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PR TIMESに掲載されているプレスリリースを定点観測して見えたこと|稲留雅人

株式会社SmartHR ニュービジネスマーケティング部

稲留雅人(Inadome Masato)

早稲田大学卒業後、新卒でIR支援会社に就職。各種IRツールの制作や個人投資家向けイベントの企画・運営を経験し、総合PR会社に転職。広報体制の立ち上げ・MVVの策定・クライシス対応など企業の広報活動の支援や、SNS・デジタルを中心としたプロモーション施策の実行にくわえ、自社新規事業の立ち上げにも携わる。2021年3月より株式会社SmartHRに在職。社外広報活動に従事したのち、現在は新規事業とグループ会社の広報活動およびリード獲得活動を担う部署に所属。

PR業務における情報収集の重要性

突然ですが、みなさんは情報収集に時間を割けていますか。
広報担当者が担う役割の1つとして、「広聴機能」があります。

日本パブリックリレーションズ協会による定義

広報の重要な機能の1つ。公衆の声を聞き、経営に反映させる世論の収集活動(社外情報のインプット)とともに、社内の情報収集、蓄積(社内情報のインプット)も行う。

広聴機能 – 公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会

「広報の重要な機能の1つ」と知ってはいながらも、日々の業務の中でどうしても後回しになってしまう、インプットする情報に偏りがある、という声が画面の向こうから聞こえてくる気がします。

特に、ご自身が担当している商品・サービスの情報や、所属する業界の情報については日常的にインプットできていても、広報活動のノウハウやナレッジ、他社事例の収集については後回しになっている方も多いのではないでしょうか。

僕自身もPR会社から事業会社に転職して、そういったノウハウに触れる難しさを日々感じています。

そこで本稿では、PR TIMESを広聴機能として活用し、特にプレスリリースのナレッジを学ぶために活用した際の方法とそこで得た学びについて解説させていただきます。

なお、タイトルに“定点観測”とありますが、あくまで定期的(ほぼ毎日)見た、というだけでデータ解析など定量観測・分析はしていない点ご了承ください。

プレスリリースの定点観測を行った背景

そもそも、なぜ今回PR TIMESを使って、プレスリリースの定点観測を行ったのか、という背景について補足させていただきます。

事業会社広報の悩み

初めて事業会社の広報担当者として業務をこなす中で、以下のような悩みに直面しました。

①情報ソースが偏る
⇒自社が所属するドメイン知識を深く学ぶ必要があるため、必然的によく見る媒体が偏る傾向にあると感じています。また、社内で話題に上がる情報はさらに偏りがあるため、PR会社時代と異なり自覚・無自覚を問わず情報ソースが偏ってしまうと感じていました。

②文章力を鍛えづらい
⇒今までは、社内レビュー&クライアントレビューを通じ、自分の書いた文章が多くの人の目に触れ、赤入れを受けていました。一方、事業会社では自身が文章の最終責任を持つことも多く、強制的に文章力が高まる機会は圧倒的に減ったと感じています。特にひとり広報をされている方だと、この傾向は強まるのではないでしょうか。

③プレスリリースで同じ表現を使いまわしがち
⇒コーポレート/サービス/採用など、目的の違いはあっても、利用する言葉や表現は大きく変わらないことが多いかと思います。意図的に表現を変えるか、まるっきり新しい取り組みのプレスリリースでもない限り、惰性で表現を使いまわしてしまう(場合によってはそれが最善手になる)という経験はみなさんもあるかと思います。

こうした悩みに抗うべく、目をつけたのがPR TIMESでした。広報担当者の利用シーンとしては、掲載とその後の分析が多いのではないでしょうか。

しかし、9万1000社が利用し、月間3万4000件超、累計で100万本以上公開しているプラットフォームを見れば、自分が普段触れていない情報に意図せず出会えるのではないか、と考えました。プレスリリースの書店・図書館を訪れるイメージです。

そこで、まず取り組んだのが上場企業のプレスリリース検索&表現のストックでした。

プレスリリースの定点観測1_プレスリリース検索&表現のストック

2022年当時、PR TIMESの機能で、“上場企業”のカテゴリに属している企業のプレスリリースだけを表示することができました。その日配信されたプレスリリースをざっと見て、見慣れない表現やこの先使えるかもしれない表現、特定のシチュエーションで必要になる表現などを、ただひたすらメモ。自身のプレスリリース作成時に参照していました。

