企業・学校・自治体など、さまざまな団体から発行されている「広報誌」や「広報紙」。情報発信の手段として重要な役割を果たしており、広報PR担当者にとっては欠かせないツールのひとつです。とくに紙媒体ならではの丁寧な情報伝達や、読者との継続的な関係づくりに効果を発揮します。
本記事では、広報誌(紙)の持つ役割や内容、制作時の8つのポイントををわかりやすく解説。広報PR活動の手法を広げていきたいという方や、広報誌づくりにこれから取り組む方にとって、実践的なヒントとなる内容をお届けするのでぜひ参考にしてください。
広報誌(紙)とは?
「広報誌」「広報紙」とは、企業・学校・自治体などの団体が、自らの活動内容や経営(運営)方針を周知するために情報をまとめた制作物を指します。発行の目的は共通していますが、その形式やレイアウトに応じて「広報誌」「広報紙」と呼び分けられることがあります。
「広報誌」と「広報紙」の違い
「広報誌」と「広報紙」は、公益社団法人日本広報協会の見解によると、下記のように区別されています。
- A4サイズなど雑誌形式の体裁 → 「広報誌」
- 新聞紙のようなタブロイド判サイズ → 「広報紙」
新聞「紙」、雑「誌」と漢字が使い分けられているように、タブロイド判のような新聞紙型は「広報紙」、A4判のような雑誌型は「広報誌」と表記するのが一般的
参考:公益社団法人日本広報協会|広報Q&A 表記について知りたい
一方、自治体が発行するものは、判型に関係なく「広報紙」と表記されている場合もあるようです。
以後、本記事では、雑誌形式の「広報誌」を想定して解説します。
何のために発行するの?広報誌の役割とは
広報誌の役割は、「企業・団体のブランド価値を高める」「読者にメッセージを届ける」「企業・団体とステークホルダーのコミュニケーションを促進する」というの3点です。
広報誌を魅力あるコンテンツにすることで、企業・団体の魅力やブランドとしての信頼性の向上が期待できます。また、企業理念やミッション・ビジョンなど、企業としての姿勢やメッセージを、顧客などに対して一定のボリュームでしっかり伝えられます。さらに、読者からのお便りなどを通じ、広報誌という場で企業・団体とステークホルダーが交流することも可能です。
広報誌を制作するときには何を書くべき?基本的な要素・構成
広報誌の基本的な構成要素は「表紙」「目次」「コンテンツ」「裏表紙」の4つです。それぞれの要素・構成について具体的に説明していきます。
各要素におけるレイアウトやデザインについてはこちらの記事で解説しています。
表紙
「表紙」は広報誌が読まれるかどうかを左右する重要なポイントです。表紙には主に以下の内容が記載されます。
- 広報誌のタイトルロゴ
- 発行月もしくは発行日
- キャッチコピー
- 特集内容や連載記事など、メインとなるコンテンツのタイトル
- 写真やイラストなどのメインビジュアル
広報誌がどのような場面で読者の目に触れるのか、何を表紙で伝えれば読者が手にしてくれるかをイメージし、表紙に盛り込む内容とレイアウトを検討しましょう。
事例:埼玉県三芳町の広報誌『広報みよし』
埼玉県三芳町の広報PR担当者だった佐久間智之さんは、同町の広報誌が大量に捨てられているのを目にしたことをきっかけに、「手に取ってもらえる広報誌」を目指して同誌のリニューアルを行いました。
子育て支援センターや児童館で町民にヒアリングをした結果、おしゃれなデザインの表紙のほうが手に取ってもらいやすいことが判明。ファッション雑誌のような表紙へと大幅にデザインを変更しました。
デザインの変更から5年後(2015年)に住民意識調査を実施したところ、「広報紙から行政情報を得ている」と答えた20代が74%から80%に、70代も86%から94%まで上昇したそうです。

目次
企画一覧とページ数を掲載する「目次」は、読者が求めている情報を手早く見つけるための要素です。
広報誌にどんな情報があるのか、構造が一目でわかるようにシンプルにまとめましょう。
コンテンツ
広報誌を制作する目的・目標に紐づく、さまざまな記事・企画・特集から構成されます。一般的には以下の2つに大別されます。
- 定常企画(連載)
- 特集企画
「定常企画(連載)」は、その広報誌で毎回取り上げる企画を指します。例えば、活動報告、ニュース・トピックスの紹介、読者からのお便り紹介などです。
