生成AIの普及により、企業がAI画像を活用するケースが増えています。プレスリリースに掲載する画像も例外ではありません。一方で、使用可否やリスク判断に不安を感じており、活用するべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
AI画像を商用利用する際には、法的リスクに加え、倫理面での懸念や信頼性を損なう可能性も考慮する必要があります。
本記事では、弁護士監修のもと、プレスリリースにおけるAI画像の取り扱いと具体的なメリット・リスクを解説。あわせて、実務に役立つチェックリストや注記文例、広報PR担当者として押さえておきたいポイントもご紹介します。

株式会社PR TIMES 社内弁護士
長野英樹2022年PR TIMES入社。社内弁護士として、法務相談や契約書の作成等の法務案件や取締役会事務局・株主総会事務局のコーポレートガバナンスなどを担当。サイバーセキュリティ及びインターネットを専門とする法律事務所での勤務を経て現職。
AI画像はプレスリリースに使用しても問題ないのか
結論として、プレスリリースにおけるAI画像は使用可能ですが、「法的リスク」と「信頼性リスク」の両面から慎重な判断が必要です。違法性があるかどうかだけでなく、企業として発信することによる懸念点を考慮しなければなりません。
プレスリリースをはじめ、広報PR活動でAI画像を使う際の基本的な考え方を、3つの項目に分けて解説します。

AI画像の利用自体は違法ではない
AI画像を商用利用すること自体は禁止されておらず、プレスリリースへの掲載も可能です。法律の観点では、一定の条件下で許容されてています。実際に、生成AIを活用して商品パッケージを検討したり、Webサイトに掲載したりするケースも見られます。
ただし、「違法ではないから使用できる」と判断するのは適切とはいえません。トラブルに発展する可能性もあるため、用途や条件によっては使用を避ける判断も必要です。
違法性の判断基準は用途や生成方法などで変わる
違法性の判断において押さえておきたいのが、用途・生成ツール・公開範囲の3軸です。例えば同じAI画像でも、社内資料に掲載するのか、メディア向けのプレスリリースに掲載する場合にでは、求められる配慮やリスクの大きさが異なります。
生成ツールにはそれぞれ利用規約があり、これに定められていたり保証されていたりする利用方法に従って利用しないと、法律に抵触する可能性があります。
利用規約については、「著作権等の法律・利用規約に違反するリスク」で後述します。
法的問題以外に「信頼性」を損なうリスクが生じる
法律上問題のないAI画像であっても、ステークホルダーからの信頼を損なう可能性があります。例えば「ビジュアルコンテンツに力を入れていない」という印象を与えたり、「本物だと思っていたがAI画像だった」と誤解を招いたりするケースも考えられます。
したがって、プレスリリースでAI画像を使用するかどうかは、法的観点だけでなく、受け手にどう受け取られるかという視点も含めて判断することが重要です。企業としては手軽さやコスト削減といった魅力もありますが、企業・ブランドイメージを損なわない視点も持っておきましょう。
AI画像を使う注意点と検討リスク
ここからは、AI画像を使う注意点と検討リスクについて具体的に見ていきましょう。プレスリリースにおけるAI画像の使用では、法的・倫理的・広報PR的と3つのリスクが存在します。実際に使用する際にどのようなリスクを想定するべきなのか把握し、実務上の判断精度を上げていきましょう。
