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顧客ロイヤリティとは?判断する基準・調査方法・向上施策など基礎知識を解説

企業やサービスに対する忠誠心を示す「顧客ロイヤリティ」。企業が効率的かつ長期的な収益アップを考えるうえで重要な指標です。

顧客ロイヤリティを判断する基準や調査方法をご紹介します。併せて、顧客ロイヤリティを向上させるための5つの施策も解説。基礎知識を身に付けたい方はぜひチェックしてみてください。

顧客ロイヤリティとは?

顧客ロイヤリティとは、顧客が特定の企業やサービスに対し愛着や親しみを持つことを指します。英語の「Loyalty」に由来しており、顧客の企業への忠誠心が顧客ロイヤリティという言葉で表現されることもあります。

顧客ロイヤリティの高い顧客は「ロイヤルカスタマー」と呼ばれ、企業への貢献度が高く、サービスをスケールさせるのに重要な存在です。サービスを継続して長期的に利用する傾向があるため、企業側は安定した収益が見込めます。

顧客満足度という言葉がありますが、顧客満足度と顧客ロイヤリティは必ずしも比例するとは限りません。サービスに対する満足度が高くても、購入までに手間がかかったり、購入後のフォロー体制が適切でなかったりすると、顧客は継続して利用しなくなってしまうからです。そのため多くの企業では、顧客ロイヤリティを重要な指標としています。

顧客ロイヤリティが重視されるようになった背景

顧客ロイヤリティが重視されるようになったのには、市場の成熟により新規顧客の獲得が難しくなったことが関係しています。サービスの特徴で差別化を図るのには限界があり、一時的にシェアが拡大しても長期的な利用にはつながらないことがわかってきたからです。

フレデリック・F・ライクヘルドが提唱する「1:5」の法則という概念も、顧客ロイヤリティが重視されるようになったことに関係しています。この法則は、新規顧客への販売コストに比べ、既存顧客への販売コストはその5分の1だということを明らかにしました。

顧客の維持率を5%上げられれば、収益を25%改善できるという「5:25の法則」もあります。新規顧客を獲得しながら既存顧客のロイヤリティを高める施策に注力すると、効率的に売上アップを狙えるのです。

顧客ロイヤリティと顧客満足度の違いとは?

顧客ロイヤリティが、同じ商品・サービスを継続的に利用し続ける企業への信頼・愛着・忠誠心を示すのに対し、顧客満足度は商品・サービスへの満足度を指します。顧客ロイヤリティが高くても顧客満足度が比例して高くなるわけではないことがわかっています。

顧客満足度と顧客ロイヤリティの関係には、4つのパターンがあります。1つ目は、顧客満足度は高いけれど顧客ロイヤリティは低いケース。2つ目は、顧客満足度と顧客ロイヤリティのどちらも高いケースです。

3つ目は、顧客満足度は低いけれど顧客ロイヤリティは高いケース。4つ目は、顧客満足度と顧客ロイヤリティのどちらも低いケースです。

このうち早急に対応すべきなのは、顧客満足度が高いのに顧客ロイヤリティは低い顧客です。企業はサービスへの顧客満足度の高さではなく、顧客ロイヤリティの高さ、つまり忠誠心があるかどうかをサービスへの評価指標として意識する必要があります。

顧客ロイヤリティを向上させる3つのメリット

顧客ロイヤリティは、企業側にさまざまなメリットをもたらします。顧客満足度とは違い、長期的な利益を期待できるのが特徴です。顧客ロイヤリティを向上させる3つのメリットを解説します。

向上するイメージ

メリット1.リピート率が向上する

顧客ロイヤリティを向上させる1つ目のメリットは、リピート率の向上です。

商品への強い愛着や企業・ブランドへの信頼を持っている顧客は、継続利用の割合が高い傾向にあります。例えば、アメリカのスーパーマーケットチェーンである「ウォルマート」は、Clarus Commerceが実施した「消費者のロイヤルティに関する調査2021」(※1)を導入しました。調査結果のなかで、ロイヤリティの高い顧客は利用頻度やリピート率が高いと明かしています。

リピート率は客単価の上昇にもつながる非常に重要な指標です。顧客ロイヤリティ向上を目指す際、何を重要視すればよいのかわからない場合はまず既存顧客のリピート率のデータを分析してみるとよいでしょう。

