PR TIMES MAGAZINE|広報PRのナレッジを発信するWebメディア
記事検索
title

「仲間づくり」を加速させる全員参加型PR:Ubie PRチーム対談(前編)

SNSやPR TIMES上で話題になったPR事例の裏側に迫る本連載。今回は、2020年4月中旬から6月初旬にかけて実施された、Ubie(ユビー)株式会社さんの取り組みをご紹介します。

AI問診サービスを提供する同社は、もともと夏を予定していた生活者向け新サービスの発表を、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4月下旬へ前倒し。その後も医療現場でのコロナウイルス対抗策大型資金調達の発表などを相次いで実施しました。結果的に、大手新聞各社やキー局のニュース番組などで連日取り上げられ、生活者・医療機関にサービスが大きく広まるきっかけとなりました。

自宅で事前問診可能な「AI受診相談ユビー新型コロナウイルス版」を無償提供開始(2020/4/28)

「AI問診Ubie」が院内感染対策としてCOVID-19トリアージシステムを拡張し、全国の医療機関に提供開始(2020/5/11)

Ubie、生活者と医療をつなげる事業を推進するため20億円の資金調達を実施(2020/6/4)

この怒涛の3ヵ月を同社のPRパーソンたちはどう動いたのか。前後編でお届けします。

Ubie株式会社の最新のプレスリリースはこちら:Ubie株式会社のプレスリリース

Ubie株式会社 BizDev/PR 

重藤祐貴(しげどう ゆうき)

1991年生まれ。2014年に新卒で株式会社リクルートキャリアに入社し、採用広告営業に従事。その後、地域活性営業部のマネージャーや大手法人向け企画営業を経験。2018年7月にUbie株式会社にBizDevとして入社。事業開発/アライアンス/セールスを経て、現在はPR/Public Affairs/人事を担当する傍ら、一般社団法人日本医療受診支援研究機構の設立に携わる。プライベートでは一児の父。

Ubie株式会社 Affection PR

片山悠(かたやま ゆう)

大学卒業後、株式会社オズマピーアールでプランニングからメディアリレーションズまで一貫して従事。2017年2月に株式会社メルカリに入社。コーポレート領域を中心に、PR戦略立案からリスクコミュニケーションまで幅広い業務を経験。2017年に全社MVP受賞。2019年5月に株式会社マドベを創業し、事業会社の戦略パートナーとして活動。2020年3月よりUbie株式会社に入社し、Affection PRとして「愛情」を担当。受賞歴にPRアワードグランプリ、ACC CM FESTIVALなど。

すべては「仲間づくり」のため

ー 全国の医療機関で導入がすすむ「AI問診Ubie」に続き、生活者向け「AI受診相談ユビー」を公開し、業界内外から大きな反響を得たUbieさん。AI受診相談ユビーは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、リリースを早めたそうですね。

重藤:はい。当初は7月のローンチを予定していました。しかし、コロナ禍で多くの関係者から「今こそ必要なサービスではないか」との声をいただき、急遽リリース予定日を前倒しして発表することにしたんです。

片山:4月上旬に、リリース前倒しを緊急決定。そこからコミュニケーションプランを定め、約2週間で報道発表までこぎ着けました

ー やはり、コロナ禍の今だからこそ!という狙いがあったのでしょうか。

片山:ここ数ヶ月間の広報界隈の話題は、「コロナ禍にどう動くか(企画をつくるか)」が多くなる傾向にあったと思います。しかし僕たちは「世界的な危機を(自分たちが)どう捉えるかを考え、ビジョンやミッションを改めて表明していく機会」として受け止めていました。

重藤:そうですね。結果的に多くのメディアに取り上げていただきましたが、それは手段の一つに過ぎなかった、というか。

Ubie株式会社_重藤祐貴_片山悠_20071301

片山:「パブリシティを増やして認知を拡大するため」というよりも、ビジョンを達成するための「仲間づくり」に向けた活動をしていたという感覚です。

- 医療業界でのPR活動。難しいことも多そうです。

片山:たしかに、より戦略的な動きが求められます。僕たちのサービスは人工知能を活用していますが、技術や先進性を声高に叫ぶだけの単なる「テクノロジー礼賛」ではメッセージは届かないと考えました。

重藤:医療に関わるステークホルダーは多岐に渡ります。患者、医療従事者、病院、診療所、厚生労働省、自治体……。地域差や法律・条例による規制などもあり、どこか一部を破壊していけば変わる、という世界ではありません。だからこそ先ほど片山さんが言った「仲間づくり」が最重要課題なんです。

片山:「仲間づくり」という視点を持つと、資金調達も含め、それぞれのステークホルダーが持つ「物語」の中でUbieがどう活きてくるのかを考えざるを得なくなります。例えば、医療機関がAI問診Ubieを導入すると現場でどんな医療体験を実現できるのか。採用候補者がUbieで働くことで彼・彼女たちの人生にどんな意味をもたらせるのか。そうした視点を、UbieのPR施策では大切にしています。

Ubie株式会社_片山悠_20071301

プレスリリースが社内コミュニケーションのきっかけに

ー スピード感を持って次々と施策を実行できた理由はどういったところにあると思いますか。

片山:日頃から、PRを意識する文化が社内に浸透していたこと、でしょうか。

重藤:今回のプレスリリースの原稿も、全員で共同編集して完成させましたからね。

ー 全員でプレスリリースを共同編集……?!

