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ブランド戦略とは?戦略を立てるフレームワーク・成功事例・失敗事例からわかるポイントを徹底解説

ブランド戦略とは?戦略を立てるフレームワーク・成功事例・失敗事例からわかるポイントを徹底解説

企業がステークホルダーと長期的な信頼関係を築き、持続的に競争優位性を確立するために重要な「ブランド戦略」。適切なブランド戦略を実行することで、認知度や顧客ロイヤルティを高め、市場でのポジションを強化できます。

本記事では、ブランド戦略の基本的な考え方から、戦略立案に役立つフレームワーク、成功事例・失敗事例までを詳しく解説します。これからブランド戦略の立案を検討する人はぜひ参考にしてください。

目次
  1. ブランド戦略とは

  2. ブランド戦略の重要性が高まっている背景

  3. ブランド戦略の目的と得られる効果

  4. BtoBとBtoCで異なるブランド戦略の考え方

  5. ブランド戦略の立て方・立案時の7ステップ

  6. ブランド戦略の検討時に役立つ6つのフレームワーク

  7. ブランド戦略の効果測定方法・指標となるKPI

  8. ブランド戦略の成功事例

  9. ブランド戦略の失敗事例

  10. ブランド戦略を成功させるための5つのポイント

  11. ブランド戦略はフレームワークを活用し、振り返りながら実施していこう

  12. ブランド戦略に関するQ&A

ブランド戦略とは

ブランド戦略とは、企業や商品・サービスが、顧客やステークホルダーに対してどのようなブランドイメージを持ってもらいたいかを明確にし、それを実現するための方針や施策を体系的に設計することを指します。

具体的には、「誰に対して、どのような価値を感じてもらい、どのような印象を持ってもらうか」を設計し、ブランドの方向性を明確にします。

ブランド戦略においては「イメージ」「ロゴ」「名称」などのビジュアル・視覚的な要素を活用した戦略と、マーケティング施策を組み合わせたアプローチを総合的に活用します。これらを戦略的に組み合わせることで、ブランドの認知を広げ、価値を向上させ、相手に一貫した印象を与えることができます。

ブランド戦略とブランディングの違い

ブランド戦略とブランディングは密接に関連していますが、目的とプロセスが異なります。

  • ブランド戦略:どのようなブランドイメージを形成したいか、その設計図となる「計画・方針」
  • ブランディング:戦略に基づき、実際にブランドイメージを伝え、定着させていく「実行プロセス」

ブランディングとは、ステークホルダーに対して「ブランド」の共通イメージを認識してもらうための継続的なプロセスを指します。一方、ブランド戦略は、そのブランディングを実現するための計画や方針を策定することを意味します。つまり、ブランド戦略は「どのようなブランドイメージを確立するか」を決めるものであり、ブランディングは「それを実行し、浸透させるプロセス」といえます。

たとえば、ブランド戦略で「信頼性と革新性を感じさせるブランド」を目指すと定めた場合、ブランディングでは、そのメッセージが社内外に一貫して伝わるように、広報活動やデザイン、接客対応などのあらゆる接点で表現していくことになります。

ブランド戦略とマーケティング戦略の違い

マーケティング戦略とブランド戦略はしばしば混同されがちですが、両者の目的とスコープには明確な違いがあります。

マーケティング戦略は「売れるための仕組みづくり」にフォーカスしており、市場調査や販促活動、プロモーションなどを通じて商品・サービスの販売を促進します。それに対してブランド戦略は「売れ続ける仕組みを作る」ことを目的とし企業の長期的な価値向上や顧客との信頼構築に重点を置いているところに違いがあるといえるでしょう。

ブランド戦略は、マーケティング戦略の上位概念として機能し、マーケティング施策を含む包括的な経営方針の一部となります。適切なブランド戦略を策定することで、企業は一貫性のあるマーケティング活動を展開し、市場における競争力を高めることができます。

参照:『2021年度版 広報・PR概説:PRプランナー資格認定制度1次試験対応テキスト』日本パブリックリレーションズ協会編(同友社)

