広報PRに携わる人の多くは、「ニュースレター」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。ニュースレターは、ステークホルダーと継続的に接点を生み出す手段としてマーケティングや広報PR活動において活用されています。
本記事では、ニュースレターの作り方や「ニュースリリース」「プレスリリース」との違い、作成時の5つのポイントなどをご紹介します。
ニュースレターとは?
ニュースレターとは、ファンづくりのためのコミュニケーションとして定期的にメールや郵送で配信されるコンテンツのことをいいます。
生活者や株主、従業員やメディア関係者など、顧客だけでなくさまざまなステークホルダーに向けて送られます。
広告・宣伝としての目的が強いDM(ダイレクトメール)とは違い、読者にとっての利益や企業に対して親しみを持ってもらうことに重きを置いていることが特徴です。
似たような言葉に「ニュースリリース(プレスリリース)」がありますが、こちらは「メディア関係者向けに、企業に関する新規情報をお知らせする」ことが目的の文書を意味します。
「プレスリリース」の意味や、「ニュースリリースとプレスリリースの違い」については以下の記事で解説しています。
「ニュースレター」という言葉の意味は、誰を対象としているかで内容も変わってきます。ニュースレターの送付を検討されることの多い対象として「生活者」と「メディア関係者」についてご紹介します。
生活者向けのニュースレター
生活者向けのニュースレターは、日本企業においてはDM(ダイレクトメール)やメールマガジンより「新規性」が高い内容のものを指して使われていることが多いようです。
例えば、クラウドファンディングサービス「Makuake」は、登録会員に対し「ニュースレター」として週ごとの人気プロジェクトなどをメール配信しています(2022年現在)。
新聞社が、Web版の登録会員向けにその日の新着記事をまとめ「ニュースレター」と題して配信しているケースもあります。
このように、日本企業において生活者(顧客)向けにニュースレターを送付する場合、自社事業やコンテンツに関する「ニュース」をまとめて伝える役割を持っていることが多いと言えます。
また、海外では「有識者や人気クリエイターなどがクローズドに発信する有料コンテンツ」を「ニュースレター」と呼ぶことが多いようです。日本で言うところのオンラインサロンに近い感覚で、興味のある人のニュースレターを購読するというビジネスが広まっています。
実際、Twitter社はニュースレター配信事業を手がけるオランダのRevue社を2021年に買収。購読者にニュースレターを配信する機能をTwitterに追加しています。
メディア関係者向けのニュースレター
メディア関係者向けのニュースレターは、「ニュースリリース(プレスリリース)」と言葉は似ているものの、意味は明確に異なります。
「メディア関係者向けのお知らせ」のための資料であり、新商品の発表など新規性のある情報が必要なプレスリリースと違い、ニュースレターは「メディア関係者とコミュニケーションを増やす」ための資料であり、新規情報が含まれている必要はありません。
例えば、「1年前に発売された商品を、時事ネタに絡めてあらためてニュースレターで紹介する」といったことも可能となります。
「PR TIMES」をはじめとするプレスリリース配信サービスでも、通常は新規情報が記載されたプレスリリースのみ配信を行っています。プレスリリースに新規情報が見受けられなかったり、記載の情報が1ヵ月以前と古かったりする場合、個別に連絡し新規情報の追記をお願いしています。
このように、メディア関係者に送付する前提で「ニュースレター」という言葉が使われる場合、「新規情報の有無」でプレスリリースと区別することができます。
なお、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」では、ニュースレターを配信したい場合、公開範囲を「一般公開」ではなく「メディア限定公開」とすることで可能です。
DM、ニュースリリースの詳細について知りたい方は、以下の記事からご確認ください。
ニュースレターの種類
ニュースレターには決まったフォーマットがあるわけではありません。
企業によってさまざまな形式で配信されていますが、ここでは大まかに3つの型に分けて解説していきます。
1.キュレーション型
