広報やPRの実務に取り組む中で、「知識を体系的に学び直したい」「キャリアの武器になる資格が欲しい」と感じたことはありませんか?検定試験や資格取得は、自身のスキルアップにもつながる有益なもの。スキルアップや業務の理解を深めるだけでなく、自信や評価にもつながる有効な手段です。
本記事では、「PRプランナー」をはじめとする、広報PR担当者としてのスキルの向上に役立つ資格を厳選してご紹介します。さらに、資格取得前に確認しておくべきポイントや、実務にどう活かすかといった視点も解説。資格選びに迷っている方や、次のステップを考えている広報担当者はぜひ参考にしてください。
広報PR担当者になるためには資格があると有利になる?
一部の職業では、資格の取得が必須となるケースがありますが、広報PR担当者として活動するうえでは、必須の資格はありません。特定の資格を取得していないといった理由で、広報に配属されない、働けないということはありませんので、安心してください。
しかし、広報として活動する際に、資格がまったく不要というわけではありません。むしろ、広報スキルを高めたい方にとって、資格取得は基礎知識を体系的に学ぶ有効な手段になります。まずは、資格を取得するメリットについて解説します
資格の学習を通じて、体系的に基礎知識が学べる
広報資格の学習では、リリース作成やメディア対応、リスクコミュニケーションなど、実務に直結する知識を体系的に学べます。独学や経験だけでは抜け落ちがちな知識も補完されるため、業務の理解度が一層深まるでしょう。
また、目標に向かって計画的に学ぶことで、日々の仕事への理解や解像度も高まり、広報活動に対する自信にもつながります。知識の「点」を「線」に変えていけるのが、資格取得の大きなメリットです。
履歴書や社内評価でのアピール材料になる
広報として活動するには特定の資格は必須ではありませんが、関連する資格を取得していると、履歴書や職務経歴書に記載できる明確なアピール材料となります。とくに未経験で広報職を目指す場合は、意欲や基礎力の証明として評価されやすくなるのはメリットだといえるでしょう。
また、社内においても「広報に関する専門性を持つ人材」として認識されやすく、異動希望やキャリアアップの際のプラス材料になります。資格取得はスキルだけでなく、自分の広報意識を可視化する手段にもなるのです。
資格だけでなく、実務を積むことが重要
ただし、資格はあくまでスキルアップの“入り口”にすぎません。実際に広報として活躍していくには、知識だけでなく実務経験を積むことが不可欠です。たとえば、記者対応の現場感覚や社内調整の難しさは、実際にやってみなければ習得できない要素も多くあります。
資格取得は「広報として成長するための一要素」として捉え、現場での経験や社内での挑戦と並行して活用していくことが理想的です。知識と実務のバランスを取りながら、自分に合ったキャリアの土台を築いていきましょう。

広報スキル向上におすすめの資格
広報スキル向上のためには、実務スキルと併せて資格取得に臨むのがベスト。退社後や休日も活用しながら、資格取得に向けて勉強していきましょう。
では、広報PR担当者はどのような資格試験を受験すればよいのでしょうか。広報スキル向上に役立つ資格を5つご紹介します。
1.PRプランナー資格認定制度:広報PRの王道資格
「PRプランナー」は、公益社団法人「日本パブリックリレーションズ協会(日本PR協会)」が実施している検定試験。受験対象は、広告関連会社勤務・企業の広報部でのPR業務担当者・広報業務に興味を持っている人です。
| 1次試験 | 2次試験 | 3次試験 | |
| 受験資格 | なし | 1次試験合格者 | 2次試験4科目合格かつ3年以上の広報・PR関連実務経験者 |
| 受験料(税込) | 11,000円 | 17,600円 | 17,600円 |
| 試験方式 | CBT方式で択一問題 | CBT方式で択一問題 | CBT方式でテキスト記述式問題 |
| 問題数 | 50問 | A~Dの4科目、各25問 | 課題A・B各3~5問 |
| 試験時間 | 80分 | 科目A+B 80分、科目C+D 80分 | 120分 |
| 合格基準 | 正答率70%以上 | 正答率65%以上かつ各科目の正答率がいずれも50%以上 | 課題A・Bの総合評価が45点以上、かつ各課題の評価がいずれも50%以上 |
