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AIが変革するメディアとPRの未来|NewsPicks CXO池田光史が語るChatGPTの可能性

広報PRにおけるChatGPTの影響」への見解をお伺いするこの企画。NewsPicksの前編集長、現執行役員CXOの池田さんにお話いただきました。

ChatGPTをはじめ、AI(人工知能)関連のニュースを多くPickする池田さんが考える広報PRへの影響とは。

NewsPicks 執行役員CXO

池田 光史(Ikeda Mitsufumi )

1983年鹿児島生まれ。2007年東京大学経済学部卒業。週刊ダイヤモンドにて金融、日銀・財務省、自動車を担当。16年よりNewsPicksにて「電池ウォーズ」「テスラの狂気」「iPSの失敗」など担当。19年より編集長。2022年7月よりCXO(Chief Experience Officer)。

メディアから見る広報PRのこれから

──まず初めに、池田さんはどんな場面でChatGPTを使っていますか?

実はChat GPTを幅広くビジネスで利用しています。特にpluginを使った実験が中心ですね。たとえば、重要なニュースの選定やNewsPicksオリジナルコンテンツのハイライトコンテンツの作成、さらには決算分析の自動化など、手間のかかる作業をAIに委ねています。そして、それらが実用に耐えうるかどうかを検証しています。

──NewsPicksに対するニーズはChatGPTでどのような変化があり、どのような取り組みをしていますか?

ChatGPTの登場により、ユーザーからの情報ニーズも多様化しています。特に、ChatGPTの関連情報についての需要が高まっています。そのため、NewsPicksとしてはChatGPTに関する特集を複数回組んだり、「AI」というカテゴリタブを新設して情報をまとめ、ユーザーに提供しています。これにより、AIの世界がどんどん変化する中でも、ユーザーが最新情報を取得しやすい環境を整えているんです。

──プレスリリースへの影響はどう考えていますか?

私はプレスリリースそのものが変わる可能性があると考えています。現在のプレスリリースは幅広いメディアを対象にしていますが、これからは生データを提供し、記者が自らChatGPTを使ってプロンプトを書き、欲しい情報を引き出す形になるかもしれません。つまり、プレスリリースそのものがなくなる可能性もあるのです。

──それでは、広報PRへの影響はどう考えていますか?

ChatGPTのようなAI技術が一般化すると、広報PRの業務も大きく変わるでしょう。たとえば、記者の要望に合わせて即座に情報を提供できるようになるかもしれません。また、広報PR担当者自身がAIを使いこなすスキルが求められるようになるでしょう。

──では最後に、これからの広報PR担当者にとって、どんなことが大切になってくると思いますか?

AIを恐れず、とにかく積極的に触ってみることです。そうしなければ、何がAIに代替され、何を人間がやるべきかが見えてこないでしょう。そして、それはPRだけでなく、ビジネス全般にも当てはまると思います。

たった1分で実現できる世界

いかがでしたか。

広報PRに携わるうえで、未来を考えるヒントになったのではないでしょうか。

ChatGPTイメージ

実は上記のインタビュー原稿は、池田さんが今回のインタビューを想定し、タイトルも含めChatGPTで生成したものです。池田さんの思想、実際の行動を約500字ほど入力して実現しています。

