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伝わるプレスリリース・広報紙の作り方。新聞から学ぶ伝え方のコツと3つの改善事例

プレスリリースを作ったものの「新聞をはじめとするメディアに取り上げてもらえない」「本来の意図とは異なる内容で報じられてしまった」。このような悩みを抱えている自治体も多いのではないでしょうか。

プレスリリース配信サービスを運営するPR TIMESでは、2023年7月13日に自治体向けの広報・PRセミナーを開催しました。

本レポートでは、17年ぶりに人口増を達成した埼玉県北本市のプロモーションに携わった林さんと荒井さんのセミナーの内容をまとめた「17年ぶりの人口増。埼玉県北本市が市民と共創するプロモーション」につづき、株式会社神戸新聞社の冨居さんが「伝わるプレスリリース」の作り方、メディアに取り上げてもらうコツを解説。ほかにも、セミナーでお話しいただいた広報PR活動の真の目的、プレスリリース作成時に意識すべきポイント、プレスリリース・広報紙の改善事例をご紹介します。

株式会社神戸新聞社 経営企画局・教育事業戦略室長

冨居雅人(Tomii Masato)

入社後、社会部や写真部、地方支社の編集責任者の編集現場や解説委員、マーケティング室長などを歴任。現在はこれまでの経験を活かして、全国の自治体や企業に広報PRに関するセミナーを行っている。

広報PR活動の真の目的

広報PR活動は、情報を発信して終わりではありません。自治体の広報PRでは、「イベントの告知をしたい」「市民まつりの協賛を募りたい」など、何か伝えたい情報や協力してほしいことがあるはずです。新聞記者としての経験から、また広報研修の講師、地元広報紙コンクールの審査員の立場から「広報PR活動の真の目的」「わかりやすく伝えるコツ」などについて、お話してもらいました。

情報を得た人が動くこと

広報PRの目的は、情報を得た人が動くことです。プレスリリースや広報紙を読んだ人が、次のような行動を取ることがひとつのゴールといえます。

  • 募集事業に対して申請や応募する
  • イベントに参加申し込みをする
  • 得た情報に対して問い合わせをする

例えば、新規事業の募集に関して広報した場合、情報を受け取った人が申請・応募してくれるかが重要です。申請や応募、参加申し込みなど、何かしらの行動をとってもらえること、提供した情報に対する反応が確認できて初めて情報が伝わったといえるでしょう。

担当者との関係性づくりも重要

株式会社神戸新聞社の冨居さん01

「情報を受け取った人が行動する」という目的を達成するために、新聞や各種メディアの発信力は必要不可欠。基本になるのは、新聞記者やテレビ局などマスメディアとの関係性です。新聞記者やメディア関係者は多忙なことも多く、ただプレスリリースや資料を送りつけただけでは、なかなか情報に気付いてもらえません。日頃から担当者と関係性を築いておくことで、対応してもらいやすくなります。

プレスリリースを不在時に届けてしまった場合は、電話を入れたり、名刺を置いておいたりするなど、プラスアルファの行動でこちらの存在を意識してもらいましょう。人は、顔が浮かぶ相手のことは無下にしにくいものです。一方的に情報を送るのではなく、顔が見える双方向の関係を作っておくことが大切です。

プレスリリース作成で意識したい3つのポイント

情報を見た人に行動を起こしてもらうためには、伝えたいことが伝わるプレスリリースを作ることが求められます。プレスリリース作成時に意識すべきポイントのお話しをしてもらいました。

ポイント1.新奇性と変化点

プレスリリースを作成するときには、次のいずれかのポイントを組み込むことを意識するとよいでしょう。

新奇性新しい、めずらしい、異例、変化点など
社会性人々の興味・関心、影響、流行、衝撃など
地域性「地元」との関係の深さ、ふるさと意識など
国際性社会情勢、SDGsとの関わり、内外の視点など
人間性「いのち」「心」の世界に訴えることなど
記録性記録として残ることの重要性など

中でも、必ず組み込んでほしいのが新奇性・変化点です。

自治体の職員さんと話していると、よく「例年の行事ですから」「いつものイベントです」といった言葉を聞きます。「過去と同じ取り組みだから、さほど目立って新しいこともなく、変化もない」と考える人が多いからでしょう。しかし、そう思ったときこそ、今一度、別の視点で言い換えができないかを考えてみてください。

《例》
・「全国初の取り組み」だと思っていたが、すでに東京で行われていた
 →「西日本初」「近畿初」などと言い換える(新奇性)
・「毎年恒例」の花火大会
 →場所も、日も同じだが、昨年まで3,000発だったところを、今年は5,000発の打ち上げに規模を拡大-とPRする(変化点)

PR TIMES MAGAZINEでは、メディアに情報を届ける際に大切なポイントをメディアフックとしてまとめています。番組によって優先されるメディアフックについてもあせてご覧ください。