参考 (※1) :ウォルマートも導入した「プレミアムロイヤルティプログラム」とは? 顧客リピート化を生み出すインサイトとその効果を解説

メリット2.顧客単価が上昇する

顧客ロイヤリティを向上させる2つ目のメリットは、顧客単価の上昇です。

顧客ロイヤリティの高い顧客は、企業やブランドそのものを信頼しているため、一度購入した商品の最新モデルを利用したり、同時に複数の商品を購入したりする傾向が見られます。

例えば、「Emotion Tech」が公開した調査「アパレルECサイトの顧客ロイヤルティ(NPS)調査レポート」(※2)では、顧客ロイヤリティを測る指標のひとつである「NPS(ネットプロモータースコア)」の推奨度が1段階上がると、年間の購入金額が約4000円向上することがわかっています。

顧客ロイヤリティの高い顧客は、信頼しているブランドから展開されるほかのサービスの導入ハードルが低く、新商品の情報も積極的にキャッチ。さまざまな商品を試す頻度が増えるため、顧客単価の上昇につながるのです。

参考 (※2) :アパレルECサイトの顧客ロイヤルティ(NPS)調査レポート

メリット3.解約率が低下する

顧客ロイヤリティを向上させる3つ目のメリットは、解約率の低下です。

顧客ロイヤリティの向上は、解約率の低下につながることがわかっています。例えば、カスタマーサクセス管理ツールを提供する「HiCustomer」が実施したカスタマーサクセスに関する調査「カスタマーサクセス白書2021」(※3)では、顧客中心の文化形成ができている企業ほどサービス解約率が低いという結果が出ています。

ロイヤルカスタマーは、ブランドや企業のファンになっていることが多いため、他社でお得なサービスを展開していても競合への乗り換えがあまり発生しません。解約率の低下は、特にサブスクリプションサービスで影響が大きく、安定した収益につながります。

参考 (※3) :HiCustomerが「カスタマーサクセス白書2021」全99ページをSpeaker Deckにて無償公開

顧客ロイヤリティを判断する5つの指標

顧客ロイヤリティを測るには、NPSや顧客満足度、継続利用意向などのKPIを設定する必要があります。1つのKPIでは顧客ロイヤリティは判断できないため、KPIは複数設定するのが一般的。5つの指標とそれぞれの調査方法を解説します。

1.NPS

顧客ロイヤリティを判断する1つ目の指標は、NPS(ネットプロモータースコア)です。

NPSは、顧客ロイヤリティを数値で示す指標のことを指します。通常、計測することが難しいブランドや商品への愛着を数値化でき、顧客満足度に並ぶ重要な指標とされています。

NPSを測るには「友人や家族、恋人に商品やサービスを推奨する可能性」についてアンケートを実施。0〜10の11段階で評価してもらい、0〜6を批判者、7・8を中立者、9・10を推奨者としてスコアを計算します。

2.顧客満足度

顧客ロイヤリティを判断する2つ目の指標は、顧客満足度です。

商品やサービスに対してどの程度、満足しているのかを計測します。継続的な評価ではなく、1回の取引やサービスに対しての満足度を知ることのできる指標です。顧客満足度は、商品の品質に問題がないかや改善点を見つけるのに重要。顧客ロイヤリティが低い原因が商品に関係している可能性が高い場合は、顧客満足度を調査しましょう。

顧客満足度の調査は、アンケートやインタビューなどの手法を使って行います。簡単かつ素早く調査したい場合はアンケート、商品・ブランドへの評価をより深掘りしたい場合はインタビューが適しています。

3.継続利用意向

顧客ロイヤリティを判断する3つ目の指標は、継続利用意向です。

商品やサービスの継続利用を考えているかどうかを調査します。顧客ロイヤリティは、商品やブランドへの忠誠心を示すものであり、継続利用率が高ければ顧客ロイヤリティが高いということが読み取れます。

継続利用意向の調査は、NRS(ネットリピータースコア)を利用します。NRSは顧客に対し、将来も同じ商品・サービスを利用したいかを0〜10の11段階で評価してもらいます。顧客自身の継続利用意向を確かめるのに適した調査方法です。

NRSは顧客満足度と密接な関係があり、両方とも高い数値を出しているのがベストです。なかにはどちらかのみ高い場合があり、その際はそれぞれ別のアプローチにより顧客ロイヤリティを高めなければなりません。

顧客満足度が高く、継続利用率が低いユーザーに対しては「行動ロイヤリティ」を、顧客満足度が低く、継続利用率が高いユーザーに対しては「心理ロイヤリティ」を深掘りし、適した施策を実行しましょう。

4.LTV

顧客ロイヤリティを判断する4つ目の指標は、LTV(ライフタイムバリュー)です。

LTVとは、顧客生涯の価値のこと。成熟した市場において重要な指標のひとつであり、特に継続が前提となっているSaaSモデルでは、利益創出のためLTVの最大化が必須です。

