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アサーションとは?トレーニング方法の具体例とポイントを解説

経営において人的資本の重要性が高まり、会社と社員の関係性も大きく変化してきました。社員のエンゲージメント向上のために必要不可欠なコミュニケーションスキルの中で、近年注目を浴びている相互理解を深めるアサーションについて解説いたします。

アサーションの意味とは?

アサーションとは英語の「assertion(自己主張)」からきており、アメリカで提唱された「相手も自分も大切にする自己表現コミュニケーションスキル」です。

アサーションが生まれた背景

アサーションは1950年ごろ、アメリカの心理学者ジョセフ・ウォルピによって開発され、自己主張が苦手な人を対象としたカウンセリング技法として活用されてきました。そして1960~70年代には、黒人差別に対して誰でも自分らしく生きる権利があると主張する公民権運動において、アサーティブの考えと行動が広がり、やがてのちの女性解放運動にもつながっていきました。

アサーションが注目されている背景・理由

近年、アサーションが注目されている背景には、経営において人材は「資産ではなく資本である」へという考え方が広まったことがあります。社員は企業に帰属するものではなく、個人が持つ経験・スキルを最大限に高めることが企業の組織目標の実現にとって何より重要なことです。そのためマネジメントのスタイルについても、これまでの上意下達のコミュニケーションを廃し、相互尊重型のコミュニケーションへの転換が求められています。

このほかにも多様性(ダイバーシティ)の重要性の高まり、コロナ禍による非対面コミュニケーションの拡大など社会の変化もアサーションが注目される理由にあげられます。

ダイバーシティとは状態の多様化がゴールではなく、その多様性を活かすことが目的であり、それを実現するためにインクルージョン(相互の違いを理解・尊重できている状態)が重要とされています。

コロナ禍によりテレワークなど非対面コミュニケーションが広がる中で、チャットやメールなど文章のみでのやりとりが増えることで、相互理解や仕事以外でのコミュニケーションが難しくなり、メンタルヘルスの不調の増加やハラスメントなどの問題も増えてきています。

レッドフォックス株式会社プレスリリース
引用:テレワークが抱える課題から見える解決すべき組織の問題点とは?

アサーションを身につける3つのメリット

アサーションを身につけることで多くのメリットがありますが、自分・相手・マネジメント視点で3つのメリットをご紹介いたします。

メリット1.自身を表現できる

アサーションは双方の考え方を尊重し、異なる意見であっても歩み寄って物事を進めるコミュニケーションです。これまで会社の中では一方的な上意下達のコミュニケーションが多く見られ、自分の意見を言うことを諦めて我慢してきた人も多いと思います。

アサーションを学ぶことで言いたいことが言えない、相手に遠慮してしまうといったコミュニケーションに変化が起き、ストレス軽減につながります

メリット2.相手を大切にできる

相手が一方的なコミュニケーションをとる人でも、その人がそのようなコミュニケーションをとるに至った背景を理解し、寄り添うことは重要です。

特にビジネスにおいては、目的が同じでも異なる意見に至るまでの情報量や思考の仕方が人によって違うことが多いのではないでしょうか。そこで、人はそれぞれ違う考え方を持っているという前提を理解するだけで、その後のコミュニケーションのとり方やアウトプットの仕方が大きく変わってきます。相手を大切にすることが、結果として自身のパフォーマンス向上にもつながるのです

メリット3.コミュニケーションリスクを回避できる

マネジメントの観点でもアサーションを学ぶことは非常に重要です。先に説明した通り、会社やマネージャーが置かれてる立場は大きく変化しています。

これまでは問題にならなかった表現や対応が、ハラスメントやメンタルヘルスの不調、人材の流出といったリスクにつながることを理解しなければなりません。

聞いているつもり、説明しているつもりの「つもり」が、相手に対して本当に伝わっているかをしっかり見極めて、相互尊重のコミュニケーションを心がけるだけで、職場でのさまざまなリスクを回避することができます。

アサーションにおける自己主張の3つのタイプ

ウォルピは私たちが使っているコミュニケーションスタイルは、3つのに分かれると提唱しています。

1.攻撃的な表現をしがちな「アグレッシブ」

アグレッシブは攻撃的な表現をしがちなタイプのことです。

自分の意見は正しいと思い込み、相手の状態や相手の意見を無視して、自分の価値観を押し付け、優位に立とうとするタイプです。

また言葉には出さずとも「相手が意見を聞いてくれないから悪い」と他責的になり、陰で文句を言ったり、相手の意見を無視したり、邪魔をしたりするのもこのタイプにあたります。意見や態度をはっきり表現できることは良いことですが、自ら周囲との軋轢や誤解を生んでしまいます。

