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「転載」と「引用」の違いとは?広報PR担当者が知っておきたい転載ルール

「転載」と「引用」の違いとは?広報PR担当者が知っておきたい転載ルール

「転載」と「引用」という言葉は、どちらも他者の著作物を用いる行為ですが、その意味や扱いには大きな違いがあります。特に「転載」は、適切な手続きを踏まないと著作権侵害につながるリスクがあるため、注意が必要です。

特にビジネスシーンでは、記事の転載を検討する場面も多いでしょう。しかし、ルールを正しく理解していないと、法的トラブルに発展する可能性もあります。本記事では、「転載」と「引用」の違いを明確にし、広報PR担当者が知っておくべき転載ルールを詳しく解説します。

目次
  1. そもそも「転載/原文転載」とは?

  2. 「転載」と「引用」の違いとは?

  3. 広報PR担当者が知っておきたい「転載」の基本ルール

  4. 自社のコンテンツが転載される3つのメリット

  5. 自社のコンテンツが転載されるときに気をつけたいこと

  6. 広報PR担当者が押さえておきたい「転載」対応の実務ポイント

  7. 転載に関するよくあるQ&A

  8. 広報PR担当者として「転載」に関する基本ルールを把握しておこう

そもそも「転載/原文転載」とは?

転載とは、他者の著作物を複製して、もともと公開されていたものとは異なる媒体に公開することを指します。特に、ほかの記事の原文をそのまま紹介する場合は、「原文転載」とも呼ばれます。

例えば、企業が発表したプレスリリースが、取材記事ではなく原文のまま掲載されるケースは「原文転載」に該当します。この場合、メディアに取り上げられたとしても、記者が独自に取材し執筆したパブリシティの記事とは意味合いが異なります。

さらに詳しく説明すると、転載とは「自身の著作物の従たる範囲を超えて、他人の著作物を複製、掲載すること」を指します。つまり、自分が書いた文章に対して他者の著作物が占める割合が多いと、転載という扱いとなる傾向があります。それに対して、自分の執筆した文章が主体となり、他者の著作物の割合が少ないもの・補足的に使われる場合は「引用」に該当します。

ここで注意すべきは、他者の著作物の割合がどれほどであれば転載扱いになるか、量的な側面で明確に基準が定められていないということです。そのため、文章量などの量的な側面で比較するほかにも、内容面で評価することも重要になってきます。次の項で「引用」と「転載」の違いと注意すべき点を詳しく説明します。

「転載」と「引用」の違いとは?

「転載」と「引用」という言葉の意味は似ていますが、法律上では大きく異なります。2つの言葉の法律上の違いと、扱う際に注意すべきポイントを紹介します。

「転載」と「引用」の違いとは

「転載」と「引用」の意味

「転載」と「引用」のわかりやすい違いは「自分の著作物に対する他者の著作物の割合」です。転載と引用の意味について改めてまとめると、それぞれ以下の通りです。

転載自身の著作物の従たる範囲を超えて、他人の著作物を複製、掲載すること
引用自身の著作物の従たる範囲内で、他人の著作物を複製、掲載すること

大切になってくるのはコンテンツの内容における「主従関係」です。自身の著作物が「主」で他人の著作物が「従」であれば「引用」となります。逆に、他者の著作物が主であって、その従にあたる要素として自分の著作物を用いているのであれば「転載」となりやすいでしょう。

「転載」をするときは著作権者の許可が必要

転載と引用を取り扱うときにもっとも注意すべき部分は、「著作権者の許可が必要かどうか」ということです。他者の著作物の割合が多い転載の場合、著作権者の許可が必要不可欠になります。

すべての著作物は「著作権法」によって守られており、私的な利用などの例外を除いて、著作権者以外が許可なく複製することはできません(著作権法21条「複製権」)。自分の著作物の割合に対して、他者の著作物が多い転載は、著作権者の許可なく転載してしまった場合、著作権者の複製権を侵害してしまうこととなります。

