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報道対応とは?広報PR担当者が気をつけたい5つのポイント

SNSやオウンドメディアが広まり、企業がステークホルダーにアプローチしやすくなったものの、不特定多数に情報を拡散するメディアの影響力は、いぜんとして大きいもの。そのため、メディアに対しての「報道対応」は、広報PR担当者の大切な業務のひとつです。

本記事では、報道対応において広報PR担当者が気をつけたい5つのポイントや、具体的な業務内容を紹介します。

広報PR担当者が知っておきたい「報道対応」の意味とは?

報道対応とは、新聞社・テレビ局・通信社・ラジオ局などの報道機関の取材に対応することです。報道機関は政府や企業などからは独立した立場で、社会に伝えるべき情報を偏りなく発信する役割があります。広報PR担当者は、商品・サービスの紹介にとどまらず、ときには社会的にニュースバリューの高い情報を提供する姿勢で、報道機関に対応する必要があります。

本記事では、報道対応の業務として大切な「緊急時の報道対応」「記者会見・インタビュー時の報道対応」の際に心がけたいポイントを解説します。

報道対応を意識する重要性とメリット

報道対応は、わずかな対応の差が世間からの企業イメージを大きく左右する可能性があります。不適切な対応の結果、企業イメージが悪化し、結果として業績や採用にまで悪影響が出るリスクがあります。メディアとの関係性も悪化しかねません。

緊急時の報道対応では、適切な対応かどうかを判断してから動いていては間に合わないだけでなく、判断を誤るリスクも膨らみます。そうならないためにも日頃から、記者会見やインタビュー取材を想定した「メディアトレーニング」をしておくとよいでしょう。メディアトレーニングで報道対応に慣れておくことは、緊急時に加え、日常的な取材にも役立ちます。これは報道対応を意識するメリットと言えるでしょう。

報道対応のミスで生まれる広報PRのリスク3つ

間違った報道対応をしてしまうと、広報PRとしてはどのようなリスクがあるのでしょうか。ここでは「企業イメージの悪化」「業績や採用への悪影響」「メディアとの関係性の悪化」という3つについて説明します。

1.企業イメージの悪化

報道対応を間違えると、これまで築き上げてきた企業イメージが一気に崩れてしまう恐れがあります。企業のブランディングは地道で時間がかかるものですが、イメージが崩壊するのは一瞬です。

例えばインタビュー取材において、社内の担当者が事業のマイナスイメージを伝えるコメントをした場合、たとえひと言であっても、発言がそのまま見出しとなって発信される可能性があります。

特に、世間から見た企業イメージと相反する発言は「意外性・ニュース性がある」というフックとなり、記者の頭に印象を残します。意外性のフックは、ポジティブな意味合いで発信する際にも有用ですが、マイナスイメージを定着させるような発言とは避けましょう。

また、テレビ番組やYouTube向けの動画収録の場合は、見た目の清潔感を大切にしましょう。仮に商品やサービスへの満足度が高く、従業員の教育が行き届いていたとしても、取材対応者に清潔感がないと、視聴者から見た企業の第一印象が、悪くなってしまうリスクがあります。動画メディアへの露出においては、発言だけでなくビジュアルのブランディングも重要です。

世間に与えたいイメージから大きく離れることなく、クリーンな印象を定着させることで報道対応で生まれるリスクをコントロールしましょう。

2.業績や採用への悪影響

企業イメージの悪化が招くリスクとして考えられるのは、業績や採用への悪影響です。

例えば、緊急時の記者発表リコールなど、生活者の利害に直結する報道がなされたとします。その際に世間から「社長の態度が悪い」「消極的」などと受け取られてしまうと、短期的には株価、中長期的には業績や採用に悪影響を及ぼす可能性もあります。生活者の信頼を維持するためにも、誠実な対応を心がける必要があります。このように、報道対応の間違いは業績や採用にも悪影響を与えかねないと認識しておきましょう。