AI画像を使う場合の注意点と、3つのリスクについて解説します。
著作権等の法律・利用規約に違反するリスク
法的なリスクとして、まず理解しておきたいのが著作権侵害です。
生成AIで作成した画像が、既存の画像と同一類似性しており、かつ、既存の画像に基づいて作成されたものである場合には、著作権侵害になります。
例えば、以下のように生成した画像は著作権侵害に該当すると考えられています。
- 既存の画像を自ら生成AIに学習させ、既存の画像と類似した画像を生成
- 既存の画像のタイトルや特定の固有名詞を生成AIに入力して、既存の画像と類似した画像を生成
- 生成AIが開発、学習段階で既存の画像を学習しており、既存の画像と類似した画像が生成
また、有名人の顔写真を生成AIに学習させ、その人に似た画像を生成AIで作成し、その画像を本人に無断で自社のプレスリリースや広告などに使用した場合は、パブリシティ権侵害となる可能性があります。有名人の顔写真を使用する場合のみならず、生成した人物画像が実在する人物に類似していた場合でも、肖像権の問題が生じる可能性があります。さらに、他社のロゴに酷似した画像が生成された場合、商標権の侵害になる可能性があります。
これらの行為は意図的でなくともトラブルに発展するリスクがあるため注意が必要です。
生成ツールの使用ルールは各サービスにより異なります。利用規約で商用利用の禁止や特定のクレジット表記を義務付けるなどさまざまな制限が課せられていることがあります。サービスの利用規約を必ず確認し、勝手な解釈で進めないことが大切です。サービスの利用規約に違反して画像を利用すると、その利用により発生したトラブルの責任は自ら取るしかないことも認識しておきましょう。
写真の著作権や肖像権については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
フェイクや事実誤認と受け取られる倫理リスク
AI画像の使用で問題になりやすいのが、「生活者などステークホルダーに誤解を与えた」という理由です。実在しない人物や存在しない場所をAI画像で表現し、事実のように見せることは倫理的な問題につながります。
法律に抵触しなくとも、事実誤認により信頼性を失いかねません。現実味のある世界観を表現すること自体は問題ではなく、「あたかも存在するように振る舞う」という点が倫理的なリスクです。誤認される可能性を避けるためには、あくまでもイメージであることを伝える工夫が必要になります。
広報PRの観点ではステークホルダーの信頼低下につながるリスクも
法的・倫理的に問題がなくとも、AI画像であることを明示せずプレスリリースを配信した場合、不誠実な印象を与えてしまう可能性があります。特にメディア関係者や投資家など、企業に対して正確性を重視するステークホルダーへの影響は軽視できません。
事実誤認に加え、生成AIの利用そのものによい印象を持たない可能性も考慮し、AI画像のメリットを発揮できていることをステークホルダーにも伝えたほうがよいでしょう。
AI画像をプレスリリースに使うメリットと活用シーン
一方で、AI画像のメリットは、一般的な撮影や画像制作よりも時間・金銭的コストを削減しやすい点にあります。人の手で表現しづらい部分にも手が届きやすいため、実写化が困難な製品・サービスを伝えたいときにも役立つでしょう。AI画像をプレスリリースに使うメリットと、具体的な活用シーンをご紹介します。