2.自己表現が苦手な「ノン・アサーティブ」

ノン・アサーティブは自分よりも相手のことを優先し、自分の言いたいことを言わず、結果として相手の言うことを聞き入れてしまうタイプのことです。

優しく穏やかな人が陥りやすく、人から言われたことを断れなかったり、自分の考えや主張をする際もはっきりせず、曖昧な表現をしてしまうため、相手に意見が聞き入れられず、ストレスを抱え込んでしまいがちになります。

また相手の言い分を受け入れてしまうために、「相手が決めたことだから」と責任感を持ちづらくなってしまうこともあります。

優しさや穏やかさは相手を不愉快にしないという良い面もありますが、仕事においては評価されづらく、ストレスを抱えてしまいます。

3.相手と自分のバランスがとれる「アサーティブ」

アグレッシブとノン・アサーティブの良い部分をバランスよく兼ね備えたのがアサーティブタイプです。

相手の気持ちや背景を配慮したうえで、自分の主張・考えを伝え、場の空気を大切にします。状況に応じて、言葉や態度など表現をうまく使い分けることができます。

アサーショントレーニングの準備

先にあげた3つのタイプのうち、自分がどのような場面や状況で、どのような態度をとっているかを理解するためのチェックをしアサーショントレーニングの準備をしましょう。

チェックの結果、自身がアグレッシブ、ノン・アサーティブ、アサーティブどの傾向にあるかを理解し、見直すべきポイントを考えるきっかけになります。

参考:平木典子『マンガでやさしくわかるアサーション』

チェックポイント

アサーティブを実現する3つの方法

アサーティブな状態を作るために実践できる3つの方法をご紹介します。

DESC法

アサーションを体系的にまとめた方法で、以下の4つに分類しています。

D(describe):主観を交えず、自身の状況や相手の行動を客観的に伝える
E(explanation):自分の意見や感情を表現し伝える
S(suggest):相手が望む行動、妥協案、打開策を提案する
C(choose):提案の実行/不実行結果を想像し、結果に対する選択肢を示す

自身の話したいことを4段階に分類して伝えることで、相手を尊重し衝突を回避したうえで、具体的な案を探る方法です。

I(アイ)メッセージ

自身を主語として相手に伝える手法です。

相手に対して反対意見を示すとき、「普通はこうだよね」や「ほかの人はこう考えている」といった相手からすると1対多数となるような構図では、なかなか腹落ちさせることはできません。「私(I)はこう考えているよ」と言い、自身を主語として伝えることで、1対1でフェアに話をしている構図を作り、相手を責めたり、意見を押し付けるような印象になることを避け、自分の言いたいことを適切に伝えることができます。

言語的・非言語的アサーション

上記の2つは言語的なアプローチ方法ですが、表情やボディランゲージといった非言語的なアプローチも、アサーションにおいては大切です。

人はコミュニケーションをとる際、内容だけでなく、相手の表情や態度、声のトーン、身振り手振りなどから気持ちや感情を判断しています。

相手にとって気持ちいい非言語的コミュニケーションを意識することで、より円滑な関係を築きやすくなります。

アサーションを実践する際の3つのポイント

なぜアサーティブになれないのか?それは、相手に対して伝え方がわからない、伝える自信や勇気がないということに起因しますので、以下3つのポイントを理解し備えましょう。

ポイント1.会話のゴールを設定する

会話に入る前に、その会話のゴールを設定しましょう。例えば結果を出すための会話であれば、課題に対する具体的な解決策を提示し、すりあわせることが必要になります。

また会話のゴールを関係性の構築に置くのならば、相手や自身の状況を共有し、理解するために時間を使いましょう。

お互いなんとなく会話を始めるのではなく、このように会話のゴールを設定して話すだけでその時間のコミュニケーションの質が変わってきます

ポイント2.伝えたいことを整理する

会話のゴールが設定できたら、その会話に向けて準備することも変わってきます。

お互いの課題解決に向けてDESC法などを用いて、伝えたいことを整理しましょう。

  • 事実と問題点:何が起きていて、その問題が何かを事実をもとにまとめる
  • 自身の感情:事実や問題に対する自分の気持ちを言語化する
  • 要望と提案:具体的に実現可能な要望・提案を行う

