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ブランディングとは?意味・種類・戦略の立て方から手法・成功のポイントまで基礎知識を徹底解説【成功事例あり】

広報PRを担当していると、ブランディング戦略の策定やプロジェクトの立ち上げなどを任されることもあるのではないでしょうか。普段から行っている広報PR活動とブランディングとは、近い領域にあるように見えて実際はまったくの別物です。

本記事では、ブランディングとは何かといった基本的な定義から、種類や手法、成功のためのポイントまで、初めてブランディングを任された人にもわかりやすいようにまとめています。

目次
  1. ブランディングとは

  2. ブランディングが注目されるようになった背景

  3. ブランディングの種類

  4. 企業がブランディングを行う5つの目的・メリット

  5. ブランディング戦略の立案方法・流れ

  6. ブランディングの手法・施策例

  7. ブランディングを成功させる6つのポイント

  8. ブランディングの成功事例

  9. ブランディングは強みの整理と継続的な発信がポイント

  10. ブランディングに関するQ&A

ブランディングとは

「ブランド」や「ブランディング」といった言葉は、耳なじみはあるものの、その意味はまだ浸透していないかもしれません。まずはブランディングの言葉の意味や、マーケティングとの違いについて解説します。

ブランドとは

ブランドとは、生活者が時間や対価を払ってでも得たい独自の価値を意味します。独自の価値に対して生活者が共感し、その価値があることで類似商品やサービスに比べて有意な差を生み出します。

商品やサービスそのものが持っている機能的な「商品価値」に加えて、時間や対価を払ってでも手にしたいと思える価値を持っており、それに基づいて生活者から信頼や信用を得ているのが「ブランドがある」状態です。一般的に、こちらの価値を「ブランド価値」と呼んでいます。

ブランディングの意味

ブランディングとは、企業などが自社製品や自社のブランドを形成するために行うさまざまなコミュニケーション活動のことです。ブランドは、企業側が一方的に作り上げるものではありません。企業と生活者の間で結ばれるいわゆる「約束事」がブランドであると言ってもよいでしょう。

ブランディングとマーケティング・広報PRとの違い

ブランディングとマーケティング、広報PRは混同されやすいものですが、以下のようにそれぞれ異なる目的で行われます。

ブランディング商品の価値やイメージを高めるために行う企業活動
マーケティング商品の販売を促進するために行う企業活動
PRステークホルダーとの長期的な関係作りのために行う企業活動

マーケティングは企業が直接的にメッセージを発信して、生活者にメッセージ通りの認知をしてもらうことで、購入につなげます。一方でブランディングは、商品の価値そのものを高めつつ、その価値を発信することで、生活者にブランドイメージを持ってもらうために行われます。

また、広報PRとブランディングの違いについては、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひご確認ください。

ブランディングが注目されるようになった背景

近年ブランディングが注目されるようになった背景には、社会や消費者行動の大きな変化があります。まず、インターネットやSNSの普及により、生活者が情報を簡単に手に入れ、商品や企業の評判を自ら調べる時代になりました。一方的な広告だけでは信頼を得られず、「共感できる価値観」や「ストーリー」を持つブランドが選ばれるようになっています。

また、モノがあふれる現代では、機能や価格だけで差別化することが難しくなっています。こうした環境下で、企業や商品の「らしさ」や「意義」を明確にし、生活者に長く愛される関係を築くために、戦略的なブランディングが欠かせない存在となっているのです。

加えて、社会課題への対応や持続可能性といった、企業の社会的姿勢にも注目が集まるようになりました。生活者は「何を買うか」だけでなく、「どんな企業から買うか」を重視するようになっており、ブランドの価値観や姿勢が購買行動に直結する時代になっているのです。

ブランディングの種類

ブランディングにはいくつかの種類が存在します。誰にブランディングするのか、何をブランディングするのかなど、それぞれの種類を紹介していきます。

インナーブランディング/アウターブランディング

インナーブランディングとアウターブランディングでは、ブランディングの対象が異なります。

           対象     目的
インナーブランディング自社の従業員共通認識としての「ブランド価値」を従業員に認知してもらい、エンゲージメントを強化
アウターブランディング生活者商品やサービス、企業の価値に共感してくれるファンを増やす

インナーブランディングは、自社のブランド価値を従業員に認知してもらうためのコミュニケーションです。社内のブランド認知を統一することで、従業員のエンゲージメントを高めつつ安定的な企業活動につなげます。インナーブランディングが継続的に行われている状態では、外部環境で変化が起きたときにも自社のやるべきことや提供すべき価値を見失うことが少なくなるでしょう。従業員がブランドを軸に、自社の価値を再認識する機会にもなります。