ブランド戦略の重要性が高まっている背景

ブランド戦略の重要性が高まっている大きな理由のひとつは、ユーザーにとって情報量が増えていることです。SNSの台頭により、ユーザーと企業の接点(タッチポイント)は日に日に増えています。企業を知る経路、購入、購入後のタッチポイントは多種多様です。

情報量の増加、製造コストの減少、商品クオリティ向上が進む中で他社との差別化を図るのはより困難になってきました。ブランドが定着すると、「選ばれる理由」ができるため、企業の経済活動はより円滑になります。

ブランド戦略の目的と得られる効果

ブランド戦略が機能すると、自社が発信したいメッセージやイメージをステークホルダーが想起してくれるようになります。ブランド戦略を通じて得られるメリットを理解することで、ブランド戦略導入の重要性や目的について考えます。

1.他社との差別化

信頼度や知名度の向上が期待できます。価格や機能で商品や企業を売り出している限り、製造コストの削減などによる価格競争のいたちごっこになりかねません。自社のサービスを選び続けてもらう環境を構築することで、リテンション(既存顧客維持)や、LTV(顧客生涯価値)の向上にもつながります

2.コスト削減

企業から発信される情報に共感する人が増えて、ブランドのファンが増える効果があります。採用や新規顧客獲得に必要な広告費用をかけなくても、ステークホルダーとの関係構築によりプロモーションや人件費の削減につながります

3.ビジネス機会の増加

中小企業の場合、大手企業に比べて認知度や資金力が乏しいケースが多いため、目に見えない独自の価値が確立されることで差別化が図れます。選ばれる理由が明確になると、周りからの期待値も上がり、事業提携や新規事業、協働事業が立ち上げやすくなります

BtoBとBtoCで異なるブランド戦略の考え方

ブランド戦略はBtoB(企業向けビジネス)とBtoC(消費者向けビジネス)で大きく異なります。提供する価値や顧客の意思決定プロセスが異なるため、それぞれに最適化されたブランド設計が求められます。

1.意思決定プロセスの違い

BtoCでは、購入の意思決定が感情や直感、生活へのメリットに基づく傾向が強く、ブランドの「イメージ」や「共感性」が購買行動に大きく影響します。そのため、広告やSNSを通じた印象設計を実施することが多いです。

一方、BtoBでは意思決定が複数人で行われ、購買プロセスが長期にわたる傾向があります。コスト対効果、業務改善への影響、導入後のサポート体制など、論理的・実用的な価値訴求が重視されます。

2.信頼構築のポイントの違い

BtoCではブランドロイヤルティの醸成が重要であり、体験価値や感情的なつながりが鍵を握ります。クチコミやSNSでの評判も大きな影響力を持ちます。

一方、BtoBでは「企業として信頼できるか」「安定した供給が可能か」「導入実績があるか」といった要素が重視されます。信頼構築のためには、専門性の発信(ホワイトペーパーや事例紹介)や営業担当者の一貫した対応が重要です。

ブランド戦略の立て方・立案時の7ステップ

ブランド戦略の意味や重要性を理解したところで、ブランド戦略の立て方を7つのステップに分けて紹介していきます。

ブランド戦略の立て方

STEP1.課題の把握

自社の課題を整理して、ブランド戦略の目的を明確化していきます。ブランド戦略は長期施策になるため、社内で共通の課題感を持っていることが成功の鍵となります。

経営者はもちろん、ステークホルダーとなるスタッフ、ユーザー、取引先といった方々へのアンケート、ヒアリングも有効です。客観的な視点が必要になるため、外部専門家にファシリテーションの依頼を検討しつつ確認していきましょう。

STEP2.強みの言語化

課題を把握した後に考えるのが、自分たちの強みやリソースです。当たり前だと思って歩んできた道のりの中に、差別化が図れる強みが隠れているものです。

スタッフが転職をせずに働き続けている理由や、取引先に選んでもらっている理由といった、自社が選ばれる理由を理解すると、企業の強みが見えてきます。

STEP3.ブランドターゲット選定

誰に対してブランドメッセージを提供していくかを検討していきます。企業の課題と強みを整理すると、特に貢献できているユーザー像が見えてきます。ブランドターゲットをペルソナ化して人物像を具体的にすると、社内でも共通認識が持てるため、ブランド戦略が円滑に進みます。

