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3年間で申し込み5万件超、成長を続けるKINTOの隠さないコミュニケーション

「そこで、PRゼミ!さぁ愛知!」が2022年11月21日に開催され、当日は会場、オンラインとあわせておよそ200名が視聴しました。

2019年、創業1年目の申し込み台数は1,200件という実績が、今では申し込み台数累計52,000件と大きく成長したKINTO。

本レポートは、2022年11月21日に開催された「そこで、PRゼミ!さぁ愛知!」の後編。株式会社KINTOのマーケティング企画部 部長である曽根原さんの講演レポート「1年足らずで全国40%超の認知、年間取材75件を実現したKINTOの広告展開とPR施策」に続き、曽根原さん、同部署広報・ブランディングチーム 主任の岡部さん、元中日新聞社経済部長の山下さんによる鼎談をまとめています。

株式会社KINTO マーケティング企画部 部長

曽根原由梨(Sonehara Yuri)

大学卒業後トヨタ自動車に入社し、人事・商品企画を担当。2013年にユニクロへ転職、商品MDなどを担当したあと、IT企業を経てKINTOへ入社。会社設立の2019年1月から、サブスクサービスのUIUX・WEBシステムでディレクションや中長期戦略を担当、各種プロジェクトリーダー等を経て、2022年3月に同部副部長に就任、2023年1月から現職。

株式会社KINTO マーケティング企画部 広報・ブランディングチーム 主任

岡部サエマ(Okabe Saema)

愛知県豊橋市出身。名古屋のIT企業で企画営業を4年、その後に企業広報として4年従事した後に、2019年6月に株式会社KINTOへ入社。設立まもないタイミングからサービスの広報業務に携わり、PR戦略の企画立案、プレスリリース作成やメディア向け発表会の開催、取材対応などを担当。2022年4月から現職。

元中日新聞社 経済部長

山下雅弘(Yamashita Masahiro)

三重県出身。早稲田大学政治経済学部を卒業後、中日新聞社に入社。名古屋本社経済部、東京本社(東京新聞)経済部などで、自動車や電機などの製造業、エネルギー業界などを担当。北陸本社(北陸中日新聞)経済部長を経て、2017年8月から2020年3月まで名古屋本社経済部長を務める。

包み隠さず、社会とコミュニケーションを取る

──広報担当者として、メディアの方とのコミュニケーションで大事にしている点を教えてください。

岡部さん(以下、敬称略):まず、代表の小寺(こてら)がメディアを通した情報発信を大事にしています。入社してすぐ、小寺から直接「メディアの先にはお客さまをはじめ、世の中の皆さまがいる」と伝えられたのを今でも覚えています。第一部で曽根原からお伝えしたことと重なりますが、メディア発表会は、プレゼンよりも質疑応答の時間を長く設け、時間が押したとしても質問が終わるまで対応しています。また、基本的にはNGなしで対応しておりますが、メディアを通した情報発信を大事にしているからこそなんです。

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──山下さんから見て、いかがでしょうか。

山下さん(以下、敬称略):小寺社長のスタンスは非常に素晴らしいですね。広報活動の一つひとつから、その企業のイメージというのは自然とにじみ出てくるものだと、常にそう感じています。

──注目度が高かったクルマのサブスクという新しいサービス。(2019年)当時の記者会見はどのように対応していましたか。

曽根原さん(以下、敬称略):「(売り上げやお申込み件数の)進捗はどうなのか」とたくさんのお問い合わせを受けておりました。いろいろ社内で議論して、(1年目の申し込み台数1,200件という厳しい)数字と合わせたうえで、これから進めていきたいということをお伝えするようにしました。数値を出す、出さない、今後の展望をどのくらいお伝えするか、などの話が挙がりましたが、包み隠さず伝えたほうが、社会とコミュニケーションが取れる、という判断でした。

岡部:1年目の申し込み台数1,200件という数字から「1日6件の申込み」の見出しなど、厳しい記事がある中で、応援してくださるメディアさんもありました。また、厳しい記事を書かれたメディアの方と、その後もしっかりコミュニケーションを取って小寺のインタビュー記事を書いていただいたり。メディアの皆さんと日々よいお付き合いをしていくことが大事かな、と振り返っても感じましたね。