3.メディアとの関係性の悪化

報道対応の間違いは、生活者だけでなく、メディアそのものとの関係性の悪化も招きます

危機管理対応時に、メディア関係者からの取材に応じない、記者会見で質疑応答の時間を設けない、などの行為はメディア関係者からの信用を失うものです。把握している情報は、できる限りオープンにする姿勢を見せ、誠意を持って対応しましょう。

メディアとの良好な関係性を維持するために、日頃から広報PR担当者がメディア関係者と密にコミュニケーションをとれるとよいですね。

広報PR担当者として報道対応時に気をつけておきたい5つのこと

前項では報道対応のミスで生まれるリスクを3つ紹介しました。先述のような誤った報道対応をしないために、本項では広報PR担当者が気をつけておきたい5つのことを紹介します。

報道対応時に気をつけたいポイント

1.報道対応者の身だしなみを整える

報道対応時には、まず身だしなみを整えるのが基本です。

特に謝罪会見や緊急対応のときは、誠意が伝わる装いを意識しましょう。以下は避けたい具体例です。

  • ネクタイが極端にゆるんでいる
  • スーツ・シャツ・ネクタイの色が必要以上に派手
  • ひげの剃り残しがある
  • 長い髪を下ろしており、顔にかかってしまっている
  • 派手すぎるメイクやアクセサリーをつけている

男女ともに、華やかな装いよりも真剣さが伝わる身だしなみが理想です。ビジュアルの悪い部分が目に留まると、相対的にインタビューや記者会見などの内容が目立たなくなってしまいます。こうした状況はもったいないので、事前にしっかりと身だしなみをチェックしてからメディア対応に臨みましょう。

2.メディアからの質問や依頼には慎重に対応する

慣れない報道対応であっても、焦らず落ち着いて対応することを心がけましょう

矢継ぎ早に質問されたり、強めの口調で説明を求められたりしたときに、未確認の事項を憶測で話してしまうことは、避けなければなりません。ひと呼吸置いて「のちほど調べてからご回答します」「現在確認中です。事実関係が分かり次第お伝えします」などと応じましょう。

また、「自分は知らなかった」など責任逃れのような発言、「業界ではよくあることだ」と社会的なモラルを軽んじる発言は、決してしないように事前に打ち合わせておきましょう。特に謝罪会見などは、事実や本音を引き出すために、記者がテクニックとして挑発的な質問をしたり、あえて高圧的な態度をとったりしがちなので、落ち着いて対応するようにします。

発言のあらゆる部分がそのまま記事になる可能性を念頭に、緊急会見時だけでなく、通常の取材時にも慎重な受け答えを心がけましょう。

3.FAQ作成など事前の準備を怠らない

報道対応に向けて、FAQ作成などの準備を怠らないようにしましょう。その場の思いつきの発言をしてしまう、事実と異なると思われる発言をしてしまう、情報が曖昧なまま伝えてしまう、などのリスクを極力減らすためです。

日頃からできる準備として、FAQ作成と同様に有効なのがメディアトレーニングです。広報PR担当者が記者役になって実施してみましょう。わざと答えにくい質問をしたり、高圧的な態度をとったりしてメディアトレーニングしておけば、インタビュー慣れして実際の報道対応時も落ち着いて答えられるようになります。

話し方も重要です。事前準備として、インタビュイー・記者会見の担当者には想定問答のやりとりを話してもらい、スマホなどで動画を撮影してみると、声や話し方のくせ、表情の作り方などがチェックできます。時間に余裕があれば、ボイストレーニングや、はきはきとした話し方の練習を行いましょう。

ほかにも、危機管理対応マニュアルを平時から作成しておくのもおすすめです。「よくある質問」「NGワード集」「身だしなみチェックリスト」「緊急時の部署連絡先」などを自社オリジナルで作成し、社長や各部署の責任者などに共有しておきましょう。危機管理意識と報道対応のレベルを高めるために、広報PR担当者が社内でワークショップを開催するのも効果的です。

4.数値やデータを正確に揃えておく

事前準備の一環ではありますが、最新の数値やデータを正しく揃えておくことは重要です。

記者会見や日常的な取材の場合は、実施日が決まっているので間に合うように準備しておきましょう。一方、危機管理対応・災害時の対応、謝罪会見の場合は、関係各所と迅速に連絡をとり、最新の情報にアップデートしなければなりません。

