広報PR活動のひとつに、実際にメディア関係者を現地に誘致して魅力を知ってもらうための手法として、プレスツアーがあります。
しかし、昨今のコロナ禍において、所属する企業によっては県を跨ぐ異動や出張の自粛を求められたり、ひとつの場所に複数人集まることへの制限があったりするため、プレスツアーの実施は難しいと悩んでいる広報担当者も少なくないのではないでしょうか。その解決策のひとつに、オンラインでのプレスツアーがあります。
この記事では、コロナ禍においても実施しやすいオンラインプレスツアーのやり方や、成功のためのポイントについてご紹介します。
プレスツアーとは?
プレスツアーとは、商品・施設・地域などをPRするため、現地にメディア関係者を招き、視察・体験してもらうことで理解の促進を図る、旅行型の取材誘致活動のことです。場所によっては、移動や食事、宿泊を伴うこともあり、その場合の費用はプレスツアーを企画する主催者側が多く負担する、または招待で行われている傾向にあります。
プレスツアーの目的は、最終的にはひとつでも多くのメディアに取り上げてもらうことなのですが、まずはメディア関係者に魅力を知ってもらうために行われることも多いといえます。
プレスツアーは、通常のキャラバンなどを通したメディアアプローチと比較すると、記者やディレクターと共に行動する時間が長く、コミュニケーションも図りやすいため、お互いの理解を深めることができ、リレーションの構築にも役立ちします。また、現地ならではのエピソードや、関わる従業員らの想いなどを直接伝えることができるので、より深い理解が得られる機会ともなります。
コロナ禍でのプレスツアーの変化
昨今のコロナ禍において、県を跨ぐ移動・出張や、ひとつの場所に複数人集まることを制限されたりと、プレスツアーの開催が困難な状況が続いています。そこで、取材対応やPRイベント同様に、プレスツアーもオンラインで実施していくという選択肢の拡充が求められています。
今後は、オンライン・オフラインのどちらでも実施できるよう、ノウハウを蓄積していくようにしましょう。
オンラインプレスツアーの3つの魅力・メリット
メディア関係者に魅力を知ってもらい、より多く取り上げてもらうためのプレスツアーですが、オンラインで行った場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。3つのメリットをご紹介します。
1.誘致がしやすい
オンラインプレスツアーの場合、現地までの移動や宿泊の必要がないため、メディア関係者の拘束時間が短く、スケジュールの調整がしやすいというメリットがあります。また、オフラインと異なり、一度に参加する人数の制限がなかったり、かかるコストも少なかったりすると、高頻度での開催が可能になるため、メディア関係者を誘致しやすいというメリットもあります。
2 .訴求したい内容をダイレクトに伝えられる
メディアに現地まで足を運んでもらう従来のプレスツアーでは、見てもらう、あるいは体験してもらうなかで、興味を持ってもらえるポイントが予想しづらく、訴求を狙っていたポイント以外にフォーカスされてしまうことがあります。
しかし、オンラインプレスツアーの場合は、主催者側がスケジュールやコンテンツを割り振っていけるので、メディアに見てもらう、体験してもらうポイントをコントロールでき、訴求したい内容をダイレクトに伝えられるというメリットがあります。
3.メディア向けとしてだけでなく、ステークホルダーにも展開できる
オンラインプレスツアーの場合、再生デバイスを持っていて配信URLへのアクセスが可能な環境であれば、メディア関係者のみならず、誰にでも見てもらえます。
オンラインプレスツアーのコンテンツを、一般のユーザーにも見てもらいやすいものに少し修正すれば、一般ユーザー向けのオンラインイベントやライブ配信コンテンツとしても活用できるというメリットがあります。これまでメディアを介して届けていた情報を、よりダイレクトに一般ユーザーに届けることが可能です。
コロナ禍でのオンラインプレスツアーのやり方
オンラインプレスツアーを実施するまでの、7つのステップをご紹介します。
STEP1.目的の整理
まずは、オンラインプレスツアーを実施する目的を整理するところから始めましょう。例えば、地方自治体の広報PRの場合、目的が「観光客を増やしたい」場合と「移住者を増やしたい」場合とでは、訴求内容や届けるターゲットが変わってきます。
メディアへの露出を通して何を伝えたいのかがぶれてしまうと、ターゲットメディアの選定やコンテンツづくりが誤ったものになりかねません。しっかりと目的を設定するようにしましょう。