ポイント2.4つの「感」

話題・関心を集めるためのポイントとして、は4つの「感」を意識してください。

「新」感:めずらしいこと、初めて取り組むこと
「今」感:時流に添った情報の意義付けで関心を持ってもらう
「五」感・「語」感:人の感覚に響く発信、興味や関心を持ってもらえるような言葉

ひとつ前で取り上げた新奇性とも通ずる「新」感、話題になっている事象や流行など時代の流れを意識した「今」感、そして、情報を受け取る人の五感に響くような発信方法や文言(「語」感)を工夫して、受け取り手の心を刺激してみてください。

ポイント3.ビジュアル

伝わるプレスリリースを作るためには、写真も効果的に活用しましょう。

文字ばかりのプレスリリースだと、人によっては読むこと自体がしんどいと感じる人も多くなっています。「一人でも多くの人に伝える」という目的を果たすために、「一目で見てわかる」ものを作るように意識することが大切です。

新聞に学ぶ「伝わりやすさ」のコツ

多くの人に内容が伝わるプレスリリースや広報紙を作るためには、どんなコツがあるのでしょうか。一目で情報がわかる新聞の特長を参考にしながら、意識しておきたい3つのポイントを説明してもらいました。

コツ1.見出しは究極の要約

まず、意識したいポイントは見出しです。新聞の各面を大きく飾る見出しは、伝えたい内容の「究極の要約」とわれています。たった1行の文字列で、何が書いてある記事かが大体わかりますよね。プレスリリースや広報紙を作成する際、読んでもらうきっかけになるように次のポイントを意識してみてください。

  • 見出しは10文字程度を基本とする(8~12文字程度がすっと頭に残りやすい)
  • 読み手の関心を引くキャッチコピーに知恵を絞る
  • 文字の大きさ・フォント・色を工夫して重要度を示す

例えば、プレスリリースをFAXで送信する際も見出しは大切です。あわせてこちらの記事もご確認ください。

コツ2.第一段落に5W1H

新聞記事の冒頭第一段落は、前文とかリードともいわれます。30行でも100行でも記事の長さに関係なく、第一段落を読むだけで、その記事の伝えたい概要がわかりやすくまとめられています。それは、必ず5W1Hが入っているから。第二段落以降は、第一段落の重要な言葉(キーワード)を、大切な順に段落ごとに解説していくので、長い記事はそれだけ重要な内容が多いことになります。この第一段落の中の重要なキーワードを組み合わせてさらに内容を端的に伝えているのが見出しというわけです。

プレスリリース作成の際も、記事全文の長さに関係なく、まずは第一段落だけで概要がわかるよう、必ず大切なキーワードと5W1Hを入れてコンパクトにまとめてみましょう。以上のことを意識して記事を作ると、読み手は文頭で概要が把握でき、さらに詳しい内容を知りたくなれば、全文を読んでもらいやすくなります。

コツ3.結論ファーストの書き出し

神戸新聞社 結論ファーストの書き出し

3つ目のコツは、「結論から書く」ことです。結論が文末にあると、1番重要なポイントに辿り着くまでが長くなり、読んでもらいにくくなってしまいます。記事を書くときは、大切なことから書く「逆三角形」の文章を意識しましょう。

また、新聞では、第一段落で結論が書きこまれた概要を伝えます。そして、経過を説明し、補足する事柄を足して記事を構成します。「見出し」「リード」「本文」と計3回伝えるスタイルになっていることが大切です。

プレスリリースや広報紙に応用ができるので、第一段落をしっかり作り込んで、見出しを練りましょう。

【関連記事】

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プレスリリース・広報紙の改善事例

ここからは、これまでお伝えした新聞のスタイルに学ぶ「伝わりやすさのコツ」を踏まえて、実際のプレスリリース・広報紙の改善事例を紹介してもらいました。

事例1.見出しの「~について」はできる限り控える

見出しを改善した事例。私が兵庫県とともにプロジェクトにかかわった「ひょうごけん学習帳」に関連したプレスリリースです。改善前の見出しは「……コンテストの募集について」となっていましたが、これではコンテストの募集が始まるのか、終わってまとめたものなのか、ぱっとわかりません。

そこで、次のように見出しを変更しました

神戸新聞社 プレスリリース02

修正前:ひょうごけん学習帳自由研究コンテストの募集について
修正後:ひょうごけん学習帳 県内小学5年生に配布
    夏休み自由研究コンテストを初開催

プレスリリースで「~について」という見出しをよく見かけますが、関心を持って先を読んでもらえない可能性も高まります。修正前後の見出しを比べると、修正後のほうが具体的に何を行うのかがしっかり伝わるのではないでしょうか。実際に、この修正後のプレスリリースが出ましたが、学習帳がどんなものか表紙の写真を入れたり、学習帳の使い方を紹介したホームページの動画のタイトル部分も掲載すれば、取材側のイメージも膨らんだでしょう。