アウターブランディングは、自社のブランド価値を社外の生活者に認知してもらうためのコミュニケーションです。商品やサービス、もしくは企業そのものの価値に共感してもらい、生活者にファンになってもらうための活動のことを指します。

サービスブランディング/企業ブランディング

サービスブランディングと企業ブランディングは、商品やサービスなどのプロダクトに対して行うブランディングと、企業の組織価値を高めるために行われるブランディングです。

サービスブランディングは、商品のファンを増やすことでユーザーを増やす、売り上げを増やすということを目的に行います。一方で企業ブランディングは、自社のファンを作るために行います。そのため、ステークホルダーや就職希望者からの共感を得ることが目的です。

パーソナルブランディング

経営者やインフルエンサー、専門家などが「〇〇といえばこの人」と想起されるように、自身の強みや専門性、価値観を明確に打ち出すことを、「パーソナルブランディング」といいます。

SNSやメディア発信、講演活動、執筆活動などを通じて、ファンや支持層との関係性を築いていきます。

企業がブランディングを行う5つの目的・メリット

企業はなぜブランディングを行うのでしょうか。こちらからは、企業がブランディングを実施する5つの目的とそのメリットを紹介します。

目的1.顧客ロイヤルティの向上

まずは、長期的に商品やサービスを利用してくれるファンの育成につながる「顧客ロイヤルティの向上」です。ブランディングによって、ブランド価値を認知する生活者との関係を強化・継続することが可能です。

商品やサービスを一度だけ購入するのではなく、継続的にリピートして商品を購入する生活者が増えるとLTV(ライフタイムバリュー)も上がるため、長期的な売り上げにも貢献できるでしょう。

目的2.自社商品・サービスの差別化

ブランディングによって「自社商品・サービスの差別化」を進めることができます。機能面での商品価値は、一時的には他社との差別化要素になりますが、中長期的に見ると他社と競合して、コモディティ化してしまいがちです。

生活者との間に信頼や信用が築かれれば、中長期的視点で見ても他社と競合する可能性が低くなります。類似した商品やサービスが登場したとしても、ブランディングによって作られたイメージにより、ほかと比較されたときに選ばれやすい状況を作れるためです

目的3.コラボレーション機会の創出

「コラボレーション機会の創出」にも、ブランディングは役立ちます。ブランドを軸に他社や他業界とのコラボレーション機会を創出し、効果的な施策を行うことにつながるでしょう。

ブランドがない状態で他社や他業種とのコラボレーションを行うと、自社や自社商品・サービスの持つストーリーとは逸脱した施策を行ってしまう可能性も。このような施策を繰り返すと、生活者にブランドを認知してもらう・ファンになってもらうといった効果を見込むことができません。他社や他業種とのコラボを検討している広報PR担当者は、まずは自社ならではのブランディングが世間に浸透しているかをあらためて考えてみるようにしましょう。

目的4.採用力の強化

近年、優秀な人材の確保が企業競争力に直結する中で、「採用ブランディング」の重要性が高まっています。企業としてのビジョンや価値観を明確に伝えることで、「共感できる会社で働きたい」と思う求職者を惹きつけることができます。

採用ブランディングでは、単に「働きやすさ」や「福利厚生」だけでなく、「なぜこの企業が存在するのか」「どんな社会的意義を果たしているのか」といった本質的な価値を伝えることが鍵となります。これにより、自社にマッチした人材との接点が生まれ、ミスマッチの防止や定着率の向上にもつながります。

目的5.価格競争からの脱却

商品の機能や価格だけでは差別化が難しい現代において、ブランドが持つ独自の世界観やストーリーは、大きな価値となります。ブランディングによって「安いから買う」ではなく、「このブランドだから選ぶ」という動機づけができれば、価格競争に巻き込まれずに済みます。

たとえば、同じようなスペックの商品であっても、「サステナブルな取り組みをしているブランド」「こだわりの職人技が込められている商品」など、付加価値を感じてもらえるブランドは、多少価格が高くても選ばれる傾向にあります。これは中長期的に収益性の高いビジネスを実現するうえで、極めて重要な視点だといえるでしょう。

ブランディング戦略の立案方法・流れ

ブランディングは、ブランドを言語化して生活者との継続的なコミュニケーション施策を検討・実施することの繰り返しです。ブランディング戦略を描くために初期に必要な5つのステップを解説します。

