
本項では、「広報大使」と似た意味で使われる「○○大使」について説明します。
親善大使
国家や地域を超えて親交を深め、文化交流を促進することを役割として、親近感を持たれやすい著名人などが任命されます。
国際連合の「国際連合親善大使」「ユネスコ親善大使」「ユニセフ親善大使」などで知られます。「観光親善大使」などの肩書も使われるようです。
そもそも「親善」とは、「親善試合」といった言葉もあるように、「互いを知り合って、仲よくすること」(参考:デジタル大辞泉)。
全国的・国際的になど、幅広い対象から高い評価を受けている人物に与えられる称号だといえます。
名誉大使
名誉大使は、国際親善や国際支援活動に貢献している人物に与えられる称号です。「名誉」とつく通り、広報PRを目的とするというより、個人を称える意味が強いと考えられます。
国家から「名誉大使」の称号を得た場合、外交官と同等の待遇が得られることもあります。また、日本国内の自治体では、当該地域に在住している海外出身者もしくは当該地域出身の海外在住者に対し、国際親善に寄与しているとみなされる場合に名誉大使の称号を贈呈することが多いようです。
観光大使
観光大使とは、観光地の認知度向上や観光客の増加、地域の振興を目的として広報活動を行う人、またその役職です。地域振興を目的としていることもあり、その地域にゆかりのある芸能人や有名人が多く選出されるのが特徴です。
観光大使の活動はあくまで日本国内における観光地の振興が目的であり、国際的な活動等は行わないことがほとんどです。
ふるさと大使
日本国内の自治体の出身者やゆかりのある著名人を、ほかの地域や全国で地元の魅力を発信してもらうために「ふるさと大使」として任命します。「ミス○○/ミスター○○」などのように、住民の中から公募で選出するケースもあります。
自治体が開催する定期的な意見交換会に出席したり、地域活性化への提言を行ったりと、行政に近い領域で活動する例も見られます。各自治体で制度に関する要綱や要領を定めており、任期や報酬・対象者なども自治体によって異なるようです。
広報大使に求められている役割とは?
目的としている効果を上げるためにも、自治体・機関・団体として広報大使に求める役割をはっきりさせておくことは重要です。広報大使を設けている自治体が公開している要綱を参考に、広報大使に求められている役割を2つ紹介します。
1.任命を受けた自治体・機関・団体の広報PR活動・情報発信
広報大使の役割として一番わかりやすいのが、自治体の広報PR活動・情報発信です。発信する情報や広報PR活動の詳細は自治体・機関・団体によって異なります。
広報大使は、内部の職員や関係者が発信するのとは異なる独自の目線で、自治体・機関・団体の魅力やストーリーを引き出し、広く伝えていく役割が求められています。
広報PR活動の具体的な内容が知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
2.自身のイメージアップにつながる本業での活躍
広報大使は、任命を受けた自治体・機関・団体の情報を発信するだけではなく、自身の本業で活躍することも重要です。
広報大使自身が本業に打ち込み成果を上げることで、自身の知名度やブランドイメージが高まります。その結果、広報大使を務めている自治体・機関・団体に対しても注目が集まったり、さらに良いイメージを持ってもらえたりするという効果が期待できるでしょう。
広報大使の選び方・選定基準とは?
広報大使は各自治体・機関・団体がそれぞれ定めている基準のもと任命されます。
広報大使を設けている自治体が公開している要綱を参考に、広報大使の選定条件を2つ紹介します。
1.該当の自治体・機関・団体にゆかりがある
広報大使は、その自治体・機関・団体を象徴する存在として発信や交流を図る役職です。基本的には、何らかの形で該当の自治体・機関・団体にゆかりがある人物であることが条件となります。
自治体であれば該当地域の出身者であるケースが多いですが、「地域の名産品のイメージに合っている人」などの理由で選定されることもあるようです。
2.特定の分野で活躍しているなど、該当の自治体・機関・団体のイメージアップが期待できる
広報大使は、その自治体・機関・団体を象徴する存在であることから、多くの人に親しみを持たれている人物や尊敬されている人物が任命されます。
自治体では特に、「芸能、文化、芸術、スポーツの分野」で活躍している人物を任命しているケースが多いようです。ほかにも、広報大使を設置する領域によっては「教育」の分野で活躍している人物を条件としている例も見られます。
広報大使の具体的な活動内容・事例は?