事例2.文字ばかりにしない

神戸新聞社 プレスリリース03

次に、写真の効果的な活用でプレスリリースを見栄えよくする事例です。プレスリリース作成の際は、できる限り写真を取り入れましょう。新聞記者も数多くのプレスリリースを見るため、いくら見出しがしっかり作られていても、文字だけではイメージしにくいことがあったり、印象に残りづらかったりします。

例えば、子どもの料理教室に関する内容であれば前回の楽しそうな様子の写真、幼稚園に恐竜がやってくるイベントであれば恐竜の写真は欠かせません。時にビジュアルなイメージというものは、記者の取材意欲を左右することもあります。

また、写真を使う際は、ただ数枚使えばよいというわけでなく、メリハリをつけながらビジュアル度を高めて、プレスリリースを見栄えよくしましょう

事例3.発表者本位の作成にしない

神戸新聞社 プレスリリース04

災害や選挙など、続報や速報を伝えるプレスリリースで気になることがあります。風水害で刻々と変わる被害状況や水防指令の発令など自治体の対策は時系列で発表されます。しかし、多くが最新の付け足された情報は時系列で下のほうに並びます。災害や選挙など、重要な速報については、発表ごとに最新の情報が一番上にくるよう逆の時系列で発表するようにしましょう。今なにが起こっているかがすぐに伝わるうえ、記者も最新情報の見落としがなくなります。

新しい情報を時系列で下に書き足していくほうが整理する側は楽ですが、これは発信者本位の都合にすぎません。重要なことほど、手間はかかりますが、大切なことが間違いなく早く伝わる方法で速報を心がけましょう

事例4.推し情報を目立たせる

神戸新聞社 プレスリリース05

広報紙は、各部署から上がってきた情報を「平等」に掲載しがちですが、推しの情報を目立たせるのもひとつのテクニックです。各部署の扱いを月ごとに同じに考えるのではなく、大きな流れでバランスを取りながら、その月に大切な行政情報を優先して、目立たせる紙面を作ってみましょう。

神戸新聞社 プレスリリース06

【Q&A】セミナー参加者の質問に回答

セミナーの最後に行われた参加者の質問と冨居さんのQ&Aをお届けします。

プレスリリースを取り上げてもらいやすいタイミングは?

一概には言えませんが、火・水・木曜日あたりがよいでしょうか。週半ばのほうが新聞記者のスケジュールに余裕がある場合が多いので、内容をじっくり確認してもらいやすい傾向にあるといえるでしょう。

月曜日は週末に起きた情報の整理で慌ただしく、金曜日は週末や週明けの準備をしなければならないので、プレスリリースをゆっくり確認する時間が取りにくいからです。もちろん、速報の必要性が高いネタには記者は反応しますよ。

プレスリリースに担当者の思いを入れるのは効果的?

私は効果的だと思います。

プレスリリースの内容に携わった人の思いが伝わるので、記者として詳しく話を聞きたいと思うきっかけになる場合もあるでしょう。また担当者の思いが掲載されることで、取材をする側としては「ここを聞いておきたい」「これはどういうことなんだろう」と具体的な確認事項が見えてきます

結果的に取材や電話での確認の際に、より深くプレスリリースの内容を確認しやすくなるという点で、効果的だと思います。プレスリリースに書かれていなくても、同様のメモでもよいと思います。

記者と良好な関係を作る方法は?

自治体職員も地元メディアも、「地域を盛り上げる」「住民を幸せにする」ために活動するという意味の同志として、意見交換をする機会をつくるとよいでしょう。同じ方向を向いていてもやり方が違ったり、違う方向を見ていても目的が同じだったりします。意思疎通、情報共有の努力は、互いにとってよい刺激となるでしょう。

行政に関する意見交換をしたり、率直に気になっていることを話し合ったりする機会を持つことで、互いの理解を深め合うことができると思います。

ポイントを押さえて伝わるプレスリリースを発信しよう!

今回、株式会社神戸新聞社の冨居さんに、伝わるプレスリリースを作るコツについて解説してもらいました。基本的なポイントを振り返るだけで、今日からすぐに活用できるテクニックになりそうですね。

<セミナーのポイント>

  • 見出しやリード文で全体像がわかるようにする
  • 文字だけに頼らず、写真を効果的に取り入れる
  • 各メディア担当者との関係構築も、広報力アップにつながる

プレスリリースを作り、情報を発信することがゴールではありません。募集ものですと、応募や問い合わせが増える、制度を設けたら申請者、利用者が増える──など、情報を届けた相手が行動を起こして初めて、目的は果たされたといえます。

まずは、コツを押さえながら、大切なことが伝わりやすいプレスリリース作りを目指す。そのうえで、新聞社をはじめとする各種メディアの情報発信力を借りたり、SNSなどインターネット時代の独自発信力も磨いたりしながら、地域住民のための施策発信に取り組んでいきましょう。

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この記事のライター

笹まい

笹まい

専門商社などで営業職・営業アシスタントの経験を積んだ後、副業からライター活動をスタート。現在はフリーランスライターとして活動中です。広報・採用担当経験が浅い方にも伝わる、読みやすくてわかりやすい記事をお届けします。

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