STEP2.ターゲットメディアの選定
次に行うことは、ターゲットメディアの選定です。どのステークホルダーに情報を伝えたいのかによって、ターゲットメディアが変わってきます。また、テレビ・雑誌・Webなどの媒体カテゴリーごとに求められる情報も変わってくるため、できればカテゴリー別に開催するとよいでしょう。
STEP3.コンテンツの作成
ターゲットメディアの選定の次に行うことは、コンテンツの作成です。訴求したい内容によって、コンテンツは大きく変わります。
例えば、自社のモノづくりにかける想いを伝えるために、自社の工場へのオンラインプレスツアーを企画したとします。工場のバックヤードを見せていくのももちろんですが、広報担当者が案内していくよりも、生産に携わる現場従業員が案内をしていったほうが、モノづくりの現場の想いが伝わるかもしれません。このように、訴求したい内容にあわせて、見せていくものや出演者のキャスティング、当日のアジェンダを決めていくようにしましょう。
また、プレスリリースやメディアキャラバン同様、メディア関係者の参加意欲を高めるために、ニュースバリューがあるかどうかを意識しながらコンテンツづくりをしていくようにしましょう。
STEP4.スケジュールの調整
次に、いつオンラインプレスツアーを行うのか、スケジュールを決めていきます。スケジュールは、メディアへの露出を狙いたい時期を想定して決めるようにしましょう。
オンラインプレスツアーを実施して、すぐに媒体に取り上げられるわけではありません。追加取材の可能性や、メディア側の記事執筆期間も考慮し、オンラインプレスツアーと狙いたいメディアへの露出の時期が近すぎないよう工夫する必要があります。特に、季節やトレンドに絡めた内容の場合は、メディア露出の機会を逃さないよう注意しましょう。
STEP5.メディア誘致
開催時期が決まったら、次に行うのはメディア誘致です。従来のプレスツアー同様に、開催日時や概要をまとめた案内状があると、どのような取材ができるのかイメージしやすく、親切です。
STEP6.配信ツールの選定
従来のプレスツアーとの大きな違いは、オンラインでの配信が必要になるということです。さまざまな配信ツールがあるので、そのプレスツアーの企画に適したツールを選定するようにしましょう。
例えば、メディア関係者と適宜コミュニケーションをとりながら進行していくのであれば、オンラインミーティングなどで使用しているZoomやTeamsが適しています。また、メディアのみならず、一般ユーザーにも展開を考えているのであれば、視聴人数に制限がないYouTubeやInstagramのライブ配信機能を使うとよいでしょう。チャット機能も使えば視聴者からの質問に応えることもできます。
STEP7.リハーサル
最後に行うことは、リハーサルです。参加者を待たせてしまうことや、一時中断といったトラブルが発生しないよう、当日のスケジュールに沿って、ロールプレイング型でリハーサルを行うとよいでしょう。
オンライン配信ツールによっては、録画機能が備えられているものがあります。リハーサルの様子を録画して見直せば、改善にも役立つのでぜひ、活用してみてください。
オンラインでのプレスツアーを成功させる3つのポイント
プレスツアーを実施することで、メディア関係者に自社に関する理解を深めてもらうだけでなく、最終的にはメディアへの露出を狙いたいところ。
そのためには、トレンド・ニュース性を意識したコンテンツづくりや、露出イメージを逆算した企画づくりが重要となってきますが、オンラインで開催するプレスツアーならではの成功のポイントとはなんでしょうか。3つのポイントをご紹介します。
ポイント1.現地に行った感覚にさせる画づくり
1つ目のポイントは、「現地に行った感覚にさせる画づくり」です。オンラインでのプレスツアーは、直接目で見て触れてといった体験ができない分、あたかも現地に行って参加しているかのような演出が求められます。
例えば、現地の風景や施設の内側を見せる際には、ひとつのポイントではなく、複数のポイントや角度から見せたり、実際に歩きながら説明してみたりと、カメラワークを工夫するようにしましょう。
ポイント2.飽きさせない時間配分
2つ目のポイントは、「飽きさせない時間配分」です。従来のプレスツアーの場合、参加者は五感で体験することができますが、オンラインでのプレスツアーの場合は、フラットな画面越しに動画を見続けるため、飽きられてしまったり、集中が続かなかったりという問題があります。
