採用情報を掲載する「採用サイト」では、自社で働く社員に入社の理由や仕事のやりがいなどを聞いて記事にした「社員インタビュー」を掲載して、求職者に向けた情報発信をすることがあります。
本記事では、これから社員インタビューに取り組みたいと考えている採用広報の担当者に向けて、採用サイトに社員インタビューを載せるメリットや効果的な作成方法と質問項目、準備のステップなどをご紹介します。
採用サイトに社員インタビューを掲載するメリット
社員インタビューの掲載には、どんなメリット・効果があるのでしょうか。大きく3つのメリット・効果として、企業理解の促進、入社後のミスマッチ防止、インターナル・リレーションズの効果があげられます。それではひとつずつ見ていきましょう。
1.企業理解の促進
採用サイトに社員インタビューを掲載すると、社員のストーリーや社風が具体的に伝わりやすくなるメリットがあります。
社員インタビューの記事では、職場の環境や仕事の内容を、実際に働いている社員の生の声として伝えられるだけでなく、写真も使用することでリアルに想像してもらうことができます。これは、求職者が自社に入社したときに、どんな人と一緒に働き、どんな活躍ができそうかをイメージしてもらうことにつながります。
上記のように、学生が入社を決めたきっかけが「社員や社風が魅力的である」ことも少なくありません。インタビューコンテンツも求職者との接点のひとつ。「働くこと」「入社後のロールモデル」を意識してもらいつつ、社風や個別の社員を認識してもらえるきっかけにしていきましょう。入社後のキャリアパスを想像しやすくなり、企業理解が促進されます。
参考:「2023年新卒採用 大学生の就職活動に関する調査」の結果を発表~ハイブリッド面接が一般化、ミスマッチを防ぎ入社後の定着につながる採用・就職活動とは~
2.入社後のミスマッチ防止
自社の求める人材像を社員を通して伝えることで、企業・団体と求職者のミスマッチを事前に防ぐことができます。
求職者側としても、社員インタビューで語られる社風や任せられる仕事などのエピソードを通じて、自分がその企業・団体に合うかどうかを応募前に判断することができます。企業理解が進み、その企業・団体で働く自分の姿がイメージできた状態で入社してもらえれば、将来の活躍も見込めるでしょう。
職場の雰囲気や人間関係は、離職の引き金になりえます。厚生労働省によると、「定年・契約期間の満了」や「その他の理由」を除いた退職理由としては、男性が「給料等収入が少なかった」で9.4%、女性は「職場の人間関係が好ましくなかった」で13.3%と、もっとも高くなっています。
ミスマッチを防ぐためにも、社員インタビューを効果的に使用しましょう。
3.インターナル・リレーションズの効果
社員インタビューは、自社で働く従業員との「インターナル・リレーションズ」を深める効果もあります。インターナル・リレーションズは広報担当者の役割のひとつで、社内コミュニケーション活動のことを指します。
インタビュー対象者に選ばれ採用サイトに掲載されることは、社員のモチベーションアップにつながります。さらに、社員インタビューは社内で共有することも多いため、他部署の仕事や人を知る機会となり、求職者以外にもキャリア・働き方のモデルケースを示せます。社内のコミュニケーション活性化にもつながるでしょう。
社員インタビューの対象者を選定する5つのポイント
採用サイトに社員インタビューを掲載すると、求職者にとっても企業・団体にとっても効果的であることがわかりました。
効果的なインタビュー記事にするために重要なポイントは、「人選」です。インタビューに登場してもらう社員は、記事の目的や募集職種などに合わせて、その都度変えていく必要があります。
ではどのような人にインタビューすればよいのでしょうか。ここでは社員インタビューの対象者を選定する際のポイントを5つご紹介します。
1.企画の目的や記事のゴールに合った社員を選ぶ
必ず企画の目的に合った社員を選びましょう。インタビューは「あの社員にインタビューしたい」と、人ありきで考えたくなる場合もありますが、いったん立ち止まりましょう。例えば「入社2~3年目の若手でも裁量を持って活躍できることを伝える」が記事のテーマであれば、ベテランよりも若手から選ぶ必要があります。
2.求める人材像に近い社員を選ぶ
インタビューの対象者は、自社が採用したい人材像に近い社員を選びましょう。社員のイメージは、企業・団体のイメージと直結します。
求める人材像とは異なる社員をインタビューで起用してしまうと、求職者に入社後「こんなはずじゃなかった」「イメージと違う」と思われかねません。ミスマッチを避けるため、求める人材像を決めたうえでアサインすると効果的です。とはいえ多様性を重視しながら幅広い人材像をカバーすることも忘れないようにしましょう。
