大手企業では広報の専門部署を設置し、組織として広報PR活動をするところがほとんどです。一方、中小企業やスタートアップでは、専任の広報担当者がいない場合や一人で広報活動をしているといったケースも少なくありません。
しかし、企業規模や業界に関わらず、自社の社名や商品・サービス、企業活動に関わるステークホルダーへ認知を促し、ブランド価値を高めたいのはどの企業も目標にしていること。広報PR活動を重要視し、より円滑に運営するために、広報部門として組織化を考える企業も増加傾向にあるのではないでしょうか。
本記事では、広報組織を立ち上げたいと考える企業に、組織化することでのメリット、立ち上げ方、チーム構成や成功のポイントをご紹介します。
広報を組織化する(広報部門を立ち上げる)効果・重要性とは?
広報を組織化することでどのようなメリットがあるのでしょうか。大きく3つのポイントをご紹介します。
メリット1.戦略的な広報PR活動ができる
1つ目のメリットは、「戦略的な広報活動ができる」ことです。
広報の仕事は、プレスリリースの作成やイベントの企画などスケジュールにもとづいて計画的に進める仕事だけではなく、各種メディアからの問い合わせ対応や急な取材立ち会いなど、突発的に発生する仕事も少なくありません。いずれも自社のメディア露出機会につながる仕事なため、迅速・的確に対応する必要があります。しかし、広報担当が自分一人しかいないという状況では、日々その対応だけで手一杯……ということも多いでしょう。
インバウンド対応もきちんとしつつ、企業のビジネスにあわせて戦略的に情報の発信を行っていくためには、それらを計画的に行えるだけの人的リソースが必要です。広報を組織化することで活動に必要な人員を確保し、広報PRプランに合わせた情報発信が可能となります。
メリット2.広報PR活動の幅が広がる
2つ目は「広報活動の幅が広がる」ことです。
広報と一言でいっても、「社内広報」「社外広報」「採用広報」「オウンドメディア運用」「SNS運用」など活動は多岐に渡ります。組織化することで分野ごとに担当者を設定し、一人広報では手が回らなかった活動を新たに始められたり、施策数を増やしたりと活動を深められます。
また、「広報」というとつい日々の情報発信やメディアへの露出といった「攻めの広報」ばかりに目を向けてしまいがちですが、日頃から対策が必要とされるリスクコミュニケーションや危機管理といった「守りの広報」も重要な仕事です。リソースに余裕ができることで、重要ながらもこれまで実施できていなかった広報活動にも目を向けることができます。
メリット3.属人化しない広報活動ができる
3つ目は「属人化しない広報活動ができる」ことです。
広報活動は属人的になりやすいと言われていますが、さまざまなバックグラウンドをもったメンバーがチームに在籍し、それぞれの強み・ナレッジを共有し合うことで、チームにナレッジやノウハウが蓄積されます。一人広報では成しえなかった、幅広い広報活動の実現につながります。
広報部門・組織は社内のどこに属するのか
企業規模や企業のステージ、経営陣の考え方などによって広報部門や組織のあり方はさまざまです。広報組織が組織図で表した際に、社内のどこに属することが多いのか、4つのパターンをご紹介します。
経営陣直轄の組織
経営トップが広報PRを経営戦略と捉えている企業に多いのが、経営陣直轄の広報組織です。
広報PRはマーケティングの一部としてだけではなく、「ブランディング」「企業価値向上」「資金調達」「優秀な人材の獲得」「社員の定着やモチベーションアップ」といった経営課題の解決につながります。経営トップと広報がダイレクトにつながっていることで、取り組むべき経営課題をすぐにキャッチアップできるというメリットがあります。また、スタートアップの場合、取り巻く環境や経営方針が日々変化していきます。それに合わせて広報活動の方針も変えていく必要があるため、経営トップと近しい組織にすることをおすすめします。
管理部門内の組織
大手企業に多いのが管理部門の中に広報組織を置くパターンです。