定常企画は、企画の骨子や方向性がある程度定まっているため、特集企画に比べ制作工数が少なく済むというメリットがあります。広報誌の目的に合った企画を定常企画として数個決めておくと制作がスムーズです。過去に読者から人気のあった特集企画を、定常企画としてアップデートしてもよいでしょう。
「特集企画」は、時流に合った内容や、特定のタイミングで伝えたい内容など、その号限りで取り上げる企画を指します。多くの広報誌では、特集企画がその号の目玉となり、表紙などにもタイトルが掲載されています。特集企画に関しても、特に人気のあったものは毎年恒例の企画としてもよいでしょう。
裏表紙
裏表紙は、表紙と異なりじっくり見られることは少ないものの、広報誌の目的や内容に応じて活用できるスペースです。
他団体の広報誌などを参考に、自社・自団体の広報誌に合った裏表紙の活用方法を見つけましょう。
以下、裏表紙の活用方法の一例をご紹介します。
- 編集後記
- 読者アンケートフォーム
- 読者が頻繁に使う情報(問い合わせ先、催事スケジュールなど)
- 英文の表紙(和英両方で広報誌を制作する場合)
- 広告
- 裏表紙を設けない(記事や企画を記載する)
広報誌の作り方ステップ:企画から制作・配布までの流れ
広報誌づくりはとりあえず原稿を書き始めるのではなく、一連のフローで考えると整理しやすくなります。各STEPを分けて押さえておくことで、毎号の制作が属人化しにくくなり、引き継ぎもしやすい運用に近づきます。では、さっそく作り方の基本ステップを確認していきましょう。
STEP1:目的設定とターゲット読者の整理
最初に必ず行いたいのが「この広報誌は誰に、何を、どう感じてもらうためのものか」を明確にすることです。たとえば自治体であれば「市民に行政情報をわかりやすく届ける」、企業であれば「既存顧客と従業員のエンゲージメントを高める」など、目的を一文で言語化しておきます。
あわせて、主要読者の年齢層・立場・関心事を整理し、その人たちが日常のどんなシーンで広報誌を手に取るかを想像してみましょう。ここで決めた目的とターゲットは、特集テーマの選定やトーン&マナー、配布方法の判断軸にもなるため、制作チーム全員で共有しておくことが重要です。
STEP2:企画立案・ページ構成・制作体制の決定
目的と読者像が固まったら、次はどんな企画をどのくらいのページ数で載せるかを決めていきます。まず「特集」「ニュース・お知らせ」「インタビュー」「コラム」のようにコンテンツの箱を洗い出し、ラフなページ割り(台割)を作成します。そのうえで、企画ごとに担当者を割り振り、執筆・取材・撮影・デザイン・チェックの役割分担を明確にしておきましょう。
社内だけで完結させるのか、デザインや撮影だけ外部パートナーに依頼するのかといった体制も、このタイミングで決めておくと後工程で迷いが少なくなり、スケジュール遅延も防ぎやすくなります。
STEP3:取材・撮影・原稿執筆・デザイン制作の進め方
企画と体制が決まったら、実際の取材・撮影・執筆に着手します。取材対象者には目的と掲載イメージをあらかじめ共有し、必要な写真カットやコメントの量を事前にすり合わせておくとスムーズです。原稿は「誰が読んでも背景がわかるか」「広報誌全体のトーンに合っているか」を意識しながら執筆し、写真や図版とセットで構成を考えます。
デザイン制作では、号ごとに雰囲気が変わりすぎないよう、フォントやカラー、見出しのルールを簡単なレギュレーションとしてまとめておくと安心です。編集担当・デザイナー・カメラマンがラフ段階から情報共有できると、仕上がりのクオリティと作業効率の両方を高めやすくなります。
STEP4:校正・印刷・入稿スケジュールの組み立て方
広報誌は、一度印刷して配布すると簡単には訂正できないため、校正のプロセスが非常に重要です。事実関係・数字・固有名詞のチェックはもちろん、読みやすさやトーンの統一、写真のキャプション漏れなども含めて、少なくとも二段階以上の校正フローを用意しておきましょう。
スケジュール面では、印刷会社の入稿締切から逆算して「デザインFIX」「原稿締切」「取材完了」の日程をカレンダー上に落とし込むと現実的な計画に近づきます。毎号ぎりぎりになりがちな場合は、余裕を持ったバッファ期間を先に確保しておき、緊急対応や差し替えが発生しても破綻しない進行表にしておくことがポイントです。