そのため、あまりにも時間が長かったり、同じような内容が続いたりしないよう、時間配分に注意しましょう。また、リアルタイムアンケートを取ってみたり、質疑応答の時間を設けたりと、双方向のコミュニケーションの時間を設けると、参加者の注意を惹くことができるのでおすすめです。
ポイント3.参加している気持ちにさせるアイテムの提供
3つ目のポイントは、「参加している気持ちにさせるアイテムの提供」です。オンラインプレスツアーで紹介する現地の食べ物や飲み物といったアイテムを事前に提供しておき、ツアー中に一緒に楽しめる時間をつくると、まるで現地に参加しているかのような気持ちになれます。どこでも手に入るものではなく、現地の名産品にすると、特別感を演出できるのでおすすめです。
オンラインプレスツアーの事例3選
オンラインプレスツアーの事例を3つご紹介します。いずれも、メディア向けのみならず、一般ユーザーも参加可能なオンラインツアーの事例ですが、プレスツアーにも活かせるので、ぜひ参考にしてみてください。
事例1.株式会社ジャルパック
ジャルパックが実施した、「ホーチミンから生中継!『【JALPAKオンラインツアー】おうちでベトナム気分 ホーチミンの街並みとベトナムコーヒー講座 3種のベトナム産コーヒー付き!』50組限定で発売開始」は、コロナ禍で海外渡航が難しいこの時期ならではの、海外のオンラインプレスツアーの事例です。
このプレスツアーでは、ベトナムの都市、ホーチミンの街並みやおすすめのスポット紹介のみならず、ベトナムの歴史に触れながら名産品であるコーヒーを参加者に提供し、ツアー内でコーヒーに関する講座の時間を設けるなど、さまざまな角度からベトナムを紹介しています。旅行会社のジャルパックが提案する「旅の楽しみ方」が詰まったプレスツアーとなっています。
事例2.株式会社ノットワールド
ノットワールドが実施した、「【参加費無料】ヒオウギ貝が届くかも⁉町長と巡る那智勝浦町・浦神オンラインツアー!」は、日本の地域を紹介するオンラインプレスツアーの事例です。
このプレスツアーでは、和歌山県・那智勝浦町の見どころを紹介しています。主催者が説明していくだけでなく、町の歴史や現在に詳しい町長をゲストに迎えたり、名産であるヒオウギ貝の紹介では、地元の漁師さんが調理方法を教えたりと、この町ならではのゲストに工夫のあるプレスツアーです。
事例3.株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント
ファイターズ スポーツ&エンターテイメントが実施した、「ES CON FIELD HOKKAIDO建設地オンラインツアー開催 ツアー参加者500名様大募集!」は、施設見学に関するオンラインプレスツアーの事例です。
このプレスツアーでは、建設中の新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO(北海道北広島市)」の建設現場にカメラが潜入し、工事の進捗状況や今現在の様子を紹介するといった内容で、建設期間中しか見ることができない特別感のあるプレスツアーです。建築方法が珍しかったり、特にこだわりがあったりなど、完成前から話題化を図りたいと考えている広報担当者は、完成前にプレスツアーを行うのもよいでしょう。
コロナ禍でも、オンラインプレスツアーなら現地の魅力を伝えられる!
今回は、コロナ禍においても実施しやすいオンラインプレスツアーのやり方や、成功のためのポイントについてご紹介しました。
プレスリリースといった文字情報に加え、実際に現地で見て・触れてといった体験を通すことで、メディア関係者に魅力を伝えられたり、理解の促進を図ることができるプレスツアーは、有効な広報PR活動のひとつです。しかし、昨今のコロナ禍において、県を跨ぐ移動や出張を自粛する企業も多く、プレスツアーの開催がしづらい状況が続いています。
しかし、今回ご紹介したように、見ていて飽きない画づくりや、双方向のコミュニケーションを取り入れたり、出演者に工夫を凝らしたりと、コンテンツや演出にこだわることで、オンラインでのプレスツアーでも十分に現地の魅力を伝えることが可能です。
オンラインプレスツアーは、従来のプレスツアーと比較してメディア関係者の拘束時間が短く、スケジュールの調整がしやすかったり、一般ユーザー向けのコンテンツに流用できたりといったメリットもあります。コロナ禍が収息してからも、オンライン・オフラインのハイブリッド形式での開催を検討してもよいでしょう。
オンラインプレスツアーに関するQ&A
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