メリット:コスト削減やイメージ訴求がしやすい
AI画像を使う大きなメリットは、撮影にかかる時間的・金銭的コストを削減できる点です。カメラマンやモデルの手配、スタジオ費用などが不要なだけでなく、関係者のスケジュールを調整する手間も省けます。
さらに、実写では表現しづらい抽象的な世界観やコンセプトをビジュアル化できるのもAI画像の強み。リソースが限られる中小企業やスタートアップ企業にとっては、特に現実的な選択肢になるでしょう。人員不足や天候といった条件に左右されず、イメージ通りの画像が生成できるまで繰り返せる点もメリットといえます。
活用シーン:実写が困難な製品・サービスや新規事業の想起
一般的な画像制作では表現が困難なときに、AIを用いた画像生成は有用です。無形サービスやSaaSのように、実態のない製品・サービスをビジュアル化したいときに活用できます。形になっていない新規事業を発表したり、未来のビジョンを伝えたりといったシーンでもAI画像の強みを発揮できるでしょう。
一方で、実物の製品や店舗を紹介する場合は、実写のほうが信頼性や具体性を伝えやすいケースもあります。用途に応じて、AI画像と実写を使い分ける視点が重要です。
AI画像を使うか判断するチェックリスト
プレスリリースへのAI画像掲載を検討している方は、使用に問題がないかチェックしておくと安心です。ここまで解説した活用シーンや注意点・検討リスクなどをふまえて、5つのチェック項目とそれぞれの詳細をご紹介します。
1.実写や既存素材で代替できないか検討
AI画像の使用は、あくまでも実際の代替手段がない場合の選択肢です。撮影可能な素材や既存の写真・イラストなどで対応できるのであれば、そちらをプレスリリースに掲載できないか検討してみましょう。
「製品の状態的に撮影しづらい」「掲載できる素材がない」といった場合は、部分的に生成AIに頼るのも一案です。例えば「期間限定メニューの背景に季節感がない」という場合、背景のみをAIで生成し、実際の商品写真と組み合わせることで事実誤認を防げるでしょう。
2.誤認を与えるリスクがないか確認
制作側に意図がなくとも、誤認を与えるような画像は避けるべきです。AI画像を掲載することで「実在する人物を起用した広告画像だ」「実際の出来事を再現している」といった印象を与えるリスクがないか確認しておきましょう。
事実誤認は企業やブランドへの信頼性に直結するため、生成AIを活用する場合でも、掲載前の入念な目視チェックが重要です。
3.法的リスクのチェック
既存の画像を基に画像を生成すると、著作権侵害となる可能性があります。そこで、画像を生成するにあたり、既存の著作物・作家名・作品の名称を入力しないようにしてください。
また、特定の作者・作家の作品のみを学習させた特化型AIは利用しないようにしましょう。後にトラブルが発生したときのために、画像を生成した際に入力した情報や利用した生成AIを保存しておくと安心です。
次に、生成された画像が既存の著作物に類似していないか調査しましょう。調査にあたってはGoogleの画像検索を使用することもひとつの手段です。
生成AIで作成した画像の使用にあたっては、生成AIツールの利用規約に違反していないかを確認しましょう。
プレスリリースでの掲載可否を判断できない場合は、運営会社に直接問い合わせたり、生成AIツールに詳しい専門家に相談したりといった確認作業があると安心です。
4.企業・ブランドイメージとの整合性は適切か
表現の幅が広いのはAI画像の魅力ですが、自由度が高いゆえに本来のイメージからかけ離れたビジュアルになってしまうリスクがあります。企業やブランド、商品・サービスのトーンから外れたAI画像を掲載しないよう、整合性にも注意しましょう。
革新性を伝えたいときには有効に生きるケースもありますが、基本的には信頼性や安心感を与える表現が大切です。業界や配信先のメディア特性などもふまえたうえで、イメージと乖離するAI画像は避ける必要があるといえます。
5.掲載時のリスクを第三者視点で考える
プレスリリースは、メディア関係者を通じて広く拡散されます。業界に詳しい層だけでなく、あらゆる生活者が目にすることを考慮しておきましょう。
自社のチェックでは問題のない表現でも、生活者に誤解を与えたり、意図とは異なる受け取られ方をしたりするかもしれません。広報PR担当者以外に確認できるフローがあると、メディア掲載時のリスクを客観的に捉えられるでしょう。
社内外の第三者に確認するフローを設けることで、客観的な視点からリスクを把握しやすくなります。
企業はどう使っている?AI画像の活用事例と受け止められ方
AI画像を広報PR活動に役立てたいと考える方も、実際にどのようなシーンに生かせるのか悩むのではないでしょうか。ここからは4つの事例をピックアップして、AI画像を有効活用した表現、メリットの活かし方などをご紹介します。デメリットや懸念点にも触れているので、類似の画像を生成する際は参考にしてください。
事例1.新規店舗の利用イメージを再現
新規店舗のオープンを知らせるプレスリリースでは、店舗外観・内観を伝えるために複数の画像を掲載します。生活者が利用イメージを想起しやすいような工夫として、生成AIを活用するのも一案です。
例えば「内観写真はあるがイメージ画像として簡素すぎる」という場合、人物を生成して店内での過ごし方を表現します。活気が伝わるだけでなく、空間そのものや設備のサイズ感が伝わりやすいメリットもあります。
また、建物が完成していない段階で発表する際、完成イメージとしてAI画像を使うケースもあるでしょう。読み手に誤解を与えないよう、ひと目で仮想であることがわかる画像を使うこともあります。
利用シーンの補足や空間のイメージ強化において、AI画像は有効に機能します。