ステップ

STEP1.ブランドのターゲットやペルソナを設定する

まずは、ブランドを誰に届けるのかを決めましょう。ターゲットやペルソナを細かく設定するのも一計です。SNSの影響が大きくなっている今、ブランドに触れた個人が情報を拡散してくれることも少なくありません。ファンが次のファンを呼ぶ好循環を生むためにも、届けるターゲットやペルソナを具体的にイメージすることが重要です。

STEP2.自社の強みを分析する

自社の強みを分析します。他社との差別化ポイントにもっともなりやすいのは自社の強みの部分。強みをより磨いていくことで、他社とは異なるブランドの価値を提供することができるようになります。

3C分析やSWOT分析のようなフレームワークを活用したり、従業員やステークホルダーへのインタビューを行ったりして、なるべく多くの視点から豊富な意見を集めて言語化することが重要です。マーケティング的な機能価値はもちろん、機能だけでなく情緒的な価値にも目を向けることがポイントです。

STEP3.ブランド・アイデンティティを決める

ブランドを届ける相手を決め、自社の強みが言語化されたら、ブランド・アイデンティティを決定します。そのブランドが生活者からどのように見られたいのかを図にまとめる「ブランド・アイデンティティ・プリズム」のフレームワークを活用するのもよいでしょう。

ブランド戦略上のコミュニケーション施策の中では、ロゴやタグライン、デザイン、色合いなど、細部まで統一されていることが少なくありません。統一されたブランドコミュニケーションの拠り所となるのがブランド・アイデンティティですので、こちらを最初に決めておきましょう。

STEP4.ブランドと生活者とのタッチポイントを検討する

ブランド・アイデンティティが決定したら、生活者とのタッチポイントを検討していきます。タッチポイントとは、自社の商品・サービスと顧客をつなぐ「顧客接点」のこと。自社のブランドが、生活者とどのように関わっていくのがよいのかを考えましょう。例えば、雑誌をタッチポイントとして考えるのであれば、媒体のカテゴリーや読者層の年代などの情報から、ブランド・アイデンティティに則った媒体を検討します。

STEP5.KPIの設定と評価軸の明確化

ブランディングの成果を可視化するためのKPI(重要業績評価指標)を設定することも重要です。定量的な指標と定性的な評価軸を組み合わせることで、施策の進捗や改善点を把握できます。

定量指標の例としては、「ブランド認知率」「SNSのエンゲージメント率」「NPS(顧客推奨度)」などがあり、施策の影響を数値で追跡できます。一方、定性指標としては「生活者の声」「ブランドへの共感度」「自社らしさの伝わり方」など、深掘り調査によって見える価値も重要です。

KPIは戦略立案の初期段階で明確に設定し、施策実行後は定期的に評価・見直しを行うことで、ブランディング活動の質と精度を高めていくことができます。

ブランディングの手法・施策例

ブランディングを進めるためには、そのブランドを表現するさまざまな手法や施策を行います。活用する手法や施策は、ブランドによって選択してください。

1.ブランド動画

ブランドの世界観を動画で表現する手法です。映像や音楽などによって、ブランドがどのように生活を変化させるかイメージしてもらうためのものです。文章や写真などの静止した表現と比べ、ストーリーをわかりやすく伝えることができるのが動画と考えてもよいでしょう。ブランドの持っているストーリーに生活者が共感して、ファンを作ることにつながります。

2.ブランドブック

従業員向けのインナーブランディングを行うときに、絶対に作っておきたいのがブランドブックです。ブランドブックは、ブランドに関する情報がすべて詰まっている手引きのようなもの。例えば、ブランドの方向性、理念、ビジョンなどの思想に関するもの、ブランドロゴ、ブランドカラー、フォントなどのデザインガイドラインも含まれています。

3.オウンドメディアやSNS

オウンドメディアを活用することで、ブランドにまつわるコンテンツを継続的に発信することができます。日々情報が更新されると、ファンは何度もメディアを閲覧してくれるため、ファンの定着にも効果が期待できるでしょう。SNSとの相性もよいため、シェアなどによる拡散が狙えるところも利点です。

4.インフルエンサー・アンバサダーの活用

SNSや動画プラットフォームの普及により、インフルエンサーやブランドアンバサダーを活用したブランディング施策が一般化しています。第三者による発信は、企業の発信よりも信頼性が高く感じられることが多く、ブランドへの共感や親近感を生み出します。

インフルエンサー選定の際は、単にフォロワー数の多さではなく、ブランドの世界観や価値観にマッチするかを重視することがポイントです。中長期でアンバサダーとして活動してもらうことで、より深いブランド理解と継続的な共感を生むことができます。

