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サーベイとは?種類・ステップ・活用するときの7つの方法を解説

近年、エンゲージメント経営の高まりとともに、組織・従業員個人に寄り添った施策を展開していくことが重要になっています。しかし人事領域においては、これまで経験的・感覚的に、または数名へのインタビューなどで課題を特定して対応するということが当たり前に行われてきました。

組織・個人の状態を客観的に正しく把握するための手法として注目が高まっている「サーベイ」について開発手順、活用のポイントなどを解説してきます。

サーベイとは?

組織課題や従業員の意識、状況を測るものとして注目されている手法に「サーベイ」があります。サーベイとは探査、測量、測定、調査などの意味があり、組織の全体像や実態の把握のために広く行う調査のことを指します

サーベイを通じて企業は従業員からデータを集め、課題を洗い出し、結果に沿ったアクションプランを実行することで組織改善につなげていくことが可能になります。

組織内の人材の多様性が高まり、世代間の会社・組織・仕事に対する認識の違いなど、課題の種類が多岐にわたるようになってきていますので、サーベイを活用して客観的に課題を特定し、より効率的・効果的なアクションにつなげることが大切です。

調査イメージ

サーベイとリサーチ、アンケートの違いとは?

サーベイリサーチアンケートという言葉はほとんど同じ意味で使われていますが、実際にはそれぞれ違いがあります。

サーベイとは、物事の全体像を把握するために広範囲に行う調査のことを指します。

従業員が会社や組織に対し、どのような課題を持っているかなどを調査するために活用されます。

リサーチは主に、マーケティング分野で用いられる調査方法です。文献や情報を活用しつつ、対象に対して一定以上の深い理解を得るための調査・研究のことで、特定の条件を持っている人を対象に調査を行います。サーベイなどで全体像を把握したうえで、自社のターゲットをさらに深く理解するためにリサーチが行われます。

アンケートとは、多くの人に同じ質問をして回答を求める調査方法のことです。消費者やユーザーに対して行う調査を指す言葉で、顧客満足度の調査やリピート率の調査などに活用されます。

上記はマーケティングの観点での分類になりますが、人事領域におけるサーベイとアンケートの違いとして、サーベイは調査の実施からその後のアクションプランに至るまでの活動を含む全体を指し、アンケートは活動までは含みません。

人事が知っておきたいサーベイの種類

組織の課題や従業員の考え方の違いが多岐にわたる中、人事部門は組織・個人の状態を正確に把握して、適切な対応を取ることが求められています。今回は組織内でよく活用されるサーベイをご紹介します。

従業員サーベイ

従業員サーベイとは、従業員に対して職場環境や人間関係などの従業員満足度を把握するためのものです。従業員サーベイを行うことで、組織や個人の問題点を客観的に把握することが可能です。どのような問題があるのかを把握することで、解決法や対応策を見いだすことができます。

なお、従業員サーベイは従業員満足度調査として実施されることが多いですが、エンゲージメントサーベイやモラールサーベイなどの従業員の状態を把握するものを総称する表現として使用されることがあります。

エンゲージメントサーベイ

エンゲージメントサーベイとは、従業員が会社や組織、そして商材に対してどれくらい愛着を持っているのかを調査するものです。従業員のエンゲージメントを調査することで、改善するべき組織課題を具体的かつ明確にできます。

エンゲージメントサーベイでは、課題を客観的な数値で把握できるため、改善への行動を取りやすいという特徴があります。従業員が直接上げた声に対し適切な対処をしていくことで、エンゲージメント向上につながります。

モラールサーベイ

従業員のモラールを測定するために実施されます。モラールとは「士気」「意欲」と訳され、組織として目的を達成しようとする意欲、態度を意味します。従業員のモラールの状態がパフォーマンスのどのような要素に影響しているか、事実情報を集めるために使用されます。

コンプライアンス意識調査

従業員のコンプライアンス意識と、その課題を把握するために実施されるものです。エンゲージメントサーベイなどで使われる心理的安全性指標などと掛け合わせることで、コンプライアンスリスクの高い組織を早期に発見し、リスクを未然に防ぐために使用されます。

ストレスチェック

ストレスチェックとは、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止、職場環境の改善を目的として行われるもので、労働安全衛生法第66条の10に基づき、2015年12月から特定の事業場で実施を義務付けられているストレスに関する検査のことです。50人以上の労働者を抱える事業場では、すべての労働者に対して年1回の実施が義務付けられています。

ストレスチェックでは、まず労働者が「自分のストレスがどのような状態にあるのか」について質問票で選択回答。その後企業は、質問票を集計・分析し、本人に結果を通知します。