このように簡単にまとめておくだけで、はっきりと相手に意見を伝えることができるようになります。

ポイント3.伝える際の心構え

事前にゴールを決めて伝えたいことを整理しても、最後に伝える自信や勇気がなければ良いコミュニケーションにはなりません。

アサーティブな関係を作るために4つの心構えをもって臨みましょう。

  • 誠実:相手に対しても自分に対しても、誠実にごまかさないようにする
  • 率直:簡潔に具体的に、相手に伝わるように話す努力をする
  • 対等:相手を一人の人間として尊重し、自分自身も卑屈にならないようにする
  • 自己責任:会話によって生まれた結果を他人のせいにしないようにする

アサーションの活用場面

アサーションは会社のいろいろな場面で活用できます。自分自身が気づかないうちに持ってしまっている偏見を極力なくして、双方にとって心地よいコミュニケーションを行いましょう。

人事評価

人事評価にはさまざまな手法があるものの、最終的には評価を伝えられる側が納得できるかが重要です。そのため、評価をして伝える側のマネージャーも、評価を受ける部下側もアサーションスキルを身につけることは重要です。

組織にアサーションが浸透していると、心理的安全性が高まり、上下関係にかかわらず対等な信頼関係とコミュニケーションができるようになります

評価という話しづらい場面だからこそ、アサーションスキルを活用し、納得度の高い会話をできるようにしましょう。

採用面接

採用面接においてもアサーションは非常に重要です。採用という場面では、会社が選ぶ側、応募者が選ばれる側と双方が考えがちですが、人材確保が難しい現在では、応募者にも選ぶ権利があることを理解しなければなりません。

これを理解せずにいると面接担当者が威圧的になったり、応募者が萎縮して対等な会話ができなくなります。採用は採ったら終わりではなく、入社後に気持ちよく活躍してもらうこと、仮に不合格になったとしても関係性が続くことを考えて、相互に尊重できるコミュニケーションを心がけましょう

アサーションに関する資格

アサーションに関して国家資格などの公的資格はありませんが、国内でアサーションの啓発活動を展開されているNPOである「アサーティブジャパン」や、「日本サービスマナー協会」が提供する講座などがあります。体系的、かつ実用的なアサーションのスキルを学ぶことができる講座です。

講座紹介
アサーティブトレーナー養成講座(アサーティブジャパン)
アサーティブコミュニケーター認定講座(日本サービスマナー協会)

アサーションを学ぶのにおすすめの本

日本のアサーショントレーニングの第一人者である平木典子さんの著書をご紹介します。

マンガでやさしくわかるアサーション

わかりやすい解説と実際に起こりそうなストーリーマンガで、アサーションを勉強してみたいという初心者の方に非常に読みやすい本です。

書籍詳細
書名:マンガでやさしくわかるアサーション 
著者:平木典子 出版:JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)l

三訂版 アサーション・トレーニング

実際にビジネスやプライベートで起こりうるシーンでのアサーション活用について、心理学の新しい理論を取り入れて執筆されており、はじめて、アサーション・トレーニングに触れる方に必読の本です。

書籍詳細
書名:三訂版 アサーション・トレーニング
著者:平木典子 出版:金子書房l

アサーションスキルを活用して、一人ひとりの違いを理解した前向きなコミュニケーションを

採用広報や人事担当者は社内外の多くの人と接しますが、話しやすい人、話しにくい人、好きな人、苦手な人、コミュニケーションをとる際にさまざまな感情が発生することもあるでしょう。

人事として中立・公正にと常に心がけていても、やはり相手やシチュエーションによっては、なんでこんなことが理解できないの?と攻撃的になることもあれば、この人には本音を言いづらいなと消極的になることもあります。

アサーションという考え方を学ぶことで、自分と相手の状況を客観視すること、思考のプロセスや会話に臨む姿勢が一人ひとり違うことを理解して、少しずつですが、ストレスをためることなく、新たな答えを導く可能性が広がります。

アサーションに関するQ&A

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この記事のライター

中村亮一

中村亮一

NEC 人材組織開発部 タレント・アクイジション エキスパート。<br> 2004年4月に新卒で日立製作所へ入社し、人事総務担当として従事。People Analytics専門の部署を立ち上げ、データ分析・事業立ち上げを担当。2018年に飲み屋で誘われソフトバンクへ入社しHRテック、People Analyticsの社内導入を担当。2020年HRテックスタートアップ 株式会社BtoAの経営に参画した後に、2021年2月より現職。

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