事例2.製品やメニュー写真の背景を演出
商品そのものは実物を撮影し、背景など商品以外の要素を生成AIで差し替えるケースです。季節感のある背景を演出したり、複数パターンの画像を作ったりといった作業がしやすく、時間・金銭のコストカットにつながります。
現実味のない背景では商品もフェイクであると誤認されるリスクがあるため、あくまでも実写撮影が困難な部分をAIで補う方法として有用です。バリエーションが増えるほど撮影も困難になるため、豊富な候補を生成できる点はAI画像ならではの魅力といえます。
「実物+AI」の組み合わせは、コストと表現力のバランスを取りやすい手法といえます。

事例3.医療や研究・開発機関の現場を再現
病院内・研究室・製造ラインなど、プライバシーや安全上の理由から撮影が困難な現場を、AI画像で補完するケースもあります。現場をそのまま撮影することが難しい業種において、イメージを伝えるためのAI画像は有用です。
ただし、医療・研究分野のように信頼性が特に重視される領域ではリスクも大きく、掲載前の確認が重要となります。イメージを伝えるためのAI画像がかえってトラブルを引き起こす可能性もあるため、AI画像であることの意味が同時に伝わるビジュアルに配慮しなければなりません。
制約のある領域では有効な一方で、信頼性とのバランスが特に重要になります。

事例4.人物を生成して職場環境を伝える
採用広報のように自社の環境を伝える際、オフィス写真とAI画像を組み合わせることで「働く環境のイメージ」を伝えられます。デスクで作業する架空の人物を配置したり、会議の様子をAI画像で表現したりすることで雰囲気を再現できるでしょう。
特定の人物を撮影する必要がないため、プライバシー上の心理的ハードルを下げる利点があります。ただし、現実とのギャップが生まれやすくなる点には注意が必要です。「画像で見た内観・雰囲気と異なる」と感じられた場合、企業やブランドイメージを下げる要因になります。
採用広報では有効な手法ですが、実態との乖離が生まれないよう慎重な設計が求められます。

プレスリリースでAI画像を使う際の実務ポイント
AI画像をプレスリリースに掲載する際は、「AI画像であることの明記」と、「適切な挿入場所」を意識することが大切です。
いずれもメディア関係者に対する配慮につながるポイントであり、広報PR担当者として意識しておきたい実務事項です。ここでは、プレスリリースに記載できる注記文例とあわせて、AI画像を使用する際の実務ポイントを解説します。
生成AI画像であることを明記する
掲載した画像が現実のものと誤認される可能性がある場合は、AI画像であることを明記しておくことが重要です。
注記の例
※本画像はAIにより生成されたイメージです。実際の製品・施設・人物・状況とは異なる場合があります。
※画像はイメージです(AI生成)
※この画像はAI技術を用いて生成されたもので、実在の人物・場所を表すものではありません。
プレスリリース内に実写とAI画像が混在する場合は、特に明記しておくことで混同を防げます。読み手が判断しやすくなることで、情報の正確性が伝わりやすくなり、結果として企業への信頼性向上にもつながります。
AI画像の適切な挿入場所を検討する
プレスリリース内でAI画像を使用する場合、挿入場所によって受け取られ方が変わります。メインビジュアル(アイキャッチ)はプレスリリース全体の第一印象を左右するため、可能であれば実写を優先するのがおすすめ。
本文のイメージを補完する要素があれば、文章とAI画像の関連性がわかる位置に挿入するとよいでしょう。メディア関係者向けに提供できる別の画像がある場合は、補足としてその旨も明記したほうが親切です。
案内文の例
掲載画像について、別途実写素材のご提供が可能です。ご要望の場合はお問い合わせください。
まとめ:AI画像は「使ってよいか」だけでなく捉えられ方も認識しておこう
AI画像は、適切に活用すれば実務負荷を下げながら表現の幅を広げられる有効な手段です。一方、使い方を誤ると信頼性を失うリスクもあります。合法性・信頼性・整合性の3点を意識しながら、ステークホルダーに誤認させないビジュアルを設計しなければなりません。
あくまでもイメージを補完するのが生成AI。AIツールの利用規約を確認したうえで、自社ブランドや製品のイメージに適合した画像を選定していきましょう。ご紹介したリスクや実務ポイント、チェックリストを、ぜひ製品・目的に合ったAI画像の活用に役立ててください。
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