| 合格率 | 73.7% | 76.5% | 47.6% |
| 合格者数 | 13,369名 | 7,274名 | 3,842名 |
1次試験・2次試験・3次試験に分かれており、基礎知識を問う筆記試験や時事問題に加えて、実務的な課題として「プレスリリースの作成」も出題されます。広報PR業務に関する知識を幅広く体得したい人におすすめの試験です。
2.IRプランナー
「IRプランナー」は、投資家などに向けたインベスター・リレーションズに関する知識を身に付けていることを証明する資格のひとつ。IRプランナーは、企業内に外部のクライアントや顧客からの客観的な意見を取り入れ、経営に生かす役割も持ちます。
資格取得すると名刺に記載することもでき、社内外からの信頼の獲得にもつながるため、資格取得を奨励する企業も。基礎コースや上級コースがあるので、スキルや目標に合わせてコースを選びましょう。
3.商品プランナー
「商品プランナー」は、日本商品開発士会が行っている協会認定の資格。受験資格や対象の制限はなく、商品プランナーとして商品戦略・販売促進戦略などの基礎知識とスキルを身につけていることを示す資格です。商品プランナーの主要学習科目は、下記の4項目に分かれています。
- 商品・サービス企画の基礎
- 商品開発マーケティングの基礎
- 商品開発におけるコミュニケーション・プレゼンテーションの基礎
- 商品開発におけるMMPコミュニケーション・プレゼンテーションの基礎
市場と企業の橋渡しとして活躍したい広報PR担当者におすすめの資格です。
4.ウェブ解析士
ウェブ解析士は、WebサイトやSNS、広告などのデジタル施策におけるユーザー行動を数値的に分析し、改善に活かすスキルを習得できる資格です。
プレスリリースの効果測定や、Web上の掲載記事の流入数分析、SNS経由のトラフィック把握など、広報の成果を見える化するうえで非常に役立ちます。
データに基づいた広報戦略を立てたい方には、取得価値の高い資格です。
参考:ウェブ解析士公式サイト
5.コーチングやファシリテーション系資格
広報業務の中でも、社内コミュニケーションを担う「インターナル広報」では、社員との対話力や組織内ファシリテーション力が求められます。
コーチング資格やファシリテーションスキルの習得は、社内インタビューやイベント運営、部門間の橋渡しなどに活かされ、企業文化の醸成やエンゲージメント向上に直結します。
特に社内報や社内向け説明資料を担当している方にはおすすめです。
6. Google広告認定資格などデジタルマーケティング系資格
広報担当者にとってデジタル施策の理解は欠かせないものとなり、Google広告認定資格(Google Ads Certification)をはじめとしたデジタルマーケティング系の資格は、広報スキルを大きく底上げする武器になります。プレスリリースはSNS・検索・広告経由で二次拡散されるケースが増えており、広告の仕組みや数値の読み取りができるだけで、施策の検証精度が一段と高まります。特に、検索広告・ディスプレイ広告・Measurement(計測)などの領域は、広報が「どの媒体・キーワードから流入が発生しているのか」を理解するうえで有用です。また、Googleアナリティクス個人認定資格(GAIQ)やMeta BlueprintなどのSNS広告資格も、データドリブンな広報活動を実践する助けになります。広報とマーケの連携が求められる企業では、取得者への評価が高まる傾向があり、キャリアの選択肢を広げる効果も期待できます。
7.ビジネス文書検定・Webライティング系資格(文章力の底上げ)
広報における文章力は「最重要スキル」と言っても過言ではなく、ビジネス文書検定やWebライティング系資格の取得は、日常業務の精度を大きく向上させます。プレスリリース、取材対応メール、社内広報文、SNS投稿まで、広報が扱う文章は多岐にわたりますが、文章構造・論理性・読みやすさの基本が欠けていると、どれだけ情報価値が高くても読者に届きません。文章力系資格では、敬語や表記ルール、要点の整理といった基礎のほか、Web特有の「簡潔で検索性の高い文章」の書き方も学べます。特にWebライティング技能検定、SEOライティング系資格は、オウンドメディア運用やニュース記事執筆に直接的な効果があります。また、文章力を証明できることで、未経験者の広報転職にも優位に働き、社内で「書ける広報」として重宝される存在になれます。文章力は全ての広報施策の根幹にあるため、資格取得は長期的なキャリア資産となるでしょう。
