年間を通して最も市場規模の大きなイベントのひとつに「クリスマス」があります。経済効果も大きく下半期の山場として企画に力を入れている企業・団体も多いのではないでしょうか。
PR TIMESでも11~12月を中心に、クリスマス関連プレスリリースは多く配信されています。さらに、期間外にあたる1~10月にも「クリスマス」のキーワードを含んだプレスリリースが見受けられ、年間行事のなかでも特に重要視されていることが伺えます。
街中のいたるところでクリスマスフェアと題したセールやギフト提案、ケーキなどが並び、いまや日本においてクリスマスは宗教関係なく多くの生活者に関係するイベントになっています。
そんな生活者に向けた施策提案が多いなか、PR TIMES MAGAZINEではBtoBのクリスマス関連プレスリリースをピックアップ。2019年12月18日に配信された、株式会社RINさんのプレスリリースの話題の秘密を紐解いていきます。
◆株式会社RINさんのプレスリリースはこちら
クリスマス後に廃棄される花、“フラワーサイクリスト”が『半値』で買い取ります!
社会問題にアプローチし、企業の姿勢を伝える。株式会社RINの「クリスマス」プレスリリース事例
廃棄直前の花を回収し、ドライフラワー作品にして新たな命を吹き込む事業を展開する「株式会社RIN」からクリスマスキャンペーンに関するプレスリリースです。
クリスマスは冠婚葬祭に並んで多くの花が使用されるため、廃棄される花も多く発生することから、それらを半値で買い取り新たな命を宿らせる救済企画を開催するという内容です。
一般的にクリスマス時期はイベントやサービス、ギフトなどの製品に関するプレスリリースが多く配信されるなか、同社はクリスマス後に発生する社会問題に目を向けたアクションを起こしました。
同プレスリリースはFacebookのいいね!数が4,000弱と高く、Twitterでも好意的なリアクションが多く見受けられるなどSNSでも話題となりました。
クリスマスという華やかさの裏側にスポットを当てたこちらのプレスリリース。社会問題に寄与する企画自体の素晴らしさは言わずもがな、それを伝えるプレスリリースにも企画の本質がしっかりと届くような書き方や工夫が施されています。
具体的に本プレスリリースの魅力を紐解いたところ、3つのポイントが見えてきました。
- 自分ごと化できるような問題提起
- 心に響く呼びかけ
- 知ってもらうためのストレートな表現
GOODポイント1:自分ごと化できるような問題提起
本プレスリリースでは、まずリード文で問題提起がしっかりとなされています。
冒頭で「クリスマス後の大量の花の廃棄」という現状の問題が簡潔に記されています。端的な説明によりこれまで無意識でいた部分にスポットライトをあてられ、初めてこの問題に気付く読み手もいることでしょう。
もし本プレスリリースに、こうしたリード文での端的な現状説明が記されていなければ、ある企業が買い取りキャンペーンを行うという事業内容だけが伝わり、本来の企画の意図や込められた願いが読み手に届ききらなかったことでしょう。冒頭から社会問題を意識させ、読み手がこの課題を自分ごと化したからこそ、結果として大きな反響につながったのではないでしょうか。
また同社は設立間もない企業のため、活動内容への認知が浅い段階であったことも推測されます。「【現役広報が教える】プレスリリースの書き方10のコツ・基本の5構成」の記事にもあるように、リード文はプレスリリース全体の要約にあたり簡潔にまとめることが必要です。その上で、どんな課題に対して展開する事業なのかが伝わるようなエッセンスが盛り込まれていることも大きなポイントでしょう。
GOODポイント2:心に響く呼びかけ
本件は買い取りキャンペーンに関する内容になっていますが、根源となる企業の課題や目的は”廃棄花「0」”にあります。そのためには今回のキャンペーンを通じて同社の活動を広く知ってもらい、できるだけ多くのステークホルダーの賛同を得ることが必要不可欠です。
プレスリリース内にも課題解決に向け、読み手の心を動かすための呼びかけの仕掛けがいくつも見受けられました。具体的な3つのポイントは下記の通りです。
