近年、「メンタリング」を導入する企業が増えており、管理職やリーダー育成の手法、女性リーダーの育成手法としても注目されています。しかし、メタリングの進め方、社内の適正な対応者など、実施に関する疑問も多いのではないでしょうか。
今回は、メンタリングを導入して期待できる効果、実施のポイントについて、そしてコーチングとの違いについても詳しくご紹介します。
メンタリングとは?
メンタリングは、経験豊富なメンターとメンティが、対話によってメンティの抱えるキャリア形成上の課題や悩みを解決するサポートを行います。指示命令によって業務遂行をマネジメントする、上司と部下の関係とは異なるものです。メンターは、メンティとの対話の中で信頼関係を構築しながら一緒に課題を解決する、いわば伴走者。
メンターは、メンティの抱える課題や悩みをすでに経験、解決している先輩です。しかし、課題や悩みに対して、解決方法や回答を提示する存在ではなく、メンティの課題や悩みに共感し、メンティが自分で選択をするためのアドバイスや知見を与えることが役割です。
日々の業務とは異なり、常に意思決定して行動するのはメンティ本人。メンタリングは、メンティが最善の選択をできるように、ロールモデルとしてメンターの経験をシェアする場となります。
メンタリング・マネジメント、メンター制度とは?
組織やチームにメンタリングを取り入れることを「メンタリング・マネジメント」や「メンター制度」と呼びます。利害関係のない者同士で、キャリアや人生について相談できる機会を設ける制度です。上司以外の社員と面談を行う「ななめ1on1」などが例に挙げられます。
メンタリングマネジメントは、新卒や新入社員のオンボーディング、教育の一環として行われるケースが多かったものの、近年では管理職育成やリーダー育成でも実施されるケースが増えてきています。
女性の管理職やリーダー育成という点からも注目。株式会社Mentor forが、2020年に働く女性を対象に実施した「コロナ禍での働き方の変化に関するアンケート」では、82.8%が「キャリアに関しての相談相手が必要」と回答しています。しかし、日本において女性のロールモデルと呼べる存在は多くないことが現状です。2012年には、厚生労働省が、女性活躍推進の取り組みの一環として「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」を発行しており、メンタリングは、女性の社会進出や女性活躍といった側面からも注目を集めているのです。
メンタリングとコーチングとの違い
メンタリングとコーチングの大きな違いは、対話のなかでのアドバイスの有無です。コーチングは、質問や問いかけなどを傾聴することで、対象者本人の中から答えを導き出し、アドバイスや経験をシェアすることは含まれません。
一方、メンタリングは、メンターが人生の先輩やロールモデルとして、メンティの課題に対してアドバイスや経験のシェアをおこないます。経験や知見をシェアすることで、課題解決のスピードをあげることが可能です。
また、中長期的なキャリア形成を目的として実施することが多いため、コーチングと比べ期間が長くなる傾向にあります。
コーチングについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
人材育成にメンタリングを導入する目的・効果
人材育成においてメンタリングを導入する目的は、長期的に活躍してくれる自律型人材を育成することです。メンタリングを通じて主体性を育て、日々の業務に積極的に参加する社員を増やします。
メンティとして参加する社員にとっては、業務上のナレッジやライフイベントの経験、多くの知見を得られます。キャリアに関する課題感や悩みは個人により異なり、顕在化している課題から、中長期的な漠然とした不安感まで、粒度もさまざまです。利害関係などを気にせずに自己開示や相談ができることで、必要としていた知見やアドバイスを得ることができるのです。
また、メンターの存在によるモチベーションアップが期待できます。メンターがサポートしてくれる心強さが、メンティの心理的安全性を高めることでやる気につながり、明確な目標に向かうことで、メンティの主体的な行動を引き出します。
メンタリング・メンター制度を導入する方法
メンタリングを行う方法は、社内メンターと社外メンターの2つの方法があります。それぞれのメリットと注意したい点を理解し、自社に適した方法を選びましょう。
社内メンターを設置する
社員をメンターとして設置する方法のメリットは、組織の事情や業界動向などの共通認識があること。共通言語があるため、共感しやすい部分が多いです。同じ環境で活躍している先輩との対話では、組織内での中長期的なキャリアプランも描きやすくなります。すでに信頼関係が構築できている人同士であれば、メンティも話やすいでしょう。
一方で、社内での利害関係を気にしてしまい、本当の課題や悩みを話してもらえない場合もあります。社内メンターを設置する場合は、評価には直結しないことや話した内容は公言しないことなど、メンティが安心して話せる環境を作りましょう。
社外メンターを設置する
外部サービスなどを利用して、プロのメンターを設置する方法です。さまざまな背景のメンターから、メンティに最適な人を設定することができます。その他、女性の管理職やリーダーを育成したいが社内にロールモデルになる人材がいない、という場合にもおすすめです。社内事情や関係性が全くないため、利害関係を気にすることなく話ができるという点もメンティにとっては大きなメリットです。
注意点は、信頼関係を構築するまでに時間がかかることや、業界に関する知識が社内メンターよりも少ないことなどが挙げられます。サービス利用のコストがかかることも留意するべき点でしょう。