目的別・キャリア別に見る「広報資格」の選び方
広報関連の資格は多岐にわたりますが、どれを選ぶべきかは「現在のキャリア段階」と「今後の役割」を踏まえて判断することが大切です。資格は取得すること自体が目的ではなく、実務でどう活かせるかが核心となるため、自身の経験値や足りないスキルを冷静に分析する必要があります。
また、広報の仕事は企業規模や業界によって必要な専門性が異なるため、画一的な選び方では効果が出にくいのも特徴です。そこで次に、未経験者から管理職までのキャリア別、さらに企業タイプ別に最適な資格を整理し、自分に最もフィットする選択ができるように体系的にまとめます。
未経験・異動希望の人に向く資格:基礎知識の証明とキャリアの入口
広報未経験者や他部署から広報職への異動を目指す人は、まず「広報の基礎知識があること」を客観的に示せる資格を選ぶと効果的です。PRプランナー1次試験は広報の全体像を体系的に学べるため、広報職への意欲と基礎力を伝える強い材料になります。また、文章力を求められる実務特性を踏まえ、Webライティング系資格やビジネス文書検定は業務適性の証明にもなるでしょう。
さらに、ウェブ解析士などデジタル領域の資格は、SNS運用や効果測定など現場で役立つ即戦力スキルとして評価されやすく、未経験者でも広報の土台を固めやすい点が魅力です。
中堅・リーダークラスに向く資格:専門領域を深める・役割を広げる
実務経験が増え、施策をリードする立場になってきた中堅層には、「専門性を深める資格」や「企画・戦略の幅を広げる資格」が向いています。PRプランナー2次試験は企画立案や実務に近い内容が多く、チームを率いる立場に必要な視座を養えます。また、商品プランナー資格は、市場視点での企画力や提案力を高められ、プロダクト広報・サービス広報に強くなれる点が特徴です。さらに、SNS運用やデジタルマーケ系資格の上位資格を取得すると、数値分析や効果検証の精度が上がり、組織内でのアドバイザリー的役割も担えるようになるでしょう。
マネージャー・経営層に近い立場で活きる資格:IR・戦略・データ
広報部長や広報責任者クラスになると、求められる役割は「情報発信」だけではなく、「企業価値を高める戦略的広報」へと変化します。そのため、IRプランナー資格は企業の財務情報や投資家対応を理解し、経営判断に関わるコミュニケーションを担う上で非常に有効です。
また、ウェブ解析士上級やデータ分析系資格は、広報活動を経営指標と結びつける力を強化し、経営層への説明責任を果たすうえで不可欠です。危機管理やレピュテーションマネジメント系の研修も、企業リスクを最小化する広報組織の構築に役立ち、経営パートナーとしての信頼につながります。
広報PRに関する資格を取得する前に知っておきたいこと
広報PR担当者としてのスキル向上をはかるための「PRプランナー資格認定制度」「商品プランナー」など、各種資格についてご紹介しました。効率的に知識を身に付けるためにも、資格取得前にしっかり準備しておきましょう。
最後に、広報PRに関する資格を取得する際に知っておくべき5つのポイントを解説します。資格取得を予定している方は、事前にチェックしておいてくださいね。

1.足りないスキルと取得する目的を明確にする
資格取得は、自分が身に付けていない知識や情報を得るための手段のひとつ。ただ資格を取得するだけではなく、自分が得るべきスキルが何なのかを把握したうえで、目的を明確にしましょう。具体的には、以下の3つのポイントを念頭に受験に臨みましょう。
【資格選びのポイント】
- 自分に足りていないスキルを学べる
- 今後の事業展開や業種の特色に活かせるスキル
- 転職時や昇進時に自分の武器としてアピールできる
2.試験日から逆算した勉強スケジュールを立てる
広報に関する資格は、しっかり準備をしておけば取得が難しい資格ではありません。しかし、合格ラインを超えるためには当然一定の勉強時間が求められます。加えて、広報PR担当者になって間もない場合は、実践で身に付けたスキルがないため、勉強時間を多めに取っておく必要があるかもしれません。
