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価格改定・値上げのプレスリリースの書き方とは?3つのポイント・広報事例を紹介

価格改定・値上げのプレスリリースの書き方とは?3つのポイント・広報事例を紹介

商品やサービスの価格改定・値上げに関する情報は、メディア関係者をはじめ、生活者からも大きな関心を寄せられるのではないでしょうか。

本記事では、価格改定・値上げのプレスリリースを書くときに必要な項目から作成時のポイントまでを解説。実際にプレスリリースを配信された価格改定・値上げの事例や、広報PR担当者が意識して取り入れたい施策も紹介します。

目次
  1. 価格改定のお知らせが重要な理由

  2. まず押さえておきたい、価格改定・価格変更・値上げの違いと使い分け

  3. 価格改定のプレスリリースに含めておきたい5つの項目

  4. 価格改定に関するプレスリリース作成時の3つのポイント

  5. ケース別:価格改定が難しいパターンの伝え方

  6. 価格改定に関するプレスリリース事例3選

  7. 価格改定時に広報PR担当者が行いたい3つの広報PR施策

  8. 価格改定・値上げのプレスリリース配信で生活者の理解を得よう

価格改定のお知らせが重要な理由

価格改定の告知は、単なる事務連絡ではなく、企業と顧客・取引先との関係性を左右する重要なコミュニケーションです。とりわけ値上げを伴う場合、その伝え方次第で信頼を深めることも、逆に損なうこともあります。

最初に、なぜ事前に、丁寧に伝える必要があるのかを、広報PRの実務視点で整理しておきましょう。

「知らないうちに変わっていた」を防ぎ、信頼毀損を回避する

価格が変わったことを後から知る体験は、利用者に強い不信感を与えます。たとえ合理的な理由があったとしても、「説明がなかった」という事実は、企業姿勢そのものへの評価を下げてしまいます。

事前に価格改定を伝えることは、同意を得るためというよりも、判断の機会をきちんと提供するための行為であり、長期的な信頼関係を維持するうえで不可欠です。

問い合わせ・返金・クレーム対応のコストを下げる

価格改定後に問い合わせが殺到するケースの多くは、「どこがどう変わったのか分からない」「自分は対象なのか分からない」といった情報不足が原因です。改定内容、対象、開始日、理由を整理して事前に伝えておくことで、不要な問い合わせや返金対応を大幅に減らすことができます。

広報的には、告知の質はカスタマーサポートコストにも直結する重要な要素です。

改定を「企業努力の結果」として正しく理解してもらう

値上げはネガティブに捉えられがちですが、その背景にはコスト吸収の努力や品質維持への投資がある場合も少なくありません。価格改定のお知らせは、それらの取り組みを正しく伝える数少ない機会でもあります。

単に「価格が上がります」と伝えるのではなく、「なぜこの判断に至ったのか」を説明することで、改定を一方的な負担増ではなく、持続的な提供のための選択として理解してもらいやすくなります。

まず押さえておきたい、価格改定・価格変更・値上げの違いと使い分け

価格に関する告知では、似た言葉をどう使い分けるかによって、受け手の印象や納得感が大きく変わります。特に広報・PRの立場では、言葉選びそのものが企業姿勢として受け取られるため、用語の定義と使い分けを曖昧にしたまま発信することはリスクになり得ます。

まずは、それぞれの言葉が持つニュアンスと、どの場面で使うべきかを整理しておくことが重要です。

「価格改定」「価格変更」「料金改定」「値上げ」は何が違う?

