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ステルスマーケティングとは?法規制の内容と、企業が行いたい3つの対策を解説

2023年10月1日から、景品表示法により「ステルスマーケティング(ステマ)」が規制対象となりました。「広告であるか否か」が重要な判断基準ですが、意図せず違反してしまうのではないかと不安に感じる方もいるのではないでしょうか。

ステルスマーケティングの抵触を防ぐには、社内教育や、インフルエンサーをはじめとする依頼先との契約の明確化が欠かせません。本記事では、ステルスマーケティングの定義から具体例、SNS投稿の投稿時の注意点までを解説します。

目次
  1. ステルスマーケティングとは

  2. ステルスマーケティングが「悪い」とされる理由・背景

  3. ステマ規制とは?ステルスマーケティングの法規制

  4. ステルスマーケティングとなる手法・事例

  5. ステルスマーケティングとアフィリエイトの違い

  6. 企業ができるステルスマーケティングの3つの対策

  7. ステルスマーケティング対策として活用したいSNSの機能

  8. 広報が知っておきたいステルスマーケティングとなる例

  9. 意図せずステルスマーケティングとなってしまわない対策を

ステルスマーケティングとは

「ステルスマーケティング(ステマ)」とは、広告であることを隠して第三者が商品・サービスを宣伝する手法のことです。隠密的なマーケティング手法で、「アンダーカバーマーケティング」とも呼ばれています。

一般的な広告費用に比べてコストを抑えやすく、第三者による発信は信頼されやすいという点から広まりました。しかしこのように公正でない販促行為は広告主・発信者ともに信頼を損なうおそれがあり、広告・広報PRの観点でも適切ではありません。

現在では、景品表示法によって規制されており、SNSや口コミサイトはもちろん、ブログやテレビなど、あらゆるメディアが対象となっています。

詳しい基礎知識は、以下の記事もあわせてご覧ください。

ステルスマーケティングが「悪い」とされる理由・背景

ステルスマーケティングが法律で禁止されたのは2023年と比較的最近のことです。

では、なぜ「悪い」とされているのでしょうか。企業イメージが悪化することはもちろん、消費者や市場全体にも悪影響を及ぼす点を押さえておきましょう。まずは、ステルスマーケティングが規制に至った理由・背景について詳しく解説します。

背景

消費者が商品やサービスを合理的に選択できなくなる

ステルスマーケティングの大きな問題は、広告であることが明示されない点です。例えば、インフルエンサーが動画内で商品を紹介する場合、消費者はそれを中立的な第三者の意見として評価内容を受け止め、「このインフルエンサーが評価するなら」と購入を判断してしまうケースがあります。

商品・サービスを提供している事業者自身の広告であれば、消費者はある程度過大・誇張が含まれているものと捉えて、商品・サービスを選択します。他方で、中立的な第三者の評価や感想は、真実の内容であると捉えて、商品・サービスを選択します。

そのため、もし中立的な第三者の評価ではない(過大・誇張のある)内容を、中立的な第三者の評価であると認識した場合、消費者の合理的な商品・サービスの選択が歪められてしまいます。

市場の競争と発展を妨げる

仮にステルスマーケティングが増えた場合、正当な広告を表示する企業のほうが不利になります。商品・サービスの機能性や価格帯を評価して購入・利用するという本来の構造が崩れるため、市場の競争と発展を阻害するというのも問題点です。

生活者が快適に商品・サービスを利用するための法律はいくつか定められていますが、ステルスマーケティングも市場と生活者を守るために禁止されたもののひとつといえるでしょう。

企業・インフルエンサーのブランドイメージ・信頼の損失につながる

ステルスマーケティングの罰則対象は広告主(事業者)ですが、その影響は企業・ブランドのイメージだけでなく、発信者であるインフルエンサーの信頼にも及びます。「広告であることを隠して発信した」という事実は炎上のリスクを高め、本来広告ではない内容までも広告として捉えられてしまうなど発信者としての信頼を損うおそれがあります。

さらに、ステルスマーケティングを行っていた企業という認識を消費者に持たれると、真実の内容を伝えた広告に対しても過大・誇張している内容ではないかという懐疑的な見方が広まるかもしれません。前述のとおり、業界全体への不信感を招く可能性があるため、悪質で不当なマーケティング手法です。

ステマ規制とは?ステルスマーケティングの法規制

ステルスマーケティングが規制対象となったのは、2023年10月1日。「広告である」と認識しづらい表示は、すべて景品表示法違反として罰則の対象となりました。基本的にはわかりやすい仕組みですが、法規制についていま一度理解を深めておきましょう。ステルスマーケティングの規制と違反による罰則などについて解説します。

2023年10月1日からステルスマーケティングは「不当表示」となり違法に

2023年10月1日、ステルスマーケティングは景品表示法における「不当表示」として規制対象になりました。この法改正により、それまで黙認されていたステルスマーケティングも規制対象となっています。

景品表示法の改正によって広告業界には大きな影響を及ぼし、適切な広告コンテンツの制作を義務付けられました。「ステルスマーケティングか否か」の判断基準が明確になったことで、生活者が商品・サービスを選びやすくなった起点ともいえるでしょう。