池田さんが使用したプロンプト
[コンテンツの詳細]
このコンテンツはQ&A形式のインタビュー記事です。
次に、指定する必要のある変数を定義します。

[アバター]:企業の広報担当者
[インタビュアー]:PR TIMES担当者
[インタビュイー]:池田光史 NewsPicks CXO(前NewsPicks編集長)
[テーマ]:ChatGPTのプレスリリースへの影響
[思想]:ChatGPTの登場によってビジネスや社会は大きく変化する。PluginはApp Storeの登場と似たようなインパクトがある可能性がある。メディアや広報PRの仕事も大きく変化する。現在のプレスリリースは幅広くメディア全般を対象にしているが、例えばこれからは企業が生データだけを提供すれば、記者が自らプロンプトを書いて、欲しい情報を引き出せるようになるかもしれず、プレスリリースという手法や存在そのものがなくなる可能性がある。AIのリスクが取り沙汰されるが、まずはとにかく積極的に触りまくることを信条としている。そうしなければ、何がAIに代替され、何を人間がやるべきか、手触り感をもって見えてこないと思っている。
[行動]:Chat GPT有料版を使い、特にpluginを使って様々な実験を行っている。ビジネスパーソンにとっての重要ニュースを選定したり、Newsletterを自動作成したり、NewsPicksオリジナルコンテンツのハイライトコンテンツを作ったり、決算分析を自動化したりして、実用に耐えうるかを検証している。NewsPicksとしては、ChatGPTのカバー特集を複数回組んだり、「AI」というカテゴリタブを新設して、溢れるニュースフローをまとめてユーザーに届けている。
[フォーマット]:インタビュアーの質問に対してインタビュイーが答えるQ&A方式
[質問]:
1. 池田さんはどんな場面でChatGPTを使っていますか
2. NewsPicksに対するニーズはChatGPTでどのような変化があり、どのような取り組みをしていますか
3. プレスリリースへの影響はどう考えていますか
4. 広報PRへの影響はどう考えていますか
5. どんなことが広報PR担当者にとって大切になってくると思いますか

Command:[インタビュアー]の質問に対し、[インタビュイー]が答えるインタビュー記事を書いてください。想定読者は[アバター]です。タイトルはキャッチーなものを大文字ボールドでつけてください。[インタビュアー]の興味関心は[テーマ]にあり、指定した[質問]は必ず行い、それ以外の質問をしてもかまいません。[インタビュイー]は今、ChatGPTについて[行動]のような使い方をしており、[思想]のような考え方をしています。

違和感なく読み進められた方が多いのではないでしょうか。

わずか2度目のプロンプトで、このインタビューを想定した記事生成ができたそうですが、繰り返し指示を見直していくことで、より自然に、より精度が高い充実した内容が期待できるでしょう。

ここからは、実際にお伺いしたインタビューをお届けします。

ニュース選定の判断基準に納得感

──池田さんはどのような場面でChatGPTを使っていますか。

とにかく触りまくってます。5月中旬以降、プラグインのベータ版がリリースされてからは、スキマ時間を見つけては毎日プロンプトを書いています。

特にWebブラウジングがプラグイン搭載され、フェーズが大きく変わった。というのも、それまでChatGPTの訓練データは2021年9月までの情報でした。それがWebブラウジング機能によって、リアルタイムの情報を検索できるようになりました。

つまり、最新ニュースを反映したり、情報の引用元もちゃんとブラウジングして出典明記できるようになったわけです。

NewsPicksはパートナーメディア各社のニュースを人間がキュレーションしていますが、ブラウジングを使えば、最新時点の重要ニュースをこういう基準で選んでほしい、というプロンプトを書いてChatGPTに10本選んでもらうことができるようになります。

実際にやってみると、実に精度の高いキュレーションとサマリを提供してくれます。

驚いたのはここからで、「(10本キュレーションするうえで)どういう基準で重要性を判断しましたか?」という質問に対するGhatGPTの答えです。

  1. 影響範囲:ニュースが影響を与える人々の数や地域の広さを考慮しました。たとえば、中国が米国の主要チップメーカーを禁止したニュースは、グローバルな半導体供給に影響を与える可能性があるため、大きな影響力があると判断しました。
  2. 意義:ニュースが持つ長期的な意味や重大性を考慮しました。例えば、GoogleのAIベースの洪水予測システムが世界に展開されるというニュースは、気候変動とその影響への対応という観点から重要だと判断しました。
  3. タイムリネス:ニュースが現在の出来事やトレンドにどれだけ関連しているかを考慮しました。たとえば、Twitterのバグが削除されたツイートを復元するというニュースは、現在のデジタルプライバシーと情報セキュリティに関する議論に直結しています。
  4. 読者の関心:主な読者であるビジネスパーソンが特に関心を持つ可能性があるトピックを選びました。例えば、ビジネス、テクノロジー、スタートアップ、金融、国際情勢などのジャンルから選択しました。
  5. 報道の広がり:複数のメディアで報じられているニュースを優先的に選択しました。これはそのニュースが一般的に重要と認識されていることを示す可能性があります。

