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エモーショナルブランディングとは?メリット・注意点・主な5つの手法・成功のポイントを解説

企業名や商品・サービスの価値を生活者に認知してもらい、信頼と肯定的なイメージを築くためには「ブランディング」は欠かせません。しかし、多くの企業がブランドの確立に取り組んでいる中で、生活者の記憶に残るブランドを築いていくにはどうしたらよいのでしょうか。そのためには生活者の「感情に訴える」という視点が重要になってきます。

本記事では、さまざまなブランディング戦略がある中でも感情に訴えかける「エモーショナルブランディング(Emotional Branding)」を解説。メリットをはじめ、注意点や主な手法を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

エモーショナルブランディングとは

エモーショナルブランディングとは、ブランドや商品・サービスの情報だけでなく、生活者の感情に訴えかけ、その魅力を伝える戦略のこと。「エモーショナル」は、「感情的な」「情緒的な」という意味を持ちます。その言葉のとおり、エモーショナルブランディングは人々の心に響く体験を提供することで、共感を生み、ポジティブな感情を持ってもらい、ブランドと生活者の間に深いつながりを築くことを目的としています。

たとえば、お菓子の新商品のイベントを実施する際に、味だけではなく、試食した人にとって「懐かしさ」「ワクワク感」などの心の動きを促すことで、ほかの商品との差別化が可能になります。

単なる情報発信にとどまらず、「気持ち」や「感情」にフォーカスすることがエモーショナルブランディングの基本的な考え方です。

エモーショナルブランディングの3つのメリット

エモーショナルブランディングを活用することで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、特に重要な3つのメリットをご紹介します。

メリット

メリット1.価格競争に巻き込まれにくくなる

機能やスペックだけでなく「このブランドだから買いたい」という感情的な価値が生まれることで、価格以外の理由で選ばれるようになるのがエモーショナルブランディングの大きな利点です。

また、顧客との感情的な結びつきによるリレーションシップは、競合他社との差別化につながります。人の心に響く体験を提供し、それを企業側が的確に訴求できれば、ブランドへの愛着や信頼性が高まり、共感してくれた生活者は長期的なファン(リピーター)となりえます。

このような関係性が築ければ、価格競争に巻き込まれにくくなり、持続可能なビジネス展開が可能に。結果として、ブランドの価値は資産となり、「ブランドエクイティ」にもつながっていきます。

ブランドエクイティについては、以下の記事をご覧ください。

メリット2.ファンによる自然な拡散が期待できる

感情を動かされた顧客は、その体験を誰かに伝えたくなる傾向があります。主に、SNSやレビューなどによる拡散が期待できるでしょう。さらに、顧客自身がブランドに強く共感した場合、自発的にブランドの魅力を周囲に伝えてくれることもあります。

五感を刺激するエモーショナルブランディングは、UGC(ユーザー生成コンテンツ)やファンマーケティングの土壌を作りやすく、広告に頼らずともブランドが広がっていく可能性が高まります。

メリット3.社内の意識統一・エンゲージメントが向上する

ブランドに対する理解と共感は、社内の意識統一にも寄与します。従業員がブランドと感情的なつながりが深いほど、企業としての一体感が生まれるでしょう。さらに、従業員同士の価値観やブランドに対する意識を深めることで、エンゲージメントの向上が期待できます。

そのためには、エモーショナルブランディングと並行して、従業員に企業理念やブランドの価値観を共有する「インナーブランディング」の取り組みが有効です。エモーショナルブランディングとインナーブランディングを組み合わせることで、社内においてもより強固なブランド基盤を築くことができるでしょう。

インナーブランディングについては、以下の記事もご参照ください。

エモーショナルブランディングを実施するときの注意点

エモーショナルブランディングは、生活者の感情に訴えかける戦略であるがゆえに、いくつか注意すべきポイントがあります。

まず、感情に訴えることを狙うあまり、過激な表現や偏ったメッセージにならないように注意が必要です。また、国や地域、文化的背景の違いによって、同じメッセージでも与える印象や受け取られ方が異なることもあります。グローバル展開をする場合は、これらを考慮して実施しましょう。

発信するメッセージ自体が魅力的で感情に強く訴えかけるものであったとしても、商品・サービス、企画や実際の接客、企業活動と一貫性がないとブランディングの効果は半減、もしくは逆効果になることも。