数ヵ月ほど続けることで一定のストックはできたのですが、想像以上にハードで長くは続けられませんでした。また、上場企業に限ると硬いプレスリリースが多く、もっと幅広い情報収集がしたい、という気持ちを抱いたことを覚えています。

定点観測開始のきっかけ

そこから少し時間が経ち、あらためて・もう少しライトにプレスリリースの情報を収集しようと考えた際に注目したのがPR TIMESの「ランキング」でした。

プレスリリースの定点観測1_PR TIMESのランキング

ランキング上位を見ることで、普段自分が見ない内容や知らない企業のプレスリリースに出会える、客観的にプレスリリースを解説することで文章力を高められるのではという狙いがありました。

また、プレスリリースのあり方が変わってきている、という感触もランキングに注目した要因の1つです。2023年末には、PR TIMES社が行った審査指摘のレポートを公開。プレスリリースが大衆化したことで、従来とは異なる表現方法や内容のプレスリリースが増え、その一部が審査に引っかかってしまっているのでは、という仮説を個人的に持っています。

そのため、ランキングの上位を見ることで、オーソドックスではない型・新しい型のプレスリリースに出会えるのでは、と考えました。

さらに、PR TIMESをSNSでシェアされることも一般的になっており、シェアされやすいプレスリリースの傾向にも興味がありました。

自分を追い込むため、ただ収集するのではなく、“定点観測”と銘打って基本的に毎日1つプレスリリースを取り上げ、自分の言葉で解説する投稿をX(旧 Twitter)上で開始しました。

更新の基本的なルールは下記の通りで、一番気をつけたのはコンテンツ(プレスリリースの対象となる事象)には注目しないようにしたことです。

これは、見た目が華やかな施策や発表ではなく、「本文が良いプレスリリースに注目したい」という気持ちの表れでした。

また、途中で対象とするランキングを変更しました。当たり前ではあるのですが、休日に公開されるプレスリリースが多くないため、入れ替わりがほぼないというのが理由です。

なお、X上で 「#プレスリリース定点観測」 と検索いただくと、すべての投稿が見られるはずですので、お時間ある方はそちらもどうぞ。

プレスリリースの定点観測を行ってみての気づき

前段が長くなりましたが、定点観測を行って見えたポイントをご紹介させていただきます。

※あくまで個人の独断と偏見で取り上げている点や、取り上げやすいプレスリリースがない日はスキップしている点、ご了承ください。

また、外から見られる情報を元に、勝手に考察をしているだけですので、事実とは異なる点がある可能性があります。

ランキングの特徴

まずはじめに、「今日のランキング」「SNSで話題」それぞれの特徴についてです。「今日のランキング」は、飲食店や小売・メーカーなどBtoCを展開する企業のプレスリリースが多い印象を受けました。特に、キャンペーンや新商品など、直接的かつポジティブな関係がユーザーとある内容のプレスリリースが上がってきていました。観測前から想定はしていましたが、プレスリリースがメディアや広報関係者だけでなく、個人の方にも届き拡散されていることが推察されます。

一方で、「SNSで話題」は、スタートアップの資金調達に関する投稿が圧倒的に多く見られました。社名を明かしてSNSを運用する方が増えており、自社や投資先・取引先の一大イベントをみんなで盛り上げようとする様子が感じられました。

ここからは、個別の構成や表現の中でも印象に残ったものを取り上げます。

事例1.コンテンツを応用

記載されている内容がボリューミーなプレスリリースに共通する特徴として、他のシーンで作成したコンテンツを効果的に応用している印象がありました。

例えば、株式会社FLUXのプレスリリースでは、投資家向け資料の一部を流用されていそうな画像がいくつも盛り込まれています。

プレスリリースの定点観測1_株式会社FLUXのプレスリリース

参考:ノーコードAIスタートアップのFLUX、44億円のシリーズB資金調達ラウンドを実施

ボールドライト株式会社のプレスリリースは営業資料の様に、導入前の課題と効果を丁寧に説明。図解も掲載していました。

プレスリリースの定点観測1_ボールドライト株式会社のプレスリリース

参考:愛知県蒲郡市にある海のテーマパーク「ラグナシア」がプラチナパークを導入!