STEP5:配布方法・Web公開・アーカイブ運用までの全体設計
最後に、完成した広報誌をどのようなチャネルで届け、どのように蓄積していくかを設計します。紙媒体であれば、窓口での手渡しや郵送同封だけでなく、ターゲットが集まりやすい施設や店舗に設置する方法も検討すると良いでしょう。同時に、PDF化して自社サイトや自治体サイトに掲載したり、特集記事だけをWeb記事として再編集してSNSで紹介したりするなど、オンラインとの組み合わせも有効です。
バックナンバーをアーカイブとして整理しておくと、社内外の情報共有にも役立ちますし、次号以降の企画のヒントにもなります。配布後の反響を簡単に記録しておくと、次の発行計画を立てるときに改善材料として活かしやすくなるでしょう。
広報誌を制作するときの8つのポイント
次は、広報誌を制作するときに意識したい8つのポイントをご紹介します。初めて広報誌の制作に携わる方は、下記の8つのポイントを押さえておきましょう。
ポイント1.目的と読者を明確にする
効果の高い広報誌を制作するためには、制作前の段階で目的と読者を明確に絞ることが重要です。広報誌を制作すること自体が目的化してしまわないように注意しましょう。
「自治体の広報誌=その地域で暮らす人々に必要な情報を届ける」「企業の広報誌=エンゲージメントの高いファンの創出」など、制作の目的をチームの共通認識としておきましょう。
以下のような要素も、制作に取りかかる前に明確にしておきたいところです。
【明確にしておきたい要素(例)】
- 配布する地域や場所
- 読者の年齢や性別
- 届けたい情報の具体例
- 広報誌を通じて読者に何を感じてほしいか
ポイント2.予算を確認し、内製する部分と外注する部分を決める
目的と読者を明確にしたら、予算の確認を行います。事前に決められた費用の中でよりクオリティの高い広報誌を制作するために、「内製できる部分」と「外注しなければならない部分」を明確に分けて、必要な費用を洗い出していきましょう。
プロに外注するのが一般的と思われがちなデザイン・レイアウトの領域に関しても、工夫次第で内製が可能です。
自前で広報誌のデザイン・レイアウトを行う方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
ポイント3.作りたい世界観やデザインイメージを固めておく
「自治体の広報誌=市民としてのつながりを感じる、温かな雰囲気」「企業の広報誌=自社の世界観が伝わる、個性的なデザイン」など、広報誌のデザインには発行する企業・団体の特徴があらわれます。事前に広報誌を通して伝えたい世界観やイメージについて話し合い、明確に言語化しておきます。
自分たちだけで決められない場合は、プロのデザイナーや制作会社に相談してみてもよいでしょう。また、イメージに近い画像を集めたもの(イメージボード)を共有しておくと認識がずれません。
具体的には、以下のような要素を検討しておきたいところです。
【決めておきたいデザインに関するポイント】
- 使用する写真のテイスト
- 文字フォントやサイズ
- 全体のカラー
ポイント4.無理のない体制やスケジュールを整える
より良い広報誌を制作しようとすると、どうしてもスケジュールが押してしまいやすいものです。広報誌は「毎月〇日」など発行日が決まっていることも多いため、できる限り余裕のある進行スケジュールや制作体制を整えるように意識しましょう。
無理のない制作体制を構築するために、企画ごとの執筆担当者・校正担当者・レイアウト担当者を決定し、制作過程を細かいフローに分けて管理します。担当者と責任範囲を決めておくと、リスクや仕事量を分散できます。
また、発行までのスケジュールを明確にイメージしておくことも重要です。ゴールまでにどのようなプロセスが必要なのか、一つひとつのプロセスにどの程度の日数がかかるのかを確認しておきましょう。
【発行までの流れ】
STEP1.企画会議
STEP2.取材先や収集する情報の選定
STEP3.執筆担当者・撮影担当者などの割り振り
STEP4.制作
STEP5.校正
STEP6.印刷
STEP7.仕上がり確認後、配布
ポイント5.配布タイミングと媒体・配布箇所を最適化する
配布のタイミングと媒体・配布場所の設計は、広報紙の効果を左右する重要な要素です。たとえば、自治体や大学では月初や新学期前の配布が読者ニーズと一致しやすく、企業では新製品発表や決算報告にあわせた発行が注目を集めやすくなります。