「価格改定」「料金改定」は、価格体系を見直す行為全般を指す中立的な表現で、値上げ・値下げの両方を含み得る言葉です。一方、「価格変更」は結果だけを示す表現で、理由や方向性を含まないため、事務的・通知的な文脈で使われやすい傾向があります。

これに対して「値上げ」は、利用者の負担が増える事実をストレートに伝える言葉であり、生活者の感情に直接触れやすい表現です。どれが正しいというよりも、「何をどこまで正確に伝える必要があるか」によって選ぶべき言葉は変わります。

値上げを避けたいときに“ぼかす”のは逆効果になり得る

値上げという言葉を避け、「価格の見直し」といった表現でぼかしたくなるケースは少なくありません。しかし、実質的に負担が増えるにもかかわらず、その事実が十分に伝わらない場合、後から「聞いていなかった」「だまされた」という不信感につながりやすくなります。

広報の観点では、ネガティブな事実そのものよりも、「誠実に説明されなかったこと」が炎上やクレームの引き金になることが多いとされています。避けるべきなのは値上げの説明ではなく、説明不足であり、ぼかして伝えるのは逆効果になり得ると把握しておきましょう。

BtoB・BtoCで表現の許容度が変わる

同じ価格改定でも、BtoBとBtoCでは受け止められ方が異なります。BtoBでは、コスト構造や契約条件の説明が前提となるため、「価格改定」「条件変更」といった表現でも比較的受け入れられやすい傾向があります。

一方、BtoCでは生活者の感情的反応が大きく、実質値上げを中立的な言葉で包むほど反発を招きやすくなります。誰に向けた告知なのかを明確にし、許容される説明レベルを見極めたうえで表現を選ぶことが重要です。

価格改定のプレスリリースに含めておきたい5つの項目

価格改定のプレスリリースには、どのような情報を盛り込めばよいのでしょうか。次に紹介する5つの項目を含め、価格改定のプレスリリースを作成しましょう。

広報PR

項目1.価格改定日

価格改定のプレスリリースには、価格改定日を必ず明記します。重要事項であるため、いつから価格改定するのかを明確に記し、本文の冒頭で伝えましょう。プレスリリースの中間部や下部には価格改定の詳細をまとめ、あらためて価格改定する日時を記載するとよいでしょう。

【例】
序文
〇〇株式会社は〇月〇日(〇)より、一部商品の価格改定を実施します。
本文
改定内容
価格改定実施日:〇年〇月〇日(〇)より

項目2.価格改定の対象商品・サービス名

価格改定する対象商品名やサービス名を正しく表記します。すべての商品で〇%値上げをする場合、一部商品で〇円値上げをする場合にかかわらず、価格改定の対象をわかりやすく記載するようにしましょう。

特に多くの商品を取り扱う飲食店や食品メーカーなど、一部の商品に値上げを適用するのであれば、値上げ対象商品をリストにして発表すると親切です。ただし対象商品が多すぎる場合は、プレスリリースには主な商品の改定価格のみをピックアップし、別のページですべての対象商品こともできます。

項目3.価格改定後の価格・価格改定率

価格改定のプレスリリースに価格改定後の価格情報は必須です。改定後の価格を記載する際は、比較しやすいように改定前と改定後の価格を両方記し、何%の価格改定率なのかわかるとよりよいでしょう。

なお、価格は税込価格を記載。飲食店の価格改定の場合はイートイン・テイクアウトの両方の価格表記を行います。

項目4.価格改定の理由・背景

価格改定の理由や背景は、プレスリリースに必要な情報です。例えば、昨今の世界情勢や円安によるエネルギーコストや原材料の高騰は多くの方が知るところ。多くの方が理解できる背景を組み込むことで、値上げに対する生活者の納得感を得やすくなります。

また、値上げに至るまでの企業・団体側の理由とともにブランドの維持・強化の戦略を伝えることで、単なる値上げではなくアップグレードとして受け止めてもらえるでしょうか。

項目5.価格改定に関する問い合わせ先

価格改定・値上げに関するプレスリリースは、メディア関係者だけではなく、生活者からの問い合わせが増えることも考えられます。問い合わせに対してよりスムーズに対応するために可能であればメディア関係者用の問い合わせ先と分けてお客様相談室やカスタマーサポートの問い合わせ先を掲載するとよいでしょう。

【生活者用のプレスリリースの記載例】
この件に関する一般のお客様からのお問い合わせ先:
〇〇株式会社 お客様相談室:
電話番号:
受付時間:

価格改定に関するプレスリリース作成時の3つのポイント

プレスリリースに含めたい項目を確認したら、次はプレスリリースを作成します。この項目では、価格改定・値上げに関するプレスリリース作成時に押さえておきたいポイントを紹介。3つのポイントをチェックしながら作成してみてくださいね。