・キャンペーン対象者
キャンペーン概要内の対象者の項目に「活動に共感し、今後も応援してくれる」という表現が含まれています。一見抽象的に思える記述ですが、本企画が一過性のキャンペーンではないと伝える意図が感じられます。
・フラワーサイクリストの説明
「フラワーサイクリスト」という造語の説明箇所には、活動内容に加えて「メリット」と題した活動の結果から得られる利点を箇条書きしています。そのなかで「廃棄する際の心苦しさ」という心情にも触れています。
創設者が事業立ち上げのきっかけとなった心情は、少ながらず他の同業者も抱えていることでしょう。自分の体験や思いを通じて訴えられるポイントは、多くの共感を呼び人々の心を動かすポイントにもなり得ます。
・取材のお願い〜メディアへの呼びかけ〜
通常、メディア関係者に向けた呼びかけはプレスリリース最後にまとめられていることが多いもの。しかし、本プレスリリースでは会社概要の前の比較的目に留まりやすい位置に記されています。
メディアへの呼びかけの内容としては、自社の活動がどんな社会問題に触れることなのかに触れながら、廃棄花問題の認知拡大に向けて関係者に取材いただくようお願いしています。
また結びには「ご協力いただけますと幸いです」といった言葉で締めくくられ、取材対応可能という通りいっぺんのアナウンスではなく協力要請の形をとっており、課題解決に向けた強い気持ちが込められているように感じられます。
実際、このプレスリリースがメディアへの認知を広げる契機となり、取材依頼も多く届いたそうです。
一方、あえてメディアへの呼びかけはクローズドに伝えるなど、企業ごとに情報発信やメディアへの対応方針は異なるでしょう。いずれの場合にせよ、自社がメディアに対してどのような姿勢でいるのか明記することがポイントです。
GOODポイント3:知ってもらうためのストレートな表現
本プレスリリースは、会社設立からわずか15日後に配信された最初の一本です。
同社の広報担当者によると、「循環型経済」や「SDGs」といった社会的取り組みに関与する一方で、キャンペーン概要を口語調にするなど直接的で型にはまらない表現を用いたタイトルは勇気が要ったと振り返っています。広く認知されているサービスや製品とは異なり、まず活動を知ってもらうことを優先すべきフェーズにおいて、わかりやすいストレートな表現を選択したのではないでしょうか。
設立間もない初めてのプレスリリース配信は多くの悩みや不安が伴うことでしょう。しかし認知が浅い段階こそ、広く情報を届けるための大きな第一歩が大切です。
同社も勇気を出してストレートなプレスリリースを配信することで、取材機会だけでなく企業のファンを増やせるなど多くのメリットが得られたようです。
市場規模の大きなイベントこそ時代に沿った進化を
今回ご紹介したプレスリリースは、大きな経済効果をもたらす「クリスマス」だからこそ抱える裏側の課題にアプローチしたこと、また企画概要の説明だけでなく、意図を説明することで課題を読み手にも自分ごと化してもらい、事業への応援者を募るきっかけにつながる内容であったことが印象的でした。
新たなサービスや事業を立ち上げたばかりのベンチャー企業にとって、今回のような認知を広げるだけでなくファンや応援者を集めるような情報発信の仕方は、参考になるポイントも多いのではないでしょうか。
クリスマスは市場規模も大きく華やなトピックスという面が際立ちますが、その裏側や課題に目を向けてみると新たな提案ができるもの。また例年通りに企画するだけでなく時代に沿った進化を遂げているか、特に今年はコロナ禍による変化に対応できているか、という点も生活者から求められるでしょう。
自粛を強いられる局面が多かった2020年でしたが、例年の「クリスマス」らしいワクワク感を残しつつも「withコロナ時代」の新定番となるような施策をタイムリーに企画できれば、応援者やファンを増やすことにつながるのではないでしょうか。
<編集/平 理沙子>
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