PR TIMES MAGAZINE|広報PRのナレッジを発信するWebメディア
記事検索
title

採用ブランディングとは?方法や進め方、成功させる3つのポイントを解説【事例あり】

近年の採用活動では、価値観の多様化や情報収集経路の変化が進んでいます。これにより、「どれだけ多くの応募を集められるか」よりも、「どれだけ自社に共感する人と出会えるか」がより重要視されるようになってきました。

こうした背景の中、企業の魅力や独自性を戦略的に発信する「採用ブランディング」への注目が高まっています。本記事では、採用ブランディングの基本的な考え方から、採用広報者が果たすべき役割、具体的な進め方や成功のポイントまでを、事例を交えて解説します。

採用に課題を感じている方や、広報を通じた採用強化を検討している方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。

目次
  1. 採用ブランディングとは

  2. 採用ブランディングが注目される背景

  3. 採用ブランディングを実施するメリット

  4. 採用ブランディングの方法5選

  5. 採用ブランディングの進め方

  6. 採用ブランディングの成功事例

  7. 採用ブランディングを成功させる3つのポイント

  8. まとめ:「ここで働きたい」と思わせる戦略が採用ブランディング成功のカギ

採用ブランディングとは

採用ブランディングとは、自社にマッチした人材に「ここで働きたい」と感じてもらうために、企業としての魅力や価値観を発信していく取り組みです。求人情報だけでは伝えきれない「企業らしさ」や「働きがい」を言語化・視覚化し、求職者との接点を設計する戦略的な活動といえます。

近年では、働き方の多様化や価値観の変化により、求職者が企業のビジョンやカルチャー、社会的意義にも目を向けるようになりました。企業が「人を選ぶ」のではなく、求職者から「選ばれる存在」になることが求められています。

採用ブランディングは、そうした時代背景のもと、「企業の魅せ方」を工夫することが不可欠です。自社に共感し、長く活躍してくれる人材と出会うためにも、採用活動の前段階から「どんな企業なのか」を丁寧に伝える必要があります。

採用ブランディングとは

広報PR担当者が担当する活動内容

採用ブランディングは人事部門が中心となるイメージがありますが、実際には広報PR担当者の関与も重要な役割を果たします。

具体的には、まず企業の理念や風土、魅力を言語化し、「どんな人に来てほしいのか」を軸に採用メッセージやコンセプトを設計します。これは企業のトーン&マナーを保ちながら、「自社らしさ」を伝えるうえで欠かせないプロセスです。

また、採用サイトやSNS、プレスリリースなどのチャネルを通じて求職者とのタッチポイントを設計・運用するのも広報PR担当者の領域となります。特に、社員インタビューやドキュメンタリータッチのコンテンツ制作など、共感を生むストーリーづくりでは、広報PRの視点が大きな力となるでしょう。

採用広報と採用マーケティングとの違い

「採用広報」は、求める人物像に向けて、企業で働くイメージを伝え、応募を促進する活動です。一方、「採用マーケティング」は、ペルソナ設計やニーズ分析をもとに、求職者を応募へ導くための施策を展開します。

いずれも応募数の増加を目的としていますが、採用ブランディングはその前段階である「共感の醸成」に重きを置きます。求職者に「ここで働きたい」と思わせる土壌づくりを担い、採用広報や採用マーケティングの効果を底上げする役割を果たします。

これらは競合関係ではなく、異なる役割を持った補完関係にあります。採用活動の成功には、各活動を適切に連携させる視点が重要です。

採用ブランディングの基礎知識についてさらに知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

採用ブランディングが注目される背景

採用ブランディングの重要性が高まっている背景には、社会全体の変化が大きく影響しています。働き方やキャリア観の多様化、情報収集手段の変化など、企業を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。ここでは、その代表的な要因を解説します。

価値観の多様化

働き方や生き方に対する価値観が多様化しており、理念への共感や働きがい、自分らしいキャリア形成を重視する求職者が増えています。

厚生労働省の調査によれば、「会社よりも自分や家庭を優先したい」と考える人は70%以上、副業を希望する人も年収帯を問わず40%を超えています。この結果からも、「一社に縛られない働き方」を求める声の高まりがうかがえます。

こうした変化に対応するには、「自分に合っている」と感じてもらえるよう、企業の理念や価値観を積極的に発信する必要があり、採用ブランディングの重要性は一層増しています。

出典:厚生労働省「新しい時代の働き方に関する研究会」

情報収集経路の変化

求職者の情報収集方法は、従来の求人サイトや会社案内にとどまりません。SNSや口コミ、企業の採用サイトなどを通じて、企業の雰囲気や価値観を探る人が増えています。

特にXやInstagram、YouTubeといったSNSの普及により、企業文化が日常の投稿を通じて伝わるようになりました。「企業名+口コミ」で検索するのは一般的となり、第三者の声が企業イメージに与える影響が大きくなっています。