STEP4.コアメッセージの設定

ブランドターゲットの心を動かすために必要なのが、コアメッセージです。どんな認知をしてもらいたいか、ブランドターゲットのインサイト(動機や潜在意識)に応えるキーワードを用いたコアメッセージを設定します。

STEP5. ブランド知覚価値・識別記号の接続

コアメッセージをブランドターゲットに伝える方法を思案します。ロゴマークや商品イメージの見直しや、PR、マーケティング施策に落とし込む際に考慮したいのが、ブランドの知覚価値と識別記号の接続です。

知覚価値とはイメージやベネフィット、カテゴリといった、ブランドから想起する「価値やイメージ(例:爽やか、おいしい、飲み物など)」を指します。識別記号は、ロゴマークを代表とする、五感から企業やサービスを思い浮かべる「象徴(例:色、香り、形状など)」を指します。ブランドターゲットにとって、知覚価値と識別記号が合致することでブランドが確立されていきます。

STEP6. 社内ブランディング

ブランドを確立するために必要なのが「発信する情報の一貫性」です。メンバーの発言や発信がブランドイメージに強く影響するため、ブランド戦略への社内での共通理解は大変重要になります。ブランドのコンセプトやビジョンの理解を深め、全員でブランド戦略を進めるためにも定期的な情報発信が大切です。

STEP7. 目標設定

ブランド戦略は定期的に見直して効果測定を行います。後述するフレームワークを利用した目標設定がおすすめです。伝えたいメッセージがブランドターゲットに正しく伝わったのか、アンケートなどを活用しながら定量目標と定性目標を定めて確認する体制をつくります

ブランド戦略の検討時に役立つ6つのフレームワーク

ブランド戦略立案時に役立つフレームワークを6つ紹介します。ここで紹介するのはごく一部になりますが、さまざまなフレームワークを織り交ぜながら活用するのがおすすめです。

1.SWOT(スウォット)分析

市場機会や企業の課題を可視化する際に活用できるのがSWOT分析です。強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の頭文字からなるSWOT分析を活用して、自社が培ってきた価値を列挙し、課題や弱みとなる点を明確にします。

「機会」には市場におけるチャンスや可能性、「脅威」は業界や政治決定による機会損失の可能性や競合の台頭などを記載します。内部環境と外部環境の機会と課題を整理できるフレームワークです。

2.PEST分析

自社のポジションや競合優位性を考える際に活用できるのが、外部環境をマクロ的に分析できるPEST分析です。PEST分析は、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの頭文字を取ったものです。中長期的な計画において、自社業界を取り囲む環境を把握できます

3.3C

3Cは、ブランドターゲット選定時やコアメッセージ選定時に活用できます。3Cとは、市場・顧客(Customer)、自社(Company)、競合(Competitor)から頭文字の3つの「C」を取って名づけられています。

自社の製品やサービスのポジションを市場やユーザー視点で客観視できるため、「誰に対して何を打ち出すか」を考える際に有効です。

4.カスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップを用いてユーザーのブランド体験を可視化することで、タッチポイントの見直しやユーザーインサイトの検討が可能です。

ユーザーの心境や行動を一覧にして俯瞰できるカスタマージャーニーマップを用いると、ユーザーの気持ちを疑似体験できるためブランドターゲットに合わせた検証が可能になります。

5.NSP®

ブランド戦略の効果測定時に活用できるのがNPS®(顧客ロイヤリティの数値化:Net Promoter Score)です。ユーザーを批判者、中立者、推奨者に部類分けしてブランドに対する愛着や信頼の程度を明確にできます

定期的に顧客推奨度(NPS®)を診断して施策を見直して社内体制やサービスの見直しに役立てます。

6.BSC

同じく効果測定時に幅広い観点で業績表価ができるのがBSC(バランススコアカード:Balanced Score Card)です。財務分析による業績評価だけでなく、ユーザー視点、業務プロセスの視点、従業員の成長や能力など、業績を細分化して評価できます

