ビジネスの拡大や、製品・サービス開発のための「資金調達」に関する発表は、プレスリリースを配信するよい機会です。資金調達の発表により、企業や製品・サービスに対する社会からの期待を表すことができます。
本記事では、「資金調達」のプレスリリース作成時に、必ず盛り込みたい内容や注意点などを、PR TIMES社員の監修のもと細かく解説。参考になるプレスリリース事例を含めてご紹介します。
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資金調達のプレスリリースを配信する意義・7つのメリット
資金調達のプレスリリースは、単なる「資金を集めました」という報告にとどまりません。事業の実在性や信頼性を示し、採用や営業の追い風となるほか、投資家や取引先への説明効率を高める役割も果たします。さらに、メディア露出や将来の資金調達にもつながるなど、広報PRにおいて非常に大きな効果を持っています。
まずは、資金調達に関するプレスリリースを配信するメリットについて解説します。
メリット1.社会的信用・事業の実在性を高める
資金調達を実現した事実は、外部から見れば「その事業が社会から評価され、将来性を期待されている」証拠です。特に新興企業にとっては、調達の発表が社会的信用を獲得する大きな機会となります。
プレスリリースには資金調達をした事実とともに、製品・サービスの魅力が伝わるよう製品やサービスの概要をわかりやすく記載しましょう。特に、医療や科学・IT系など専門的なこと、世の中にまだ知られていない製品・サービスなどについては、その用途を読み手が理解できるような事例やビジュアルも掲載するようにします。専門性が高いビジネスでも、用途や社会的な意義を補足することで理解が広がり、より多くの人に「信頼できる事業だ」と認識してもらえます。
メリット2.事業の牽引材料として採用・営業に効く
資金調達リリースは、投資家やメディアだけでなく、採用市場や営業活動にも大きな効果を発揮します。調達のニュースは「成長を続ける会社」としての印象を与え、候補者や取引先に安心感を与えるからです。
採用においては「安定した事業基盤を築いている企業」と認識されることで応募数の増加や内定承諾率の向上が期待できます。営業面では「調達を受けたことで事業が加速している会社」として説得力を増し、提案の後押しにもなります。
メリット3.投資家・金融機関・取引先への説明コストを下げる
資金調達リリースは、関係者への「公式な説明資料」としても機能します。調達の背景、資金の使途、将来の展望が網羅されていれば、改めて一人ひとりに説明する手間を省くことができるのです。
投資家や金融機関にとっては「この会社がどこに向かうのか」を知る重要な判断材料になります。あらかじめリリースで情報を整理して発信しておくことで、質問や不明点も減り、関係構築をスムーズに進められるでしょう。
メリット4.報道露出と指名検索を増やす
調達ニュースはメディアにとっても記事化しやすいテーマのひとつです。金額や出資者名、事業領域といった要素はニュースバリューが高く、掲載される確率が上がります。
さらに、リリース配信後には検索エンジンで社名やサービス名の検索が増える傾向があります。調達をきっかけに知った人が情報収集を行い、その後の顧客獲得や商談化につながるケースも珍しくありません。
メリット5.将来の資金調達の布石になる
資金調達リリースは、その瞬間だけでなく「次の調達」へとつながる布石にもなります。投資家は継続的に企業の進捗をチェックしており、過去のリリースでの宣言や計画が、次回調達時の信頼度に直結するからです。
「前回調達時に掲げた目標を達成した」という実績があれば、次のラウンドでの評価は大きく変わります。つまり、資金調達リリースは単なる情報発信ではなく、中長期的な成長ストーリーの証拠として重要な役割を持っているのです。
メリット6.社員・内定者のエンゲージメント向上
資金調達リリースは社外だけでなく、社内にとっても大きな意味を持ちます。従業員にとって「自分たちの取り組みが社会から評価された」という実感はモチベーションを高める材料となります。
また、内定者や転職を検討している人にとっても「成長の後押しを受けている会社」として魅力が増し、入社への安心感につながります。資金調達リリースをインナー広報の観点からも意識的に活用することで、社員のエンゲージメント強化にもつなげられるでしょう。
メリット7.ベースにある自分たちの想いを訴求できる
資金調達のプレスリリースには、対象となった製品・サービスに対する想いを改めて伝える場にもなります。特定の製品・サービスではなく事業全体に対する資金調達の場合でも、企業運営のベースにある想いを伝えましょう。
