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「自分ごと化」で職員と地域をつなぐ。医療現場の顔を見せる広報PR|公益財団法人筑波メディカルセンター

「自分ごと化」で職員と地域をつなぐ。医療現場の顔を見せる広報PR|公益財団法人筑波メディカルセンター

緩和ケア病棟で、茨城県産ヒノキを用いて家族用の控室をリニューアルした公益財団法人筑波メディカルセンター。大学・NPO法人と協働し、クラウドファンディングで資金を集めるなど、患者や地域との結びつきを大切にした広報PRを貫いています。

こちらの取り組みを伝えたプレスリリースは、「プレスリリースアワード2022」で「ヒューマン賞」を受賞。審査では「成果や裏側にあるストーリー、プロセスが丁寧にまとめられている」「高齢化社会をリードする日本に明るさをもたらす内容」との講評がされました。

患者と地域への熱い想いが伝わる広報PRは、どのように生まれたのでしょうか。総務部広報課の遠藤友宏主任に聞きました。

公益財団法人筑波メディカルセンターの最新のプレスリリースはこちら:公益財団法人筑波メディカルセンターのプレスリリース

公益財団法人筑波メディカルセンター 法人管理本部 総務部広報課

遠藤 友宏(Tomohiro Endo)

大学卒業後、新卒で旅行会社に入社。営業担当を経て2012年、公益財団法人筑波メディカルセンターに入社。2015年から広報課でメディア対応、動画編集、SNS運営などを担当している。

※受賞のプレスリリースはこちら
#病院にアートを|茨城県産ヒノキに囲まれた家族控室が、 緩和ケア病棟内に誕生 -クラウドファンディングで実現し、7月1日より運用を開始-

ご報告は、クラウドファンディングを知らない人にも

──病院関係者の笑顔を動画・画像のビジュアルで伝え、シンプルな構成でありながら熱意が伝わる広報PRは、どのような狙いで発信されたのでしょうか。

予想以上の反響をいただいた2021年7月のクラウドファンディングから足掛け1年、新型コロナの影響で工事が中断したこともありました。地域の方、支援者の方に向けて「無事に完成しました」と、ご報告と感謝を伝えるために作ったプレスリリースです。

加えて、クラウドファンディングを知らない人にも、筑波メディカルセンター病院の取り組みを伝えたかったんです。そのため、現場で働く関係者の顔を見せて「なぜ控室をリニューアルしたのか」を説明するダイジェスト動画を作りました。

もともとカメラが好きだったのですが、きっかけは、ネクステージグループが入社式を結婚式になぞらえ、チャペルで行う取り組みで。埋め込まれた動画を見て、めちゃくちゃ感動したんですよね。「動画は人の心を動かせるかもしれない」と思いました。

──タイトルもわかりやすく、法人名と合わせた84文字に「5W1H」が詰まったものでした。

When(いつ)7月1日より
Where(どこで)緩和ケア病棟内
Who(誰が)公益財団法人筑波メディカルセンター
What(何を)茨城県産ヒノキに囲まれた家族控室
Why(なぜ)#病院にアートを
How(どのように)クラウドファンディングで実現

茨城県の地元メディアにいかに取り上げてもらうか、を重視して作っています。たとえば茨城新聞は、記事のアーカイブが見られます。キーワードの「ヒノキ」で検索して、記事中ではどのような表記をしているのか調べました。ひらがなかカタカナか、「ヒノキ」か「ヒノキ材」か。採用されている表記「県産ヒノキ」を、タイトルに盛り込んだ形です。

タイトル候補は、10個ほど出して直前まで迷ったんです。やはり地元のヒノキにこだわっていましたので「茨城県産ヒノキ」とすること、クラウドファンディングで使っていたハッシュタグ「# 病院にアートを」を入れることを決めました。

筑波メディカルセンタープレスリリース

──メディアからの反応はいかがでしたか。

結果的には、発表当日にメディア1社から取材の打診をいただき、茨城新聞と地元のラジオ、2媒体でパブリシティを獲得できました。「緩和ケアの実情もふまえて発信したい」と取材してくださる社もあり、ありがたい限りです。反省点は、控室の利用開始日との兼ね合いで、金曜日に発信してしまったこと。また、参院選を控えるなかで安倍元首相の銃撃事件が重なりました。

正直、もっと反響があるはずだと過信していました。メディア露出の観点で点数をつけるならば、65点くらいでしょうか。対メディアでは手ごたえが少なかったので、プレスリリースアワードで取り組みを評価いただけたことは、うれしかったです。