立案したブランド戦略が正しかったかを見直し、経営資源を再配分することが可能です。

ブランド戦略の効果測定方法・指標となるKPI

ブランド戦略は「いい感じになったか」を感覚で語りやすい一方、経営や現場の意思決定に耐える形で語るには、指標を体系化して追う必要があります。ポイントは、単発の数字を追いかけるのではなく「認知・想起→信頼・好意→行動→推奨」という外部の連鎖と、「社内の理解・体現」という内部の土台をセットで見立てることです。どれか一つが伸びても他が追随しなければブランドは資産化しませんし、逆に社内が整っていなければ、外部に発信したメッセージと体験とでギャップが生まれ、信頼が損なわれます。

ブランドが生む価値を「誰のどの行動を変えたいのか」に落とし込み、短期で動く指標(例:指名検索、商談化率)と中長期で効く指標(例:想起率、NPS®、定着)を分けて運用すると、評価がぶれにくくなります。

認知・想起:指名検索/想起率/シェア・オブ・サーチ

認知・想起は、ブランドが「比較の土俵に上がれているか」と「選択肢として思い出されているか」を捉える領域です。実務で最も扱いやすいのは指名検索で、社名・サービス名・商品名など固有名詞の検索量や流入比率を定点で追うと、広告やPRの波を越えて蓄積されたブランドの強さが見えます。

ただし指名検索は、キャンペーンや炎上など外乱でも動くため、可能であれば想起率(助成想起・純粋想起)をアンケートで補完し、「競合と並べたときに選択肢として残るか」を確認します。

さらに、シェア・オブ・サーチは「市場内での検索の取り分」を示すため、競合比較に強い指標です。市場全体が伸びている局面でも、自社が埋もれているのか伸びているのかを判別できるので、ブランド投資の妥当性を説明する材料になります。

信頼・好意:好意度/評価理由/第三者評価

信頼・好意は、ブランドが「選ばれる理由」として機能しているかを測る領域で、定量と定性をセットで設計するのがコツです。好意度はアンケートで追えますが、単に点数が上がった下がったでは施策につながりにくいため、「なぜその評価になったのか」という評価理由(自由記述や選択肢)を必ず取り、コアメッセージや提供価値と結び付けて解釈します。たとえば「信頼できる」「先進的」「親切」といった評価語が、狙ったブランド像と一致しているかが重要です。

第三者評価は、受賞歴、外部メディアでの言及、専門家・業界団体からの引用、レビューサイトでの評価などが該当し、自己主張では作れない信頼の根拠になります。広報PRとしては、第三者評価が獲得できる設計(調査データ、事例、監修、認証など)を持てると、信頼指標の改善が施策と直結しやすくなります。

行動:CVR/商談化率/LTV/解約率

行動指標は、ブランド戦略が「売上や継続」にどう効いているかを示す領域です。BtoCではCVRや購入頻度、BtoBでは商談化率や案件単価、受注率などが中核になりますが、ブランドの効果は短期の獲得だけでなく「比較で負けにくくなる」「値引き圧力が下がる」「更新が続く」といった形で現れます。そのため、LTVや解約率(チャーン)を併せて追い、獲得の質が上がっているかを見ます。

特にBtoBは、指名流入→資料請求→商談→受注→継続というプロセスが長く、途中の指標だけ見て判断すると誤解が起きます。ブランド戦略の評価では、ブランド想起が高い層ほど商談化率・継続率が高いか、あるいは営業サイクルが短縮しているかなど、ファネルを横断した相関で語れると、社内の納得感が一気に上がります。

推奨:NPS®/紹介数/UGC

推奨は、ブランドが自走するかどうかを決める領域です。NPS®は推奨意向を定量で追える代表指標ですが、数値だけでは改善点が見えにくいため、推奨理由・批判理由の回収とセットで運用し、「何が推奨を生み、何が足を引っ張っているか」を分解します。

紹介数は、紹介プログラムの利用件数に限らず、営業現場での紹介経路、問い合わせ時の「知ったきっかけ」の紹介比率なども含めて把握すると、ブランドの強さが行動として確認できます。

UGCはSNS投稿や口コミなど生活者が自発的に語るコンテンツで、量だけでなく内容の質が重要です。ブランド戦略としては、UGCが生まれる体験設計(参加のしやすさ、共有したくなる素材、語りやすい言葉)を整え、推奨が「偶然の産物」にならない状態を作ることが効果測定の前提になります。