引用のルールと著作権に関する詳細は以下の記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。

広報PR担当者が知っておきたい「転載」の基本ルール

転載は著作権の問題を伴い、トラブルの原因となる可能性があります。広報PR担当者として、適切な情報発信を行うためには、そのルールを正しく理解することが不可欠です。次に、転載に関する基本的なルールについて説明します。

1.一般的に「転載」する場合には著作権者の許可が必要

先ほども述べたように、転載と引用の一番の違いは「著作権者の許可が必要かどうか」です。転載の場合には、著作権者の許可が必要不可欠になります。

著作権者の許可がないまま転載した場合、無断転載という違法行為になります。著作権者の複製権を侵害するため、トラブルのもとになりかねません。

とはいえ、著作権法では、何文字までが引用で何文字からが転載になるのか、厳密に決まっていないのが難しいところ。「この長さだと引用? 転載?」と少しでも迷った場合は、記事を公開する前に著作権者に許可をとることをおすすめします。

2.転載する際は、元記事へのリンクを明示する

転載のルールとして、出典を明示する必要があることは必ず覚えておきましょう。

著作権者から転載の許可をもらったとしても、その出典を明示することが重要です。す。元の記事がインターネット上でアクセスできる記事である場合、必ずURLを記載するようにしてください。

ちなみに、引用する際も出典の明記は必須事項です。合わせて覚えておくとよいでしょう。

3.転載部分を明確にする

転載をする場合は、自分で執筆したコンテンツと区別をするためにも、転載した箇所は「転載であること」をわかりやすく記しておくのがルールです。

自社のコンテンツが転載される3つのメリット

ここまでで、自社が転載する際のルールについて確認しました。では反対に、自社のコンテンツが転載されることのメリットは何でしょうか。プレスリリースだけでなく、さまざまな自社コンテンツが転載されるメリットを3つ紹介します。

1.より多くの生活者に自社のことを知ってもらえる

まず、メディア掲載と似た転載のメリットとして、より多くの生活者に自社のことを知ってもらえるというメリットがあります。

Webメディアなどに転載されると、生活者は自社のプレスリリースやホームページに直接アクセスしなくても情報を受け取ることができます。普段自社の情報にリーチすることがない生活者に対して、その生活者が触れるメディアを通じて、間接的ではありますが情報を届けることができるでしょう。

ただ、取材や報道でニュースとして取り上げられるのとは意味が異なります。転載は、あくまでも自社のコンテンツがそのままほかのメディアで掲載されるということ。ニュースとして取材を受け、深掘りされたオリジナルのコンテンツとしてメディアに掲載されるのとは異なり、一次情報の拡散にとどまることを理解しておきましょう。

2.認知度の向上・ブランド価値の強化につながる

自社のコンテンツが転載されると、認知度を向上させるだけでなく、ブランディングにも効果的です。今まで単独の発信では訴求できなかった生活者や顧客に、自社の立ち位置を伝えることができるためです。

メディア掲載と同じように、社会から信頼されているプラットフォームに転載されることで、広報PR担当者が書いたコンテンツの価値が高まることがあります。転載されるメディア次第ではありますが、知名度が高く、良質なコンテンツを掲載しているメディアに転載されれば、読者の信頼を得ることにもつながります。

3.転載先の媒体からのアクセスが得られる

Web記事に転載をする際には、必ず元記事へのリンクを張るというルールがあります。そのため、オリジナルの情報を知りたいと感じた読者がリンクを通じ、自社の記事にアクセスするといったメリットもあります。

転載先から自社の記事へのアクセスを獲得すると、転載先では省略されていたより詳しい情報や自社の指針、ほかのコンテンツまで、幅広く読者に届けることができます。より多くの情報を届けることで、自社に興味を持ってもらえる可能性も高まります。

転載先の媒体からのアクセスが得られる

自社のコンテンツが転載されるときに気をつけたいこと

転載には、著作権が密接に関わってきます。自社が転載される側になったとき、気をつけたいことについても確認しておきましょう。こちらからは、特に気をつけたい2つのことについて説明します。