広報大使の具体的な活動内容は、自治体・機関・団体によって大きく異なります。
広報大使を活用した広報PR施策の事例を紹介しますので、広報大使の活動内容として参考にしてみてください。
1.キャンペーンの景品としてサイン色紙を提供
長崎市出身の元アイドル・タレントで、西九州新幹線長崎県広報大使を務める長濱ねるさん。
長崎県が実施する、首都圏・関西圏で県産品を取り扱っている飲食店等を応援するスタンプラリー企画で、「平戸和牛サーロインステーキ」などの高級食材と並びサイン色紙を景品として提供しています。
このように、広報大使自身に高い人気があれば、ゆかりの品を景品として提供するだけでも大きな盛り上がりが期待でき、自治体・機関・団体への貢献が見込めるでしょう。
参考:首都圏・関西圏で長崎県の魅力を感じる「食べてみんね!長崎県産品応援店スタンプラリー」を2月1日(水)から実施
2.地域の小学校で出張授業を実施
しずおか海洋ゴミゼロ対策プロジェクト実行委員会は、静岡県を舞台にした漫画・アニメの主人公であるちびまる子ちゃんをPR大使に任命。
子どもたちに海洋ごみ問題に対する関心を持ってもらうことを目的に、ちびまる子ちゃんの着ぐるみとともに、静岡市の職員が小学校で課外授業を実施しました。
子どもに向けて訴求したいときや、親しみやすさを特にアピールしたい場合は、キャラクターを広報大使に任命するのも効果的な取り組みです。
参考:しずおか海洋ごみゼロ対策プロジェクトPR大使”ちびまる子ちゃん”も出演する海洋ごみ出前授業「ちびまる子ちゃん課外授業」を開催しました!
3.トークイベントを開催
横浜市は、近代下水道の導入から150年を迎えたことを記念し、俳優の釈由美子さんを「横浜下水道150広報大使」に任命。トークイベントを開催しました。
釈さんは東京都出身ですが、特撮アクションドラマで「マンホールを武器に戦う」役を演じ、話題になったという背景があり、広報大使に選出されました。
このように、出身地よりもその人の活動や人物像が広報大使の選出基準となる例も見られます。
参考:横浜下水道150広報大使釈由美子と学ぶ横浜下水道150in横浜市役所アトリウム ~広報大使によるトークイベント等を行います
4.広報PR団としてイベントの開催やコラボの実施
画像出典:PR TIMES「御殿場プレミアム・アウトレットにうどん県PR団「ヤドン」 がやってくる!」
広報大使ではありませんが、広報PR団としてキャラクターをアサインし、イベントの開催や観光バスのラッピング、お土産などのデザインへと活用している事例も参考になります。
香川県では、特産品である「うどん」と響きが似ていることから、ポケモンのキャラクターである「ヤドン」を「うどん県PR団」として任命。2018年の12月から現在まで、様々な取り組みを実施しています。その他、ヤドンと香川県の取り組みについては、こちらのプレスリリースや、ポケモンの公式サイトからご確認ください。
広報大使の任命は、自治体・機関・団体の魅力を伝えるひとつの手段
今回は、広報大使の仕事や役割、具体的な事例について紹介しました。
広報大使とは、その自治体・機関・団体を象徴する存在として対外的な発信や交流を図る仕事。企業・団体の「広報PR担当者」とは仕事内容が異なりますが、広報大使も自治体・機関・団体の知名度やイメージ向上につながる重要な存在なのです。
著名人の方が広報大使に任命された、というニュースを聞いたときは、なぜこの人が任命されたのかその背景を調べたり想像したりしてみると、広報PRへの理解がいっそう深まるかもしれません。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
広報大使の役割や選定方法・具体的な活動内容に関するQ&A
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