基本的なデータとして、企業情報は定期的な更新が必須です。例えば、社員数・男女比・平均年齢・昨年対比の売上高・創業年数・社長の年齢などは、よく聞かれる数値です。企業・団体のホームページは、常に最新の数値にアップデートしておきましょう。また、他の取材、イベントで登壇するときの内容などと整合性があるかどうかを必ず確認しましょう。

5.報道対応の窓口は1つに絞る

緊急時の報道対応の窓口は、原則1つに絞りましょう。窓口が複数あると対応にばらつきが出たり、情報共有が迅速に行えなかったりしてしまいます。企業・団体では広報PR担当者を決めておき、メディアからの問い合わせ時には、必ず広報PR担当者が対応するように統一しましょう。

緊急時の報道対応は具体的にどんなことをするの?

ここまで報道対応のリスクや気を付けておきたいことを紹介しました。では、緊急時の報道対応とは、具体的にどんなことをするのでしょうか。「危機管理に関する報道対応」「災害時の報道対応」の2つについて説明します。

1.危機管理に関する報道対応

事件や事故が発生した場合、危機管理に関する報道対応が必要です。例えば、自社が開催したイベントでけが人が出た、社員が事件に巻き込まれた、自社の商品に欠陥が見つかった、などの事態が該当します。いつ発生するか分からないリスクではありますが、起こったときの対応によって企業の姿勢が浮き彫りになるため、迅速な報道対応が求められます。

広報PR担当者は、リスクの発生後、社内外から最新の情報を集め、それを公式見解としてまとめます。公式見解は、状況に応じて自社ホームページに掲載、社内に共有、関係各所へプレスリリースの形で送付する、などの対応をとります。メディアからの問い合わせが多い場合は、緊急の記者会見を実施するのも一計です。

緊急の記者会見は、リハーサルをする余裕がないまま本番となることも多いです。つまり、平時のメディアトレーニング以外に予行演習はないと思ったほうがよいでしょう。普段から広報PR担当者が準備してきた体制で、公式見解を伝える文書が作成され、それをもとに社長や担当者が会見に臨むことになります。現場から情報が集まらず、質疑応答できっちりと回答できない状況も想定されます。そのため、日頃から有事の情報共有のあり方やワークフローを共有しておくのがおすすめです。

2.災害時の報道対応

災害発生直後は、従業員の安全確保を何よりも優先します。まずは部署ごとの安否確認や被害状況などの情報を集約してから、メディアに最新の情報を提供しましょう。

社外への情報発信は、たとえ小出しであっても、頻繁に更新するのがポイント。けが人の数や各事業所の被害状況などは数時間ごとに移り変わるほか、慌ただしい中で誤った数値や説明が共有されることもよくあります。焦らず、こまめに更新・訂正しながら発信していきましょう。社内では現在の状況をまとめて経営層に報告し、社内にも共有するのも大切。各方面に向けて、スピーディーな社内広報が求められるのです。

従業員の携帯電話番号・メールアドレス・住所などの情報は、緊急連絡先として、権限を持つ社員がアクセス可能にしておく必要があります。災害下では、商品の生産ができず納品が不可能になった、輸送機関がストップして配送できない、インターネットが一時的にアクセス困難な状況に陥りサービスが利用できない、など平時では起こりえないトラブルが発生します。

平時からの備えとして、安否確認ができる伝言サービスなどを導入する、災害時の対応フローチャートを作成し各部署にあらかじめ共有しておく、災害が発生したと想定して訓練を実施する、なども有効でしょう。

記者会見・インタビュー時の報道対応

最後に記者会見・インタビュー時の報道対応を見ていきましょう。災害など緊急時の対応と大きく異なるのは、事前の準備を行えるところです。それぞれについて、準備・当日の対応・終了後の対応の3つのフェーズに分けて解説します。