製品・サービスが専門領域のなかなか理解に難しいものでも、それを通じて実現したいという想いは伝わりやすいものです。そうした想いに共感してくれる人は、企業やその製品・サービスの成長を見守ってくれるファンとなってくれるかもしれません。
資金調達のプレスリリースに必ず盛り込みたい7つの項目
資金調達リリースは「資金を得た」という事実だけでは十分ではありません。投資家・メディア・顧客・社員など、多様なステークホルダーに正しく理解され、信頼を獲得するためには、記載すべき必須項目を押さえることが重要です。
では、資金調達のプレスリリースを作成する際に、必ず載せたい内容とはなんでしょう。伝えたい内容を網羅するために、必ず盛り込みたい項目についてご紹介します。
項目1.調達概要
最初に示すべきは調達概要です。シリーズAやプレシリーズBなどのラウンド、正確な金額またはレンジ(例:数億円規模)、エクイティかデットかといったスキーム、クロージング日などの情報は必須です。これらは記事化される際の「事実情報」としてそのまま引用されやすいため、曖昧にせず明確に記載しましょう。
また、調達金額を非開示とする場合は「数億円規模」「数千万円台後半」などレンジを提示し、読み手に事業規模の目安を伝える工夫も有効です。端的に概要をまとめた段落を冒頭に置くことで、リリース全体の信頼性が高まります。
項目2.出資者情報
資金調達リリースの注目ポイントのひとつが「誰が出資したのか」です。リード投資家、既存投資家、著名な個人投資家などの名前を明示することで、社会的信用や事業の将来性を裏づける要素となります。
さらに、投資家が果たす役割を具体的に示すことも有効です。単なる資金提供にとどまらず、事業戦略への助言、販路の提供、人材採用の支援など、出資者の強みを絡めて説明することでリリースの説得力が増します。特にリード投資家がどのような評価をしたのかを明らかにすると、記事化されやすくなります。
項目3.出資背景と評価ポイント
出資に至った背景を丁寧に記載することで、調達の必然性を伝えることができます。評価されたのは市場の成長性か、技術の独自性か、経営チームの実績か、それとも既に獲得しているトラクションか。具体的な要素を言及することで、読み手は事業の「強み」を理解できます。
特にメディアが記事にする際には「投資家がどう評価したか」が取り上げられるケースが多いため、出資の背景は外せない項目です。ステークホルダーに「この会社はどんな文脈で支持されているのか」を示すことが、信頼獲得につながります。
項目4.使途とKPI連動
資金の使い道は、読者が最も関心を寄せる部分です。新プロダクト開発、人材採用、海外展開、認証取得など、具体的な用途を明示しましょう。さらに重要なのは、それらがKPIとどう連動しているかを示すことです。
例えば「エンジニア採用を通じて開発スピードを2倍にし、年間50社の導入を目指す」など、使途と数値目標をセットで提示することで、将来像が明確になります。単なる資金用途ではなく「成長シナリオ」として伝えることを意識しましょう。
項目5.事業・製品の一枚絵
製品や事業の全体像を直感的に理解できる「一枚絵」のビジュアルを盛り込むのも必須です。スクリーンショットやサービス導線図、価格表、利用シーンの写真などは、言葉だけでは伝わりにくい部分を補ってくれます。
特に専門性が高いBtoBサービスやテクノロジー領域では、読者の理解を助ける図解があるだけで記事化の確率が格段に上がります。メディアがそのまま転載できるよう高解像度で準備し、利用許諾も明確にしておくとスムーズです。
項目6.トップ・投資家コメント
リリースの説得力を高める要素として、経営トップと投資家のコメントを必ず盛り込みましょう。経営トップは「調達によって実現したい未来」を、投資家は「この会社に期待する理由」を述べるのが基本です。
コメントは長すぎると読みにくいため、2~3文程度に要点を凝縮することが望ましいです。また、将来の協業予定や市場拡大への期待なども具体的に触れると、ニュース性が高まります。
項目7.問い合わせ先と取材対応窓口
最後に欠かせないのが、問い合わせ先の記載です。広報担当者やIR窓口を明記することで、メディアからの取材や投資家からの問い合わせにスムーズに対応できます。
連絡先にはメールアドレスだけでなく、電話番号や担当者名を添えるとより親切です。また、取材対応を迅速に行うため、あらかじめ想定質問と回答(FAQ)を社内で準備しておくと安心です。
資金調達のプレスリリース作成にあたり注意すること
どのようなことに注意して作成するとよいのでしょうか。資金調達のプレスリリース作成時に、特に注意したいことを紹介します。