大きな組織になると経営トップの下に管理部門やセールス部門など多くの部署が存在し、「採用であれば人事部」「売り上げであればマーケティング部や営業部」「ブランディングであればブランディング部」といったように部門ごとに取り組むべき経営課題を割り振ることができます。そのため、管理部門の中にある広報組織は、新商品情報や企業として最低限発信すべき情報の発信やインバウンドの取材対応、社外に発信する文書の広報チェックといった、管理業務の一環として広報活動を行うケースが多く見られます。
マーケティング部門
広報PRをマーケティング戦略の一部として捉え、マーケティング部門に置く企業もあります。
この組織の場合、広報組織単独で広報PRプランを策定するのではなく、マーケティング部門と連携しながら決定していきます。そのためコーポレート広報というよりは、自社のプロダクトやサービスの売り上げへの貢献を目的としたサービス広報としての広報PR活動を主に行うというイメージです。
プロジェクトごとの組織
既存ビジネスから逸脱した新規事業やプロジェクトを立ち上げる際、所属している企業の広報PR活動と目的が変わるため、プロジェクトごとに広報組織を置く場合があります。
例えば、SNSマーケティング支援を行っているIT企業が、コスメブランドを立ち上げるとします。この場合、既存ビジネスの広報PR活動はBtoB広報となりますが、新規事業のコスメブランドの広報PR活動では、コンシューマーに向けた発信がメインとなります。また、コスメの広報PR活動では、コスメの情報に詳しいPRパーソンを新たに担当とするのが効果的でしょう。
このように、既存ビジネスの広報PR活動ではカバーしきれない専門性の高い広報PR活動を行う際には、別途広報組織を置くことをおすすめします。
広報部門の組織図・チーム構成
広報部門や組織を立ち上げる際には、どのようなチーム構成になるのでしょうか。代表的な組織図の例をご紹介します。
広報部門長
広報部門長は、目標やゴール設定・予算策定といった自社の広報組織全体のマネジメントに加え、企業における情報参謀を務める言わば経営トップの補佐役としての役割があります。世の中の動きや、自社とステークホルダーの関係性を把握し、経営トップの判断材料として情報を提供する重要な役割です。精度の高い情報を収集していくために、社外キーパーソンとの関係構築や、経営視点を持った「情報の取捨選択能力」が求められます。
各広報チームマネージャー
企業規模が大きい場合、「社内広報」「社外広報」「採用広報」といった関係構築をするステークホルダーごとにチームを設け、各チームの責任者としてマネージャーをアサインすることが多いです。広報チームマネージャーは、自身のチームメンバーのマネジメントや年間広報プランの策定、他部署との連携、広報部門長への各種進捗報告などが主な役割となります。
PRスタッフ・広報メンバー
PRスタッフは、チームの目標やゴール設定、年間PRプランに沿って広報PR活動を行っていきます。プレスリリースの作成やイベントの企画運営、メディアリレーションなど業務は多岐に渡ります。
広報部門・組織の立ち上げ方とは?立ち上げまでの5ステップ
広報部門や組織を立ち上げる際にまず何から始めていくべきか、5つのステップに沿ってご紹介します。
STEP1.目的の明確化
まずは、何のために広報活動に行うのか目的を明確化しましょう。当たり前のように聞こえますが、目的がずれてしまうと策定した広報プランが意味をなさなず、活動しても貢献が少ないと見なされてしまいます。経営トップとすり合わせ、コンセンサスを得て決定していくようにしましょう。
STEP2.マイルストーンの策定
目的が明確化されたら、次に行うべきことはマイルストーンの策定です。「どのステークホルダー」に、「いつ・どのタイミング」で、「どのようなメッセージ」を伝えれば、目的が達成できるのかを策定します。ビジネスのフェーズによって伝えるべきメッセージは変わってくるため、経営戦略と紐づけながら策定していくようにしましょう。
STEP3.広報プランの策定
次に、策定したメッセージを伝えるためには、どのような広報活動を行うべきなのかをプランしていきます。マイルストーンを年間や半年のタームで行動に落とし込みます。