5.店舗や空間デザインでの体験設計

ブランドの世界観を「体験」として伝える手法として、店舗やイベント空間のブランディングも注目されています。視覚や聴覚、香りやサービスなど、五感を使った空間体験は、ブランドへの記憶に強く残りやすく、ファンの獲得やエンゲージメント向上に寄与します。

実店舗やポップアップイベントでは、ブランドの歴史や背景、メッセージを直感的に伝えることができるため、特にブランド初期の世界観構築や、共感の強化に有効です。

6.ノベルティ・パッケージデザイン

ブランドの印象を左右するのが、ノベルティやパッケージのデザインです。商品を手に取った瞬間や、ギフトとして誰かに贈る場面で「このブランド、素敵だな」と感じてもらえるような工夫が求められます。

パッケージには「美しさ」だけでなく、「ブランドらしさ」や「ストーリー性」を込めることで、ブランド体験をより深いものにできます。ノベルティも、ただ配布するのではなく、ユーザーのライフスタイルや価値観に寄り添った設計を行うことで、ブランドとの結びつきを強めるツールとなります。自社のブランドを体現できるようなものを検討してみましょう。

ブランディングを成功させる6つのポイント

ブランディングを成功させるためには、どのようなことに留意しながらブランディング施策を実施すればよいのでしょうか。6つのポイントをご紹介します。

ポイント

ポイント1.一貫性を持った情報発信を行う

ブランディングにおいては、一貫性を持った情報発信を徹底しましょう。常に同じメッセージを発信し続けることが成功の大きなポイントです。

メッセージに一貫性がないと、生活者がブランドを認知する軸がブレてしまう可能性が高まります。例えば、Web広告では「ビジネスパーソンを助ける」というメッセージを発信した企業が、テレビCMでは「子育て中のお母さんをサポートする」というメッセージを発信していたら、生活者がどの媒体を見るかによって、ブランドイメージが変化してしまうでしょう。ブランド価値を正しく認知してもらうために、あらゆる発信においてメッセージに一貫性を持たせることが必要です。

ポイント2.自社の強みを生かした施策を行う

ブランディング施策を行う際は、自社の強みを生かした施策を選択するようにしましょう。実際にブランディング活動をする場合、さまざまな施策を検討すると思いますが、自社の強みを生かせる施策のほうが成功しやすいのです。ブランディングにおいては、自社の強みや長所をより強化する施策を行い、多くの生活者に強みや長所を認知してもらう必要があります。

弱みを補う施策を行ってはいけないわけではありませんが、強みや長所を伸ばす施策のほうがより成功しやすく、ブランド認知度を上げることにつながりやすいのです。

ポイント3.継続性のある施策を行う

ブランディング施策は、継続性のあるものとすることが大切です。ブランディングでは一朝一夕で成果が出るものは少なく、継続的に長期間実施することで、成果が測定しやすくなる傾向があります。短期的な成果を追い求めるだけではなく、企業と生活者がともにブランドを醸成していく心づもりで育てていくようにしましょう。

ポイント4.定期的に効果検証を行う

ブランディング施策は、定期的に効果検証を行いましょう。ブランディングはすぐに効果が出づらい分、例えば1ヵ月、3ヵ月、半年スパンなどで効果検証を行うことで、施策への生活者の反応やパブリシティなどを把握することができます

効果検証を行うため、実施前にどのような効果を期待するのかの仮説についても細かく設定しておきましょう。

ポイント5.ブランド戦略を改善し続ける

ブランド戦略は、定期的に改善を行います。ブランドも時代の流れや外部環境の変化によって、変容していくことが求められます。定期的な効果検証に加えて、これまでの施策では生活者に対してアプローチができなくなってきている、と実感するタイミングがあったら、戦略そのものを考え直すことも検討しましょう。

ポイント6.社内浸透(従業員理解)の徹底をする

ブランドは顧客だけでなく、社内にも浸透してこそ真の価値を発揮します。従業員が自社ブランドの理念や価値観を理解し、行動に移すことで、ブランドの一貫性と信頼性が保たれます。

インナーブランディングの一環として、ブランドに関する研修や社内報、ワークショップなどを活用し、従業員一人ひとりがブランドの「担い手」であるという意識を持ってもらうことが大切です。企業文化としてブランドが根付くことで、顧客対応、商品開発、広報活動など、あらゆる接点で「らしさ」が体現され、ブランドの厚みが生まれます。