1.SEO的に重複コンテンツとみなされることがある

「重複コンテンツ」とは、複数のサイトで同様のコンテンツが掲載されている状態のことを指します。転載記事は、そのまま本文に同じ記事が掲載される割合が多いため、重複コンテンツとして扱われる可能性が高まります。

重複コンテンツとしてみなされてしまうと、Googleから警告(ペナルティ)の通知が来るケースも。Googleは検索に表示されるコンテンツの質を高めるために、無断転載された記事や悪質なサイト運用と判明したものについては、ペナルティの対象としています。ペナルティにより、検索順位が下がるなどのデメリットが生じる可能性もあります。

ペナルティの対象についての詳細は、Googleが提供している「Google 検索の基本事項」を確認してみてください。

2.自社のページが表示されなくなることがある

Googleは検索後に表示されるコンテンツの質を高めるために、似たようなページは表示させないように調整しています。そのため、自社のページよりも転載先のWebサイトのほうが評価が高い場合、自社のページの検索順位が下がり、表示されなくなってしまう可能性があります。

また、本来であれば自社のページに集まっていた閲覧数や評価が、転載先にも分散されてしまう可能性も高まります。転載が多ければ多いほど、すべてに分散されてどの記事も検索上位に上がってこないケースもあります。

転載されることを考える際には、SEOを含めた自社サイト側のデメリットまで考えられるといいですね。

広報PR担当者が押さえておきたい「転載」対応の実務ポイント

広報PR担当者は、転載依頼を受けた際の判断や、転載を許可する条件整理など、日常的に著作権リスクと向き合う場面が多くなります。特に現在はWeb媒体での転載依頼が増えており、対応を誤るとブランド価値の毀損につながる可能性もあります。そのため、基本的な著作権の考え方だけでなく、実務で押さえておくべき確認項目や判断基準を体系的に理解しておくことが重要です。

以下では、広報担当者が日々の業務で迷いやすいポイントを整理し、判断の軸を持てるよう解説します。

転載依頼を受けた際に確認すべき項目

転載依頼が届いた際は、まず「どの範囲の転載なのか」「使用目的」「掲載媒体」「掲載期間」「クレジット表記の有無」の5点を必ず確認します。範囲が全文なのか一部なのか、画像・図版まで含むのかで許諾条件が大きく変わります。

また、媒体が営利目的で運営されている場合は商用利用と判断されることが多く、より慎重な判断が必要です。掲載期間やリンク義務が明確でないと、後にトラブルになるケースもあります。

依頼内容は口頭で済ませず、メールなど記録が残る形でやり取りすることで不一致を防ぎましょう。

自社の転載ガイドラインを整備するメリット

転載ガイドラインを事前に作成しておくと、社外からの問い合わせ対応が迅速になり、判断基準が個人に依存しなくなります。ガイドラインには「許可が必要なケース」「禁止している利用方法」「引用時の表記ルール」「商用利用の扱い」などを明確に記載します。

ガイドラインを整備しておくことで広報・法務・営業など複数部署が関わる場合でも、基準が統一されるため対応のブレが生まれません。また、無断転載を減らす効果もあり、コンテンツのブランド価値を守る観点でも大きなメリットがあります。ガイドラインを公式サイトに掲載しておけば、外部の媒体が事前に確認できる点も利便性が高い対応といえます。

転載を断るべきケース・許可すべきケース

転載許諾の判断は、必ず「自社ブランドの保護」と「情報の正確な伝わり方」という2つの観点で行います。例えば、文脈が歪められる可能性がある場合、政治的・宗教的主張と併載されるケース、競合サービスの宣伝記事内で使用されるケースは断ることが適切です。

一方、自社の認知向上につながる媒体で、原文のまま正確に掲載される場合は許可するメリットがあります。ただし許可する場合も、転載範囲・掲載場所・リンク義務・表記ルールなど条件設定を行い、トラブル防止を徹底することが重要です。

転載に関するよくあるQ&A

転載に関する疑問は、著作権の理解不足だけでなく、インターネットやSNSの普及によって新しい論点も増えています。特にPR・広報の実務では、社内資料やSNSでの利用、転載依頼への対応など、判断に迷うケースが少なくありません。ここでは、よく寄せられる質問を中心に、実務に直結する形で回答を整理しました。引用と転載の境界線が曖昧に感じられる場合の判断ポイントや、SNS・AIなど近年よく議論されるテーマにも触れています。

Q1.「転載禁止」と書かれている場合も引用なら使える?

