広報PR業務で避けては通れない「ライティング」の仕事。プレスリリースなどの作成で誤字脱字を指摘された経験のある方は多いのではないでしょうか。誤字脱字があるプレスリリースは、内容の信ぴょう性が損なわれる可能性もあります。そのため、配信前に念入りなチェックを行い、間違いのない文書に仕上げる必要があります。
この記事では、高品質な文書で正確な情報を伝えられるよう、誤字脱字のチェック方法・おすすめツール・ソフトをご紹介します。
プレスリリース配信前の誤字脱字のチェック方法
プレスリリースを配信する前に必ずチェックしたい誤字脱字。ここでは、プレスリリースの誤字脱字のチェック方法をご紹介します。
文字の間違いだけでなく、プレスリリース全体の文章に違和感がないか、読みにくくなっていないかなども併せて確認することが大切です。基本的なチェック方法を実行するのはもちろん、広報部内でチェックリストなどを作成し、「誤字脱字ゼロ」を目指しましょう。
1.レギュレーションを設定しチェックリストに沿って確認する
広報PRを担当する全員がプレスリリースの文章のチェックをスムーズに行えるように、あらかじめレギュレーションを設定しておきましょう。
例えば漢字使用の有無、使用禁止ワード、記号の使い方、統一する用語などが挙げられます。「ひとつ」という言葉があれば、「1つ」「一つ」「ひとつ」のどれを使用するのか、意味合いによって使い分けるのかどうか、自社の製品・サービスを利用する人ことを「お客さま」「購入者」「ユーザー」のどれに統一するかなどを最初に決めておくことで、文書全体の表記ゆれを防ぎ、読みやすいプレスリリースにすることができます。
レギュレーションに従い執筆し、文書が完成したらチェックリストを使って確認を進めます。チェックリストには、表記の間違いだけでなく、文章構成や書き方などについての項目なども加えておくと、誤字脱字チェックと同時に文書全体の確認が行えます。チェックリストを作成しておくことで、チェック担当者の属人化を防ぐこともできます。
ここではチェックリストのサンプルをダウンロードできます。自社で設定したチェック項目があれば、適宜行を追加するなどしてご活用ください。また、チェックリストとともにレギュレーション(表記ルール・用語統一)のリストもご覧いただけます。こちらは一般的に使用されることの多い表記をサンプルとして入力してあります。レギュレーションについては、「これでなければならない」という決まりはありません。自社に合わせた内容に変更してお使いください。
以下からは、もう少し具体的な誤字脱字のチェック方法について解説していきます。
2.意味合いと誤字脱字は分けてチェックする
文章中に含まれるいくつかの単語で、最初と最後の文字以外を並べ替えても、多くの人はその文章を問題なく読めてしまう現象のことをタイポグリセミア現象といいます。
【タイポグリセミアの例文】この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか にんげんは もじ を にしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば じばんゅん は めくちゃちゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。 |
恐らく多くの人が問題なく読めてしまったのではないでしょうか。この現象からも分かるように、人間の脳は誤字脱字を適宜補完してしまうため、ミスに気づきにくいのです。完成した文章をチェックする際、文章の意味合いと誤字脱字のチェックを同時に行ってしまうと、タイポグリセミア現象の影響に気づきにくくなってしまいます。そのため、チェックは「意味合い」「誤字脱字」の2つに分けて行うことがおすすめです。
「意味合い」のチェックでは、文章の流れを確認しながら、内容が適切かどうか確認していきます。このときは、誤字脱字は無視して意味・内容のチェックに集中することが重要です。誤字脱字に気を取られてしまうと、意味や内容の間違いに気づきにくくなってしまいます。
一方「誤字脱字」のチェックでは、文章の意味や内容の流れなどは追わず、一文字ずつチェックしていきます。少し手間はかかりますが、読む視点を分けることで、タイポグリセミア現象に惑わされずにチェックすることが可能となります。
3.文節に区切ってチェックする
誤字脱字をチェックする際、一文ずつではなく、一文を区切ることで間違いを発見しやすくなります。
例えば「来場者・出展者問わず、どなたでも自由にご利用いたけます。」という文章の場合、流し読みしてしまうと、タイポグリセミア現象によって「ご利用いただけます」の「だ」が抜けていることに気づきにくくなってしまいます。これを回避するために、「らいじょうしゃ しゅってんしゃ とわず どなたでも じゆうに ごりよう いたけます」というように、文節に区切って読めば「だ」がないことに気づきやすくなります。
4.数字はひとつずつ読み上げる