報道対応イメージ

1.記者会見時の報道対応

準備・記者会見の内容と開催日程を決定
・来場者数やアクセスの良さを考慮して会場を確保
・案内状(プレスリリース)の作成
・メディア配布用の資料の作成
・プレゼン資料や司会原稿、台本の作成・想定問答の作成
・備品と運営に参加する担当者の確保
・参加メディアのリスト作成
・リハーサル、原稿の読み合わせ
当日の対応・登壇者の身だしなみチェック
・メディア関係者へのあいさつ
終了後・登壇者のそばで、メディア関係者の質問に答えるなどの対応
・初対面のメディア関係者に、社内の担当者を紹介
・お礼のメール送信

記者会見の日程などを決定するところからリハーサルまでが、事前の準備です。順番は前後しても問題ありませんが、当日に問題なく情報を伝えられるよう、入念に行いましょう。当日までに1回以上は、本番の会見と同じタイムスケジュールでリハーサルをしておきましょう。その際に、広報PR担当者が想定質問を作成し記者役となって質疑応答もリハーサルしておくと、慌てずに対応できます。

当日の会見中は、全体のフォローに回ります。会見後は質疑応答で聞きそびれたことを登壇者に質問する記者もいるため、会見終了予定時間から30分~1時間ほど長めに会場をおさえておくとよいですね。

会見の終了後は、参加したメディア関係者にお礼のメールを送ります。答えられなかった質問があった場合は、その回答もメールに記載しましょう。記事が掲載されたら内容をチェックします。記事・番組を見た感想などもメールで伝えると丁寧ですね。

2.インタビュー時の報道対応

準備・インタビュアー(記者)から質問事項を入手
・質問事項をもとに、取材対応者と予行演習をする
・想定問答を作成する
・最新の数値やデータを用意する
当日の対応・取材対応者の身だしなみをチェックする
・インタビューに同席し、取材対応者をサポートする
・取材はメモや録音で記録する
終了後・回答できなかった部分は、メールや電話でやりとりする
・社内外への告知を行う
・記事・放映の内容をチェックする(モニタリング)

インタビュー取材の準備としては、取材日程が決まったら、事前にメールなどテキストのやりとりで、質問事項を記者から入手しましょう。質問事項をもとに、想定問答を作成し、取材担当者と予行演習ができればなおよいです。

当日の取材中に広報PR担当者が話すことは基本的にありませんが、取材対応者が事実と異なる発言をしたときは訂正を入れたり、曖昧な発言があったら「詳細については調べてのちほどメールします」とフォローを入れたりと、取材をサポートします。取材内容は録音、もしくはパソコンやノートにメモを残しておくと、自身の理解にも繋がります。

伝える言葉はできるだけポジティブなものとし、インタビュー中に繰り返し発言して強調する、マイナスな言葉が出てしまった場合には記者に「ここはカットしてほしい」と伝える、などのマネジメントも忘れないようにしましょう。

取材終了後は、回答が曖昧になってしまった部分や、数値やデータを把握していなかった部分に関してすぐに調べて記者にメールで連絡を入れるのがベターです。写真などの素材の提供を依頼された場合も、迅速に対応します。社内外への告知やモニタリングも忘れないようにしましょう。

報道対応には日頃の備えが重要

本記事では、報道対応の重要性や対応時に気をつけておきたいことなどを紹介しました。不特定多数に情報を拡散するメディアの影響力はいぜんとして大きく、報道対応には細心の注意が求められます。メディアトレーニングの実施、自社の基本情報のアップデート、取材の事前準備、危機管理対応マニュアルの作成など、日頃の備えが重要です。報道対応時に慌てることがないように、できることから備えておきましょう。

<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

報道対応で気を付けたいことに関するQ&A

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この記事のライター

ならきち

ならきち

在宅ライター主婦。会社員時代は中古IT機器の専門商社で広報をしていました。取材対応をはじめとするメディアリレーション全般、プレスリリース執筆、危機管理対応、記者会見の企画・運営、自社ブログ記事の企画・執筆などを担当した経験を活かし、広報担当者の役に立つ記事を書きたいです。現在はわんぱくな息子に翻弄されながら在宅でライターの仕事をしています。

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