資格取得を目指した場合は、まず試験までの学習スケジュールを立てましょう。学習度や進捗を可視化しやすくなるように「1ヵ月後には〇章までを勉強する」「この1週間は過去問を2回解く」といったように細かなスケジュールを立てることがおすすめです。
3.受験にあたって自社の費用負担条件を確認する
広報PR担当者のスキル向上は、企業にもプラスの効果をもたらします。資格取得支援制度を取り入れている場合は、資格取得時の受験料を会社側が負担してくれることも多いのです。
ただし、会社側が受験料を負担する際には「会社からの申し込みが必要」「証明書の送付が必要」など、細かな規定や条件が定められていることもしばしば。制度をしっかり活用するためにも、事前に負担条件や会社の制度を確認しておきましょう。
4.合格に必要な参考書と購入方法をチェックする
広報に関する資格は独学で勉強するのが一般的。セミナーや学校に通わないため、自分で資格取得に合わせて参考書を購入する必要があります。書店でも購入できますが、受験する資格の公式サイトで販売されていることも多いので、ぜひチェックしてみてくださいね。
また、前述した受験料と同様に、企業によっては参考書の購入費を負担してくれるケースもあります。事前に確認しておくとよいでしょう。
5.経験者のブログで特に対策すべき点を把握する
効率的に資格取得に向けて勉強するためにも、過去の受験者のブログは要チェック。過去の問題や対策ポイントを解説してくれているブログも多く、非常にためになります。
資格取得までに必要な勉強時間を記載してくれていることも多いので、自身の勉強スケジュールの目安として活用してみましょう。
資格だけでは終わらない!資格を活かす3つの実務ステップ

1.学んだ理論・ノウハウを社内勉強会やワークショップで共有する
資格取得で得た知識は、自分だけのものにせず社内で共有することで、組織の底上げにつながります。簡単なスライドや配布資料を用意し、広報部内の勉強会や他部署向けのミニセミナーを実施すると、社内の理解も深まり、自身の学習内容も定着します。
とくにメディア対応やリスク管理などは、全社的な共通認識があると、危機時にも強い体制が作れます。
社内に「広報の視点」を根づかせることが、結果的に広報活動の質を高めます。
2.小さなプロジェクトに資格知識を活かす
学んだ内容を実務に落とし込むには、小さな施策からの応用が効果的です。たとえばウェブ解析の知識を身に着けた後は、社内報やプレスリリースのアクセス解析を行い、掲載媒体別の成果比較に挑戦してみるなど、できる範囲から手を動かし、日常業務のなかに“資格で得た視点”を反映してみましょう。
資格取得で得た知識を机上の理論で終わらせず、日常業務に溶け込ませることで、理解が深まり、実務スキルとして定着します。
3.資格内容をアップデートし続ける視点を持つ
資格取得はゴールではなく、スキルアップの入口にすぎません。情報発信を取り巻く環境やメディアの関心は日々変化しており、一度得た知識もアップデートし続ける意識が大切です。たとえば、SNSやAI活用など、資格取得時には含まれていなかった新しい領域については、関連する勉強会・セミナーへの参加、業界動向のキャッチアップをしていきましょう。
また、複数の資格を掛け合わせることで専門性に深みが出ます。広報に必要なスキルは一つの資格で完結しないからこそ、継続的な学びを取り入れる姿勢が、長期的なキャリア形成につながります。
何のために受験するかをよく考えよう
本記事でご紹介したように、広報PRに関する資格は「PRプランナー」「商品プランナー」などさまざまです。
しかし、資格取得はあくまで基礎知識を体系的に学ぶ手段のひとつ。資格を取得したからといって、広報の実務スキルが身に付くわけではありません。実務スキルと併せて知識を学ぶことで、広報PR担当者として成長していきましょう。
また、資格取得を仕事に活かすためには、求められている知識や身に付けるべきスキルと照らし合わせて、「取得すべき資格」を明確にする必要があります。実務経験とのバランスも含めて検討し、取得すべき資格を選んでくださいね。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
広報のスキル向上に関するQ&A
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