このため、企業自身が積極的に情報を発信し、企業イメージを「見える化」していくことが重要です。

人材獲得競争の激化

少子化による労働人口の減少や働き方の広がりにより、企業間の人材獲得競争はますます激化しています。

厚生労働省の発表によると、2024年の有効求人倍率は1.25倍、正社員倍率も1.03倍と高水準を維持。一方で求職者数は減少しており、採用が充足できない企業が多く存在します。

また、価値観のミスマッチにより大手企業でも選ばれないケースが増加し、中小企業では知名度不足から応募者の数自体が集まりにくいという課題も。こうしたなかで、自社の魅力や文化、働く人の姿を丁寧に伝える採用ブランディングは、今後ますます欠かせない戦略になるでしょう。

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況について」

採用ブランディングを実施するメリット

採用ブランディングは、単に応募者数を増やすための施策ではありません。自社に共感し、長く活躍してくれる人材と出会うための基盤をつくり、採用課題の解決にもつながる重要な取り組みです。

採用ブランディングを実施することで、次のようなメリットが期待できます。

  • 求める人材からの応募が集まりやすくなる
  • 採用コストの削減につながる
  • 離職率の低下が期待できる

自社の価値観やビジョンを明確に伝えることで、共感した人材との接点が増え、自社のカルチャーにフィットする応募者を集めやすくなります。その結果、入社後のミスマッチが起こりにくくなり、離職率の改善にもつながるでしょう。

また、企業の認知度が向上することで、求人広告に頼らず応募を集められるようになり、採用コストの削減にも貢献します。

応募数だけでなく、「応募の質」「コスト」「定着率」など、多角的な採用課題の改善を目指せるのが採用ブランディングの大きな魅力です。

採用ブランディングの方法5選

採用ブランディングを進めるには、自社の魅力を的確に伝える工夫が欠かせません。ここでは、求職者に共感や興味を持ってもらうために実践したい5つの方法を紹介します。自社に合ったアプローチを選び、効果的な発信につなげていきましょう。

方法1.採用サイト・採用ページ(企業の理念や価値観を伝える)

採用ブランディングでは、企業が大切にしている理念や価値観を明確に伝えることが重要です。単なる企業情報にとどまらず、「なぜこの会社で働くのか」が伝わるストーリーを構成する必要があります。

たとえば、トップメッセージや創業の背景、社員インタビューを盛り込んだ採用専用サイトや採用ページを開設することで、自社の想いを効果的に発信できます。既存のWebサイト内にページを設けるだけでも一定の効果はありますが、採用特化型の設計にすることで、より深く企業理解を促進できるでしょう。

方法2.公式SNS(働く人や職場の雰囲気を発信する)

働く人の雰囲気や社内の空気感は、求職者にとって重要な判断材料のひとつです。特に、オフィスの様子や日常のコミュニケーション風景などは、入社後のイメージに大きく影響します。

SNSを活用し、職場のリアルな様子を発信するのも効果的です。たとえば、社内イベントやランチ会の写真、プロジェクトの進行風景などを投稿することで、親近感や信頼感が生まれやすくなります。動画での社員紹介やオフィスツアーもコンテンツとして人気が高く、求職者が「自分がここで働くとしたら」と具体的にイメージしやすくなるでしょう。

方法3.プレスリリース(採用への取り組みや企業姿勢を示す)

企業が採用活動にどのような想いで取り組んでいるかを、社外に伝えることも重要です。

たとえば、新たな評価制度の導入や独自の研修制度などを、プレスリリースを活用して発信すれば、企業の信頼感向上にもつながります。求人情報だけでは伝えきれない企業文化や人材育成への姿勢を、背景やストーリーとともに紹介することで、求職者の共感を得やすくなるでしょう。

方法4.動画コンテンツ(社員の魅力が伝わるコンテンツを制作する)

実際に働く社員の声は、求職者にとって信頼性の高い情報源です。採用サイトや採用ページで、社員インタビューや働き方に関する対談などを発信することで、企業で働くイメージをより具体的に伝えることができます。

たとえば、社員のキャリアパスや入社理由、やりがいに関するインタビュー動画は、多くの求職者にとって共感を呼びやすいコンテンツです。さらに、社内アンケートをもとに「好きな制度」や「会社の魅力」を取り上げ、より深掘りする企画も効果的。リアルな声を届けることで、企業への信頼感や親近感が一層高まりやすくなるでしょう。