だからこそ、誰に対してどういう感情を訴えかけたいのか、明確にして取り組むことが大切です。

エモーショナルブランディングの5つの手法

感情に訴えるエモーショナルな結びつきが重要なエモーショナルブランディングですが、具体的にはどのような手法があるのでしょうか。ここでは、エモーショナルブランディングを実践するうえで有効な5つの手法をご紹介します。

手法1.キャッチフレーズの活用

商品・サービスのコンセプトや価値を簡潔にわかりやすく伝えるタグライン、企業のスローガン、キャッチフレーズは、ブランドの核を象徴する重要な要素です。

先述したとおり、エモーショナルブランディングでは、単に商品・サービスの情報の特徴を伝えるのではなく、「それを使うことで得られる感情や体験」に焦点を当てることがポイント。宣伝的なフレーズではなく、心に響く情緒的な言葉で、生活者の感情を揺さぶることが求められます。

何よりも、自社の生活者像を思い浮かべながら、共感や愛着を引き出すようなフレーズを考えることが大切です。

手法2.著名人・キャラクターの起用

ブランドの世界観や価値観を体現する存在として、著名人やキャラクターを起用するのも有効な手段です。

起用にあたっては、その人物やキャラクターの持つ性格・人生観・背景が、ブランドが伝えたい感情と一致しているかどうかが大切です。また、ブランドの人格(パーソナリティ)を直感的に伝えられる存在であることもポイント。直接的な起用だけでなく、アンバサダーやエバンジェリストなどにより、生活者とブランドをつなぐのもエモーショナルな関係構築に効果的です。

手法3.パーソナライズされたコミュニケーション

エモーショナルブランディングにおいて、パーソナライズされたコミュニケーションを組み入れることは、顧客との結びつきを深めるカギとなります。

パーソナライズコミュニケーションとは、顧客の属性・行動・ニーズに合わせて最適なタイミングで情報発信したり、一人ひとりにあった表現でメッセージを届けたりして、購買行動を促進すること。顧客に「理解されている」「大切にされている」と感じてもらえ、さらに信頼・安心・愛着といった感情を抱いてもらうきっかけとなりえます。

リアルな場でもデジタルの場でもパーソナライズは、エモーショナルブランディングにおいて重要な役割を担う手法のひとつです。

手法4.コミュニティの形成

エモーショナルブランディングにおけるコミュニティの形成は、ブランドとのリレーションシップにおいて重要な役割を果たします。コミュニティを形成することで、生活者はブランドを中心とした共通の価値観や興味を持つ人々とつながり、ブランドへの帰属意識を強めます。

自分の価値観に合ったコミュニティにいることで、安心感や一体感を得られるのではないでしょうか。ブランドが提供するコミュニティがその役割を果たせば、単なる商品・サービスである以上の意味を持つ居場所となります。

手法5.ストーリーテリングされたプレスリリースの配信

前提として、プレスリリースはニュースとなる新規性のある情報を伝えることが目的ですが、ストーリーや企業姿勢を織り交ぜることで感情に訴えかけることができるでしょう。

ただプレスリリースの主体は、あくまでも一次情報の発信となる新規情報ですので、情報量のバランスが大切です。プレスリリースでは伝えきれないストーリーなどは、「PR TIME STORY」を活用するのも効果的。創業物語や商品の開発秘話といった、生活者の心を揺さぶるストーリーが届けられます。

エモーショナルブランディングの事例

感情に訴えかけるエモーショナルブランディングを活用した広報PR施策をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

事例1.記念日に合わせた限定パッケージで多くのファンを獲得|株式会社豊島屋

鳩をモチーフにしたお菓子「鳩サブレー」で知られる株式会社豊島屋は、毎年8月10日の「鳩の日」に合わせて限定パッケージの販売を実施しています。

“馴染みのお客さまへの感謝を伝える”ことを目的にスタートしたこの施策は、行列ができるほどの人気を博し、SNSなどでも「かわいい」と話題に。

創業130年の老舗和菓子店で長年愛され、広く知られる定番のお菓子でも、感情に訴える仕掛けで新たなファンを獲得できた好事例です。

事例2.ふるさとの温かさを感じるホテルが共感を呼ぶ|株式会社カラリト

五島列島の魅力に惹かれてオープンした「カラリト五島列島」。株式会社カラリト代表取締役・平﨑氏の「誰かにとっての居場所をつくりたい」という想いのもと、ホテルや滞在施設などの運営を行っています。