筑波メディカルセンター取材01

画面越しに顔が見えると、「自分ごと化」できる

──40カット以上の画像や映像を組み合わせ、クラウドファンディングの背景を丁寧に説明した動画が目を引きました。どのような体制で作ったのでしょうか。

広報課は計7人、課長を除いた実働部隊は私を含めて6人です。機材は一眼カメラ、ジンバルを付けたスマホを使いました。動画編集は、Microsoft Power Pointの動画を書き出せる機能や、AdobeのPremiere Elementsなどを普段は使っています。緩和ケアの担当者、クラウドファンディングにかかわった人の顔が見える内容にこだわりました。

数ヵ月にわたる撮影は、リニューアルの経緯を伝えるため、プロジェクトにかかわった院内外全ての人をおさめています。地元の木工所の方にもご協力いただき、ヒノキ材の加工、塗装、搬入の現場を撮影させてもらいました。

──プロジェクトに携わる人の「顔」を伝えることに、なぜこだわったのでしょうか。

現場の顔が見えると、受け手がプレスリリースを「自分ごと化」できると思っています。広報課で2017年からFacebookを始めたのですが、職員の顔が見える写真付きの投稿は、リーチ数がぜんぜん違う。このことから「とにかく顔を載せよう、できれば笑顔がいい」と、日々写真を撮らせてもらっています。

地域の方や患者さんはもちろんですが、病院内からの反応を同じくらい大切にしています。当院には約1400人の職員がいるので、ほかの担当部署が何をやっているのかが見えません。知っている人が写真で取り上げられていると、「あの先生写ってるな」とか「そこの病棟の看護師さんだ」となる。当事者意識を持ってもらえると、病院全体のエンゲージメントが高まりますし、現場を巻き込む企画もお願いしやすくなります。

「病院広報」の枠にとらわれずアンテナを張る

──医療機関のプレスリリースは専門用語が多くてとっつきにくいイメージがありますが、医療従事者の笑顔がうつり、温かく柔らかみのある「病院らしくない」表現は新鮮でした。

「病院広報」という枠組みで、あまり考えないようにしています。もちろん関係省庁・医療従事者あっての病院ですので、そこのところの配慮は必要です。たとえば、病院広報は「医療広告ガイドライン」の制約を受けます。ほかにも施策の結果、来院する人の数が増えすぎると実務上は良くないと受け止められることもあります。医療にまつわる情報はセンシティブに扱う必要がありますし……。これらの事情から、年間のプレスリリース本数が増やしにくい部分もあります。

ただ、医療業種の広報イベントだけに参加していると、業界のあるあるネタを交換して終わってしまう。そこで私は、年間20~30回ほど広報ノウハウについて学べる研修会に参加して、ベンチャー含む他業種の広報ノウハウを知りました。新型コロナの影響で、オンラインイベントが増えましたよね。今では無料で情報収集できる場が、そこら中にあります。

写真の撮り方については、茨城県のとある自治体の広報の方がイベントで写真を撮っている姿を見て「こんな撮り方もあるのか」と。カメラと被写体の距離感など、実践的なスキルを盗ませていただいたこともありました。SNSでも、表現のヒントを拾うことができます。

筑波メディカルセンター取材02

クラウドファンディング達成は予想外

──2021年7月に目標金額350万円のクラウドファンディングを発表し、1ヵ月ほどで目標を大幅に上回って約1300万円を達成しました。道のりを教えてください。

当院では、前代表理事の「病院にうるおいを!」の掛け声のもと、2007年頃から筑波大学の学生の方と病院でのアート活動を行っています。NPO法人チア・アートや地域の木工所の方々とも協働しており、病院のエントランスも、木のぬくもりを感じるものに変えました。

病院関係者は慣れてしまいがちですが、「消毒液のにおいがする」「暗い」など、第三者が感じる病院のイメージってあると思うんです。その固定概念を、外部の視点を入れて変えていく必要があります。

こうした前例があったなかで「地域の皆さんと一緒に病院を改修していったらどうかな」という代表理事の声があり、クラウドファンディングを企画しました。READY FORにプロジェクトを掲載して、同じ日にPR TIMESでプレスリリースを発信しました。すると、約1週間で目標額の350万円を達成。正直、そこまで集まらないと思っていたので驚きました。

地域の方、患者さんのご家族、ご遺族の方、緩和ケアに携わる当事者など、じつに幅広い方が支援してくれました。ファンを増やせたと思っています。

──病院の関係者からは、どのような反応がありましたか。

当初は「集まったとしても500万円くらいじゃない?」という冷静な声もありました。ただ、そんな中でも毎日数字が増える楽しみを体感してもらいながら、当院を支えてくれるファンが増える様子をリアルタイムで伝えたかった。そこで、院内で職員向けにお知らせを表示するデジタル掲示板を活用することを思いついたんです。

画面上で毎日、増え続ける金額を更新しました。たとえば給与が振り込まれて、貯金通帳の数字が増えているとうれしくないですか?狙い通り、増え続ける数字に興味をもってくれる職員がつぎつぎと出てきました。1ヵ月たたないうちに、1000万円の大台が見えてきて、その数字を超える瞬間は、病院全体がざわざわしましたね。