方法5.求職者に体験を通じて働くイメージを具体化してもらう

企業の魅力を深く伝えたい場合には、体験型のアプローチが効果的です。

たとえば、会社説明会で現場社員によるトークライブを実施したり、経営陣が自ら登壇して想いを伝えるセッションを設けたりする方法があります。さらに、1日社員体験イベントやオンライン職場見学なども、求職者にリアルな働き方を体感してもらう場として有効です。

実際に職場の雰囲気や仕事に触れることで、求職者が「ここで働きたい」と感じるきっかけになり、入社後のギャップを減らす効果も期待できます。

採用ブランディングの進め方

採用ブランディングを成功させるには、場当たり的な発信ではなく、計画的に設計し進めていくことが大切です。ここでは、採用ブランディングの基本的な進め方を6つのステップで紹介します。

ステップ

STEP1.理想の人材像と採用課題を明確にする

採用ブランディングを始めるにあたって、まず「誰に来てほしいのか」「現在どのような課題があるのか」を明確にすることが必要です。

採用人数や定着率などの数値目標に加え、「共感してほしい価値観」や「求めるスキル・志向性」を具体的に言語化しましょう。たとえば、「挑戦を楽しめる人」「チームワークを大切にする人」など、理想の人物像を設定することで、以降の情報発信にも一貫性を持たせやすくなります。

ペルソナ設定を通じて、採用活動全体の目的とゴールを明確に共有できることも大きなメリットです。

STEP2.自社の魅力や強みを洗い出す

理想とする人材像が定まったら、次は「ここで働きたい」と思ってもらえるような自社の魅力や強みを洗い出していきます

たとえば、「自由度の高い働き方ができる」「育児と両立しやすい制度がある」といった情報は、求職者にとって魅力的な材料のひとつになります。さらに、社員へのアンケートやインタビューを実施することで、制度や業務内容だけでなく、企業文化や価値観など言葉では伝わりにくい部分まで可視化しやすくなるでしょう。

STEP3.採用メッセージやコンセプトを設計する

採用ブランディングを効果的に進めるには、軸となる「採用メッセージ」や「コンセプト」の設計が欠かせません。これは、自社が何を大切にし、どのような人と働きたいのかを一貫して伝えるための指針となります。

たとえば、「やさしさが仕事になる会社へ」「挑戦を楽しめるあなたと未来をつくる」といったキャッチコピーは、求職者の心に響く企業理解のきっかけになります。一貫性のあるメッセージ設計を軸に、採用サイト・SNS・パンフレットなどあらゆる発信チャネルに統一感を持たせることがポイントです。

STEP4.情報発信チャネルを選択する

発信すべきメッセージが固まったら、「どのチャネルを使って伝えるか」を選定します。

採用サイトやオウンドメディアだけでなく、SNS(X・Instagram)やプレスリリース、採用イベントなど、チャネルごとに特徴や強みが異なります。たとえば、ビジュアルで企業文化を伝えたいならInstagram、じっくり情報を届けたいならオウンドメディアが適しています。

自社の理想とする求職者にリーチしやすいチャネルを見極めたうえで、チャネルごとに最適なコンテンツ設計を行うことが成功への近道になります。

STEP5.コンテンツを作成し、発信する

チャネルを決めたら、各媒体に適したコンテンツを制作し、発信をスタートします。

たとえば、社員インタビューやオフィス紹介、働き方制度に関する紹介記事は、採用サイトで人気の高いコンテンツです。また、採用イベントのレポートや社内の日常風景を紹介するSNS投稿も、親近感を醸成する効果が期待できます。

コンテンツ作成時には、常に「求職者目線」を意識し、企業に対してポジティブな印象を持ってもらえる内容設計を心がけることが大切です。

STEP6.効果測定と改善を行う

発信を始めたら、必ず効果測定と改善をセットで行うことが重要です。

採用サイトのPV数、SNSでの反応(いいね数やシェア数)、実際の応募者数や質、面接時の志望動機など、さまざまな指標を確認し、「どのコンテンツが反響を呼んだか」「どのアプローチが効果的だったか」を定性・定量の両面で分析しましょう。

たとえば、「社員インタビュー記事を見た応募者が増えた」などの傾向を捉えたら、同様のコンテンツの強化を図るなど、改善施策に活かすことが可能です。

振り返りは、月1回または四半期ごとなど定期的に行うことがポイントです。PDCAサイクルを着実に回すことで、採用ブランディングの精度は高まりやすくなります。

採用ブランディングの成功事例

採用ブランディングに成功している企業には、以下のように共通する特徴がみられます。

  • 一貫したブランドメッセージの発信
  • 働く人や雰囲気が伝わる情報発信
  • 求職者目線のコンテンツ設計

企業の理念やビジョンを一貫して発信することで、企業イメージの定着や信頼感の醸成につながり、求職者が「自分に合った企業かどうか」を判断しやすくなります。また、オフィスの雰囲気や社員の日常を発信することで、企業のリアルな姿を求職者に届けることが可能に。