また、紙媒体での配布に加え、PDF化して公式サイトやSNSで拡散すれば、物理的な配布に限られない読者層へのアプローチも可能です。
設置場所もターゲットの生活動線を意識し、地域の図書館・公共施設・提携店舗・イベント会場などを活用しましょう。媒体別の効果や反応を分析しながら、次回以降の配布戦略に活かすことも大切です。
ポイント6.評価指標をすり合わせておく
無事に発行が完了したら、次号以降に活かすために必ず目標の達成度を評価する時間を設けましょう。社内での評価だけでなく、読者の意見や満足度をアンケート形式で収集するのもおすすめです。
さらに魅力的な広報誌にしていくことを目指し、客観的な評価を行いましょう。
以下、広報誌のタイプ別の指標の例をご紹介します。
【指標の例】
<企業の広報誌>
- 企業理念・経営方針の浸透度
- コンテンツに対する満足度
- 企業の製品・サービスの購入意向度
<自治体の広報誌>
- 各種制度・施策の認知度
- 自治体の行政への満足度
- 自治体のブランドイメージ調査
<NPOの広報誌>
- コンテンツに対する満足度
- 寄付継続の意向度
ポイント7.読者アンケートをもとにPDCAを回す
読者アンケートを実施し、企画が広報誌全体の目指す目的・目標に対して効果的だったか、具体的に何が良かったか/悪かったかの振り返りを行いましょう。加えて、読者の困りごとや知りたいことを直接聞くのも有効です。要望を確認する項目を設けることで、次回の企画づくりに役立つ情報収集も行えます。
【例:清掃サービスを展開する企業の法人顧客に向けた広報誌の場合】
- 「面白い」と感じた企画を教えてください。 (企画A/企画B/ 企画C)
- 具体的にどの部分が面白いと感じましたか。 (自由回答 または 選択肢作成)
- 社内の清掃や衛生環境に関して、困っていることは何ですか。 (自由回答 または 選択肢作成)
読者アンケートは、GoogleフォームやTayoriなど、Webアンケートを使うと集計がスムーズです。
アンケート結果は多いほうが情報の信頼度が高まり、より正確な振り返りが可能になります。アンケートのURLを誌面にQRコードで掲載し、「〇分で終わります」など回答にかかる所要時間を具体的に示すなど、回答数を増やす工夫を行いましょう。
ポイント8. 制作過程の振り返りを行う
限られた時間の中で無理なく広報誌を制作するためにも、制作工程における振り返りの場も設けましょう。
振り返りは、「KPT」などのフレームワークを活用して行うと、具体的な改善策まで検討できます。
具体的には振り返りを下記の3要素に分けて行うというもので、日本ではもともとソフトウェア開発の手法として広まっていたそう。
- What we should keep.(続けるべきこと)
- Where we are having ongoing problems. (問題を抱えていること)
- What we want to try in the next time period.(改善のため次回行いたいこと)
上記のように、振り返りの内容を「Keep」「Problem」「Try」の観点で整理すると、理解しやすい形でまとめられます。
挙げられた問題点(「Problem」)に対して出た解決策(「Try」)については、「いつ」「誰が」実施するかまで具体化して決められるようにしましょう。
参考になる広報誌の事例10選
デザインやレイアウト、企画を考える際に参考にしたいのが、他社や他団体の広報誌です。
ここからは、参考になる広報誌の事例10選を紹介します。各事例の魅力的なポイントや参考になる書き方・ビジュアルなどをピックアップしていますので、自社で真似できる部分はアレンジして取り入れ、魅力ある広報誌づくりを行いましょう。
事例1.埼玉県草加氏
埼玉県草加市は、「読みたくなる広報紙」を目指して広報リニューアルを実施。デザインやロゴを一新したり、レイアウトを読みやすく工夫したりといった施策を展開し、リニューアルから11ヵ月後には「全国広報コンクール」で埼玉県1位を獲得しました。
受賞理由の通り、読み手が理解しやすいレイアウトを考えられているのが特徴です。工芸品の職人にフォーカスした特集は、雑誌のように繊細な写真の数々と丁寧な解説文が目を惹きます。
