メディア関係者向けの勉強会は「プレスセミナー」と呼ばれ、多くの業種で開催されています。プレスセミナーは参加するメディア関係者にも、主催する広報担当者や企業・団体の双方に価値をもたらします。
この記事では、プレスセミナーを開催することでの目的や効果をはじめ、開催のテーマや内容例、準備の流れなど、成功させるための7つのポイントについて解説します。プレスセミナーの特性を理解して、開催を検討する際に参考にしてください。
プレスセミナーとは?
プレスセミナーとは、メディア関係者が知りたい、聞きたいと思うことをテーマに、専門家や有識者が講師となって開催する勉強会です。
他の広報活動とは異なり、メディアに取り上げてもらうことを直接的な目的としていません。新しい情報の発表のために開催する記者発表会と比べると、プレスセミナーは時期や内容、招待するメディア関係者の人数などを選択できる幅が大きく、小規模、少人数でも開催しやすい点があります。
広報活動としてプレスセミナーを行う目的・効果
プレスセミナーの目的や効果には、メディア関係者との関係を構築、自社の地位の確立・ブランティング、将来の露出数増加があります。広報活動の一つとしてプレスセミナーを開催するなら、開催によってもたらされる価値を最大限に高めたいですね。
まずは、プレスセミナーを行う目的・効果を解説します。
1.メディア関係者との関係を構築
プレスセミナーを通じて以下の効果によって、メディア関係者との関係を構築することが期待できます。
- メディア関係者から認知を得られる
メディア関係者の興味関心が高い情報を提供することで、その分野に対する信頼や企業としての認知が高まります。
- 新たなメディア関係者とつながりができる
プレスセミナーはメディアに取り上げてもらうことを直接的な目的としておらず、メディア関係者の参加のハードルが高くありません。そのため、これまでやり取りがない新たなつながりも期待できるでしょう。
- メディア関係者と定期的かつ継続的なコンタクトがとりやすい
プレスセミナーは新製品や新サービスの発表、出資や増資など特別な発表がなくても開催が可能です。そのため、定期的かつ継続的なコンタクトの目的にもおすすめです。
2.自社の地位の確立・ブランティング
IT、医療、製薬業界をはじめとする技術革新が速い新分野は、新技術が続々と登場しているため、メディアは最新の情報を求めています。また、創業間もないベンチャー企業のプレスセミナーはメディアとの関係を構築するために、以下のような効果が期待できます。
ベンチャー企業や今まで積極的に広報活動をしていなかった企業は、メディア関係者への認知が低いのが現状です。
プレスセミナーでは、メディア関係者が理解を深められるように、中立的な立場から新分野や新技術、または自社の事業分野について情報提供をします。その結果、自社の特徴や優位性をメディア関係者に対し伝えることができ、自社の地位の確立やブランディングにつながります。
3.将来の露出数増加
プレスセミナーでは、上記の1.と2.を実現することができれば、将来の露出への期待ができます。実際には、プレスセミナー開催直後に問い合わせが入って露出されるケースもありますが、そのような短期的なものよりも、中長期的な露出数の増加がプレスセミナーの本来の目的でり、いわば種まきなのです。
プレスセミナーの開催テーマ・内容例
プレスセミナーの開催テーマや内容に最も求められることは、中立的でありメディア関係者が知りたい、聞きたいというニーズに応えられるか、というものです。ここでは、開催テーマ、内容例を紹介します。
1.自社商品に関連した情報
自社の商品やサービスのコンセプトや思想、市場や業界が新たに誕生したもの、またはユニークなものの場合には、関連情報を発信します。
例として、メンズビューティ市場は急激に拡大していますが、自らスキンケアやメイクをする機会が乏しいメディア関係者の男性は多く存在します。そのようなメディア関係者に対し、知識向上を目指してプレスセミナーが開催されています。
2.最新の研究や技術
自社の商品や業界そのものでなくても、関連する研究や技術、新たな知見や根拠のある考察などもプレスセミナーで取り上げることが可能です。
たとえば、食品が子どもの心身、脳の成長や発達に与える役割をテーマにしたプレスセミナーの場合、その食品や料理を担当するメディア関係者だけでなく、子ども、医療・健康の担当者も興味を持つでしょう。
3.市場環境
国内外の市場環境の情報は、メディア関係者が特集を企画する際にニュースの背景として必要です。日本国内では市場がまだ成長途中と考えられる子供へのプログラミング教育であれば、イギリス、エストニア、デンマークのようなプログラミング教育が進んでいる国の市場環境の紹介もテーマになります。
4.社会問題
市場環境と同じく、社会問題もニュースの背景として有益な情報です。
低用量ピルが日本で認可される1999年以前には、関連したプレスセミナーが開催されました。このプレスセミナーのテーマや内容には、低用量ピルの安全性だけでなく、リプロダクティブ・ヘルス/ライツが挙げられました。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは、1994年の国際人口開発会議で提唱された「性と生殖に関する健康と権利」と訳される概念です。性や生殖など自分の身体に関する全てのことは、当事者である女性が選択し、自己決定できる権利のことを指します。