1つ目は、キュレーション型のニュースレターです。「梅雨」「クリスマス」など時節に合わせた内容や、SNSやメディアで話題になっている時事ネタを取り入れたテーマを設定し、テーマに合った自社商品などをまとめて配信します。情報をピックアップするだけでなく、自社による解説を入れることもあります。
キュレーション型は、トレンドや時節をネタにでき、執筆のボリュームが少なくても成立するため、配信しやすい形式と言えます。
2.ニュース型
2つ目は、ニュース型のニュースレターです。企業に関する新たな動きを紹介します。
例えば、イベントなどを開催している場合はそのイベントに関する最新情報、イベント中に起きた出来事や参加者の様子などを配信するとよいでしょう。
プレスリリースとして配信するには関係者の範囲が狭すぎる情報や、プレスリリースとして配信できないコンテンツ更新(「公式YouTubeに新たな動画をアップしました」など)に関する情報は、ニュースレターとして配信することで活用できます。
3.ブログ型
3つ目は、社員の考えや社内でのエピソードなど、企業に関する内容をコラムやブログ形式で語るブログ型のニュースレターです。具体的には、社員インタビューや開発秘話、ロングセラー商品の歴史などを振り返るといった内容が挙げられます。
ストーリー性のある内容にすることで、文字数が多くても読みやすくなります。また、企業や企業内で働く人に対して親近感を持ってもらう効果が期待できます。
ブログ型の内容のニュースレターは、PR TIMES STORYなどのサービスを使うことでメディア関係者・生活者に広く発信することもできます。
開発秘話をコンテンツと発信する際のポイントや注意点は、以下の記事でも細かく解説しています。
ニュースレターを配信する意味・メリット
プレスリリースと異なり、ニュースレターは新規情報がなくても成立します。そのため、新規情報の有無に左右されず、継続的にメディア関係者とコミュニケーションする機会をつくれるのがメリットです。
また、専門性の高い内容や、クオリティの高いコンテンツが提供できれば、企業としての信頼性向上や好感度アップに寄与することも期待できます。
ニュースレターの作り方(書き方)4ステップ
では、ニュースレターを作成する際には、どのように進めていけばよいのでしょうか。43つのステップに沿ってご紹介します。
STEP1.配信の目的・指標を決める
まずは、ニュースレターを配信する目的を決めることから始めましょう。目的やニュースレターを通して伝えたいことを明確にした後は、目的達成の度合いを測る指標(KGI)を何とするかを定めます。例えば、メールの開封率や返信率はひとつの指標とすることができます。
また、目的達成のために行動した度合いを測る指標(KPI)も設けましょう。こちらは、メールの送付数や関わった社員数などを指標として置くことが考えられます。
<ニュースレター配信前に決定しておきたい項目>
- 配信の目的とKGI
- このニュースレターを通して伝えたいメッセージ
- 対象となるターゲット
- ターゲットを読者層に持つメディア
- 配信の目的・KGIに紐づいたKPI
STEP2.テーマと形式の決定
「伝えたいメッセージをターゲットに届けられるか」「メディア視点でほしい情報か」を判断軸に、ニュースレターのテーマを決定しましょう。
例えば、「エディブルフラワー(食用花)を使った商品について知ってほしい」というメッセージがある場合、「時節」というメディアフック(★)を取り入れ、「コスモスも食欲も満開!お花も美食も同時に楽しめる、秋にぴったりな商品をご紹介」といったテーマなどが考えられます。
テーマが決定したら、そのテーマがもっとも効果的に伝わるようなニュースレターの形式を選びます。形式に応じて、誰が書くのか、誰に協力してもらうのかを検討し調整しましょう。
★メディアフック……メディアがニュースとして取り上げたくなる 「情報の切り口」のこと。詳細は「メディアフックとは?大きな2つの要素や、プレスリリースに取り入れるコツを解説」で紹介しています。
STEP3.コンテンツの具体化と制作
具体的なコンテンツとして何を制作するかを決定します。
ニュースレターはプレスリリースよりも新規性の要素が薄い分、コンテンツとしての質が重要です。
読み手に「面白い」「読んでよかった」と思ってもらえれば関係性の深化やブランドイメージ向上にもつながるため、情報収集などの準備や制作時間は十分に確保できると良いでしょう。
STEP4.ニュースレターのデザインと配信