また、ペルソナの枠組みを用いて、自社の理想的な従業員像や求職者像を設定してみるのもよいでしょう。
3.性別や職種など偏りが出ないように選ぶ
インタビュイーとなる社員は、入社年度、性別などの属性から見ても偏りがないよう、幅広く選びましょう。例えば、このような属性があります。
- 職種
- 性別
- 年齢
- キャリア
- 出身地
- 新卒/中途 など
新入社員ばかりを掲載していたら、中堅社員は求められていないように映るかもしれませんし、同じ職種ばかり掲載していたら、ほかの職種の募集がない職場だと思われてしまうかもしれません。インタビュイーの属性をチェックして、特定の属性に偏ることのないよう複数のインタビュー記事を掲載するようにしましょう。
4.入社後に一緒に働くことになるメンバーを選ぶ
求職者が入社後に一緒に働くことになる人や、同じポジションの人をインタビューの対象者に選びましょう。そうすることで、入社後の働くイメージがより湧きやすくなります。
自社で採用したいポジションから逆算してみてください。例えば、新たにマーケティング部のチームリーダーを採用したい場合、営業担当者やプロダクト開発担当者と仕事をしてもらうことになるのであれば、それらの部署の担当者から起用するとよいでしょう。また、同じくチームリーダーとして働く別部署の人を選ぶのも一計です。
ケースに応じて、採用職種の上司・部下の関係になりそうな人、同じ支社で働くことになる人からも選んでみてください。
5.顔写真を載せてもいい人を選ぶ
自社の雰囲気を伝えるためにも、できればインタビュー記事ではバストアップや顔写真を載せたいものです。そのため、顔写真を載せてもいい人を起用しましょう。「インタビューに答えるのはいいけれど、顔写真はイヤ」という人は、案外います。インタビューの相談を持ちかける段階で、きちんと確認を取っておきましょう。
社員インタビューで聞いておくべき項目・質問例
インタビュー対象者には、どのようなことを聞くとよいのでしょうか。インタビューの目的は「求職者が知りたいこと」を伝えることです。以下の7つのポイントを意識しながらチェックしていきましょう。
1.入社のきっかけ
「入社したきっかけ」は大事な質問項目です。その中でも「入社前、自社のどんなところに共感して入社しましたか」は、聞いておくべき項目のひとつです。この質問への回答が、読み手である求職者がぼんやりと考えていた志望動機が明確になるのを助け、応募の後押しとなることもあるでしょう。
2.1日のスケジュールや具体的な仕事内容
1日のスケジュールや具体的な仕事内容を聞きましょう。「1日の仕事の流れを教えてください」「日頃どんな仕事をしているのですか」などの質問は、求職者が担う業務内容を想像しやすくするでしょう。
質問する際に、その社員の業務が社内でどのような位置付けの仕事なのか、大枠から話してもらうのもよいでしょう。自社の使命や、自社全体から逆算してどのようなミッションを背負った役職なのかが理解しやすくなります。
3.自社の雰囲気
職場の環境、組織文化、社風などについて聞いてみましょう。ボトムアップ、成果主義、フィードバックなど自社を理解してもらうためのキーワードとなるものについては、具体的な内容やエピソードを併せて聞けるとよいです。入社前と入社してからのギャップもあれば、教えてもらいましょう。
4.失敗談や苦労話、プロジェクトの裏側など
入社後の苦労話と、そこからの復活劇についてなどのエピソードは、インタビュー記事に起承転結の流れをもたらすためには必要な項目です。「これまでで一番苦労したことはどんなことですか。どうやって乗り越えましたか」などを質問した記事は、成功体験ばかりの記事よりも、共感を得やすいでしょう。
また、プロジェクトの裏側などの質問もおすすめです。具体的なエピソードから、自社で働くとどんなやりがいを得られるのかがイメージしやすくなるでしょう。
5.これから自社でやりたいこと
将来のキャリアアップのイメージや、これからの理想の働き方について聞いてみてください。「チャレンジしてみたいことはありますか」「今考えているキャリアプランはありますか」などの質問をしてみるとよいでしょう。
入社してもらうからには、明るいキャリアパスを描いて、長く自社で活躍してもらいたいものです。求職者に、自社での未来を想像してもらうために効果的な項目です。
6.プライベート
仕事のことばかりではなく、プライベートについての質問は親しみを抱かれやすい項目です。可能な範囲で質問してみましょう。社員の休日や終業後の過ごし方については、実際に働くとなったときのワークライフバランスをイメージしてもらうのに役立つ質問項目のひとつです。
7.プロフィール
インタビュー対象者の基本情報は必要です。求職者は、自分と照らし合わせることで応募の判断材料のひとつにしているからです。