「転載禁止」と記載されていても、著作権法上の引用要件を満たす限り、引用として使用することは認められています。引用が成立するためには「主従関係が明確」「引用部分が必要最小限」「出典を明記」「引用部分を区別して表示」などの条件を満たす必要があり、転載のように全文を載せる行為は許容されません。

引用なら自由に使えると考えがちですが、引用要件を満たさない場合は違法利用として扱われるため、迷う場合は権利者に問い合わせることが確実です。

Q2.SNSのスクショ投稿は転載になる?

SNS投稿のスクリーンショットをそのまま掲載する行為は、多くの場合「転載」に該当します。SNSの投稿自体が著作物として保護されており、引用条件を満たさない通常のスクショ共有は無断転載と判断されやすい行為です。また、プロフィール画像や写真など二次利用が禁止されている素材を含む場合はリスクがさらに高まります。

一方、スクショを批評・分析する目的で使い、主従関係が明確で出典を示していれば引用が成立する場合もありますが、判断は難しいため注意が必要です。

Q3.社内資料に他社記事を転載するのはOK?

社内研修・勉強会・会議資料などで他社記事を全文掲載する行為は、著作権法上の「私的使用」には当たらず、転載として扱われるため許可が必要です。私的使用の範囲は「個人の家庭内での利用」に限定され、組織内共有は含まれません。

一方、記事の一部だけを引用する場合は要件を満たせば許可は不要です。社内で共有したい場合は全文転載ではなく「記事URLの共有」または「引用+自社の解説」に切り替えるのが安全です。

Q4.許可を取るときは何を伝えればよい?

転載許可を求める際は、以下の6点を必ず伝えましょう。

①転載したい箇所(全文/一部/画像の有無)
②使用目的(社内資料/Web掲載/営業資料など)
③掲載場所と公開範囲
④掲載期間
⑤クレジット表記の方法
⑥改変の有無

これらが曖昧なまま依頼すると、後に「許可の範囲を超えた利用」と指摘される可能性があります。許可はメールなど証跡が残る方法で取得することが望ましく、取得後も表記ルールやリンク義務など指定事項を守る必要があります。

Q5.AIが生成した文章は転載に当たる?

AIが生成した文章は、著作者が存在しないため従来の著作物として扱われないケースが多く、通常は転載には該当しません。しかし、AI生成文が既存の著作物に酷似している場合や、学習データ由来と推定できる表現を再現してしまった場合は、結果として他者著作物の複製と評価される可能性があります。

また、生成画像・文章の一部に他者の素材が含まれる場合も著作権侵害が発生します。AI利用時は「生成物の独自性」と「学習データ由来のリスク」を常にチェックする姿勢が必要です。

広報PR担当者として「転載」に関する基本ルールを把握しておこう

今回の記事では、転載と引用との違い、自社が転載される側となった際に注意すべきことなどについて説明しました。

転載と引用の違いは、「自分の著作物に対する他者の著作物の割合と役割」という基本的な内容を覚えておきましょう。コンテンツの「主」となる部分か「従」となる部分かが違うだけで、著作権上の扱いが大きく異なります。無断転載の結果、著作権法に抵触すると判断されてしまうと、著作権者とのトラブルを引き起こす可能性があるうえに、サイトの評価も下がってしまうかもしれません。

転載する場合も、される場合も注意が必要です。広報PR担当者は「転載」のルールをしっかり確認して、効果的な活動を行いましょう。

<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

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