誤字脱字のチェックは文字だけではありません。数字の間違いがないかもしっかり確認する必要があります。プレスリリースに記載される数字には、日付や研究結果、アンケートの数値、製品・サービスの値段などがあります。これらに誤字脱字があると、正しい情報ではなくなってしまい、プレスリリースの信用性が失われることになります。
例えば、プレスリリースで紹介する製品が「29,800円」であるところ、誤って「29,880円」と記載されていた場合、一見間違いには気づきにくいのではないでしょうか。数字の誤字脱字をチェックする場合は、ひとつずつ読み上げる方法が効果的です。上記の例でいえば、「に、きゅー、かんま、はち、はち、ぜろ、えん」と読んでみると、本来「0」であるべき箇所が「8」になってしまっていることに気づきます。このときに「カンマ」や「円」も必ず読み上げましょう。記載を忘れていたり、位置がずれていたり、プレスリリース内で「¥」と「円」が混在していたりといったことにも気づきやすくなります。
5.同音異義語にアンテナを張る
誤字脱字のチェックで気づきにくい点には「同音異義語」もあります。例えば「保証」「保障」「補償」は、同じ読み方でも意味は異なります。間違った言葉を選んでしまうと、場合によってはプレスリリースの内容にも影響を与えてしまいかねません。誤字脱字のチェックの際は、同音異義語にアンテナを張り、本当にその漢字で間違いないかも併せて確認するように心がけましょう。
6.ダブルチェックする
人間の目だけでは限界があるとはいえ、やはりダブルチェックは有効な手段のひとつです。誤字脱字に限らず、製品・サービスに関する情報の事実確認なども同時に行えば、プレスリリースの精度をさらに上げられるメリットもあります。上記1~5を複数名で行えば、間違いを最大限減らすことが可能となるでしょう。
7.校正ツールを使う
校正ツールも、誤字脱字の防止のためにぜひ活用したい手段です。プレスリリースの草稿を作成したら、校正ツールにかけてみましょう。単純な誤字脱字だけでなく、修正したほうがよい用法や登場する語句の一貫性、5で述べたような同音異義語も指摘してくれるツールもあります。誤字脱字の防止観点だけではなく、より読みやすい文章づくりの観点からも、ツールの併用をおすすめします。
誤字脱字のチェックを含め、プレスリリースの配信前後に確認しておきたいポイントについては、広報がプレスリリースの配信前後に確認したい22のチェックポイントで解説しています。こちらも参考にしてみてください。
プレスリリースの誤字脱字チェックにおすすめのツール・ソフト
誤字脱字のチェックに活用できる、おすすめのツール・ソフトをご紹介します。無料で使えるものから有料で使えるものまで、6つをピックアップしました。使いたい機能やかけられるコストに合わせたツール・ソフト選びの参考にしてみてください。
1.PR TIMESの校正機能
多くの企業で利用されているプレスリリースの配信サービス「PR TIMES」にも校正機能が用意されています。
【PR TIMESノウハウ】小技だけど使える!知っておきたい便利機能11選でもご紹介しているように、機能があるのはプレスリリースの新規登録・編集画面内。タイトル・サブタイトル・リード文・本文・本文反映済みの画像キャプションの中に、「ら抜き言葉」「不快語」「二重否定」「使用注意」「当て字」「誤変換」「機種依存または拡張文字」に当てはまるものがないかをチェックしてくれます。
2.Wordの「スペル チェックと文章校正」機能
プレスリリースの作成にMicrosoft Wordを使用している場合、必ず使用したいのが標準搭載されている「スペル チェックと文章校正」機能です。
Wordさえインストールされていれば誰でも使える機能で、スペルチェックと校正を同時に行なってくれます(※)。OSによって若干の違いはあるものの、使用方法も至ってシンプル。詳しい使い方は、MicrosoftのWebサイトで確認できます。
※Wordに限らず、ほとんどのMicrosoft Officeで使用可能。
料金:Microsoft 365 Business Basic /月1ユーザーあたり650円(税抜)
3.AI editor
AI editorは、最先端のAI・機械学習技術を活用した文章校正・校閲のサブスクリプションサービスです。一般的な言語表現における誤字検出はもちろん、独自のルールや言い回しを「オリジナルルール」として学習させ、校正・校閲を行うことも可能です。
属人化しやすい文章の作成や校正業務の負荷や、誤った情報の流通リスクの軽減が望めます。
URL:https://www.lite.ai-editor.jp/
料金:月額3,000円~
4.Shodo
Shodoは、タイポミスや変換ミス、二重敬語を検知するAI校正APIです。AIが文脈や日本語を把握し、置き換えルールで対応できない誤字脱字やタイポミス、変換ミスを修正してくれます。助詞の間違いや同音異義語にも対応しています。