社内:従業員理解・体現度/採用応募/定着

社内指標は、ブランドの持続性を担保する土台であり、外部指標が伸びないときの原因特定にも役立ちます。

従業員理解・体現度は、ブランドの約束やトーンが現場で共通言語になっているかを測る指標で、簡易アンケートやワークショップ後の理解度、ガイドラインの利用状況、発信物のレビュー指摘件数など、運用データでも確認できます。

採用応募は数だけでなく、応募者の質や志望理由にブランドメッセージが反映されているかを見ます。定着は、離職率やエンゲージメントサーベイの推移に加え、オンボーディングの早期戦力化や社内紹介(リファラル)の増減なども有効です。

ブランドは外に向けた約束であると同時に、社内にとっての判断軸でもあるため、社内指標が弱い状態で外部だけを強く打ち出すと、体験の齟齬が生まれやすくなります。社内の理解・体現を先に整え、外部指標を伸ばす順番を意識すると、効果測定の数字が安定して積み上がります。

ブランド戦略の成功事例

ブランド戦略を成功させている具体的な事例を通して、取り入れられる点があるかを確認しながら理解を深めていきます。

1.Red Bull

「翼をさずける」のキャッチコピーでおなじみのRed Bull(レッドブル)は、商品の製造をタイに委託し、マーケティングに軸足を置く経営体制を整えたのが特徴的です。ブランド戦略として商品を従来のカテゴリーではなく、「エナジードリンク」として定義し、SNSをメインにプロモーションを行いました。

ブランドイメージを浸透させるためにクラブやバーでの商品無料配布やダンサーやミュージシャン、DJを発掘するコンテストを開催、危険を伴う「エクストリームスポーツ」へのスポンサー契約を行い、見事レッドブルに「先駆者」というイメージを根付かせました。

参照:レッドブルが差別化と優位性を実現したマーケ戦略 | Biz Drive(ビズドライブ)-あなたのビジネスを加速する

2.水戸ヤクルト販売株式会社

乳酸菌飲料ヤクルトといえば、女性の雇用機会に貢献した販売員のヤクルトレディの存在や、世界中に愛飲者がいる健康的な飲み物というイメージがあるのではないでしょうか。そのヤクルトの中でも注目に値するのが、全国のヤクルト販売会社の中で販売実績を伸ばしている水戸ヤクルト販売です。

独自施策として化粧品販売専門部隊の立ち上げ、販売部隊の名称を独自に「免疫ライフ」と名づけ、商品ではなく免疫を届けているというメッセージを打ち出しました。そのほかにも、ビジョン経営の徹底、社内研修の充実や表彰制度の拡充、従業員への乳がん検診、食育、出前授業といった従業員や社会に向けた活動にも積極的に取り組んでいます。

参照:『ブランド戦略論』田中洋著(有斐閣)

3.三幸製菓株式会社

「雪の宿」や「ぱりんこ」などのヒット商品でおなじみの新潟の老舗菓子メーカー、三幸製菓。応募者が自分の得意な選考方法を選ぶ「カフェテリア採用」を導入、おせんべいへの愛情をアピールする「おせんべい採用」、新潟で働きたい意欲を測る「ニイガタ採用」、好奇心を合宿で確認する「未知への探求」といったブランド戦略を打ち出しました。結果的に応募数が約300名から13,000名まで増加する実績を出しました。

参考:まずはファンになってもらうこと。“負け組”三幸製菓が見出した、究極の新卒採用方法とは | BLOG | シナジーマーケティング株式会社

ブランド戦略の失敗事例

ブランド戦略がうまく機能しなかった失敗例から学べることは多くあります。失敗してしまうポイントを事前に回避するためにも、以下に該当する部分がないか確認をしていきましょう。

1.排他的なキャンペーン

販売ターゲットを絞るのは戦術として有効といえますが、性別や年齢を限定しすぎるのは得策ではありません。米国企業が打ち出したキャンペーンは、女性がアクセスできないページを設けた結果「差別的」と批判が集まりブランドのイメージが損なわれることになりました。