ポイント1.価格改定に至るまでの背景を客観的に伝える

例えば、物価高騰や輸送コスト増などによる価格改定の背景は客観的に伝えましょう。プレスリリースはあくまで企業・団体が発信する公式文書であり、ステークホルダーに価格改定・値上げに対する理解を求めるものではありません。

特に、値上げ時の価格改定をプレスリリースで発表する際は、企業・団体の事情を記すことも大切ですが、それだけではなく、社会情勢のような誰もが理解できる背景を簡潔に説明するとよいでしょう。理由は「言い訳」ではなく「判断の透明性」として提示すると認識し、主観ではなく客観的な視点で詳細を記載することと、長文にならないように2〜3行でまとめることがポイントです。

ポイント2.提供価値の変化・商品やサービスがどう変化するかを記載する

価格改定・値上げによって、その商品、サービスの何がどう変わるのかを伝えることが大切です。

価格改定・値上げのプレスリリースには企業・団体のブランドを印象づけるプラスアルファの情報を加えます。品質向上への努力として研究を実施している事実を紹介するのもよいのではないでしょうか。価格改定や値上げによる商品やサービスの付加価値を示すことで、企業・団体のブランドの保持や強化にもつながります。また、価格改定・値上げの場合も「〇年ぶりの値上げ」や「値上げをしてもワンコインに抑える努力を継続」など、企業・団体の努力が伝わるようにしましょう。

ポイント3.企業・団体の代表や担当者のコメントを掲載する

価格改定・値上げのプレスリリースに、企業・団体の代表や担当者のコメントを掲載することもポイントのひとつです。代表のコメントでは、一貫した企業・団体の方向性を示すことが可能であると同時に、投資家や取引先の理解を得られやすくします。また、代表のコメントを入れることで社内への経営方針周知にもつながるでしょう。

企業・団体の代表や担当者のコメントは、記事にする際の参考になり、メディア関係者の目に留まりやすい傾向があります。値上げのニュースに留まらず、価格改定以外の経営戦略など、違う角度から企業・団体に注目してもらうきっかけになるかもしれません。

ケース別:価格改定が難しいパターンの伝え方

実務では、教科書通りに説明できない価格改定も多く存在します。特に誤解や反発を招きやすいケースでは、事前に論点を整理し、受け手の疑問を先回りして潰しておくことが重要です。

次に、広報PR担当者が悩みやすい代表的なパターンを取り上げます。

「実質値上げ」になる場合:容量変更・手数料追加など

内容量の減少や手数料の新設など、表面的には価格が変わらない実質値上げは、最も不信を招きやすいパターンです。この場合、価格だけを説明すると「ごまかしている」と受け取られがちになります。

重要なのは、何がどう変わり、利用者にとってどんな影響があるのかを率直に示すことです。隠すよりも、構造を開示した方が結果的に理解を得やすくなります。

一部顧客だけ条件が変わる場合:契約更新・地域差・流通差など

特定条件下の顧客のみ価格が変わる場合、「なぜ自分だけなのか」という不満が生じやすくなります。このケースでは、全体説明と個別説明を切り分け、適用条件を明確にすることが重要です。

全員向けの発信では共通ルールを、個別連絡ではその人に関係する事実だけを丁寧に伝えることで、不要な誤解や横並びの不満を抑えられます。

競合が据え置きの中で改定する場合

競合が価格を据え置いている状況での値上げは、必ず比較される前提で受け止められます。この場合、競合に触れないという選択が必ずしも正解とは限りません。自社の価値軸や提供範囲、今後の方向性を整理し、「何に対して対価をいただくのか」を明確にすることが重要です。