ブランディングの成功事例

昨今、さまざまな企業がブランディングを実施しています。その中で、ブランディングを実施することで成果を上げている5つのブランドについて事例をご紹介します。

事例1.スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社は、広告宣伝を一切行わず、店舗体験による価値でブランディングを成功させています。居心地のよい店内やホスピタリティの高いスタッフの対応など、店内の空間設計によってブランド価値を提供しています。

同社が根強いファンを獲得している背景に、企業サイト・SNSを通じた商品に関する発信があります。新商品、期間限定商品の情報をいち早く発信したり、おすすめカスタマイズを紹介したりと、思わず店舗に行って利用したくなる仕掛けがちりばめられています。店舗に実際に足を運んでもらうためのコミュニケーションを重視しているところが、根強いファンを増やし支持される理由でしょう。

事例2.カゴメ株式会社

カゴメ株式会社は、自社の選考にエントリーシートを提出した就活生全員に「ご応募いただきありがとうございました」との手紙を添えて、トマトジュースなど、自社の商品を箱入りで贈っています。内定の有無を問わずに贈る徹底ぶりと就活生をいたわる手紙は、Twitterでも話題になりました。企業理念の「感謝」を一貫して体現した採用ブランディングといえるでしょう。

採用サイトには「多様な個性の方をバランス良く採用したいと思っています。『自分の持ち味』を大事にして下さい」という言葉もあり、選考応募者をリスペクトしつつ多様な人材を求めている点をわかりやすく伝えています。

事例3.株式会社蓬莱

「551の豚まんがあるとき」のCMでおなじみで、大阪府民のソウルフードとして有名な豚まんを製造・販売する株式会社蓬莱。豚まんの味を均質にするため、工場を地元に限定しており、運搬に時間がかかるほかの地域への出店はあえてしていません。豚まんや焼売の味を引き立てる「カラシ」「タレ」も毎日自社生産したものを使うこだわりぶり。

同社のWebサイトでは、「一日の平均販売個数は約17万個!当日生産当日販売!」とこだわりを発信しており、インフォグラフィックなどで同社にちなんだエピソードを丁寧に解説しています。近畿圏において地元密着型のブランディングに成功している事例といえるでしょう。

事例4.今治タオル

今治タオルは、海外からの輸入が増加したことで生産量が激減した愛知県今治市のタオルをブランドとして再構築し、産業振興につなげることを目指したブランディングプロジェクトです。経済産業省の「JAPANブランド育成支援事業」に採択されており、プロジェクトの立ち上げから4年間の取り組みがレポートとして残っています。これからブランディングを検討している担当者はぜひ目を通しておきましょう。

注目したいのが「タオルソムリエ資格制度」「タオルマイスター制度」です。ブランドが自発的に、知識や技術の継承ができる人材を育成する資格制度を作ることで、全国的にインフルエンサーを作り出すことに成功しています。

事例5.株式会社星野リゾート

「星のや」「界」「リゾナーレ」などの宿泊施設を運営する株式会社星野リゾート。日本の宿泊業は、業界全体として所有と運営が一体化しているのが当たり前ですが、同社は世界で通用するホテル運営会社になることを目指しています。所有と運営を分離し、運営に特化することによって、競争力を維持しているのが特徴です。

施設ごとのコンセプトを明確に打ち出すほか、宿泊だけでなく「体験型」の観光を提案することで、観光業界の中においても独自の価値を提供しています。

ブランディングは強みの整理と継続的な発信がポイント

こちらの記事では、ブランディングについて解説してきました。メディアとの折衝やオウンドメディアの運営などの広報PR業務とブランディングは、無関係ではありません。広報PR業務が「発信すること」に重点をおいているのに対して、ブランディングは自社の強みや現状を「内省すること」に注力しつつ、長期的な視点で社会に打ち出すブランドイメージを作り上げていく活動です。ひとつの施策で効果が出るものではありませんが、長期的に見れば広報PR担当者もステークホルダーに対するブランディングを担います。さまざまな方法を駆使しながら、ぜひ粘り強く自社のブランドを育てていってくださいね。

<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

ブランディングに関するQ&A

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この記事のライター

長瀬 みなみ

長瀬 みなみ

ITベンチャーにて広報PRを担当したのち、ヘルスケアベンチャーにて広報PR部門の立ち上げ、ブランド責任者として取締役就任。YouTubeチャンネル運営など、さまざまなメディアを活用した分ランディングや広報活動を行う。独立後は、広報PR・ブランディング・コミュニティ運営など幅広く活動している。これまでの経験から広報・ブランディングに関する戦略立案からプレスリリース執筆まで幅広くカバーしたコンテンツを作っています。

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