小林製薬株式会社のプレスリリースでは、製品の特徴を説明書や営業資料、ホームページなどでも用いられているであろう画像と、使い方を動画で解説されていました。また、他資料の転用かは不明ですが、汎用性の高い開発担当者の声も記載されており、プレスリリースのコンテンツを別の場所でも活用できそうとも感じました。

プレスリリースの定点観測1_小林製薬株式会社のプレスリリース

参考:小林製薬初の毛穴ケア洗浄料!洗顔、クレンジングで落としきれない毛穴汚れに。鼻をひたして水流で毛穴汚れを洗う、優しいデイリーケア製品「ケアナボン ひたし洗い液」2023年9月28日より全国販売を開始

事例2.画像の利活用

画像の利活用を意識していそうなプレスリリースも散見されました。4P’s Japan 株式会社のプレスリリースでは圧倒的におしゃれな画像がふんだんに埋め込まれていて、店舗や提供される料理のおしゃれな雰囲気が伝わってきます。
参考:本日 11月24日オープン 世界で人気のピザレストラン「Pizza 4P’s」


株式会社ロイズコンフェクトのプレスリリースは関連する画像を複数枚まとめることで、情報量は担保しながらも全体のみやすさや、まとまり感を打ち出しています。
参考:【ロイズ】体験型施設「ロイズカカオ&チョコレートタウン」が2023年8月4日11:00~グランドオープン!予約受付・チケット販売中。

事例3.表記の細やかな配慮

細かな表記に気を配ることで、説得力やわかりやすさを補強しているプレスリリースもありました。

例えば、タレント(元宝塚)の所属に関するプレスリリースでは、以下のような工夫がなされており、タレントの既存ファンを強く意識した作りになっていると感じました。

  • タイトルには同じ事務所に所属している他の元宝塚タレントの名前を記載している
  • サブタイトルに本人のコメントを挿入し、すぐに目に入るようにしている
  • リード文に退団日と元の所属を入れており、タレント目線で時系列を押さえている


株式会社NGAのプレスリリースでは、アイキャッチに使用している画像を自社サービスを用いて作成しており、技術力の高さを示しています。また、就任された顧問の肩書を“博士”としており、属性の説明につながっています。
参考:NGA、Pre-Aラウンドで6億円の資金調達を完了し、Yanbo Xue博士を最高科学顧問に迎える

事例4.特定シチュエーションに適した表現の利用

特定のシチュエーションで用いられる構成や表現にも出会えました。

例えば、IPOに関する株式会社雨風太陽のプレスリリースでは、【ご注意】として投資勧誘目的ではない旨が明記されていました。
参考:東京証券取引所グロース市場への上場承認に関するお知らせ


資金調達のプレスリリースでよく見かける株主からのコメント&写真に加えて、執務スペースを使った肩ひじを張っていない写真をアイキャッチに利用しているSotas株式会社のプレスリリースも。メディアなどでの露出が多い方が出資者にいるケースでは、とても有効な手段です。
参考:化学バーティカルSaaS企業Sotasシードラウンドクローズで総額1.1億円の資金調達


株式会社GRAのM&Aに関するプレスリリースでは、両者代表からのコメントに従業員向けの要素も入れ込むことで熱量が高まっています。経営実績で細かな数字について語られている部分とのバランスが非常に取れているのではないでしょうか。
参考:ミガキイチゴのGRA、世界の食料・農業を支えるクミアイ化学工業とM&Aで合意


新店舗に関するプレスリリースでは、店舗の外観を盛り込むことでイメージのしやすさを担保している例が多く見られました。

ゴディバ ジャパン株式会社のプレスリリースでは入居先の建物を連想させるパース図を利用されていました。
参考:世界初!ゴディバのベーカリーショップ“町のパン屋さんmeets ゴディバ。” 「ゴディパン」オープン | ゴディバ ジャパン株式会社のプレスリリース


地図とともに工事中の写真を利用することで、地元の方は連想しやすく、人にシェアしやすいリリースもありました。株式会社資さんでは、同地域で行った催事の写真やSNSの反応も盛り込まれており、待望されていた感が伝わってきます。
参考:北九州のソウルフード「資さんうどん」が、岡山県、岡山市に初出店!「資さんうどん岡山大元店」を8/11(金)午前10時~グランドオープン!美味しいお食事と笑顔で、岡山の皆さまに幸せをお届けします!