低用量ピルが認可されていなかった当時の日本では、先進国の中で中絶率が最も高く、避妊法の選択肢が限定されていることが問題視されました。そのため、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの推進と低用量ピルの必要性が、多くのプレスセミナーのテーマとして取り上げられました。
5.自社商品・サービスに関連した文化や歴史
ファッション誌などのメディアを広く招待したい場合は、関連した文化や歴史を紹介する方法があります。ある海外企業のティーバッグが日本で新発売される際、紅茶文化をテーマにティーパーティ形式でプレスセミナーを開催したところ、女性誌の編集者で満席になったという事例もあります。食品であれば、郷土料理や古くから伝わる伝統料理など、テーマに開催することも可能です。
プレスセミナーを行う流れ5STEP
プレスセミナーを開催するために押さえておきたいポイントを、5つのSTEPに分けて紹介します。
STEP1.テーマ・内容の企画
プレスセミナーへのメディア関係者の誘致と参加者の高い満足度を達成するために、メディア関係者が知りたい、聞きたいと思うことをテーマや内容に企画します。
そのためには、メディア関係者が取材するときや特集を組むときに必要で役に立つ情報とはどんなものか、把握しておく必要があります。最近の報道状況や社会情勢、業界や市場の動き、最新の研究や技術の発表などを確認して、テーマや内容を企画しましょう。このあと紹介する「STEP2. 専門家・有識者のキャスティング」を並行して検討することも、効率的に企画を立てるためには有効です。
他の広報活動とは異なり、プレスセミナーのテーマ・内容には中立性が求められます。自社商品やサービスに寄りすぎないように注意してください。自社情報に偏りすぎなければ、普遍的、不変的なもの、トレンドに沿ったもののどちらでも構いません。
STEP2.専門家・有識者のキャスティング
専門家・有識者のキャスティングには、知名度にこだわりすぎなくても大丈夫です。
知名度がある人物が講師の場合、メディア関係者の誘致には友好的です。しかし、あまり知名度がない人物の場合にも専門知識と優れたプレゼンテーション能力があればさほど問題はありません。これまで世の中に出ていない情報を提供できるケースもあり、訴求次第では、多くのメディア関係者を誘致することは可能です。
STEP3.誘致するメディア関係者の選定
メディアの種類や人数は、以下の点を検討して選定します。
目的を検討する
- 広く多数のメディア関係者への訴求とする
- 個人との密なコミュニケーションを目指し、少人数のメディア関係者への訴求とする
対象者を検討する
- 部署異動などで新たに自社の担当になった初任者向け
- 長年コンタクトを取っている担当者向け
SETP4.日時・会場の設定
必ず出席をして欲しいメディア関係者がいるのであれば、事前に相談することをおすすめします。その際は、編集スケジュール、参加可能日を確認、他の参加予定者を加味し、目的に沿った集客につなげてください。
コロナ禍でさまざまなイベント、会議のオンライン開催が推進されました。プレスセミナーのオンライン開催、または対面とオンラインの同時開催も、メディア関係者が参加しやすくなる利点があります。
プレス説明会は会場装飾をつくりこむ必要もなく、立地と設備を重視して会場を決定します。
STEP5.当日の進行方法の企画
プレスセミナーを依頼した講師と初めてやり取りをする場合や、プレスセミナーでの講師経験がない講師に依頼する場合には、綿密に打ち合わせをしましょう。事前に講師へ参加予定メディア担当者のリストを渡して、メディアやメディア担当者の特性、プロフィールを説明してください。メディア関係者が理解しやすいプレゼンテーションのコンテンツや配布資料を講師とともに準備します。メディア関係者から質問されると予想される内容について、プレスセミナー内での説明や回答案を準備して講師と共有することも大切です。
開催当日にスムーズな進行ができるように、スタッフで打ち合わせをして準備します。タイムスケジュールや進行台本を作成して、席の配置は講師の話を聞きやすく、質問がしやすくなるように工夫しましょう。
プレスセミナーを成功させる7つのポイント
参加したメディア関係者の満足度が高く、広報活動としての効果も高いプレスセミナーを成功させるためのポイントを確認しましょう。
ポイント1.直後の露出を期待せず、効果は長期的な視点で考える
プレスセミナーはメディア関係者が集まるイベントのため、開催直後の露出を社内から期待されることもあります。プレスセミナーの効果は中長期間な視点で考えるものである、という認識を社内で共有することが大切です。
ポイント2.定期的・継続的な開催を目指す
プレスセミナーの効果を高めるためには、単発での開催ではなく、定期的、かつ継続的に開催することが理想です。年間計画や中長期のプランニングのなかでの、テーマや内容を企画しておくことが大切でしょう。
しかし、予算や人員の都合上、定期的、継続的な開催が難しい場合には、以下の方法を参考に、可能な範囲での開催を検討してください。
記者懇談会と交互に開催