参考:【埼玉県草加市】全国広報コンクール埼玉県推薦作品 広報紙部門1位、映像部門1位の2冠を達成
事例2.大阪府豊中市
大阪府の豊中市上下水道局は、水と親しみを持ってもらうことを目的に広報誌『ミズトキ』を刊行しています。水についてはもちろん、食・住・環境・健康・防災などさまざまな観点からテーマを切り込んでいる内容が特徴的です。
Vol.14は「水と防災」をタイトルで取り上げ、やわらかいタッチの絵をデザインしたのが魅力。人間と動物を描いたあみだくじで、「この先を見たい」「ページをめくってみたい」という意欲をかき立てる工夫がユニークです。
参考:“家族で備えよう! 水と防災” 広報誌「ミズトキ Vol.14」を発行
事例3.徳島県
徳島県が定期的に発行している『県政だよりOUR徳島』で、2025年2月号では「大阪・関西万博」と「歴史・文化ツーリズム」を中心にピックアップ。世界が注目する大規模なイベントにおける「徳島県ブース」について、展示情報や会場の様子などを紹介しています。
見出しとアイキャッチで読み手を惹きつけるレイアウトが特徴的で、人物紹介欄の画像サイズをそろえたり、YouTubeやLINEといったSNSの公式アカウントにアクセスできるQRコードを掲載したりといった点もGOODです。
このほかにも、年明けには以下のように、「新年のご挨拶」や「令和7年 新時代へ躍り出す今後の展開」も発信しています。
事例4.千葉県市原市
千葉県市原市の広報誌『いちはら』は、2025年1月号で「ロケ地になる市原市」と題したコンテンツを特集しました。ドラマ「推しの子」のロケに市原市が協力したことから、作品のポスタービジュアルやロケ地の写真を広報誌の表紙に採用しています。
地域に深く関係する表紙画像が多いのに対し、ロケ協力という特定の期間ならではのビジュアルコンテンツを活用したのが魅力。市としてのブランドイメージを伝えるだけでなく、広報誌そのものを読んでもらうきっかけにもなるのではないでしょうか。
参考:【千葉県市原市】ドラマ【推しの子】のロケ地を広報誌で紹介
事例5.株式会社モリサワ
デジタルフォントの開発やクラウドフォントサービスなどを展開する株式会社モリサワは、「モリサワの情報をお届けする」をコンセプトに広報誌『MORISAWA MAGAZINE』を発行。2025年2月の23号では、2024年度の新書体を紹介しました。
フォント事業を手掛ける企業ならではの誌面が特徴的で、広報誌タイトルやアイキャッチのバリエーション豊富な書体が印象に残ります。新書体のコンセプトやサイズ感といった情報も的確に伝えたうえで、インパクトのあるビジュアルで関心を惹いた事例といえるでしょう。
参考:新書体の魅力を紹介!広報誌「MORISAWA MAGAZINE」最新号を発行
事例6.国立大学法人岡山大学
国立大学法人岡山大学は、広報誌『いちょう並木』のVol.108を2025年4月1日に発行しました。今号では、「この街と岡山大学 まちを診る、街を創る」をテーマに特集を組んでいます。
地域課題を解決に向けた取り組みに加え、空からの視点で古代の景観や集落を立体的に描く、考古学の新たなアプローチなども紹介されています。地域と大学の魅力を伝える充実したコンテンツが参考になる好事例です。
参考:【岡山大学】岡山大学広報「いちょう並木」 Vol.108を発行~この街と岡山大学 まちを診る、街を創る
事例7.福岡大学
福岡大学は、学生・教授陣の取り組み、卒業生の活躍を紹介する広報誌『学園通信』(第79号)を全面リニューアルして発行しました。巻頭特集では、ロックバンドのポルカドットスティングレイの雫さん(法学部卒業)を迎え、「なぜ、大学で学ぶのか」というテーマでインタビューを掲載しています。
特集以外にも、在学生と教員による座談会を取り上げ、人物を多く登場させることで、福岡大学の魅力が伝わる内容になっています。多くの写真を活用した印象的なレイアウトも、広報誌の参考になるポイントです。
事例8.株式会社スギノマシン
富山県滑川市の産業機械メーカー・株式会社スギノマシンは、技術報『SUGINO REPORT 』190号を2025年3月に発行。グループの最新技術をわかりやすく解説しています。