これらの基準を用いて各ニュースを評価し、最終的に10個のニュースを選びました。

ぐうの音もでませんよね。もちろん、プロンプトで1を教える(指示する)わけですが、10どころか100を理解してくる。そのままNewsPicksのキュレーション方針として掲げられるような納得感のある内容だし、どうやらもうこの領域で人間は勝てそうにないことは明らかです。

NewsPicksコンテンツの対応

新たなテクノロジー「AI」が確立

──NewsPicksはメディアとしてどのような変化があり、どのような取り組みをしていますか。

NewsPicksにはカテゴリ別にニュースを読めるタブがあって、新たに「AIタブ」を設置しました。これまでは「テクノロジー」というカテゴリタブ内で主にお届けしていたのですが、AI関連のニュースがあまりに多く、テクノロジータブ内をほとんど占拠してしまっていた。他のニュースが埋もれてしまっていたんですね。

──構想からどのくらいでローンチしたのでしょうか。

2日くらいでしょうか。ChatGPTのリリースが昨年11月なので、ちょっと遅きに失した側面は否めませんが、意思決定から実装まではスピーディでした。

NewsPicksサイト

日本語コンテンツの拡充を模索

もっとも、AIに関する深い記事は海外発がほとんど。日本語のものが少ないなかで、どうやって情報を届けていくかということは考えていますね。

まずは文脈からしっかりと丁寧に紐解いていくオリジナルの特集コンテンツ(参考:ChatGPTの秘密AIが止まらない)を立て続けに組んでいます。NewsPicksが強いのは海外のクオリティメディアと独自翻訳の提携をしていることで、例えば米ニューヨーク・タイムズによるOpenAI総帥のサム・アルトマンの素顔に迫る記事なども出しています。

オリジナル番組で扱った数はもっと多いです。落合陽一さんの「WEEKLY OCHIAI」を筆頭に、「THE UPDATE」の教育回も大きな話題となりました。

ChatGPTやLLMそのものをNewsPicksのサービスとして活用する実験も社内では進めています。社内向け限定でアプリに実装して、さまざまなアイデアを試していくフェーズです。

コミュニケーションが変わる、今やるべきことは?

──プレスリリースへの影響はどうお考えでしょうか。

「プレスリリース」という形ではなくなるのかもしれないですよね。

ChatGPTを活用してプレスリリースを作成すれば、それぞれの記者が書きやすいように、メディアの特性に合わせて情報を届けることが簡単になるはずです。

メールで伝えるなら、相手との関係性や距離感を考慮して、「フランクよりちょっと丁寧に」などと指示を出して文章のテイストも変えられますし。

ChatGPTが作成したものを世に出すかどうかの判断をする、もしくは最後に少しだけ整えるデスク作業のような仕事が仮に残るとしたら、その人間の経験値や肌感覚がとても大事になってくるかもしれません。

最終的に完成した文章がいいものなのかどうか、使う側がその品質を評価できなかったら、よくわからないことになる。もっとも、そういった職業だけが残る、ということ自体も怪しいですが。

広報PR担当者がChatGPTで生成したリリースを、記者がChatGPTに読み込ませて記事を書く、何だかよくわからない時代に突入するかもしれません。

いずれにしても、記者も広報スペシャリストも、ChatGPTによってなくなる職業の筆頭候補です。少なくとも、今のままの仕事ではなくなる。

NewsPicks【保存版】沸騰中の生成AI、「5つのポイント」で理解する より
NewsPicks【保存版】沸騰中の生成AI、「5つのポイント」で理解する より

参考:【保存版】沸騰中の生成AI、「5つのポイント」で理解する

ただひとつ言えるのは、とにかく触るのが大事だということ。アイデアとスピードが速い人や企業が強い。触りまくることで新たなユースケースや潜在性、弱さが発見されているフェーズだからです。