さらに、企業側が伝えたい情報だけでなく、求職者が知りたいと思う情報を意識したコンテンツ設計を行うことで、応募前の不安を軽減し、エントリーの後押しにもつながります。

こうした取り組みを、プレスリリースやオウンドメディアなど複数のチャネルを活用し、戦略的に展開している点も成功企業に共通するポイントです。

具体的な成功事例については、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

採用ブランディングを成功させる3つのポイント

採用ブランディングを成功させるには、単に情報を発信するだけでなく、自社の魅力や世界観を的確に伝え、求職者との信頼関係を築くことが重要です。ここでは、効果的な採用ブランディングを実現するための3つのポイントをご紹介します。

ポイント

ポイント1.一貫性のあるメッセージの発信を継続する

採用ブランディングでは、発信するメッセージや世界観に一貫性を持たせることが不可欠です。たとえば、採用サイトやSNS、プレスリリースなど複数のチャネルで同じスローガンやキャッチコピーを用いることで、企業イメージを求職者に強く印象付けることができます。

さらに、社員インタビューやブログ記事でも「成長できる環境」など共通するテーマを設け、ストーリーに一貫性を持たせる工夫も有効です。トーン&マナー(言葉遣いや表現方法)を統一し、どのチャネルでも「その企業らしさ」が伝わるように設計しましょう。コンセプト設計を軸に、ぶれない発信を継続することが、採用ブランディングの成功のカギとなります。

ポイント2.社内を巻き込み、社員とともに発信する

採用ブランディングを強化するためには、広報PR担当や人事部門だけでなく、現場の社員も巻き込んだ発信が重要です。社員のリアルな声や働く姿は、求職者にとって最も信頼できる情報源となるため、共感や安心感を生みやすくなります。

たとえば、社員インタビュー記事の掲載やSNSで社内イベントの様子を発信したり、採用イベントに現場社員が登壇したりすることで、企業文化や働く魅力をダイレクトに届けられます。

また、全社的に取り組む際は、「なぜこの活動が重要なのか」を事前に共有しておくこともポイントです。そうすることで、社員の協力を得やすくなるだけでなく、発信に関わった社員が自社への愛着や誇りを深めやすくなり、エンゲージメントの向上も期待できます。

ポイント3.定期的な振り返りと改善をする

採用ブランディングを持続的に強化するには、実施後の振り返りと改善プロセスが欠かせません。単にアクセス数や応募数を見るだけではなく、求職者の反応や行動データをもとに、「どのメッセージやコンテンツが心に届いたか」を見極めていきましょう。

たとえば、採用イベント後のアンケート結果や、SNS投稿へのコメント内容なども重要なヒントになります。定量データ(PV数、応募数など)と定性データ(求職者の声や志望動機の変化)を組み合わせて分析し、具体的な改善点を明確にしましょう。

また、「どのチャネルがもっとも効果的だったか」といったチャネル別の効果も可視化し、今後の発信戦略に反映させることが大切です。四半期ごとなど定期的に振り返ることで、採用ブランディング全体を継続的にアップデートする仕組みを作ることができます。

まとめ:「ここで働きたい」と思わせる戦略が採用ブランディング成功のカギ

採用ブランディングは、単なる採用活動ではなく、自社の価値観や魅力を発信し「理想の仲間」と出会うための戦略でもあります。

成功のためには、一貫したメッセージ設計、社員を巻き込んだリアルな情報発信、そして効果検証によるブラッシュアップが欠かせません。こうした取り組みは、採用力を高めるだけでなく、社内エンゲージメントの向上や企業ブランド全体の強化にもつながります。

目先の採用成果にとどまらず、中長期的に企業価値を高める視点で、戦略的に採用ブランディングに取り組んでいきましょう。

PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法料金プランをあわせてご確認ください。

PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする

この記事のライター

熊谷英恵

熊谷英恵

フリーランスのSEOライター。2005年にアパレル業界に入社し、販売やEC運営、管理職を中心にプレス業務にも携わる。2020年に副業でWebライティングを開始し、2023年より専業ライターとして独立。toB向けメディアを中心に執筆活動を行い、企業の情報発信をサポートしています。現在は子育てを通じて子どもの心理に関心が広がり、チャイルドコーチング資格の取得に向け勉強中です。

このライターの記事一覧へ