自社の役員や開発担当者がメディア関係者と情報交換をする記者懇談会の場合、外部から講師を招くプレスセミナーと比較し、開催難度が低くなります。今後の事業展開や現在の経営環境に対する考え、開発展望などを直接聞くことができる記者懇談会は、プレスセミナーのようにメディア関係者へ有益な情報を提供する機会にもなります。
取引先向けセミナーの活用
自社の取引先や関係者向けに開催しているセミナーの内容は、メディア関係者にとっても有益で興味深い場合が大いにあります。営業部などが主催するセミナーにメディア用の席を確保してプレスセミナーと同時開催するなど工夫してみましょう。
講師や会場を自社で準備する
専門性と中立性のある情報を提供できる自社の従業員が講師を務めて、立地と設備の条件を満たした自社の会場でプレスセミナーを開催すれば、費用を抑えることも可能です。
ポイント3.メディアが聞きたいと思う内容を企画する
プレスセミナーへメディア関係者が参加を決める最大の要因は、テーマや内容でしょう。メディア関係者が聞きたい、知りたいと思うテーマや内容を企画することが重要です。日常のメディアコンタクトでも、メディア関係者が求めている情報はどんなものか聞き出すことを心がけます。媒体研究、プレスリリース作成などあらゆる広報活動を行うときにも、メディアが求めている情報とは何か、常に意識してください。
テーマや内容をどのように伝えるかも大切です。プレスセミナーの招待状は、メディア関係者にテーマや内容が的確に伝わり、役に立つ情報に感じられて参加したくなる文面になるように工夫します。
ポイント4.経営戦略、広報戦略と合致した内容を企画する
前述の通り、プレスセミナーのテーマや内容には「中立的」であることが求められます。しかし、プレスセミナーも広報活動の一つであることには変わりません。プレスセミナーのテーマや内容は、自社の経営戦略・広報戦略に合致させることが大切です。
自社の経営戦略を改めて確認して、プレスセミナーのテーマや内容はこれからの商品・サービスの展開など事業計画に沿ったものを考えます。また、企業価値を高めるためには継続的に一貫した企業のメッセージを発信し続ける広報戦略が必要です。プレスセミナーのテーマや内容も、広報戦略の一翼となると考えられるので、企業のメッセージとズレが生じないよう企画しましょう。
ポイント5.目的に合わせたメディアと人数で開催する
誘致するメディア担当者によって、同じテーマや内容でも提供する情報は変化します。
専門メディアや長年担当している記者向けであれば、根拠のある数字やデータをもとにした専門的な情報を用意します。一方、ジョブローテーションや勤務地の移動が多い新年度には、新任者向けに基本情報を提供してみましょう。
開催後に懇談することを期待するなら少人数のほうが適しています。逆に、広く情報提供を行いたい場合には、メディアの種類を限定することなく、一人でも多くのメディア関係者の参加を目指しましょう。
ポイント6.自社に関する情報も提供する
プレスセミナーはメディア関係者と接する機会です。プレスセミナーのテーマや内容は中立であるべきもので、自社の商品やサービスについて積極的に発表する場ではないことを踏まえた上で、工夫して自社の情報を提供しましょう。
自社情報の提供例
- 配布資料にプレスセミナーのテーマや内容に関連した自社情報や、ファクトブックを同封する(ファクトブックとは、自社のサービス、歴史や業績を伝えるために数的根拠や事実を元に情報をまとめたもの)
- プレスセミナーのテーマや内容に関連した自社情報を会場内に掲示する
- プレスセミナー終了後に司会が自社の関連情報を、参考情報として、極めて簡潔に紹介する
- 関連部署の自社社員が同席して、メディア関係者から質問が出たら対応する
ポイント7.継続的なアフターフォローを行う
メディア関係者と良好な関係を構築できるように、プレスセミナー当日だけでなく、開催後もコンタクトを続けましょう。
プレスセミナーに参加したメディア関係者にはその場で、難しい場合は後日改めて意見や感想を確認し、今後の開催や広報活動に生かします。欠席のメディア関係者にもプレスセミナーの資料を送付する、もしくは説明のためにメディアキャラバンを行います。参加・欠席どちらのメディアにもアフターフォローが大切です。
開催後にはメディア関係者の情報もメディアリストに更新します。プレスリリースの配信やメディアコンタクトなど広報活動を継続して、将来の露出を目指します。
メディアと長く、良い関係を構築できるようにプレスセミナーを開催しよう
プレスセミナーの理想形は、取材活動に有益となりメディア関係者から歓迎されるものです。プレスセミナーを開催するのであば、メディア関係者と広報担当者の双方が満足できるものを目指しましょう。
メディア関係者が知りたい、聞きたいと思うテーマや内容で開催するプレスセミナーは、メディアリレーションズに効果をもたらします。そして、認知やブランディングにつながり、将来の露出の増加が期待できます。中立的なテーマや内容が求められるなど、プレスセミナーには他の広報活動とは異なる点がありますので、注意も必要です。
プレスセミナーの特徴を正しく理解して、メディアと長く良い関係を構築できるようなプレスセミナーを開催しましょう。
プレスセミナーに関するQ&A
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