参考:令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。 | 消費者庁

消費者庁における景品表示法の定義・内容

消費者庁は、ステルスマーケティングの定義を以下のように定義しています。

景品表示法で規制されるのは、広告であって、一般消費者が広告であることを分からないもの

引用:令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。 | 消費者庁

つまりインフルエンサーが投稿するコンテンツに限らず、テレビや新聞など、生活者が「広告である」と認識できないものすべてがステルスマーケティングに該当します。

また、規制の対象はあくまで商品・サービスの提供者(広告主)であり、宣伝を依頼されたインフルエンサーなどは対象外です。

ステマ規制に違反した際の罰則

ステルスマーケティングやこれを疑われる表示があった場合には措置命令が行われます。誤認を排除し、今後同様の広告表示をしないという約束を交わす措置です。措置命令に従わなかった場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。

ステルスマーケティングとなる手法・事例

ステルスマーケティングには、大きく分けて「利益提供秘匿型」と「なりすまし型」の2種類があります。いずれも悪質とみなされる手法ですが、具体的にどういった事例があるのか把握しておきましょう。それぞれの具体例もピックアップしながら特徴を解説します。

事例

利益提供秘匿型|報酬・商品などの利益を提供していることを隠しているケース

事業者がインフルエンサーをはじめとする一般消費者に商品・サービスの紹介などの投稿を依頼しているにもかかわらず、広告として記載していないものが「利益提供秘匿型」です。例えば、特定の商品をインフルエンサーに提供し、当該のコンテンツに「広告」「PR」といった明記がない場合がこれにあたります。

商品紹介動画やSNS投稿だけでなく、Instagramなどで飲食店の紹介を依頼するケースも同様です。広告主が一般消費者に広告を依頼する場合は、広告主が消費者に提供した旨を明記しなければなりません。

利益提供秘匿型の事例

  • ゲーム実況者に報酬を支払ってプレイ動画を投稿してもらったが「案件」「スポンサー」などの記載がない
  • Instagramの人気投稿者に化粧品を提供し利用している様子を紹介してもらったが、提供を受けたという説明がない
  • YouTuberをレストランに招待し、メニューなどを取り上げてもらったが「広告」などが明記されていない

なりすまし型|第三者になりすましているケース

「なりすまし型」は、本来広告主である商品・サービスの関係者が、一般消費者を装って発信するコンテンツのこと。企業の従業員であることを隠したSNSアカウントで特定商品を推奨したり、飲食店の高評価レビューを書いたりといったケースです。

いわゆる「自作自演」にあたる行為で、中立的な第三者による評価でなく、公平性を失うことからステルスマーケティングとして禁止されています。

なりすまし型の事例

  • ECサイトの運営者が、第三者を装って「配送が早かった」「梱包が丁寧だった」といった高評価レビューを投稿した
  • 広告代理店のスタッフが、企業から依頼を受けて高評価レビューを投稿したが、その関係性を明示しなかった
  • 企業関係者が複数のアカウントを作成し、個人を装って架空の体験談を投稿した

ステルスマーケティングとアフィリエイトの違い

Webサイトやブログなどで商品・サービスを紹介し、一定の条件を達成すれば広告収入として報酬を得られる仕組みが「アフィリエイト」です。重要なのは、アフィリエイトサイトや広告記事であることを明記しているかどうか。

さまざまなジャンルのアフィリエイトサイトが運営されていますが、「アフィリエイトリンクがある」「広告である」といった記載がない場合は、ステルスマーケティングとして規制対象となります。

企業ができるステルスマーケティングの3つの対策

不本意にステルスマーケティングとなってしまうことを避けるためには、企業全体で理解を浸透させたり、表記を徹底したりといった対策が必要です。インフルエンサーをはじめとする依頼先にもしっかり理解してもらえるよう、契約書で取り決めておくとよいでしょう。企業として実施したいステルスマーケティングの対策をご紹介します。

対策1.全社員にステルスマーケティングの概念やリスクを共有する

企業全体で理解を深めることが必要です。社内教育を徹底し、ステルスマーケティングの概念や、景品表示法違反によるリスクなどを共有しましょう。

広告や広報PR担当者はもちろん、営業・SNS担当者などすべての関係者に向けた対策を練ることが大切です。特にXやInstagramといったSNSは個人アカウントを持つ人も多いため、投稿内容について注意喚起できるとよいでしょう。

対策2.「広告」「PR」の表記を明確に行う

近年はインフルエンサーをはじめとする消費者に広告を依頼するケースも増えています。広告を依頼する際は、「広告」「PR」「プロモーション」といった文言を明確に記載することの依頼や指示を徹底しましょう。

明記されていても認識しづらい位置に書かれていたり、背景と同化していたりする場合はステルスマーケティングの対象になるかもしれません。YouTubeなど広告表示のフォーマットが決まっていない場合は特に注意が必要です。

対策3.マーケティングコンテンツや、利益提供を行う場合の表示方法を契約書内に記載する

インフルエンサーやアフィリエイターと契約する際に、広告表示義務について認識をすり合わせることも重要な対策のひとつです。違反による罰則は企業側が負うため、双方の齟齬がないよう契約書を交わせるとよいでしょう。

