「難しそう」「生活者には興味を持ってもらえない」といったイメージを持たれがちな研究・開発領域のプレスリリース。
そんな研究・開発領域の内容でありながら、テレビ放映など大きな反響を獲得したのが「蚊の嫌う肌表面をつくり、蚊に刺されることを防ぐ技術を開発」のプレスリリースを発表した花王株式会社です。
さらに、該当プレスリリースは「プレスリリースアワード2021」で全420件のエントリーの中から「人に語りたくなるストーリーを最も有している」として「ストーリー賞」を獲得。
同プレスリリースの作成を担当した花王株式会社 PR戦略センター 企業PR戦略部 後藤良子さんに、受賞プレスリリース作成時のポイントや、受賞を振り返って感じたことを伺いました。
プレスリリース作成で意識しているポイント
── 日頃プレスリリースを作成するうえで心がけているポイントについて教えてください。
花王では、商品・IR・事業から研究まで、さまざまなジャンルにわたって年間200本以上のプレスリリースを発信しています。
年間にそれだけの数があると、必ずしも一つひとつのプレスリリースに全力投球できる場合ばかりではないんですが……。今私は研究・開発のプレスリリースをメインで担当しているので、自分の子どもや家族に話してもちゃんと内容が伝わるか、わかりやすい書き方になっているかどうかはいつも気にしています。
私自身は文系の出身で、研究分野に知識があるわけではないので、現場の研究者・開発者と毎回何往復もやり取りをしていますね。
──「プレスリリースアワード2021」でストーリー賞を受賞したプレスリリースはどのように作成されましたか。
やはり研究の担当者とたくさんコミュニケーションをとる中で、私自身がモチベーション高く、「この技術について本当に多くの人に伝えたい、知ってほしい」という気持ちを強く持って進めていました。
最初に書き始めてから公開するまでに時間的な余裕があったので、途中で「もっとナラティブが伝わる書き方にしたほうがいい」というコメントをもらって軌道修正することもできました。
参考:蚊の嫌う肌表面をつくり、蚊に刺されることを防ぐ技術を開発
── プレスリリースの発表後、反響はいかがでしたか。
プレスリリース以外に説明会などの仕掛けを行ったこともあり、テレビで取り上げていただくなど大きな反響がありました。Webメディアでも、プレスリリースに記載したちょっとしたエピソード(カバの汗にも蚊をよける効果あること)まで記事にしていただくこともあって。
こういった研究の話題って難しい、面白くないと敬遠されてしまうイメージがあると思うんですけど、案外面白く読んでいただけるんだな、と。うれしいと同時に少し不思議な気持ちでした。
プレスリリースアワード受賞を振り返って
── プレスリリースアワードで受賞の知らせを聞いたときの心境はいかがでしたか。
お知らせをいただいたときは素直に嬉しかったです。
アワード自体が第1回の開催ということで前年度の様子などもわからなかったので、賞をいただけたのがどれほどすごいことなのかとか、正直に言うとあまり想像がついていなかった部分もあったんですが……。
上司やチームのメンバーは、「この賞がもらえるというのはすごいことなんじゃないか」と盛り上がってくれて、喜んでくれました。
もともと広告の賞はたくさんありますけど、あまり広報とかプレスリリースを対象にしたアワードっていうのを聞いたことがなかったので、すごく新鮮な気持ちで受け止めていましたね。
なのでチームや広報のメンバーと、「こういうコンテストやアワードを目指せるような情報発信を意識していきたいよね」という話にもなりました。
── 受賞理由についてはどのように捉えていらっしゃいますか?
「人に語りたくなるストーリーを最も有している」ということで「ストーリー賞」をいただいて、意図通りというとおこがましいんですけど、作成時の想いを最大限に汲んだ賞をいただけたと思っています。
もともとこのプレスリリースは「すごいな」とか「面白いな」っていう気持ちを持ってもらって、それを誰かに言いたいと思ってもらうことを意識して作成していたので。
── 日頃からストーリー性を意識した情報発信をされているのでしょうか。
ストーリーを語るのが向いていない題材もありますので、すべてのリリースにしっかりとストーリー性を盛り込んでいるというわけではないです。
やはり、ファクトとのバランスを取りながら発信をしていくということが重要ではないかと思いますね。
作家やライターではない一企業の広報担当が書いているプレスリリースがそのままインターネットで広がっていく時代なので、そのことに対する責任感は忘れないように、というのも社内で共有している感覚です。
受賞後の反響や変化
── プレスリリースアワード2021では授賞式も開催されました。授賞式にご参加されての感想を教えていただけますか。
実際に参加してみると、受賞された企業のみなさまと控室などでお話しできたのがとても貴重な経験となりました。
私たちはなかなか、自社と似たような企業さまとお話することはあっても、業種とかジャンルの違う企業さまとはあまりお話しする機会がなかったりするので……。
お話ししていく中で、ほかの企業さまからは、「花王は大きい企業だから、体制も整っていて広報PR活動をすごくしっかりやっているんですね」という風に言っていただいたりもしたんですが、逆に私たちとしては「うちではそういう表現や手法はできていないなあ」という発見がありました。
「これが初めてのプレスリリースです」とおっしゃる企業さま(編集部注:「ヒューマン賞」を受賞した株式会社冨士屋製菓本舗)や、普段のコミュニケーションですごく工夫されているという企業さまのお話を聞けたのもよかったです。
今はプレスリリースがメディアの方だけじゃなくて、一般の方にも伝えるツールになっていたりもするので、「そういうところが求められてるんだな」という気づきもありましたね。
── そういった授賞式での交流なども踏まえ、受賞後の広報PR活動で変化された部分はありましたか。
そうですね、具体的に何かを変えたというわけではないんですけど……。「知ってほしい」という気持ちがあってこその情報発信、プレスリリースだよね、ということは授賞式の後で話題になりました。
ニュー・オータニ株式会社さんの写真のきれいさやビジュアルへのこだわりだったり、しっかり書き手の温度感を伝えていらっしゃる株式会社冨士屋製菓本舗さんのお話だったり。
そういうお話を聞いて初心に帰るというか、そんな感覚はありました。
そのほかの反響で言うと、受賞について、花王の社内報で紹介してもらいまして。結果的に、広報活動そのものについてあらためて社内のみなさんに伝えられるよい機会になったなと思っています。
私たちは社内のいろんなところから情報を拾い集めてきて社会にお知らせするっていう仕事をしているので、やっぱり伝えるべき情報(素材)があってこそですよね。
だからこそ、「素材を持ってきていただけたら私たち広報はちゃんといい形で伝えられるように頑張っていきますよ」という姿勢を、受賞によって社内全体に伝えていくことにつながったのかなと。それはうれしい効果だったと思っています。
自社目線と読み手目線の絶妙なバランス感覚
「花王という企業名は知られていても、『洗剤やシャンプーを作っている企業』という以外は知られていない」と話し、読み手の目線に立って丁寧な情報発信を心がけている後藤さんの姿が印象的でした。
プレスリリースアワード2021で「ストーリー賞」を受賞したプレスリリースについても、「この研究や技術について多くの人に知ってほしい」という熱い想いがありながら、自社目線のひとり語りにならず、前提やファクトを重視し読み手の立場を考えて作成されています。
受賞の背景には、自社への情熱と客観的なファクトの見事なバランスがありました。
昨年に続きプレスリリースアワード2022にもエントリーを検討中とのことですので、花王株式会社のプレスリリースに今後も注目です。
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