特定の層を排除するような戦略は、企業の評判を大きく左右するため注意が必要です。

2.反対意見への安易な迎合

ブランドの変更には慎重な対応が求められます。ある企業では、長年愛されていたロゴマークを変更しましたが、新デザインに対して批判が相次ぎました。これを受け、企業は新たなロゴのデザインの公募を実施。しかし、元のデザイナーへの配慮が不足しているとの声が上がり、さらなる批判を招く結果となりました。

ユーザーの声を聞くことは大切ですが、すべての意見に即座に迎合するのではなく、一貫性を保った判断が求められます。

3.既存サービスとのイメージ相反

ブランドの認知度が高い企業が、新たな分野へ進出することは珍しくありません。しかし、既存のブランドイメージと新サービスの方向性が大きく異なる場合、ユーザーに受け入れられないリスクがあります。

例えば、高級ブランドが低価格路線の商品を展開した結果、「ブランドの価値が損なわれた」と感じる顧客が増え、事業が失敗したケースがあります。新しい市場へ参入する際は、ブランドの軸を崩さずに戦略を練ることが重要です。

ブランド戦略を成功させるための5つのポイント

企業によってブランド戦略の考え方は異なりますが、共通して押さえるべき重要なポイントがあります。成功へ導くために、以下の5つを意識しましょう。

ポイント

ポイント1.発信する情報の一貫性

情報の一貫性がブランドターゲットの印象や認知の形成において重要になります。個々の施策が魅力的で売り上げにつながったとしても、一貫性がなければブランドとして記憶されない、意図と違う認知になるといった懸念が出てきます。経営判断に大きく影響するブランド戦略において、発信する情報には注意を払います。

ポイント2.客観的な視点

ブランド戦略を立てる際に、自社と外部環境の分析が必要になります。ブランド戦略には立案と実行、振り返りが必要になるため、社内体制構築において冷静な判断をしていきたいもの。成功事例を多く持つ外部コンサルティングの利用も検討するなど、客観的な視点を取り入れた環境づくりや姿勢を大切にします。

ポイント3.定期的な振り返り

ブランド戦略に則って施策が打てているのか、定量的な判断が難しいからこそ、定期的に振り返るのが効果的です。フレームワークを活用しながら自社内部の変化、自社を取り囲む環境理解を進め、時にはステークホルダーの声を聴きながら自分たちの立ち位置を考え続けます。

ポイント4.施策期間の理解

企業におけるブランド戦略は決して一朝一夕に成功するものではありません。ブランド戦略を長期施策として認識し、最適解を目指しながら歩んでいきます。そのためにも社員教育もブランド戦略として取り入れて、共通理解を持ちながら体制を整えます。

ポイント5.ブランド価値の維持と進化

市場や消費者の価値観は日々変化しており、ブランドもそれに適応する必要があります。時代の変化を捉えながらも、ブランドの根幹となる価値観は維持し、適切な形で進化させることが重要です。

例えば、時代に合ったメッセージの発信や、持続可能性(サステナビリティ)への取り組みを取り入れることで、ブランドの価値を高め続けることができます。

ブランド戦略はフレームワークを活用し、振り返りながら実施していこう

各ステークホルダーに共通イメージを持ってもらい、企業価値を高める「ブランド」は、企業間の差別化が難しくなるにつれて注目を集めています。ブランドを定義して推進するための方策である「ブランド戦略」は、ブランドターゲットの設定、発信するメッセージの設定になるため、経営判断の軸になります。フレームワークを活用しながら自社を取り囲む環境理解とステークホルダーの声を聴きながら自分たちの立ち位置を考え続ける必要があります。

長期的な戦略を立て、ブランドを育てていくと、自社の商品やサービスにファンやリピーターがつき、価格競争からの脱却や優秀な人材の確保にもつながっていくため、できる範囲で実施の検討をしてみてはいかがでしょうか。

<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

ブランド戦略に関するQ&A

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この記事のライター

坂下 彩花

坂下 彩花

合同会社KOUYO代表。スタートアップ企業で広報と人事を兼務しながら、広報業務を一通り経験。提供する情報がない中での企画作り、メディアアプローチが強みです。これまでの広報経験を生かして広報担当者さんの役に立ちたいと思いPRTIMES MAGAZINEに参画。現在シェアハウスの愉快な仲間たちと賑やかに暮らしています。

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