AIがフェイクニュースや殺人ロボットをつくってしまうのではないか、といった危険性も大事なテーマですが、AIの専門家の間でも結論が出ていない。

私たちのようなAIの非専門家にできるのは、このこと自体は不可逆な流れだと思うので、手触り感を持って向き合っていくこと。これが大事だと思います。

──では、広報PRへの影響はどうでしょうか。

特に企業広報、つまりマーケティングの領域やIRなどは、大きく変わるでしょうね。ただ、真摯に答えると、今はまだ「究極的にはわからないです」としか言えません。

インターネット、SNS、App Storeのような革命に近くて、ChatGPTをはじめとするAIがインフラとしてベースになるということです。

AIが民主化されて、我々みんながもう使ってしまっていますよね。使い方自体は、今世界中の人が手探り状態で、互いに教え合っているフェーズだと思います。

──どのようなことが広報PR担当者にとって大切になってくると思いますか。

うーん、どうなんでしょうね。情報爆発がさらに加速しそうだし、ウソもホントもしばらくは混じった世界になるかもしれない。

そう考えると、「この人が言っていることは正しそう」というファンエコノミーがより広がるかもしれない。

広報PR活動という意味では、リアルな体験取材会や現場の価値が上がる可能性もありますよね。

──広報PRにとってはGoogleの評価やSEO対策は大事ですが、これも変わるでしょうか。

その話は、興味深い論点のひとつですよね。

ビッグテックの勢力図が変わるのか変わらないのか。

現在、検索エンジンの世界シェアはGoogleが圧勝なわけですよね。これをMicrosoftが本当にひっくり返すかもしれない。サムスンがスマートフォンに搭載する検索エンジンをGoogleからMicrosoftの「Bing」に変更する可能性が注目されたのも、このことへの関心の高さを如実に表していると思います。

自社ならではのデータの価値が高まる

──メディアとして、プレスリリース、広報PRに期待することはありますか。

例えば、「Retrieval」というプラグインは、情報提供を許可した個人や団体のデータにアクセスできるというもので、デモ動画では国連のデータにアクセスして年表を自動作成する様子が紹介されていました。

[#ChatGPT Plugins] – Retrieval Plugin Demo

今は人間が短い時間で読める分量でプレスリリースを書いているわけですが、そもそも記者がアクセス可能なデータベースを企業が提供してくれると、いろいろ楽になりそうですよね。FAQ以上の個別質問もこのプラグインを使って聞いていく、みたいなこともできそうです。

AIと人間を比較してみて

──池田さんから見て、AIと人間が書いた記事の差をどう感じられましたか。あるとすれば、どこでしょうか。(後日取材でコメントいただきました)

GPT-4に書かせたインタビュー原稿は、今はまだそのまま出せるほど微妙なニュアンスや文脈を表現するのは不得意そうですが、ちょっと人間が修正すればそのまま出せてもおかしくないレベルで、生産性は劇的にアップしそうです。優秀な大学生ライターを、わずか月額20ドルで誰でも雇えるようになった、くらいの感覚でしょうか。

情報イメージ

さいごに

NewsPicks執行役員CXO池田さんによる「広報PRにおけるChatGPTの影響」への見解をお届けしました。

ChatGPTで生成されたタイトルにある通り、AIによってメディア、広報PRに変革が起きています。今後の広報PR活動のヒントになれば幸いです。

(撮影:Shunichi Oda)

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この記事のライター

丸花 由加里

丸花 由加里

PR TIMES MAGAZINE編集長。2021年、PR TIMESに入社し、「PR TIMES MAGAZINE」、ご利用企業向けのコミュニティイベント「PR TIMESカレッジ」の企画・運営を行う。2009年に新卒入社した大手インターネットサービス運営会社では法人営業、営業マネージャーとして9年半、その後オウンドメディアの立ち上げに参画。Webコンテンツの企画や調査設計に携わる。メディアリレーションズを主とした広報を経て、現職。

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