重藤:発言量に個人差はありますが、医師とエンジニアでもある2名の共同代表のみならず、BizDevやエンジニア、病院へのご提案を担当するチーム、デザイナーたちもPR会議に参加して、発表内容を決めていきました。

片山:機械学習エンジニアや組織開発担当も、自分の立場から「こういう表現はリスクになる」などとGoogleドキュメントのプレスリリース原稿にコメントをくれたり、Slackでフィードバックしてくれたり。

重藤全員が「自分ごと」として考えていてくれるから、当事者意識も高かったですね。発表の瞬間、PCの前にかじりついてみんなで見たり、テレビで紹介される時にはリアルタイムでリモート鑑賞会を開いたり。家族に共有した、というメンバーもいました。

Ubie株式会社_重藤祐貴_20071301

ー そうなると、一つひとつのメディア掲載への喜びも社内で共有できますね。

片山:全国ネットのニュース番組をはじめ、新聞、Webメディア、業界紙にも。資金調達については海外メディアにも広報したことで、複数の取材オファーがありました。それらを機にAI問診Ubie導入のお問い合わせやAI受診相談ユビーへのアクセスも殺到しまして。もちろんメディア各社からのたくさんの反響は本当にありがたいことなんですが、他にも大きな効果があったなと思っていて。

僕はこのプレスリリースが社内コミュニケーションのきっかけとして作用していたことが何より嬉しかったですね。プレスリリースを全員が自分ごととしてチェックする中で、サービス自体の議論が始まることもありました。

重藤:PR施策に全社で取り組んだことは、大きな経験値となりました。一連の発表に際し、社内も社外も巻き込んで一つのニュースとして世の中に発信できたことは、組織づくりにも貢献したと断言できます。

PRは「打ち上げ花火」ではなく「環境づくり」

ー そのような全員参加型のPRは、どのように実現したのでしょうか。

Ubie株式会社_重藤祐貴_20071302

重藤:仕組みを作ってきた、という点が大きいかもしれません。例えば、全社の目標(OKR)の一つにPRに関する項目を入れていたり、新入社員向けに入社初日に30分のPR講座を設けていたりもします。Slackにも全社員参加のPRチャンネルがあり、週1の全体会ではPRチームも発表時間をもらって状況を共有しています。もともとPRマインドがない人にも興味を持ち、必要性を実感してもらえるよう、仕組み化しています。

片山:PRを「打ち上げ花火」のように考える企業って、多いのではないかと思うんです。もちろん「火薬をこめる」作業も重要ですが、もっと大切なのは「環境をつくる」こと。仕組みをつくり、PRにまつわるコミュニケーションの透明性を高めることで、他のメンバーが参加しやすくなる、発言しやすくなる空気を作るのも重要です。

例えば、全メンバー向けにプレスリリースの書き方講座を実施する。そうすると「さっきの会議での話、すごく『PR的』だから片山さんに話してみよう」という発想が自然とメンバーから生まれるようになる。こうした環境づくりが、全社でのPRにつながっていると感じています。

ー 全員参加型のPRを実施する中でのPRチームの役割は?おふたりの間で役割分担はしていますか?

片山:PRチームが主体となって、全体のPR施策の策定や実行を担います。役割分担は、結構明確かな?重藤さんは一般社団法人の設立や医療業界団体、行政関係者などとのコミュニケーションを推進してきた中心人物で、仲間づくりのプロ。この仲間づくりってPRの根底の概念なんですよ。だからPR経験はないといつも謙遜しているけど、僕から見ると超絶PRパーソンなんですよね。

Ubie株式会社_片山悠_20071302

重藤 いやぁ……僕一人の力では何もできないので、とにかくたくさんの人を巻き込むことでしか何も成し遂げられないと思っていて。片山さんが、そこから生まれる「うねり」を編集しています。

ー ありがとうございます。後編では、全員参加型のPRを実現するために、お二人がこれまでに行ってきた取り組みについてもう少し深く聞いてみたいと思います。

今回のPR事例ポイント

  • メディア掲載のみならず、その先の「仲間づくり」を意識したPR施策
  • スピード感を持ってPR施策を実施できた理由は「全員参加型PR」にあり
  • 一人ひとりが当事者意識を持ってプレスリリースに向き合えるための仕組みをつくる

(撮影:原 哲也)

PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法料金プランをあわせてご確認ください。

PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする

この記事のライター

青柳 真紗美

青柳 真紗美

ビジネス書の編集者から広報PRパーソンへ。AI系スタートアップや不動産テック企業のPRなどを経て、現在フリーランスで広報・PR支援をしています。メディアリレーションからオウンドメディアの編集まで「コミュニケーションを考える」のが大好物。特にニッチ領域のサービス・プロダクトが好き。「みんなが嬉しい広報・PR」をモットーにその企業の「らしさ」を届け、ファンを増やすお手伝いをしています。

このライターの記事一覧へ