山下:そのときの中日新聞ってどんな書き方で、結構大きく取り上げてましたか。

岡部:はい。中日新聞さんも数字には触れられていましたが、今後の取り組みを中心に書いていただいていました。

山下:新聞記者の場合、取材する記者とは別に見出しをつける整理部という担当がいますが、整理部がつけた見出しに対して、取材した側から要望する場合もあります。広報担当者の方、あるいは社長が(売り上げやお申込み件数など数字の)意味合いを伝え、それを取材記者が把握しているかがポイントになりますね。

包み隠さずお話いただくのは、あるべき姿だと思う一方で、どうしても言えないことはあると思います。決まっていないことや、聞かれて答えられないことを無理に答えなくて構いません。答えられない際に毅然とした姿勢を示すということが大事かな、と。

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岡部:そうやって見出しが付けられているんだ、とすごく勉強になりました。弊社は、代表の小寺が割と何でもお伝えしていて、「これは記事にしないでほしいんだけどね」と、裏話を言っていますが、良いコミュニケーションが取れているため一部を切り取られるような報道はないですね。できる限りオープンにお付き合いするのがお互い良い関係になっていくんじゃないかと思います。

プレスリリースはプロジェクトの初期段階で書いてみる

──これまで務められていた中で、もっとも印象に残ったプロジェクトを教えてください。

曽根原:bZ4Xのプロジェクトが心に残っています。リース専売の売り方の方針が決まってから発表まで時間がない中で、どんなお客さまに何を伝え、どんなふうに社会に受け止められたいのかを考え続けました。通常のプロジェクトでは、業務フロー設計やシステム対応の比重が多いですが、メッセージに多くの時間を使いました。

──プロジェクトを考える中で、いつも行っていることや意識していることはありますか。

曽根原:トヨタさんからいただいたテーマや代表の小寺からのメッセージを受け、プロジェクトの初期の段階から、目的やお客さまとなる方のこと、社会的なインパクトなどを議論しています。「世の中にどういう価値を届けたいか」というブレストを繰り返し、実際にプレスリリース案も書いたこともあります。どんな記事の見出しを狙うのか、みたいなことをプロジェクトの初期の段階である程度固めていましたね。

また、代表を含め目線合わせをしたうえでサービスを作るために必要なリソース、社内の体制を組むようにしていました。大きく伝われば伝わるほど、多くの部署から「ぜひこのメンバーを出したい」「このプロジェクトで成長させたい」と人選をしてもらえました。世の中に対するインパクトを持つプロジェクトということを明確にすればするほどプロジェクトがうまくいくと思っています。

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山下:プレスリリースを配信する案件に対する社会的な意義付け、どういう意義があり、世の中に出していくのか、という点が明確になっているとよいですね。環境でも、今だと価格の話題もあります。何がプレスリリースの肝なのかをはっきりさせ、埋もれさせずにタイトルに入れたり、最初の方に触れたり。毎日何十ものプレスリリースを受け取る記者からすると、その点を明確にして、注意していただければいいなと思いますね。

参加者からの質問に回答|予算がないときどうしてる?KPIは?

日頃の発信が事業理解につながる

──本日ご参加の皆さまから事前にいただいたご質問です。予算がない中で、どのような広報PR活動をしていますか。

岡部:予算がない中で……確かに難しいですね。プレスリリース配信は、そこまで高い金額感ではないと思うので、まずは利用してみるのもいいと思います。

弊社の事例ですと、広報メンバーがブログも書いており、自らの肉声で発信できるという点がいいですね。プレスリリースほど広がりはないですが、お客さまが読んでくださったり、新しくご担当になる記者さんに過去のプレスリリースとあわせて、弊社の取り組みの紹介としてお送りしたりしています。ブログ記事を送ることで、その記事にコメントをいただけたり、メディアに取り上げる際にその内容をピックアップしていただけたりするなど、記者の方とのコミュニケーションや事業理解にもつながっています。