コンテンツができあがったら、見やすいようにデザインしましょう。ニュースレターはメールで送信することが多いので、HTML形式でメール文面に装飾を施すか、メールでは簡単に内容をまとめて添付のPDFドキュメントに詳細を記載する形をおすすめします。
多忙なメディア関係者にとって読みやすいよう、情報が整理されているか、一目で目を引くインパクトがあるかなど、デザインにもぜひこだわってみてください。
ニュースレターのネタ例
ニュースレターを継続的に配信していると、ネタに困ってしまうこともあるのではないでしょうか。そんなときは、以下のニュースレターのネタ例をぜひ参考にしてみてください。
1.トレンドや時事ネタ
トレンドや時事ネタなど、話題になっているトピックスに絡めた内容はメディアに興味を持ってもらいやすいです。業界を代表する立場として自社でアンケートやインタビュー調査を行い、その結果を発表するのもよいでしょう。
参考例:メルカリニュースレター>電気料金値上げ対策で不要品を売る!30代から50代の年代別8〜9月売上額(中央値)を公開。30代・8月単月の一人当たり売上額は3,100円
- フリマアプリサービス「メルカリ」は、「電気料金の値上げ」が盛んに報道されているタイミングで、自社データと絡めた内容のニュースレターを配信しています。
「『8月に売れやすい商品ランキングTOP10』を作成した」ことが新規情報とみなされ、プレスリリースとしても配信可能だったケースです。
2.社員紹介
「人」を通じて自社の魅力や企業理念を伝えることができる社員紹介。コーポレートサイトや採用サイト以外にも、ニュースレターとして発信することもできます。ユニークな経歴を持っている社員などであれば、メディアから取材先として検討してもらえる可能性もあります。
参考例:地域を「食」で支えたい――薬局で奮闘する管理栄養士にインタビューしてみた!
- 福島県を中心に薬局を多数展開する株式会社会喜は、若手社員へのインタビューを発信。まだ知名度の低い存在である「薬局に所属する管理栄養士」について伝えています。
3.顧客の成功事例
自社商品やサービスを活用している顧客の成功事例は、業界や社会の動向を示すものとしてメディアに注目してもらえることもあります。単なる自社の宣伝としての導入事例にならないよう、顧客が抱えるどのような課題をどのように解決したのか、具体的かつ中立的にまとめることが重要となります。
参考例:呼び出し機能付き配送ロボット「HolaBot」初となるホテルでの採用が決定!渋谷ストリームエクセルホテル東急にて導入
- Pudu Technology Inc.は、同社が開発した呼び出し機能付き配送ロボットがホテル業界に初めて導入されたことを発表。ホテルの業務において配送ロボットがどのように役立っているのかを具体的に記載しています。
「業界初」という新規性の観点から、プレスリリースとしての配信が可能だったケースです。
4.開発秘話や商品・サービスの歴史
開発秘話や、商品・サービスが発売●周年を迎えたタイミングもニュースレターを配信する良い機会です。ただ事実をまとめるだけでなく、社外には広く知られていない、意外性のあるエピソードや、社会背景を反映していることがわかる情報を加えることで読み手の満足度が大いに高まるでしょう。
- 森永乳業株式会社の「森永アロエヨーグルト」は、2022年4月26日に誕生から10,000日を迎えたことを発表。発売当時は社内から不評であったという意外なエピソードや、知られていないちょっとしたデータなどを多数まとめています。
「2022年4月にパッケージをリニューアルした」という新規情報が含まれているため、プレスリリースとして配信できているケースです。
ニュースレターを作成するときの3つのポイント
次に、魅力的なニュースレターを作成する上で、意識しておきたい3つのポイントをご紹介します。
1.継続可能な仕組みを整える
ニュースレターはメディア関係者とコミュニケーションをとるための手段です。読み手に自社への親近感を持ってもらい、自社を想起してもらえる機会を増やすためにも、継続することが重要です。
数回の配信で終了とならないよう、継続可能な仕組みを整えましょう。事前に上司とすり合わせを行い業務時間や予算を確保するだけでなく、向こう半年~1年間のテーマを決めておけるとベストです。
2.読み手のニーズに応える
ニュースレターを配信しても、読んでもらえなければ意味がありません。読み手となるメディア関係者が今どのような情報・コンテンツを求めているのか把握し、反映させることを心がけましょう。自社の言いたいことばかり書いていては、宣伝色が強くなりチラシや広告のようになってしまいます。