従来のホテルの既成概念にとらわれず、未経験のスタッフの採用や農家の収穫体験といったユニークな取り組みを実施。広大な海と山に囲まれ、五感を刺激する五島列島の大自然の中での体験が来訪者の心を深く揺さぶり、「また帰ってきたくなる」場所となっています。

事例3.選手による自主的な社会貢献活動が注目|株式会社千葉ジェッツふなばし

男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」で注目の「千葉ジェッツふなばし」を運営する株式会社千葉ジェッツふなばしは、「チームとフロントスタッフとの架け橋」を目指した広報活動を重視しています。

また、地域に支えられ、地域チームとして成長してきた千葉ジェッツふなばしは、地域を支える側になり、地域課題を解消していく『JETS ASSIST(ジェッツアシスト)』という社会貢献プロジェクトも行っています。一方的な発信ではなく、周囲を大切にする取り組みは、多くの人の興味を呼ぶポイントになっています。

エモーショナルブランディングを成功させる3つのポイント

エモーショナルブランディングは一方通行な発信ではなく、生活者の感情に訴えかけ、双方向の関係を築いていく戦略です。ここからは、エモーショナルブランディングを成功させるために必要な3つのポイントをお伝えしていきます。

ポイント

ポイント1.どんな感情を提供したいのかを明確にする

エモーショナルブランディングを成功させるカギは、「届けたい感情」を明確に定義することです。まずブランドが喚起したい、安心・共感・高揚といったポジティブな感情を言語化し、ビジュアルやコピー、体験設計などを決定し、生活者がそれらを実際に感じられるかのような仕掛けを組み込みます。そして、定期的に効果を測定・改善することで、深い心の結びつきを築けるでしょう。

また、ブランドに性格・口調・価値観など人格を持たせることで、一貫したコミュニケーションが可能に。手法1で紹介したように、著名人やキャラクターなどを起用するのも効果的です。

ポイント2.共感を抱かせるストーリーを創出する

人は物語に共感し、心を動かされるため、エモーショナルブランディングにおいてはどんなストーリーを伝えたいのかを明確にすることが重要な要素です。

ブランドの原点や想い、課題を乗り越えたエピソード、創業物語や挑戦の過程、顧客による感動体験など、感情に響く物語を言葉や映像で紡ぎます。そのストーリーをWebサイトに反映し、訪問者が自然と物語に引き込まれる導線を設計しましょう。共感体験を提供することで、ブランドへの愛着と信頼が深まり、ファン化を促進します。

ポイント3.感情を動かす体験を設計する

エモーショナルブランディングを成功させるポイントは、生活者の感情を実際に動かす体験を設計することです。たとえば、Webサイト上では、ホバーアニメーションやスクロール演出を使ったインタラクション、ストーリーページ、来訪者が参加できるクイズやシミュレーションなどの体験型コンテンツを組み合わせ、五感に訴える演出を盛り込むのもひとつ。また、Webサイトだけでなく、SNSや広告、イベントなど多様な接点を通じて一貫して発信することで、より多くの生活者との共鳴が期待できます。

ほかにも、初めてブランドに触れた瞬間の印象、購入時の丁寧な対応、届いた商品のパッケージやメッセージ、使ったときの満足感、購入後のフォローやつながりの提案などにひと工夫をすることで、感情に影響を与えることにつながります。

ユーザーのアクションに応じて変化する仕掛けを用意することで「自分ごと化」を促し、感動や発見の瞬間を生み出せます。こうした体験設計によって、ブランドへの没入感と愛着が一層深まります

戦略的なエモーショナルブランディングで広報PRを強化しよう

モノがあふれる現代では、競合と差別化し、価格競争に巻き込まれない企業になることがますます重要なポイントに。企業や商品の魅力を心に残る形で伝える「エモーショナルブランディング」は、生活者の感情に訴えかける体験を提供し、深い絆を築く戦略です。

本記事では、エモーショナルブランディングを取り入れることで得られるメリット、手法などを紹介しました。

感情的な要素は、物理的なモノ以上に生活者の心を動かします。気持ちに深く訴えるリレーションシップは企業にとって強い基盤となります。紹介した内容を参考に、エモーショナルブランディングを取り入れてみてください。

参考:『エモーショナルブランディング―こころに響くブランド戦略』(マーク・ゴーベ著)

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この記事のライター

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