数字を見た職員から「もうすぐ達成しますね」「昨日急に支援金額が増えたね」など、いろいろ声をかけてもらいました。クラウドファンディングの企画を通じて、職員の「自分ごと化」がさらに進み、一体感が増したと思います。

「文章が苦手」だけど広報に。赤字だらけの社内報

──病院広報の枠組みにとらわれない企画の数々が印象的です。2015年から広報課に配属されたとのことでしたが、ご経歴を教えてください。

新卒で旅行会社に入って営業職を担当したあと、転職で当院に入社しました。広報職に異動することになったときは、身構えてしまいました。思い出すのは小学生のころ、親に手伝ってもらった読書感想文。心から書きたくなくて頼むほど、文章には苦手意識があります。

「営業職だったからフットワークの軽さには自信があるけど、文章は……。」と悶々としていましたが、広報課では執筆を避けて通れません。白黒8ページで隔月の社内報を担当することになり、直属の上司からは真っ赤な原稿が返ってくる毎日でした。

てにをは、人名、誤字脱字のチェックができておらず、「一文をもっと短く!」と指摘を受けることも多かったです。赤字が多すぎて、めげそうな日もありました。当時はつらかったですが、今は鍛えていただいたと実感しています。よくよく考えると、赤を入れる側も大変だなと。エネルギーと時間がかかるし、改善しようと思ってるから直すんですよね。

──文章が苦手だった遠藤さんが、プレスリリースを書くときに気を付けていることを教えてください。

想定する媒体の文章と、それを書くために必要な要素をイメージしてから、執筆するようにしています。たとえば新聞だと「公益財団法人筑波メディカルセンターは7月、緩和ケアの控室で……」とか。記者の気持ちになって思い浮かべながら、書いています。掲載を狙う媒体で、キーワードがどのように表記されているか調べることも大切です。

また、プレスリリース発信の前後1週間は、病院に置いてある地方紙を読むようにしています。日によって広告の面積が多かったり、顔写真付きで表彰の記事があったり。「今日のニュースはこんな感じなんだな」と、把握するのに役立っています。執筆からは離れますが、記者とのコネクション作りのために署名記事に目を通すのも大事です。

次はファンをつなぎとめる広報PR活動へ

──これからの広報PRの目標を教えてください。

クラウドファンディングで法人内外のファンが増えたため、次は、いかにファンをつなぎとめるかを考えています。病院にかかわる人たちが、病院のニュースを「自分ごと化」できる機会、職員のエンゲージメントを高める場は、継続的に企画したいです。

緩和ケア病棟の控室をより良くするために集まったクラウドファンディングのお金ですが、余剰分を集中治療室(ICU)の控室の改修にも充てることになりました。緩和ケアの大切さに共感してくださった支援者の方がいる手前、「ほかの用途に使ってもいいのか」と、病院内でも議論がありました。

ただ、「自分ごと化」してくださったフォロワーさんや、病院に興味を持ってくれた方に「ありがとうございました」で終わるのは、もったいない気がして。加えて当院は、救命救急センターの機能を備えており、ICUを利用するご家族へのケアも重要視しています。「家族ケア」の目的はクラウドファンディングの主旨にも沿う内容のため、追加情報をサイト上で明記しつつ、透明性をもって運営を続けていくことにしました。

継続的にうちの発信を見て、知っていただくことが大切ではないかと思い、取り組んでいます。これからも、人の顔が見える発信を心がけていきたいです。

筑波メディカルセンター取材03

今回の事例ポイント

  • 動画は人の心を動かす
  • 顔を見せた発信は、職員と地域の方の「自分ごと化」につながる
  • 「自分ごと化」は、職員のエンゲージメントや一体感を増してくれる
  • 他業種の広報PRノウハウやSNSは、新たな表現手法のヒント
  • 社内外にファンを増やし、つなぎとめていくことを目指す

「病院広報」としての枠にとらわれず、関係者の横顔を伝える動画を発信し、病院内の職員を巻き込みながら「自分ごと化」の輪を広げた遠藤さん。地方紙の記事にも目を通し、記者目線でわかりやすい内容のプレスリリースを作ったところも参考になります。

当事者目線のファンを増やして定着させていく、そんな広報PR活動から今後も目が離せません。

(撮影:近澤幸司)

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この記事のライター

渡辺 香里那

渡辺 香里那

PR TIMES MAGAZINE編集部。大手新聞社に2015年新卒入社。経済、社会、写真映像部で約7年間記者とカメラマンを経験したのち、「読者のニーズによりそった企画を考えたい」とPR TIMESに入社。広報PRパーソンにとって役立つと思った企画を日々、提案しています。趣味は写真撮影とスポーツ観戦です。

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