具体的には、以下のような項目があります。
- 入社年
- 部署
- 入社までの経歴
- 最終学歴 など
地方でテレワークが可能であるなど、働き方の多様性をアピールしたいのであれば、問題ない範囲で居住地を示していいかインタビュー対象者に確認しましょう。記事の要素として取り入れてみるのもいいかもしれません。
社員インタビューを記事にするための進め方【事前準備からコンテンツの公開まで】
ここまで、社員インタビューにおいてポイントとなる「人選」「質問項目」について確認しました。ここからは、インタビューの具体的な進め方を確認していきましょう。初めてインタビューに取り組む人でもスムーズに進められるよう、事前準備からコンテンツ公開までの手順をまとめました。
1.目的を決める
まず、インタビュー記事でどんなことを伝えたいか、目的を明確にします。
目的を決めることで、社風をメインで伝えたいのか、福利厚生を伝えたいのか、それとも、キャリアプランについてを伝えたいのかなどの情報が整理できます。
2.読み手となる求職者のイメージを定め、知りたい情報を想定する
次に、求職者のイメージを定めて、読み手になりうる人が知りたい情報とは何かを考えましょう。求職者が応募したいと思ってもらうために、入社後を想像しやすい記事にする必要があります。
求職者のイメージを設定することができれば、配属部署の詳細など質問内容を事前にまとめることができます。求職者目線で、おのずと細かい質問も増えていくはずです。
3.インタビュー対象者を決める
目的の設定と読み手のイメージができたら、インタビュー対象者を決めていきましょう。
企画の内容によっては、インタビュー対象者はひとりではなく、対談形式として2人、座談会形式として3人以上とすることもあります。企画の目的、求職者のイメージに合う内容を話してくれる適任者を探しましょう。
4.掲載形式・インタビューの場所を決める
インタビュー対象者が決まったら、次は掲載の形式やインタビュー場所なども決めます。一問一答や対談、第三者が対象者を紹介する掲載形式などがあります。形式により、掲載する写真の枚数などが異なります。
動画や写真を撮影する場合は、カメラマンに発注する際に説明できるよう、インタビューを実施する場所の候補を考えましょう。自社のイメージを伝えることになるので、広くて明るい部屋や、社名ロゴなどが背景にある場所がおすすめです。
5.インタビューの質問項目は過去・現在・未来の順で考える
インタビューの質問項目は、過去→現在→未来の大枠を決めてから、個別具体的な質問を考えます。
例えば、「過去については、これまでの経歴と入社した理由を聞こう」というようなイメージです。このとき、インタビュー全体の所要時間から、質問の時間配分を考えておくとよいでしょう。
6.対象者の上司やチームの承諾を得る
インタビューの対象者に依頼するより先に、各関係者と調整をし、事前に承諾を得ておくとスムーズです。採用広報チームのことだけではなく、社内全体のワークフローを意識して動きましょう。
7.アポイントを取り、事前にインタビュー情報を共有する
インタビュー対象者にアポイントを取ります。質問項目とインタビューの趣旨も伝えたほうがよいでしょう。読み手に対してどんな情報を発信したいのかも、事前に対象者に共有しましょう。話す内容をイメージしやすくなります。
また、所要時間や実施場所、写真撮影の有無、当日の服装もアナウンスしておきましょう。インタビュー前日にリマインドすることも忘れずに。
8.インタビュー対象者について下調べする
アポイントが取れたら、対象者の基本的な情報について下調べをしましょう。調べておくことで、プロフィールなどの表面的な情報は確認のみで済ませて、より本質的な質問に時間を使えるようになります。SNSアカウントをチェックするほか、周りの人に対象者の仕事ぶりがわかるエピソードを聞いたり、入社年月日など基本情報に加え採用時の印象を人事担当者に確認したりしてみてください。
9.インタビューを実施する
インタビュー当日は、リラックスして進められるよう、雑談や簡単に答えられそうな質問から投げかけていくとよいでしょう。リラックスしていると話が盛り上がり、充実したインタビューになるはずです。
執筆時に備え、インタビューの内容はスマ―トフォンやボイスレコーダーで録音させてもらいましょう。インタビューが終わったら、お礼の言葉はもちろんのこと、その後の記事の公開フローについても共有しておくと親切です。
10.執筆する
執筆に入ります。企画の目的を意識しつつも、自社についてまったく知識を持たない人が読む想定で書くとよいでしょう。
「読み手にとってこの記事が初めての自社との接点である」という意識を持ち、フラットな立場で執筆します。これについては後述の「社員インタビューを魅力のある記事にするための3つのポイント」のポイント3で解説しています。この段階で、記事に写真も挿入しておくとよいでしょう。