広告であることを明瞭にするだけでなく、使用する文言や表示位置といった詳細まで決められると、投稿後のトラブルも防げます。さらにこの規定を社内で共有しておくことで、特定の商品・サービスを問わず中長期的な運用にも活かせるでしょう。

ステルスマーケティング対策として活用したいSNSの機能

Instagram・X(旧 Twitter)・YouTube・TikTokは、多くの企業がプロモーションとして活用するツールです。発信方法や投稿内容を間違えると規制対象となるため、どういった機能があるのかチェックしておきましょう。4種類のSNSと、ステルスマーケティング対策に便利な機能をご紹介します。

Instagram:タイアップ投稿

Instagramで活用しやすいのが「タイアップ投稿」といわれるビジネス向けの機能です。クリエイターが投稿する際に広告元の企業を設定すると、投稿文の上部に「〇〇とのタイアップ投稿」と明記されます。

Instagramは「#PR」のような広告用ハッシュタグを推奨していないため、ステルスマーケティングのリスクを下げるためにもタイアップ投稿が必須と考えたほうがよいでしょう。

X(旧 Twitter):ハッシュタグ

X(旧 Twitter)はハッシュタグの活用が盛んなため、「#PR」「#プロモーション」「#スポンサー」といった投稿が可能です。Xの広告マネージャーを介さない投稿は自動表記がないため、必ず投稿者側に記載してもらうよう注意しましょう。

ハッシュタグの文言に規定はなく商品・サービス名を記載しても問題ありませんが、広告であることがわかるよう明記しなければなりません。

YouTube:有料プロモーション

YouTubeで動画を投稿する際、「有料プロモーション」のチェックボックスを選択することで広告コンテンツであることが明示できます。概要欄や動画冒頭で「プロモーションを含みます」という文言が自動的に表示される機能です。

視聴者は自動表示の文言のみで広告を認識できますが、必要に応じて商品に関する補足や企業・ブランド名などの発信を依頼するケースもあります。

TikTok:ブランドコンテンツ/Spark Ads

TikTokには「ブランドコンテンツ」という機能があり、「プロモーション」のラベル設定を行うと広告であることを明記できます。投稿動画の左下に「プロモーション」と表示されるため、視聴者も広告コンテンツを認識できる仕組みです。

また、すでに投稿されているコンテンツを広告として発信したい場合には「Spark Ads」という機能も活用できます。一般的な広告依頼の流れとは異なりますが、投稿者に承諾を得たのち企業の広告として打ち出す方法です。

広報が知っておきたいステルスマーケティングとなる例

SNSなど多様なツールで商品・サービスを紹介するケースが見られますが、これらの多くは不当な広告にはあたりません。ステルスマーケティングとみなされるかどうかは、販売促進を目的とする立場の人が、意図的に広告であることをかくして発信しているかという点です。ここでは、ステルスマーケティングにあたる・あたらない具体例をそれぞれご紹介します。

ステルスマーケティングとなる・広告とみなされる例

ステルスマーケティングとみなされる具体的な例は以下のとおりです。

  • インフルエンサーに報酬を支払って商品提供したが、「#プロモーション」などの広告表示がない
  • 従業員のSNS個人アカウントで、第三者を装い自社商品を紹介した
  • ECサイトにおいて第三者に依頼して自社の製品について良い評価の口コミを投稿させる

投稿する内容について明示的な依頼や指示がなくても、投稿により利益があることや投稿しないことで不利益があることを言外から感じさせるなど、客観的状況から「広告」とみなされる場合もありますので、この場合は広告表示をするようにしましょう。

ステルスマーケティングにはあたらない・広告とみなされない例

以下のようなケースは広告にならないため、ステルスマーケティングに該当しません。

  • 商品・金銭などの報酬なく、消費者が純粋な体験や感想を投稿している
  • 企業の公式SNSアカウントで商品・サービスについて発信している
  • 中立的な第三者とわかる投稿者が商品・サービスの比較や評価をしている

「広告」のような明記がなくとも、企業のXアカウントのように「明らかに企業が投稿している」とわかるものはステルスマーケティングの規制対象外です。投稿主と投稿内容がどういったものであるかが基準になるということを押さえておきましょう。

意図せずステルスマーケティングとなってしまわない対策を

ステルスマーケティングは、企業やインフルエンサー、市場全体の信頼を損なうリスクがある悪質な手法です。不本意な違反を避けるためにも、徹底した教育体制や契約書の取り決めといった体制を整えておきましょう。

マーケティング活動の透明性を高められれば、企業・ブランドのイメージアップや良好な関係構築にもつながります。ご紹介したSNS機能や対策などを参考に、適切で良質な広告運用を展開してください。

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この記事の監修者

長野英樹

長野英樹

2022年PR TIMES入社。社内弁護士として、法務相談や契約書の作成等の法務案件や取締役会事務局・株主総会事務局のコーポレートガバナンスなどを担当。サイバーセキュリティ及びインターネットを専門とする法律事務所での勤務を経て現職。

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