また、社内にも発信するため、インターナルコミュニケーションとしても役立っています。予算がない中では、プレスリリースの発信やブログなどのSNS発信を、地道ですがやってみると得られるものがあるかと思います。

──SNSの反響についても、こまめにシェアされていると事前にお伺いしていましたが詳しくお聞かせいただけますか。

岡部:例えば、Vintage Clubという旧車のコミュニティですが、旧車ブームということもあり、お客さまの反応も非常によく、メディアの取材につながるような取り組みになっています。ワールドビジネスサテライトに取り上げられたの際には、番組を見ながらTwitterのコメントをスクショし、放送後の翌朝には社内にレポートしました。KINTOというキーワードが入ったものだけでなく、旧車っていいねというコメントもすごくあって。社内にこういったソーシャルの反響をフィードバックするのも、広報としての大事な仕事だと思っています。

山下:社内全体におそらく「広報マインド」が醸成されるのではないかと思いますね。また、(一つひとつが)ニュースになりづらいかもしれませんが、取り上げる切り口の材料になり、結果、記事に取り上げやすくなって、どんどん相乗効果が生まれてきます。

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KPIよりも毎日のPDCAと空気感をつくること

──もうひとつ、事前にいただいたご質問です。広報PR施策において工夫したこと、KPI、判断基準などを教えていただけますでしょうか。

曽根原:弊社は、あまりKPIがなく、当初狙っているものをどうやって到達させるというシナリオを作ってそれに対してちゃんと振り返りをしているか、その振り返りに基づいて次のアクションができているかが重視されます。よく「KPIがなくて何をやったらよいかわかりません」とメンバーから言われますが、それは上司の皆さんと日々のコミュニケーションでやってください、と。それよりも3ヵ月前に設定したKPIは事業活動の変化ですとか、世の中の変化ですぐに変わってしまうのでむしろPDCAが毎日回っている方が重要であるという考え方をしています。PRに関しても一緒で、プロジェクトや案件をやるときに一緒にサービスも考えるし、それが世の中にどういうふうに伝わるかを考えるという仕事の仕方のほうが弊社としては重視しています。

岡部:そうですね、広報って本当にKPIは永遠の課題と言いますか……。KPIはないですが、クルマのサブスクっていいよね、ありだよねという空気感を作っていくことが広報として大事なミッションかなと思っています。

プレスリリースやブログを発信したり、ソーシャルの反応を見たり。今日も皆さんとお話できるのをすごく楽しみにしているんですが、リアルで弊社のイメージとかコメントをいただいたり、家族や友達も含めて世の中の方がサブスク、KINTOに対してどう思っているのかを日々キャッチするようにしたりしています。そして、社長や上司にフィードバックを行い、最近よくなってきたよね、最近こうだよね、というカジュアルなコミュニケーションを取ることを大事にしています。

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成長を続けるKINTOの背景にあるコミュニケーション

KINTOの広告展開とPR施策に続き、KINTOのメディアリレーションズについてメディアの視点を交えてお話いただきました。

コミュニケーションは、顧客視点を前提とし、メディアに情報を隠さず正直に伝えること。その真摯な姿勢が、メディアの信頼を得て、今の報道につながっています。

また、「プロジェクトが始動する際にプレスリリースを書いてみている」という点は、反響状況に応じた備えができることはもちろん、メディアの視点が加わることでより練磨されたプロジェクトになっているのではないでしょうか。

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この記事のライター

丸花 由加里

丸花 由加里

PR TIMES MAGAZINE編集長。2021年、PR TIMESに入社し、「PR TIMES MAGAZINE」、ご利用企業向けのコミュニティイベント「PR TIMESカレッジ」の企画・運営を行う。2009年に新卒入社した大手インターネットサービス運営会社では法人営業、営業マネージャーとして9年半、その後オウンドメディアの立ち上げに参画。Webコンテンツの企画や調査設計に携わる。メディアリレーションズを主とした広報を経て、現職。

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