STEP4.広報プランにあわせた人員プランの策定
広報プランを策定したあとに行うことは、プランにあわせた人員プランの策定です。「社外から広報経験者を採用すべきか」、「社内の広報未経験者をアサインすべきか」、「何名のチーム編成にすべきか」などを決めていきます。組織を立ち上げたばかりのフェーズでは、会社から与えられる期待値にこたえられるのか、判断しにくい場合があります。そのため、最初から複数のチームをつくらずに、一つのチーム内で「社内広報担当」「社外広報担当」といった形で担当を割り当てていき、徐々にメンバーを増やし、チームに分けていくと良いでしょう。
STEP5.広報ツールの作成
最後に、メッセージをステークホルダーに浸透させていくために必要な、広報ツールの作成です。広報ツールには、コーポレートサイトや企業ブログといった一般に公開するものから、自社の概要や強みをまとめたファクトブックや取り扱い商品・サービス紹介資料といったメディアリレーションに特化したツールもあります。また、社内広報の観点では社員向けに社内報などを作成することもあります。
広報部門・組織を成長させるための5つのポイント
広報組織を立ち上げたあと、チームを成長させていくために気を付けておくべきことはなんでしょうか。5つのポイントをご紹介します。
1.経営陣と広報組織の距離を近づける
広報活動の目的やマイルストーンがずれていかないように、広報は経営トップと密にコミュニケーションを取り、経営トップの意思を迅速に確認していくことが大切です。経営陣管轄の広報組織であることが望ましいですが、そうでない場合でも、経営トップとの定期的なミーティングを設定するなど工夫していくようにしましょう。
2.広報組織のビジョン・ミッションを決める
チームメンバーの意思や行動指針を固めるために、なんのための組織なのかを言語化・明文化していくようにしましょう。広報部門長が一方的に決めるのではなく、ワークショップを開催してチームで決めるほうが一人ひとりの理解が進み、「ジブンゴト化」しやすいのでおすすめです。
3.メンバー個々にあわせた目標と役割を決める
チームにはさまざまなバックグラウンドをもったメンバーが集まります。メンバーによって強みや弱みは異なるため、一人ひとりに合わせた目標設定をするようにしましょう。また、1on1などを通して、担当したい業務をすり合わせるとメンバーのモチベーションアップにもつながります。
4.メンバーのスキル向上
メンバー個々のスキルアップは、広報組織全体の強化につながります。外部のセミナーを案内したり、広報PRに関するノウハウ本をチームで購入したりと、スキルアップのための投資を行うようにしましょう。また、PRスキルだけでなく、社内人脈に精通したPRパーソンに育てていくべく、社内コミュニケーションをサポートしていくことも大切です。
5.チーム内でナレッジを共有する
各自が担当する広報業務が属人化してしまい、チームとしてうまく機能しない……といった事態を避けるために、チーム内でナレッジを共有することが大切です。ナレッジの共有には「ナレッジベース」を作成すると便利です。
こちらの記事で「ナレッジベース」について解説しているので、参考にしてみてください。
広報組織の成長が自社の広報強化につながる
この記事では、広報組織を立ち上げる方法や組織化することでのメリット、チーム構成や成功のポイントをご紹介しました。
広報を組織化することで戦略的な広報活動ができたり、今まで実施できていなかった広報活動を新たに始められたりとメリットがあることが分かりました。
しかし、立ち上げればそれで安心……というわけではありません。重要なのは広報組織の継続的な成長です。そのために大切なのが、広報組織のメンバー一人ひとりが常に高いモチベーションを持ち日々の業務の中でスキルを磨くことです。個々の成長が組織に成果をもたらし、結果的に自社の広報を強化します。広報組織を立ち上げたあとも、メンバー一人ひとりと向き合うようにしましょう。
広報組織立ち上げに関するQ&A
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