事例5.珍しい表現や構成

日々見ていく中で、珍しい表現や構成方法をしているプレスリリースにも出会いました。

例えば、BreakingDown株式会社のプレスリリースでは、会社としてスピード感とわかりやすさを最優先した印象を受けました。補足する要素をキーワードでいれているのも印象的です。
参考:当社の経営体制に関するお知らせ

株式会社ドミノ・ピザ ジャパンのプレスリリースも、段落分けや画像(アイキャッチ・OGPも設定していない徹底っぷり)を省略し端的に内容を記載しています。さらに、謝罪文言をタイトルに入れ込んでいる非常に珍しい例です。
参考:【緊急のお知らせ&お詫び】「ドミノの福袋」は発売を延期させていただきます誠に申し訳ございません。12月29日からの販売を予定しておりましたが、オペレーション上の問題が判明したためです。

さらに「GUCCI」を運営する外資系企業株式会社ケリングジャパンのプレスリリースでは、日本語への翻訳が難しい/受け取る意味が変わる単語がカタカナで残っており、独特のリズムが生まれていました。ハイブランドということもあってか、情緒的な表現がふんだんに使われている点も特徴的です。
参考:「グッチ銀座 ギャラリー」をオープン。羽生結弦をフィーチャーした写真展を開催

株式会社monopoのプレスリリースでは、自社についてのプレスリリースでありながら、一歩引いて客観的な目線で執筆されている点や、末尾に署名がある点など、ブランドジャーナリズム的な感性で書かれています。
参考:monopo、パリに新拠点「monopo Paris」今秋開設決定。日欧クリエイティブ・コミュニティの架け橋に

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社のプレスリリースはタイトル・リード・本文、そしてアイキャッチまでエモーショナルな表現が、これでもかと盛り込まれています。事実の説明はほぼ割愛されており、熱量を強く感じられる構成になっています。
参考:2024年春、新しい『SHIBUYA TSUTAYA』が誕生します。

プレスリリースの定点観測はPR活動に活かせるのか

約半年のトライでなかなか大変ではありましたが、やってよかった・広報活動に活きるインプットになった、と捉えています。

当初の目論見どおり、普段見ない業種や企業・団体のプレスリリースを幅広く見ることで、表現や構成の幅が広がりました。特に、直近で自分が経験していない事象の表現についてもインプットできたことは、将来的に大きなプラスになると感じました。

特に、「プレスリリース(PR TIMES)に掲載する内容はこうあるべき」と固執していたことに気付かされました。もちろん、原理原則を抑える重要性はあります。一方で、目的やターゲットに応じて柔軟性を持ってPR TIMESと向き合うシーンがあっても良いのかもしれません。

さらに、他社のプレスリリースを見ることへのハードルも下がったことを実感しています。今までは、プレスリリースの作成に詰まったときや企画づくりで煮詰まったときなど、追い込まれてから他社のプレスリリースを見ることが多かったのですが、もう少し気軽に他社が何を打ち出しているのかを見る良いきっかけになりました。

付随して、コンテンツを活用する重要性にも気がつくことができました。広報活動に従事していると、どうしても広報目線でコンテンツを考えてしまうことが多くなってしまいます。今回、コンテンツを柔軟に流用している他社のプレスリリースを見て、すでにある情報から転用することはできないのか、他の活動に転用してもらうことはできないのか、という目線からコンテンツを考える重要性をあらためて認識できました。

また、副次的に世の中のトレンドを広くインプットする機会にもなりました。ニュースになる手前の各社の発信を見ることができるため、各社が打ち出したいテーマやキーワードをダイレクトに文章から感じる機会を得られます。PR TIMESが公式に配信しているランキングのプレスリリースもありますが、原典である各プレスリリースに当たることで、より強く印象に残りました。特にSDGsについては、アリバイ作り的にただやっているのではなく、プレスリリースの内容に適切に紐づけられている例が散見されました。

例えば、

そして、個人的に一番勉強になったのは、PR TIMES上での表現方法を工夫している企業が多いという点です。

とはいっても、網羅的にチェックするのはハードルが高いと感じている方、業界はじめ、自社のニュースと類似したものを中心に見たい方もいると思います。PR TIMESの検索機能の1つに、カテゴリ別ランキングの表示があるので、関連するカテゴリをチラッと見るところから始めてみるのはいかがでしょうか。

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