顧客ロイヤリティの高さを示すリピート率や購買頻度を基にLTVを算出するため、顧客ロイヤリティの判断指標として利用されています

LTVでは、1人の顧客が自社サービスと関わる間にもたらす利益の総額を計算します。基本的な計算式は「LTV=平均購買単価×購買頻度×購買期間」です。総額が高いほど顧客ロイヤリティが高く、多くの利益を生んでいると考えられます。

5.DWB

顧客ロイヤリティを判断する5つ目の指標は、DWBです。「Definitely Would Buy」の頭文字を取ったもので、購入意向を数値化します。

顧客に対して以下の5段階に分けた質問をし、「絶対に買いたい」を選んだ人の割合で顧客ロイヤリティを判断します。

  • 絶対に買いたい
  • 買いたい
  • どちらでもない
  • あまり買いたくない
  • まったく買いたくない

特に、サービス開発時に利用されることの多い指標です。

顧客ロイヤリティの調査方法

顧客ロイヤリティの調査方法は主に2つ。1つ目はNPSを利用した調査方法。0〜10の11段階で身近な人への推奨度合いを回答してもらいます。

2つ目はアンケート調査。商品やサービスへの満足度や手続きのしやすさや利用後のフォロー、お問い合わせ時の応対の評価など複数の項目に対して回答をもらいます。

顧客ロイヤリティ向上施策の5つのステップ

顧客ロイヤリティを高めるには、顧客一人ひとりのステージに対して適した施策を実行しなければ意味がありません。事前調査で現状を把握し、長所を活かしながら短所を改善する必要があるのです。顧客ロイヤリティ向上施策の5つのステップを解説します。

顧客ロイヤリティ向上施策のイメージ

STEP1.現状の顧客ロイヤリティを調査する

企業が顧客ロイヤリティ向上を行う際の1つ目のステップは、現状の顧客ロイヤリティの調査です。

顧客ロイヤリティの向上を図るには、現状、どの点を改善する必要があるのかを知らなくてはなりません。アンケート調査やNPS測定などを通して自社の顧客ロイヤリティの実態を把握しましょう。

調査では改善ポイントが見つかると同時に強みも知ることができます。アンケートなどで数値が高かった項目は維持・向上できるような施策を考えましょう。

STEP2.顧客とサービスのタッチポイントを洗い出す

企業が顧客ロイヤリティ向上を行う際の2つ目のステップは、顧客とサービスのタッチポイントの洗い出しです。

タッチポイントは、マーケティング以外に営業やカスタマーサポートなどさまざま。顧客がサービスの情報収集を行ったり、インターネットに書き込まれた感想を目にしたりと、接点はたくさんあります。

この接点を網羅するにはカスタマージャーニーマップを使うのがおすすめ。企業目線だと見落としがちなタッチポイントも多いので、顧客目線で洗い出しを行いましょう。

STEP3.施策ごとのCXを設計する

企業が顧客ロイヤリティ向上を行う際の3つ目のステップは、施策ごとのCX(顧客体験)の設計です。

顧客ロイヤリティを高めるうえで、CXを向上するのは非常に重要なポイント。顧客ロイヤリティは細かく分けると「心理ロイヤリティ」と「行動ロイヤリティ」の2種類があり、CXでは心理ロイヤリティを高めることに重きが置かれています。

サービスに関する情報に触れる以外に、商品の購入から購入後のアフターケアまで一連の流れがCXを左右します。顧客に高品質な体験を提供するため、顧客の視点でCXを設計しましょう。

STEP4.施策を実行する

企業が顧客ロイヤリティ向上を行う際の4つ目のステップは、施策の実行です。

現状を把握し、顧客満足度や接点ごとの施策が決まったら実行に移します。顧客との関係は1対1が基本であるためタイミングも重要です。タッチポイントが多様化している場合は、マーケティングオートメーションCRM(顧客関係管理)などのツールを使用するのがおすすめです。

STEP5.施策後のデータ収集・分析を行う

企業が顧客ロイヤリティ向上を行う際の5つ目のステップは、施策後のデータ収集・分析を行うことです。

施策を実行した後は必ずデータを収集し、施策前の調査との顧客ロイヤリティの変化を確認します。数値の良い悪いに関係なくデータを分析することで、改善を加えるべきポイントがより明らかになります

顧客がサービスに求める体験価値は時代と共に少しずつ変化していくものです。以前はうまくいった施策でも、次に実行した際には成果を残すことができない場合も。成功体験や勘に頼らず、必ずデータに基づいた施策を実行するよう注意しましょう。