11.記事をチェック・公開・シェアする
執筆が終わったら、公開前に関係者へチェックを依頼しましょう。文章だけでなく、掲載する写真の確認も依頼するようにします。確認が済んだら採用サイトで公開し、インタビュー対象者やその上司、協力してくれた人への心からの感謝の気持ちを込めて報告しましょう。
インターナル・リレーションズの観点から、社内にシェアすることもおすすめです。他部署の理解や、コミュニケーションのきっかけになるでしょう。
12.振り返りをする
記事の公開が確認できたら、今回の企画の内容からインタビュー、ディレクションなど一連の業務を振り返り、次回につなげましょう。
「KPTモデル」という振り返りのフレームワークを使うのもおすすめです。採用広報担当者と連携して、公開した記事のPVや効果、反応などを確認していきます。
社員インタビューを魅力のある記事にするための3つのポイント
より魅力的な記事に仕上げるために、どんなことに気をつけたらよいでしょうか。以下の3つを少し意識するだけでも出来栄えに変化があるはずです。一緒に見ていきましょう。
1.写真・動画を挿入する
記事の内容だけでなく、写真・動画を挿入するとより魅力的な記事になります。インタビュー中に撮影した写真だけでもよいですが、社員が実際に作ったプロダクトの写真、開発室や作業机の様子、例えば工事監督者であればヘルメットを被っている姿、飲食店であれば調理場に立っている姿などもよいかもしれません。実際に働いている場所の写真を使用することで、現場の様子をよりリアルに伝えることができます。
2.企画の趣旨を常に意識する
記事を制作する際は、企画の趣旨を常に意識することが重要です。どんなときも、誰に向けた記事か、何のために作る記事か、どんな役割を担う記事かを意識して取り組みましょう。
3.フラットな立場でインタビューする
社員インタビューのコツは、自分をフラットな立ち位置に置くことです。
同じ企業・団体に勤める社員同士ではありますが、「社外からやってきたインタビュアー・ライター」という心構えでインタビューを行いましょう。知っている人だとついつい内輪話が弾んでしまうこともあるかもしれません。読み手が求める情報を聞きそびれることがないように、気を引き締めましょう。
参考になる社員インタビューの記事例
社員インタビューの参考事例として、いくつかPR TIMESの採用ページからインタビュー記事を紹介します。
1.新人社員の対談記事で「就活の軸」を伝える
2022年新卒入社の社員が、就活の具体的なエピソードを交え、どのような考え方を経て入社に至ったかを伝える、若年層の読み手を想定した記事です。就活で大切にしていた軸や入社後のフィードバックの内容など、具体的なエピソードから、入社に至った背景や求める若手の人材像が伝わってきます。
参考:就活の鍵は、覚悟を決めること。22新卒がなぜPR TIMESを選んだか【前編】
2.社外の人の登場で信頼性を担保
インタビュー形式や掲載写真に工夫が見られ、社内の雰囲気がよく伝わる記事です。
インタビューには社員だけではなく、関係する社外の方も登場しています。社内に設置されているカフェスペースについての記事で、インタビュー風景に加え、その現場で働く社員の姿も映っています。
参考:みんなの“居場所”を作りたいー社内ティータイムの運営から見えたPR TIMESのカルチャーとは
3.ノウハウも入れて読み手の得られる価値を拡大
社外を大きく巻き込んだ大型PRプロジェクトの裏側に迫る記事です。当時、多くのPRパーソンが同プロジェクトに注目していました。これからプロジェクトを企画したい、行動したいと考えるPRパーソンの「知りたい」に応えた記事になっています。求職者目線でも、大きなプロジェクトがどのような流れで進められているかがわかる内容となっています。
参考:世の中に無かった概念を提案する。4月1日の意味を変えるApril Dreamプロジェクトにかけた想い
求職者が知りたい情報をリアルに伝えることがポイント
採用サイトに掲載されたインタビュー記事の武器は何といっても「リアルさ」。採用や広報PRだけでは語れない「現場の声」をリアルに伝えられます。
掲載する内容は、自社が伝えたいことではなく、求職者が欲しい情報です。伝えたいことを一方的に伝えても、求職者の疑問や不安は解消されません。求職者起点で考える、逆算の考え方が大切です。
採用広報担当者は、社員インタビューを通して、自社の魅力を発信していきましょう。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
採用につなげる社員インタビューに関するQ&A
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