PR TIMES MAGAZINE|広報PRのナレッジを発信するWebメディア
記事検索
title

広報PR担当者が知っておきたい「薬機法」に関する7つのこと

「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」を扱うときには必ず知っておきたい「薬機法(旧・薬事法)」。

2021年8月からは「課徴金制度」が導入されるといった新たな動きもあり、広報PRとしても必ず知識をアップデートしておきたい法律です。

本記事では、広報PR担当者に欠かせない知識である「薬機法」について、リスクを紹介したうえで、最低限知っておきたいポイントを7つ解説します。

「薬機法(旧・薬事法)」とは?

「薬機法」とは、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」の品質と有効性および安全性を確保するため、製造から販売、市販後の安全対策まで一貫した規制を行い定められている法律です。

「薬事法」と記憶している人もいるかもしれませんが、2014年11月25日「薬事法」が改正され通称「薬機法」、正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機等法)と名前が変更されました。

企業が「薬機法」に違反したときのリスク

では、企業が「薬機法」に違反した場合には、どのようなリスクが考えられるのでしょうか。主な3つのリスクについて解説します。

厚生労働省

措置命令・中止命令

1つ目は、「措置命令」や「中止命令」が下されることです。

違反広告をした事業者や法人に対しては、厚生労働大臣または都道府県知事から、違反行為の中止、再発防止策の実施を命じる「措置命令」や「中止命令」が下されます。

特に、未承認の医薬品や医療機器を販売や広告したケースでは、刑事罰に処されることもあります。

課徴金が課せられる

2つ目は、「課徴金」が課せられることです。

2019年12月4日、厚生労働省により虚偽・誇大広告の違反を行った事業者や法人に対して課せられる「課徴金制度」が新たに設けられ、2021年8月1日より施行されることが発表されました。

課徴金額は、課徴金納付命令第七十五条の五の二において、原則として違反を行っていた期間中(最大3年間)における対象商品の売上額 × 4.5%とされています。

参考:厚生労働省「課徴金制度の導入について」

社会的信用が失われる

3つ目のリスクは、「社会的信用」が失われることです。

「薬機法」に基づく行政処分が行われた場合、企業としての信用やイメージも損なわれ、商品の販売中止・回収というリスクも生じます。

消費者だけでなく、顧客や株主、メディア関係者などのステークホルダーの信頼も失われてしまうことをしっかり理解しておきましょう。

広報PR担当者が知っておきたい「薬機法」に関する7つのこと

「薬機法」の概要や違反した場合の罰則やリスクは、理解できたでしょうか。広報PR業務を行う際には、これらのリスクがあることを把握して、正しい知識を身につけることが求められます。

次に、広報PR担当者にとって特に関係がある「薬機法」の広告規制について深掘りした、7つのポイントを解説していきます。

薬機法イメージ

1.「薬機法」における広告の要件

広報PR担当者にとって、「薬機法」では何が「広告」とされるのかは気になるところでしょう。「薬機法」で「広告」として認められた場合には、「薬機法」を守らなければなりません。「薬機法」で「広告」として認められるには、次の3つの要件があります。

1.顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であること
2.特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
3.一般人が認知できる状態であること

引用:薬事法における医薬品等の広告の該当性について

また、一見わかりづらい「薬機法」の規定を、実務を踏まえてわかりやすく記された解釈として通知されている「医薬品等適正広告基準」によると、「薬機法」の対象となる広告媒体は、以下のように定められています。

第2(対象となる広告)
この基準は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイト及びソーシャル・
ネットワーキング・サービス等のすべての媒体における広告を対象とする。

引用 :厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」

例えば、インフルエンサーによるSNS投稿についても、「PR目的で」「商品名を提示して」「消費者が認知できる状態」である場合は、これら3つの要件を満たしているため、広告だと判断されます。

医薬品等適正広告基準は、以下の参考資料や、厚生労働省のホームページで閲覧することが可能です。目を通しておくとよいでしょう。

参考:厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」
参考:厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」

2.誇大広告の禁止

「薬機法」の広告規制は、「医薬品等の広告(薬機法第六十六条〜六十八条)」で定められています。

まず知っておきたいのは、第六十六条の「誇大広告」です。誇大広告とは、事実に反する虚偽の表現や誇張した表現により消費者に誤った認識をさせるおそれのある広告をいいます。

薬機法第六十六条では「誇大広告」について以下の通り規定されています。

(薬機法第六十六条:誇大広告等)
1.何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2.医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3.何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

引用:厚生労働省「医薬品等の広告規制について」

第一項に「何人も」とあるように、広告の主体は限定されていません。そのため、製造販売する業者、企業だけでなく、広告を掲載するメディア(ライター、インフルエンサーなども)も規制の対象となっていることがポイントです。

3.承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止

薬機法第六十八条の規定では、医薬品、医療機器及び再生医療等製品として「承認又は・・・認証を受けていないもの」の広告を禁止しています。

(薬機法第六十八条)
何人も、第十四条第一項又は、第二十三条に関する広告をしてはならない。

引用:厚生労働省「医薬品等の広告規制について」

特に気をつけたいのは「健康食品」です。健康食品は、薬機法上の定義はなく、一般食品と同じ扱いです。医薬品、医療機器および再生医療等製品として「承認又は・・・認証を受けていないもの」であるにもかかわらず、効果効能を標ぼうした広告を行うと、その「健康食品」は薬機法上の「医薬品」とみなされて、薬機法第六十八条の違反となります。