パルスサーベイ

パルスサーベイとは、上記のような目的別サーベイと異なり、少ない設問数のサーベイを繰り返し行う手法のことを指します。調査を短期間に繰り返し行うことで、従業員の状態の変化を把握することができます。

通常のサーベイは年に1回(複数年に1回)の大規模調査として行われることが多いですが、その時点で問題がなく、調査後に新たな課題が生まれた場合に状態を把握しづらいことがあります。パルスサーベイは間をおかず繰り返すことにより、個人や組織の回答の変化を捉えて、データに変化が起きた場合に初期段階対処や解決がしやすいのも特徴です。

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サーベイ開発の6ステップ

組織・従業員の状態を把握するために、サーベイは正しく設計することが重要です。開発済みのサーベイではなく、自社でサーベイを開発する際に起こりがちなことは、質問項目を何となく並べてそのまま実施してしまうことです。

せっかく従業員に協力してもらいデータを取っても、それが正しく設計されていない場合、後々データの解釈や分析を実施しても正しい結果につながらないことがあります。

そこで一般的なサーベイを開発する手順をご紹介します。自社でサーベイを開発する場合も、すでにサービスとして提供されているサーベイを活用する場合にも、以下の手順を踏んでいるか確認することが大切です。

STEP1.調査プランの策定

開発するサーベイで何を測定し解決していくか、測定すべき事象(目的)・概念・対象・期間を検討する。

サーベイ開発から、アクション実行までの核となる部分となります。特に調査目的がズレていかないようにさまざまな角度からプランのチェックをしましょう。

STEP2.文献のリサーチ

測定したい事象と類似する概念に関する文献を調査し、妥当性・信頼性の高い測定(設問)項目を収集する。

測定したい事象に関する類似研究が見つからない場合、研究機関との共同研究として開発することも可能です。

STEP3.設問案の作成

文献などで収集した測定(設問)項目を踏まえて、測定したい事象に対する設問案を作る。

設問はバイアスを排除するために、性別・年齢などが多彩な数多くの人で案を作成し、事前に文言のチェックをすることが大切です。

STEP4.テストサーベイ

必要十分なサンプルに対して、設問案の調査を実施し、データを収集する。

社内での調査も必要ですが、サーベイ会社などを活用して社外調査をすることで、より一般化したサーベイの設計が可能になります。

STEP5.データクリーニング

テストサーベイで出た結果から、回答の偏る設問を排除するなど良質な設問のみを抽出する。

例えばサーベイの中に、「経営者」「マネジャー」に対する設問がある場合、回答者がイメージする経営者・マネージャー像が異なる場合がありますので、イメージする対象を明確化するなどの調整が必要になる場合があります。

STEP6.サーベイ評価の基準の作成

抽出した設問について複数回のテストを繰り返し実施し、結果を解釈する基準を作成する。

設問の設計によっては回答の中央値・平均値が反転する場合などもあるため、結果基準の調整が必要になります。

サーベイを活用するときの7つのポイント

サーベイの目的は正しいデータを取ることではなく、取得したデータを基に課題を明確にして、正しいアクションを実行し、組織や個人の変化を促すことにあります。

データを取得して終わりにならないよう、サーベイを活用するための7つのポイントをご紹介します。事前にチェックして、現場・従業員をうまく巻き込みながら、より効果的なサーベイ、アクションにつながるように努めましょう。

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ポイント1.サーベイを目的に合わせて設計する

サーベイの設計ポイントでも記載した通り、調査したい目的(解決したい課題)について正しくデータを取得できるように設計することが大切です。またサーベイの結果を基に適切な対応を実施していくため、本調査の前に設問ごとの結果を想定しアクションプランを事前に整理しておくことで、早期の課題解決につなげることが可能になります。

ポイント2.データの取り扱いを正しく決める

サーベイ実施にあたり、目的に合わせデータの取り扱いを正しく決めることは重要です。

データの使用目的・使用範囲、個人情報を取得するか否か(個人情報を取得しない場合でも、組織・性別・年齢層などフィルターをかけて個人が特定できる場合などに注意が必要)、データの保存場所などデータをどのように取り扱うかを事前に決定し、調査対象者への説明をする必要があります。

国をまたいでサーベイを実施し個人情報を取得する場合は、GDPRなど各国の個人情報保護規定に準拠しなければなりません。

調査後にほかのデータと掛け合わせて分析する場合はその点も見据えて、使用目的・使用範囲を決めましょう。

ポイント3.目的を周知する

回答者がサーベイに興味を持ち、正しく回答できるよう、調査の目的を明確化し、周知することが大切です。特に組織の状態を把握するためのサーベイの場合、回答への圧力がかかるといったことのないように組織のマネージャーへの配慮なども重要になります。