複数のプランがあり、それぞれで使用できる人数や機能が異なります。まずは試してみたいと考える人は無料プランを利用してみてもよいかもしれません。
URL:https://shodo.ink/
料金:月額0円~
5.Just Right!7 Pro
Just Right!は、高度な日本語処理技術によって誤字脱字、表記ゆれなどをチェックできる有料の文章校正支援ツール。固有名詞など、独自のルールのもとでライティングする必要がある企業におすすめのツールです。
基本的な校正機能を搭載しているのに加え、企業独自のルールによる校正も可能なのが特徴です。「校正用辞書」に任意の「読み」や「表記」を登録して、企業ごとに異なる細かなルールの漏れを防げます。
URL:https://www.justsystems.com/jp/products/justright/
料金:個人用パッケージ47,000円(税抜)、法人用パッケージの価格は要問い合わせ
6.ATOKクラウド文章校正
ATOKクラウド文章校正は、「ATOK Passport プレミアム」利用者向けの校正ツールです。「Just アカウント」でWebサイト「ATOKクラウドチェッカー」にログインして利用します。
アカウントさえあればWeb上で気軽に使えるのが特徴で、文章をコピー&ペーストしてボタンをクリックするだけで誤字脱字・表記ゆれを確認できます。また校正モードとして「誤りだけチェック」「ビジネス文チェック」「公用文チェック」「表記ゆれチェック」の4つが用意されています。
URL:https://www.atok.com/useful/atokchecker/
料金:年間7,200円/月間600円(いずれも税抜)
※料金は「ATOK Passport プレミアム」のもの
プレスリリースに誤字脱字は厳禁
ここまで、プレスリリースの誤字脱字のチェック方法をご紹介してきました。プレスリリースは、メディアと生活者に向けた文書として正確性が求められるので誤字脱字は厳禁です。
最後に、万が一プレスリリースに誤字脱字がある場合、読み手にどんな印象を持たれてしまうのか、正確性が担保されたプレスリリースを配信するにはどのような心構えが必要か、について解説します。
誤字脱字があったときの印象
誤字脱字がある文書の最大の懸念点は、読み手からの「信頼を損なうこと」です。プレスリリースに限らず、広報から発出される文書はメディアや生活者、社員、その家族など、幅広いステークホルダーの目に触れます。
そのような文書に誤字脱字がある場合、広報PR担当者だけでなく、企業・組織自体が情報の正確性に留意していないと捉えられかねません。これは、企業・組織のブランディングにも影響します。
また、誤字脱字によって「誤情報」が生じてしまった場合、せっかくメディアに取り上げられても誤ったまま拡散されてしまうリスクがあることも理解しておきましょう。
最初から誤字脱字のないプレスリリースの作成を徹底する
上記のように影響範囲は広いため、最初から誤字脱字のないように意識しながらプレスリリースの作成を徹底することが重要です。しかし、それでもミスが発生してしまう可能性もゼロではありません。誤字脱字を防ぐために企業名や製品・サービス名、人名など、プレスリリースの中で頻出する固有名詞はパソコンの辞書機能を使い単語登録しておくのも一案です。
そしてプレスリリースを作成したあとは、必ずチェックすることが大切です。誤字脱字のチェック方法は先に紹介したとおりです。自分でチェックを実施する場合は、必ず文章を声に出して読むことを意識しましょう。また、ツールやシステムを使って誤字脱字チェックを行う場合でも、人による最終確認は必須です。少し手間に感じるかもしれませんが、誤字脱字のないプレスリリースを配信するには必要な手間であると理解しましょう。
ツールなどを活用して誤字脱字のないプレスリリースを発表しよう
広報PR業務の中でも特に作成頻度の高いプレスリリース。プレスリリースは正しい情報を配信することが前提です。そのため、誤字脱字によって内容の正確性が失われてしまうと、企業の信頼を損ねることにもつながります。配信する前に内容や画像、リンク先などの確認と合わせた念入りな誤字脱字チェックを行うことが重要です。
誤字脱字のチェックには、チェックリストを活用するなど人間の目による方法のほか、校正ツール・プレスリリース配信サービスの機能を用いた方法も有効です。また、ひとりのチェックに頼らずに、第三者による最終確認も行うなど、組織全体で表記・内容に間違いがないプレスリリースの作成を徹底することが肝心です。
たったひとつの誤字脱字がステークホルダーとの信頼関係にも影響を与える可能性もあることを意識し、誤字脱字のない正確なプレスリリースを発表しましょう。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
プレスリリース配信前の誤字脱字チェックに関するQ&A
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