巻頭言では、「大気圏突入時の空力加熱:熱の壁への挑戦」と題し、富山県立大学 工学部 機械システム工学科の坂村芳孝教授によるメッセージを掲載。高度な技術内容への理解を促す工夫がなされています。広報誌のレイアウトは、色味を統一したシンプルな構成で、情報が際立つつくりになっている点が参考になります。
参考:技術報「SUGINO REPORT」最新号(2025年3月号)発行
事例9.公益財団法人東京都歴史文化財団
公益財団法人東京都歴史文化財団は、東京都美術館広報誌『東京都美術館ニュース』No.480号を発行。俳優の山口智子さんへのインタビュー記事を巻頭に掲載しています。
表紙では、2025年7月24日から10月8日まで開催される企画展「つくるよろこび 生きるためのDIY」 の出品予定作品 『とおくにつづく』を紹介。展覧会の見どころを事前に伝える、ワクワク感のある内容となっています。先取り情報が充実しており、読み手の関心を引く広報誌の好例です。
参考:【東京都美術館×山口智子さん】広報誌最新号巻頭インタビュー「美術館は自分がリセットされる場所」
事例10.株式会社日本総合研究所
SMBCグループの総合情報サービスを担う株式会社日本総合研究所は、広報誌『Think & Do』を創刊しました。自律協生社会(Convivial Society)の実現に向け、さまざまなソリューションを発信しています。
経営や社会課題をテーマに、最先端のソリューションの解説や成功事例を紹介。各界のフロントランナーとの座談会や、日本総研の研究員によるレポートなどを通じて、多用な視点を提示しています。注目度の高いテーマと専門性の高い内容で、企業高校の好事例といえます。
広報誌をより広く届けるためにはどうしたらいい?
せっかく広報誌を発行するのであれば、できるだけ多くの人々に届けたいもの。広報誌を制作する目的を達成するためにも、母体となる読者数を増やすことは重要です。
では、広報誌をより多くの読者に届けるためにはどうすればよいのでしょうか。
1.配布方法を見直す
読者数を増やすためには、配布方法の見直しがもっとも効果的です。必ず手に取ってもらえるような配布方法や設置を意識することで、より多くの人々に広報誌を届けられます。
【おすすめの配布方法】
- 必要書類を送付する際に同封
- 窓口担当・営業担当が対面で手渡し
- 広報誌の内容と関連が高い場所に設置(例:スポーツ用品を販売する企業の広報誌→トレーニングジムに設置する、など)
2.インタビュー記事など、広報誌の登場人物を増やす
読者の「読みたい」という意欲を喚起するためには、やはりコンテンツの魅力が重要です。
「この広報誌でしか読めない」という内容であるほど興味を持たれるため、インタビュー記事や取材記事を増やすとよいでしょう。
取材やインタビューを通じて広報誌の登場人物を増やすことは、取材対象者の周囲の人の間で広報誌の認知度を高めるという効果もあります。
また、自分が制作に協力したという意識があると、自分が掲載されている号以外にも興味を持ってもらえることが期待できます。制作チーム以外の人に積極的に制作に協力してもらい、興味・関心を引き出しましょう。
3.インターネット上のプラットフォームを通じて発信する

紙の刊行物を読む機会が減っている現在、多くの読者を獲得するためにはインターネット上のプラットフォームをうまく利用することも重要です。
SNSやブログ、動画サイト、プレスリリース配信サービスなどを利用し、オンライン・オフラインの両方から広報誌の存在を広めていきましょう。
無料配布している広報誌であれば、PDFファイルでWeb上にアップロードし公開すると、遠方の人や企業・団体に直接関わりのない人にも気軽に読んでもらえます。
【インターネット上で情報を発信する際に活用できるプラットフォーム】
- X(旧 Twitter)
- YouTube
- TikTok
- PR TIMES
- note
広報誌作成に関するよくある質問(Q&A)
広報誌を初めて担当する広報PR担当者にとって、「ページ数の目安」「発行頻度」「紙とWebのバランス」「社内でどこまで作れるのか」といった実務的な疑問は尽きません。そこで最後に、よく聞かれる5つの質問に絞って考え方のガイドラインを整理します。
正解がひとつに決まるものではありませんが、自団体の規模や目的に照らし合わせながら検討する際の土台として活用してみてください。

Q.広報誌は何ページくらい・どのくらいの頻度で発行するのが一般的ですか?