価格そのものではなく、選ばれる理由を再定義する視点が求められます。

価格改定に関するプレスリリース事例3選

価格改定・値上げに関する実際のプレスリリースを例として3つ紹介します。

それぞれ企業・団体のブランドを活かした発信をしているため、プレスリリース作成時の参考にしてみてください。

事例1.タリーズコーヒージャパン株式会社

タリーズコーヒージャパン株式会社は価格改定のプレスリリースに次の2点を加えて発信しています。

  • 従来のサービス拡充
  • こだわり原材料の生産から生活者に届くまでの一貫した品質維持・管理

生活者に有益なプラスアルファの情報を加え、商品価値を高めることでポジティブな値上げという印象に。お客様相談室の明記も生活者への配慮が感じられます。

参考:一部商品価格改定のお知らせ

事例2.フィード・ワン株式会社

配合飼料の生産会社であるフィード・ワン株式会社は、次の2点を加えて発信しています。

  • 値上げの背景
  • 食品リサイクルや地球環境を考えた配合飼料の研究開発への取り組み

社会的意義を盛り込み、持続可能なサプライチェーンの維持を目的とした価格改定の正当性が理解できる内容になっています。

参考:【フィード・ワン】畜産用配合飼料の価格改定のお知らせ

事例3.ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク

世界的ジュエリーブランドであるティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インクは、次の2点を加えて発信しています。

  • クラフトマンシップによる卓越したカットの技術
  • 普遍的なアイコニックデザインとプラスアルファの情報

価格改定のお知らせとともにブライダルフェアの情報を発信し、ブライダルにおけるブランドの市場価値を決定づけています。

参考:ティファニー、価格改定および、「ティファニー ブライダル フェア」開催のお知らせ

価格改定時に広報PR担当者が行いたい3つの広報PR施策

プレスリリースの配信以外に、価格改定・値上げ時に行いたい3つの広報PR施策を紹介します。

1.既存顧客・取引先への個別連絡

既存顧客や取引先へは、メールなどで個別に連絡します。価格改定は既存顧客や取引先に直結する問題です。前もって連絡し誠実な姿勢を見せましょう。

価格改定・値上げに関するメールの件名には、要件がわかるタイトルを付け、本文には次の項目を入れるようにしてみてください。

【メールに入れる項目例】
・宛名
・あいさつ
・要旨(価格改定・値上げの内容、実施日時)
・価格改定・値上げの背景や経緯
・結び(感謝)
・署名

価格改定・値上げについてメディアや店舗先で知ることにならないよう、既存顧客や取引先への連絡のタイミングに気をつけてお知らせすることがポイントです。

2.SNSを活用し、ステークホルダーとの関係を構築する

価格改定・値上げに関しての情報発信は、SNSなども活用しましょう。SNSは、段階を踏んで情報を届けるツールとしてだけでなく、生活者の反応をダイレクトに確かめられて、比較的早く対応もできるため、その活用はステークホルダーとの関係構築やマーケティングとしても有用です。

またSNSでは、改定前の対策を講じることが可能です。例えば、事前にSNSでアンケート調査をし、ステークホルダーとのコミュニケーションを図るのも一案です。発表後のネガティブな意見に対しては、個別の対応を行うとよいでしょう。

3.一定の周知期間を設ける

価格改定・値上げのプレスリリースや情報発信は、変更日まで一定の余裕を持って行います。価格改定・値上げまでにある程度の猶予期間があれば、価格が変わる前にまとめて購入したり、他商品と比較検討したりすることができ、生活者側に価格改定を受け入れる時間と見てもらえます。値上げ直前に発表をするなどし、信頼を損なわないようにしましょう。

また、改定日までの期間に余裕を持ったうえでプレスリリースを配信することで、実施日までにキャンペーンなど、企業・団体側がさまざまな情報を発信することも可能です。

価格改定・値上げのプレスリリース配信で生活者の理解を得よう

この記事では、価格改定・値上げのプレスリリースを書くときに必要な項目から作成時のポイントまでを解説しました。

価格改定・値上げは、企業・団体にとっても商品・サービスを利用する生活者にとっても重要な問題です。企業・団体側は、どうして価格改定・値上げすることになったのか、それによってどのように商品・サービスが変化するのかを正しく伝える必要があります。よりよいステークホルダーとの関係を築くためにも、これらのポイントを参考にしてみてくださいね。

<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

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