ポイント4.回答を促す

サーベイは一定以上の回答数が必要となります。そのために個人やマネージャー経由などプッシュ型で回答を促すことが大切です。ただしサーベイへの回答が必須でない場合、無理に回答させることがないように配慮しなければなりません。

正しく回答することが組織改善や生産性の向上につながることを従業員一人ひとりに理解してもらうなど、丁寧なコミュニケーションを心掛けましょう。

ポイント5.結果を正しく扱う

サーベイ結果の利用にあたって、サーベイ結果を正しく読み取り扱うことが重要です。

従業員の意思を反映させたサーベイの結果は非常に重いもので、結果が会社や人事にとって厳しいものになる場合もありますが、会社や人事にとって都合の良いデータの使用の仕方や、読み取り方をしないように注意しなければなりません。

現状を正しく認識し、そこへのアクションを取っていくことが組織改善には最善であることを理解しましょう。

ポイント6.結果を公表する

結果を正しく扱うために、結果を公表することは非常に重要です。特にデータの民主化といわれ始めているように、個人情報やサーベイの回答データは会社や人事のものではなく、回答者本人のものです。

結果とそれに対するアクションプランを同時に公表することにより、従業員は自身の意見が反映された(反映されない場合もその説明を行う)と実感することができます。

ポイント7.アクションを実施する

人事領域におけるサーベイはアクションまでのすべてのプロセスを指します。もちろん1度アクションを実施すればすべてが解決できるわけではありませんので、サーベイ結果を分析し、迅速かつ正しいアクションを行い、改善すべき課題が改善できているかを改めて調査するといった、調査→分析→アクション→調査というサイクルを繰り返し実施していくことが重要になります。

サーベイを学ぶのにおすすめの本・書籍

組織内でのサーベイやデータ活用の機運が高まる中で、サーベイに関する多くの本が出版されています。サーベイをどの様に活用していけば良いか悩んでいる方におすすめの本を今回は3冊ご紹介します。自社で実施する前にいくつかの考え方を学んでからスタートするだけで、のちに得る成果が大きく変わってきます。

1.サーベイ・フィードバック入門──「データと対話」で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】

中原 淳 (著)

人材・組織開発の第一人者 中原 淳教授が書かれた本です。サーベイを活用して組織の状態を「見える化」することに留まらず、データが示す結果についてフィードバックする技術についても解説されており、組織においてサーベイの活用を学ぶのに最適な一冊です。

サーベイ・フィードバック入門 | 書籍 | PHP研究所

2.データ主導の人材開発・組織開発マニュアル

南雲道朋 (著)

日系電気通信メーカーのソフトウェア開発部門での勤務後に、外資系コンサルティング会社にて人事・組織コンサルティングに従事してきた筆者が、これから必須となるデータ活用時代の人材開発・組織開発のあり方をまとめた本です。サーベイ調査設計やデータ分析など実務的に理解することが可能な一冊です。

データ主導の人材開発・組織開発マニュアル

3.HRDXの教科書 デジタル時代の人事戦略

EY Japan ピープル・アドバイザリー・サービス (著) 鵜澤慎一郎 (監修)

会社経営に必要不可欠な人材の活用についてデジタル時代だからこそ変わってくるこれからのHRの役割についてさまざまな企業事例を交えて書かれた本です。サーベイのみならず人事領域においてデジタルをどう活用していくかについて幅広く知りたい人にオススメの一冊です。

HRDXの教科書 デジタル時代の人事戦略

まとめ:サーベイを活用して正しいアクションにつなげる(人事領域におけるマーケティング)

会社と従業員の関係が大きく変わる中、従業員のエンゲージメントは経営にとっても非常に重要な課題とされています。しかし組織の中で人材の多様性が高まるにつれ、さまざまな背景を持ち、複数の世代が共存している現在、これまでの人事が持つ定性的な情報だけでは多岐にわたる組織・個人の課題を把握し、解決することは非常に難しくなってきています。

サーベイは課題把握のひとつの手法として注目を集めていますが、何となく実施すると誤った結果につながってしまう可能性も出てきますので、サーベイの設計・活用方法をしっかり理解することが大切です。

アンケートにとどまることなく、人事領域における組織・個人課題に対するマーケティングデータとして活用することにより、迅速かつ適切なアクションにつなげていくことができるようになります。

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この記事のライター

中村亮一

NEC 人材組織開発部 タレント・アクイジション エキスパート。 2004年4月に新卒で日立製作所へ入社し、人事総務担当として従事。People Analytics専門の部署を立ち上げ、データ分析・事業立ち上げを担当。2018年に飲み屋で誘われソフトバンクへ入社しHRテック、People Analyticsの社内導入を担当。2020年HRテックスタートアップ 株式会社BtoAの経営に参画した後に、2021年2月より現職。

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