ページ数は、自治体や企業の多くで8〜24ページ程度がボリュームの目安になっていますが、重要なのは「毎号きちんと読み切れるか」「制作体制に無理がないか」という観点です。
頻度についても、月刊・隔月刊・季刊とさまざまですが、内容の鮮度と制作負荷のバランスを見ながら決めるとよいでしょう。
小さな組織であれば、無理にページ数や発行回数を増やすより、年2〜4回の発行でも中身をしっかり作り込んだほうが読者満足度は高まりやすくなります。まずは一年間続けられる現実的なサイズと頻度を設定し、状況に応じて段階的に拡大する考え方がおすすめです。
Q.広報誌と社内報・会報誌はどう使い分ければよいですか?
広報誌は、企業や自治体が外部のステークホルダーも含めた幅広い相手に向けて発行することが多く、「組織の姿勢や活動を社会に伝える」役割が強い媒体です。一方で社内報は、従業員や職員のエンゲージメント向上や情報共有を目的とした、内部コミュニケーションに特化したツールという位置付けになります。
会報誌は、会員制組織や同窓会など特定コミュニティに向けた情報提供が主な用途です。同じ企画をそれぞれの媒体にアレンジして掲載することも可能ですが、「誰に読んでほしいのか」「読んだ人にどう動いてほしいのか」を基準に、メッセージの深さや語り口を変えると役割の違いが整理しやすくなります。
Q.紙の広報誌は必須?PDFやWebだけでも問題ない?
紙の広報誌は「たまたま手に取ってもらえる」「じっくり読み込んでもらえる」といった利点があり、高齢層や紙媒体に慣れた層には依然として強い訴求力があります。一方で、コストや保管スペースの観点から、PDFやWeb版に一本化する選択をする団体も増えている状況です。どちらが正しいというより、ターゲット読者のメディア接触行動を軸に判断することが大切だといえるでしょう。
たとえば「メイン読者は紙が安心だが、若年層にはWebで届けたい」という場合は、紙+PDF+特集のみWeb記事化のようにハイブリッド型で運用する方法も十分現実的です。
Q.制作・印刷にどのくらいの予算が必要ですか?コストを抑えるコツは?
予算は、ページ数・部数・カラー印刷の有無・紙質・デザインや撮影を外注するかどうかによって大きく変動します。まずは「最低限必要なページ数」と「配布に必要な部数」を算出し、複数の印刷会社から見積もりを取り比べると相場感がつかみやすくなります。
コストダウンの観点では、紙のグレードを一段階下げる、サイズを一回り小さくする、フルカラーとモノクロページを組み合わせる、といった工夫が効果的です。また、デザインテンプレートをある程度固定し、号ごとに大幅なレイアウト変更をしないようにすると、外注費や作業工数も抑えやすくなります。
Q.初めてでも社内だけで作れる?外部パートナーに依頼する目安は?
広報誌は、記事本数が少ない小規模なものなら社内だけで制作することも十分可能です。ただし、ライティング・デザイン・DTP・校正など求められるスキルは多岐にわたるため、「読みやすさ」や「見た目のクオリティ」に一定以上こだわるなら、どこかの工程でプロの力を借りる選択肢も検討したいところです。
目安としては、ページ数が増えてきたときや、ブランディング上ビジュアルの完成度を高めたいフェーズになったときが、外部パートナー活用を考えるタイミングといえるでしょう。すべてを丸投げする必要はなく、「表紙デザインだけ依頼する」「初年度だけテンプレートを作ってもらう」など、部分的なアウトソースから始める方法も現実的です。
目的を明確にし、企業・団体の魅力が伝わる広報誌を作ろう
広報PR活動の一環である広報誌。「企業・団体のブランド価値を高める」「読者にメッセージを届ける」「企業・団体とステークホルダーのコミュニケーションを促進する」という3つの役割を持っています。
広報誌を制作するときに重要なポイントは、「目的と読者を明確にする」「予算を確認し、内製する部分と外注する部分を決める」「作りたい世界観やデザインイメージを固めておく」「無理のない体制やスケジュールを整える」「評価指標をすり合わせておく」「読者アンケートをもとにPDCAを回す」「制作過程の振り返りを行う」の7点です。
他社・他団体の事例も参考にしながら、広報誌の制作にチャレンジし、広報PR活動の手法を広げていきましょう。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
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