顧客ロイヤリティを高めるための具体的な5つの施策

安定した収益を確保するには、顧客ロイヤリティを高めることが重要です。リピート率や客単価の向上、ロイヤルカスタマーの口コミによる新規顧客の獲得を行うには、どのような施策が有効なのでしょうか。顧客ロイヤリティを高めるための具体的な5つの施策をご紹介します。

施策1.カスタマーサポートの質を高める

顧客ロイヤリティを高めるための1つ目の施策は、カスタマーサポートの質を高めることです。

顧客体験の向上は顧客ロイヤリティを高めるうえで重要なポイント。店舗・メール・電話・チャットなど、課題解決を望む顧客に対しスピーディーかつ適切なコンタクトチャネルを用意することで、顧客は企業への信頼を高めていきます

現在ではお問い合わせチャネルや顧客の課題も多様化してきています。顧客のデータを一元管理し、担当者がすぐ呼び出し対応できるシステムを整えることで質の高いカスタマーサポートを実現できます。

カスタマーサポートイメージ

施策2.NPSで低スコアが出た顧客へフォローアップを行う

顧客ロイヤリティを高めるための2つ目の施策は、NPSで低スコアが出た顧客へフォローアップを行うことです。

NPSを活用すると、顧客ロイヤリティの数値が低い顧客に対して効率的・効果的なアプローチをしやすくなります。例えば、NPSで0〜6の数値が出た「批判者」に対し素早いフォローアップを行うなどがあげられます。

例えば、「NTTコム オンライン」が公開した「NPSベンチマーク調査」(※4)では、アフターフォローがなかった契約者に対し、手厚いアフターフォローを行った契約者のほうがNPSが高い傾向にあったことがわかっています。単純にNPSの数値を高めたい場合は、フォローアップをしっかりと行うことが有効です。

参考 (※4) :NTTコム オンライン、生命保険を対象にしたNPS®ベンチマーク調査2020の結果を発表

施策3.顧客情報のデータベース化

顧客ロイヤリティを高めるための3つ目の施策は、顧客情報のデータベース化です。

成熟した市場で顧客ロイヤリティを向上させるには、質の高いサービスが鍵となります。詳細な顧客データを一元管理し、購入履歴や購入から見える好みの傾向などをまとめ、誰が対応しても素早く情報を呼び出せる態勢を整えておきます。これにより一定の品質を保ったサービスが提供可能です。

施策4.ステップメールを配信する

顧客ロイヤリティを高めるための4つ目の施策は、ステップメールの配信です。

ステップメールとは、メールマーケティングの手法のひとつのこと。ステップごとに用意しておいたメールを顧客に適したタイミングで配信し、次のアクションを促します。

サービス利用の初期や、利用から1ヵ月後など、決められたスケジュールで配信を行うため、顧客がサービスと接触する回数を増やせるのがメリット。何度も目にすることでサービスの導入を検討する心理が生まれます。

施策5.優良顧客に対しロイヤリティプログラムを用意する

顧客ロイヤリティを高めるための5つ目の施策は、優良顧客に対しロイヤリティプログラムを用意することです。

顧客管理システムで顧客ごとの利用状況を把握し、利用頻度・利用金額の高い顧客をリスト化。ポイントやクーポンを発行するなど「ロイヤリティプログラム」を用意することで、優良顧客との信頼関係を強化できます。

利用頻度や利用金額による特典のステップアップの仕組みもあると、よりサービスへの愛着を高められます。競合他社への乗り換えを防止しながら顧客ロイヤリティの向上を図れます。

顧客ロイヤリティの向上はブランドイメージに直結し、企業の成長を促す

継続的な収益アップや企業の成長には、顧客ロイヤリティの向上が必須です。アンケートやインタビューなどでまずは現状を把握。明らかになった改善点に対して適切なアプローチを行うことで、顧客ロイヤリティの向上が期待できます。ご紹介した5つの施策や顧客ロイヤリティを判断する指標を参考に、顧客に愛される企業・サービスを目指してみてください。

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この記事のライター

佐藤 杏樹

佐藤 杏樹

フリーのライター・編集者。PR TIMESに新卒入社しメディア事業部にてコンテンツ編集者・SNS運用・イベントなど担当。現在も執筆業に携わりながら広報・PRの仕事もしています。広報実務を通して得た知見や実践しやすい広報ノウハウ、最初に知っておきたい広報の基礎など、みなさまに分かりやすくお伝えします。

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