1.タイトルとリードで「金額×使途×未来像」を一文で提示する
資金調達リリースでは、タイトルとリード文が最も重要な要素です。メディア担当者や投資家は数秒で情報価値を判断するため、「金額」「資金の使途」「将来像」を一文で示すことが効果的です。
たとえば「シリーズBで10億円を調達、AI技術を活用した新規事業と海外展開を加速し、2027年までにグローバルシェアNo.1を目指す」といった表現にすると、調達の意義が端的に伝わります。これにより、記事として取り上げやすくなるだけでなく、読み手の印象にも強く残り、投資家・顧客双方への信頼訴求につながります。
2.FAQを併記する
資金調達リリースでは、よく質問される内容をFAQ形式で補足することで、メディアや投資家からの問い合わせに効率的に対応できます。非開示の理由や今後の予定、採用計画、アライアンス方針など、想定される質問を事前に整理し、一文で回答を掲載しておくと安心です。
例えば「調達金額は非開示ですが、海外市場進出に向けた成長資金として活用します」と記載するだけで不信感を避けられます。FAQは透明性の高さを示す要素となり、取材対応の工数削減だけでなく、信頼度向上にも大きく貢献します。
担当者推薦!プレリリース配信事例3選
ここでは、実際に配信された新商品に関わるプレスリリースの中から、参考になるものをご紹介します。整理された簡潔な説明文や写真の効果的な活用など、各社とも工夫を凝らしたプレスリリースを作成しています。
事例1.株式会社Voicy 2022年7月13日発表
- 一目で投資先の人が見えるデザイン性の高い画像
- 投資家からの顔写真付きコメント
- 自身の言葉で綴られているこれからの未来
参考:音声プラットフォーム「Voicy」、27.3億円を調達。声で、明るい未来へ変えていく。
事例2.株式会社スマートバンク 2022年7月13日発表
- 一目で投資先の人が見え、サービスと関連付けたユニークな画像
- 外部環境を定量的な数字で表した信憑性が得られる背景
- わかりやすい図説込みの今後の展望
参考:家計簿プリカ「B/43」を提供するスマートバンク、シリーズAで20億円の資金調達を実施 #B43
事例3.ファンファーレ株式会社 2022年7月20日発表
- サービスの必要性を問うメッセージ性のある画像
- 投資家からの顔写真付きコメント
- 資金調達背景に加え、資金調達の裏側が知れるコンテンツを準備
参考:AIで産業廃棄物業界のDXを実現する「ファンファーレ」、総額6.3億円のプレシリーズA資金調達を実施
PickUp!ファンド設立のプレスリリース
事例1.GMOインターネットグループ 2022年7月19日発表
- わかりやすくユニークな高いデザイン性
- 実績を踏まえた設立の背景があることでの期待
- 過去の取り組みとリンクした今後の展望があることでの信頼
参考:GMO Fintech Fund 7 設立 インド太平洋エリアのFintech・脱炭素テックへの投資を強化
事例2.ANRI 2022年7月20日発表
- 対象者に対する想いが伝わる設立の背景
- 今後の展望で期待値が高まる導入
- ダイバーシティやインクルージョンに紐づく取り組み
参考:ベンチャーキャピタルANRI 400億円規模のANRI5号ファンドを設立
プレスリリース作成の基礎知識
プレスリリース作成にあたり大切なことは、行動した人の想いを込めることです。しかし、見せ方にも工夫は必要です。
どのようなプレスリリースにもあてはまる、プレスリリース作成の基礎知識をご紹介します。

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テンプレートを使ったインポート機能の詳細は、以下の記事をご覧ください。
さいごに
届けたい相手に、想いを届ける。そのための必須スキルのひとつとしてプレスリリース作成のスキルが挙げられます。
数え切れないほどのプレスリリースが日々配信され、インターネット上には多くの新しい情報が増えています。受け取る側にとっても正しい情報、自身が本当に知りたい情報と出会い、見極めることが必要になっているといえるでしょう。
届けたい相手である、メディアや生活者一人ひとりに自社の想いを届けることは、決して容易ではありません。情報を詳細かつ届けたい相手にとってわかりやすく、そして魅力が伝わるプレスリリースにすることが求められます。
ひとつでも多くの企業の想いをのせたプレスリリースが配信され、届けたい相手に想いが届けるためにお役立てしていただけると嬉しいです。
【関連リンク】
資金調達のプレスリリースに関するQ&A
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