ただし、健康食品の中でも、特定保険用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品については、エビデンスなどをもって定められた機能性が表示できます。

4.他社商品の誹謗広告の制限

「医薬品等適正広告基準」では、他社製品を誹謗する広告は禁止されています。

9 他社の製品の誹謗広告の制限
医薬品等の品質、効能効果、安全性その他について、他社の製品を誹謗するような広告を行ってはならない

引用 :厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」

他社製品の誹謗広告に抵触する表現は、以下のような例を参考にしてください。

①他社の製品の品質等について実際のものより悪く表現する場合
例:「他社の口紅は流行おくれのものばかりである。」

②他社の製品の内容について事実を表現した場合
例:「どこでもまだ××式製造方法です。」

引用:厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」

同様に、他社商品と比べた表現をしている「比較広告」に関しても注意喚起を促しています。商品同士の比較広告を行う場合は、自社商品の範囲で、その対照製品の名称をしっかり明示する場合に限定しています。

製品同士の比較広告を行う場合は、自社製品の範囲で、その対照製品の名称を明示する場合に限定し、明示的、暗示的を問わず他社製品との比較広告は行わないこと。この場合でも説明不足にならないよう十分に注意すること。

引用:厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」

5.医薬関係者等の推せん

お医者さんからコメントをもらい、商品の信憑性をアピールしようと検討していることもあるのではないでしょうか。

しかし、医療関係者等が商品やサービスに関して推せんしているコメント等を使用することは、消費者への認識に多大な影響を与えるとして、事実である場合でも禁じられています。

10 医薬関係者等の推せん
医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。
ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。

引用:厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」

6.化粧品の56の効能効果

美容化粧品(コスメ)は、薬機法上「化粧品」として広告規制の対象となるため広告等では、規定された表記や表現を遵守しなければなりません。

有効成分の作用として効能効果を広告したい場合は「化粧品」ではなく、承認が必要な医薬部外品である「薬用化粧品」で行う必要があります。

化粧品として認められる効能効果は、原則として「56項目の範囲内の効能効果」です。これらの表記内であれば違反対象とはなりません。

この「化粧品の56の効能効果の範囲」は、化粧品メーカーなど化粧品の広報PRに従事している広報PR担当者は頭に入れておくとよいでしょう。

参考:厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」15ページから

コスメイメージ

7.「薬機法」の輸入手続き

海外の医薬品、医薬部外品、医療機器、化粧品を日本で宣伝し販売を行う事業者や法人は、「薬機法」の規制対象品を輸入する際に「製造販売業許可」が必要です。

手続きには時間がかかることを認識し、広告制作やローンチのスケジュールを考慮しておくことが大切です。

また、「薬機法」に関連する商品の輸入を行う際は、都道府県庁の薬務主管課に相談するとよいでしょう。

参考:厚生労働省「医療品等の輸入手続きについて」

「薬機法」違反に関わる広告表現例

「薬機法」の広告規制に違反する・しない表記や表現は、商品やカテゴリーによって違いがあり複雑です。皆で知恵を絞り予算も費やして制作した広告の中止や商品のリコールは避けたいもの。

東京都福祉保健局のホームページでは、広告の種類と媒体(メディア)の種類ごとにさまざまな違反とされる表現事例が掲載されているので、参考にしてみてください。

「薬機法」の知識をアップデートしつつ、最大限の広報PRを

広報PR担当者は、広告のみならずプレスリリースや、SNS投稿で自社の商品を魅力的に生活者へ情報発信していく使命があります。そのためには「薬機法」を深く理解しておくことが求められます。

「薬機法」で定められている広告規制は、生活者の保健衛生の安全を守るために必要不可欠なルールです。「薬機法」に関する通知や業界団体のガイドラインは日々見直しがされており、数ヵ月前のルールが常に同じであるとは限りません。

「知らなかった」では済まないため、「薬機法」が適用される商品・サービスの広報PR担当者は「薬機法」の民間資格取得に向けて勉強したり、日々アンテナを張り知識をアップデートする努力が大切です。

本記事をきっかけに「薬機法」への理解を深め、法律を遵守した広報PR活動を実施しましょう。

参考:厚生労働省「薬事法等の一部を改正する法律の概要」

<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

薬機法に関するQ&A

PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法料金プランをあわせてご確認ください。

PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする

この記事の監修者

新城 安太

新城 安太

弁護士法人至誠法律事務所/弁護士 クライアントと共にKPIを追う弁護士として、通販(D2C)事業、広告事業、美容医療事業に関わる企業やクリニックに対するリーガルサービスを提供。薬機法、景表法等の広告規制に関しては、セミナー講師、代替案の提案を含む広告チェック、社内の広告コンプライアンス体制構築支援、広告審査人材の教育、行政対応を主に行う。

このライターの記事一覧へ