ニーズに応えられているかどうかは、メールの開封率などの指標から判断できます。また、業界内外の関係者やメディア関係者と日頃から積極的にコミュニケーションをとり、情報収集を行いましょう。
3.独自性のあるコンテンツにする
「このニュースレターでしか読めない!」と思わせるようなコンテンツがあれば、ニュースレターを継続的に読んでもらうことができます。
経営者や社員など、「人」にフォーカスしたエピソードを取り入れたり、開発秘話など社外に普段知られないような情報を入れたりと、自社らしさが伝わる内容にすることが重要です。
他社のニュースレターや、Webメディアがどのような企画を立てているかを参考にしながら独自性を発揮していきましょう。
実際の広報担当者が心がけているポイント
実際にニュースレターを作成・配信されている広報PR担当者が心がけているポイントやプレスリリースとの使い分けについても気になるところ。
こちらのニュースレターをPR TIMESで配信されたキユーピー株式会社の広報部に、ニュースレター配信をどのように行っているかを聞いてみました。
── ニュースレターとプレスリリース(ニュースリリース)の役割をどのように使い分けていらっしゃいますか。
プレスリリースは、新商品の発売、研究成果の公表、各種受賞の報告など、会社として公式な情報伝達の手段として活用しています。一方、ニュースレターは「●●の日」といった記念日やイースターなどの行事、制度施行のタイミングなど、世の中の動きと合わせた報道を狙って発行しています。
── ニュースレターの発行頻度を教えてください。
現在は、年間に10本~12本程度、平均すると月に1本弱です。
── ニュースレターのネタをどのように決定しているか教えてください。
「プレスリリースを発表するほどのネタではないが、広く世の中に知らせたい」という情報を社内で掴んだ際に、効果的なタイミングを探してネタにしています。「●●の日」や新制度の施行日などは、それ自体がニュースになることが多いため、そこにうまく絡めて露出を狙う、というスタンスです。
── ニュースレターの作成時に気を付けていることなどあれば教えてください。
プレスリリースはA41枚で収まらないことがほとんどですが、ニュースレターの場合は必ずPDFでA41枚に収めるようにしています。また、タイトルも、プレスリリースよりもさらにキャッチーになるよう心がけています。コンパクトかつ一目で伝わるように工夫し、掲載率アップを目指しています。
ニュースレターのテンプレート
ニュースレターを配信する際には、あらかじめテンプレートを作成しておけるとよいでしょう。
デザインにかける工数が押さえられ、その分コンテンツの準備に時間を確保できます。テンプレートをもとに、自社らしさが伝わるようアレンジしてみてください。
Wordファイルのテンプレート
上述の通りニュースレターには決まった形式がなく、プレスリリースよりも自由に作成することができるのがポイントです。一方で、多忙なメディア関係者に目を留めてもらうためには、プレスリリースと同様に端的な内容かつ目を引くデザインにする必要があります。
あくまで一例ではありますが、Wordファイルでニュースレターを作成する場合のテンプレートをご紹介します。もちろんこれが正解というわけではありませんのであくまでベースとしてアレンジして使ってみてください。
WordファイルではなくPowerPointを使ったり、Canvaなどのデザインツールを使用してみるのもよいでしょう。
ステークホルダーとの関係性継続のためのツールとして、ニュースレターを活用しよう
本記事では、ニュースレターの役割について解説しました。
- ニュースレターは、ステークホルダーと継続的にコミュニケーションを行うための手段
- メディア向けニュースレターの特徴は、プレスリリースと異なり新規情報がなくても配信できること
- ニュースレターを作成するポイントは、「継続的に配信できる仕組み」と「読み手の興味に基づいたテーマ設定」、「自社ならではの独自性があるコンテンツ」
上記のポイントを押さえ、ご紹介したネタや事例、テンプレートを参考に、ぜひニュースレターを配信してみてください。ニュースレターを活用し、ステークホルダーとより良い関係を築きましょう。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
ニュースレターに関するQ&A
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