以下、代表的なメンタリングサービスをご紹介します。
Biz Mentor
コーチング資格を所有するメンターとの定期的なメンタリングセッションのほか、スポットでのコーチングも可能です。管理職やリーダー、中小企業の経営者向けにサービスを展開しています。担当メンター以外からもアドバイスを受けられる機会を作るなど、多面的なサポートが魅力です。
Mentor For
女性の管理職やリーダー育成に特化した社外メンターサービスです。女性特有の課題や悩みを解消することを強みとしています。キャリアメンターの資格を取得した経験豊富なメンターの中から、メンティの課題や環境に近い経験を持つメンターをマッチングしてくれます。メンタリングの実施後の効果測定レポートも共有してもらえるため、効果測定も可能です。
社内でメンタリングを実施するための4ステップ
社内でメンタリングを行うにあたり、必要な準備があります。今回は絶対に行ってほしい4つのステップをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
STEP1.メンターとメンティをマッチングする
メンターとメンティのマッチングは、メンタリング成功のための最も重要なポイントの一つです。両者の相性はもちろん、メンターがロールモデルとしてシェアできる経験の有無、社内の立場や人間関係からメンティの心理的安全性が担保されるか、などさまざまな観点から検討が必要になります。
メンティに対してアンケートなどを実施し、事前にヒアリングを行うことで精度を上げることができます。どのような課題感や不安があるのか、話をしやすいタイプはどんな人なのかなどを踏まえ、メンターの人選をしましょう。
STEP2.メンタリングの目的や意義を共有する
メンタリングを成功させるには、メンティがメンタリングに主体的に参加することがカギです。メンタリングを実施する目的や意義を共有するために、オリエンテーションなどを実施しましょう。メンタリングに対する疑問や不安があれば解消し、メンターとメンティとの信頼関係を構築しやすい場づくりを行います。
STEP3.スケジュールをセットする
メンタリングは、メンティが主役のメンティのための時間です。日々の業務の中で忙しく過ごしていると、メンタリングに時間を割くことが難しい場合もあるでしょう。集中して参加してもらうためにも、重要な時間として事前にスケジュールをセットしておくことをおすすめします。
STEP4.効果測定の仕組みをつくる
メンタリングは、メンティの精神的・心理的変化が大きな効果です。そのため、客観的に効果が見えにくい場合もあります。事前事後のアンケートを実施するなど、変化を数値化したり、可視化する仕組みを作りましょう。
人材育成にメンタリング・メンター制度を導入する際に注意したい4つのポイント
メンタリングでは、個人情報保護や心理的安全性の確保など、気をつけるべきことが多数あります。メンティにとって、より良いキャリア形成ができるサポートを行う上で、注意しなければならない4つのポイントをまとめました。
ポイント1.守秘義務を遵守する
メンタリングを実施する際には、メンターとメンティ双方に守秘義務が発生します。心理的安全性を確保し、信頼関係を作るためにも必ず遵守徹底してください。メンティが話しやすい環境を作るためにも重要なポイントです。
また、重要な事象が発覚し、社内に内容の共有が必要だと感じた場合にも注意が必要です。基本的に、メンターはメンティのために行動することはありません。そのため、メンティが自ら社内の然るべき部署や担当者へ連絡することを促しましょう。メンターから共有を行う場合は、必ずメンティ本人の同意を得なければなりません。
ポイント2.求められていないアドバイスはしない
メンターは、求められていないアドバイスはしないようにしましょう。メンティがアドバイスや知見を欲していなければ、いくらアドバイスをしても響きません。信頼関係が築けなくなってしまうこともあります。
メンタリングの主役はメンティです。メンターは、メンティが最善の意思決定をするための伴走者であることを忘れないようにしましょう。
ポイント3.評価に直結させない
メンタリングで話した内容を、社内の評価に直結させないようにします。メンタリングのなかで出てきた話題は、その場限りの話題として扱いましょう。せっかく信頼して話した内容が、全て筒抜けだったとしたらどうでしょうか。メンターとの信頼関係はもちろん、メンティと組織との信頼関係も崩れてしまいます。
メンターを選ぶ時点で、評価と関係のない人を選ぶなど、仕組みで防止できると良いでしょう。
ポイント4.常に未来志向を持つ
メンタリングは、目の前の課題を解決するだけではありません。今後のキャリアプランやメンティの人生そのものなど中長期的な視点でサポートを行うことが必要です。はじめは、顕在化した目の前の課題解決をサポートすることが多いですが、それで終了ではありません。これから先、もっとよくなるためにはどうすればいいのか、未来志向で一緒に考える姿勢を持ちましょう。
メンタリングで社員の活躍の場を広げよう
メンタリングは、社員が抱える課題や不安を解消し、活躍できる環境を作る人材育成の手法です。女性の社会進出やリモートワークの拡大など、働き方が複雑化している現在では、それぞれの課題も多様化しています。伴走者としてのメンターの存在は、社員の活躍を後押ししてくれる大きな助けになるのではないでしょうか。
今回ご紹介した実施のポイントを参考に、メンタリングで社員の活躍の場を広げてみてください。
メンタリングに関するQ&A
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